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【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~  作者: 黒羽
第2章:魔法学園・魔闘大会編
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第86話:リネア v.s. セルカリオス

「HAHAHAHAHA~、ボーイフレンドが応援とは隅に置けないね~不幸ちゃん」


 私の目の前で謎のスピンをしながら三人衆と呼ばれるうちの一人であるセルカリオスさんがそう言った。


「ボーイフレンドではありません」


 私は拒否をした。そう、クロウさんとはそんな関係じゃない。


「じゃあ何だというのかい?」


「……クロウさんは、私の師匠です」


「HAHAHAHA~、あんなボーイに何が出来るのかい? 確かに筋力も魔力もあったようだけど所詮は将来有望とかコネとかそんなんで学園(ココ)に来たんじゃないか? それよりもビューティフルで天才の私から教わった方が素晴らしい成長が出来ると思うけどね~あっ、もちろん不幸ちゃんには教えないよ。どうしても教えて欲しいなら、あのときの魔法と月謝を払いたまえ HAHAHAHAHA~」


「……」


 私は何もしゃべらなかった。いや、しゃべる気が無くなってしまったと言った方が正しいのかもしれない。


 この人はクロウさんを馬鹿にした。許せない。

 クロウさんはあなたよりずっと大人です。頭もいいです。何よりも優しいです。こんな私にも魔法を教えてくた。私がどんなに誤射をしようが笑顔で「気にするな」と言ってもらえました。


 彼の家に行ったときも、思い切って泊まっていいですかとお願いしたら、少しは迷ったけどすぐに笑顔でいいよと言ってくれました。

 彼の家には沢山の獣族の奴隷がいました。彼女らは物凄く笑顔でした。私は最初、少し距離を置いていましたけど、過ごしていくうちに仲良くなりました。

 そんな彼女らもクロウさんは優しい人といっていました。


 ただ彼女らは、「怖い一面もあるけどね」とも言いました。それは私も見ました。今、目の前にいる人が私に魔法を教えろと迫ってきて、それを撃退してくれたときの彼は、鬼のように怖かったです。

 でも、私の為に怒ってくれたと思うと、それもクロウさんの優しさなのではと思えてきます。


「両者用意はいいですか?」


 審判の方の声で私は現実に引き戻された。


「HAHAHAHA~、いつでもいいですよ」


「はい」


 今の私に出来ること……それは


「では……始め!」


 この人に勝つことです!








 試合開始と同時に私はセルカリオスさんとの距離を置きました。私は、彼は詰め寄ってくると思っていたのですが、彼は最初の位置から微動だにしませんでした。


「?」


 思わず首をかしげてしまいました。彼は笑顔で


「最初はそちらからどうぞ。不幸ちゃんも()()女の子だし。紳士な僕はレディー・ファーストで」


 と言いながら木剣を地面に突き刺し、腕を組みました。


 観衆の中でおそらく彼のファンだと思う人から、「キャー素敵!」とか「さっすがセルカリオス様!」などの言葉が聞こえてきます。


「では、遠慮なく行かせてもらいます」


 私はそういうとクロウさんから教わった魔法の詠唱を始めました。


 クロウさんが一度だけ私の為に見せてくださった魔法。クロウさんは「実戦で使うには詠唱が長いから使う機会は無いかもしれませんが」と言っていましたが、まさかこのような形で使えるとは思いませんでした。


「―――――――――――――――」


 私が発動までにかかる時間は15節分。クロウさんは無詠唱で発動していました。本当にすごいと思いました。


「多重型魔法……」


 私のすぐ横に私の顔と同じぐらいの紅の魔方陣が浮かび上がる。そしてそれを中心に一斉に大小様々な魔方陣が生まれた。正直なところ余りに多くて魔方陣の数は数えたことはない。

 数は知らないけどクロウさんが言うには『たいほう』とか言われる物をモチーフに作ったとか言っていました。

 それぞれの魔方陣は自分の役割を果たし始める。やがて、最初に生まれた魔方陣にパワーが集まりだし、一つの球体を生み出す。


「?」


 見たことない魔方陣にセルカリオスさんも観客席も黙り込んでいた。無理もないことだと思う。私も始めクロウさんに見せてもらった時には言葉を失った。


 多重型魔法。学校の先生からは教えてもらったことはないし、見たことも聞いたことも無かった。本にもそんな魔法式の事を書いていたのを見たことは無かった。

 やっぱりクロウさんはすごいと思う。


 見せて上げます。これがクロウさんの魔法です!


「……《火山砲撃(ボルケノ・キャノン)》!」


 その言葉と共に、一つの魔方陣に集約された火の魔力が一気に解き放たれ、膨大な熱が辺りを支配した。放たれた炎はセルカリオスさんに向かって一直線に飛んでいく。


「はっ?」


 一瞬、セルカリオスさんの困惑している顔が見えた。けど、次の瞬間すでにその顔は炎で見えなくなっていた。死んでいないよね? クロウさんが言うには「多少の火傷はするけど死ぬまでは行かないように設定してあります。必要となれば解除も出来ますが」とのこと。


 観客すらも思わず顔を隠してしまいそうな熱が辺りに放たれる。正直、ここまでの威力とは思いませんでした。

 


 やがて、魔法が終わり辺りに静けさが戻った。


 先程までセルカリオスさんがいた個所には、もはやセルカリオスさんはいなかった。かわりに闘技場の壁にややめり込む様な形で完全に伸びていました。髪の毛はチリチリに焼け、もはや最初のビューティフォー(?)な顔はありませんでした。

 あの……あれ、本当に大丈夫なのでしょうか?


「し、試合終了……勝者リネア!」


 ややあって、審判が宣言した。最初は静まり返っていた場内がやがて、大歓声に包まれていくのが分かった。

 もっとも私には雑音にしか聞こえませんが。


 でも、やっぱり嬉しいのは嬉しい。


 私はセルカリオスさんに近づくことなく競技場を出た。出る前に何人かが担架を持ちながら走っていく様子が目の端に移った。おそらく彼を運ぶためのものだろう。










 出入り口付近にまで戻ってくるとクロウさんとその従者さんが待っていました。


「おめでとう。圧勝でしたね」


「おめでとう」


「あ、ありがとうございます」


 私は素直に礼をしました。

 心の中から嬉しかったです。やっぱりクロウさんに言われるのが一番嬉しいです。


「それにしても、あのナルシスト野郎も馬鹿な事やったな……」


 クロウさんは闘技場の方を見ながら呟きました。


「あの……あの人は大丈夫なのですか?」


「ん? ああ、大丈夫ですよ《不殺》スキルを入れてあるから一定のダメージまで言ったらダメージが無効化されますから。まあ痛みはそのまんま行きますが」


 それを聞いて私はホッとしました。やはり心のどこかで心配だったのでしょう。体から一気に力が抜ける感覚がしました。


「よかっ


 私が改めてお礼を言おうと右足を踏み出したとき、いきなり右膝が折れガクンと体勢が崩れてしまいました。

 こける! と思いましたが、クロウさんが自分の体で私を受け止めてくれたお陰で事なきを得ました。それにしても何でしょうかこの全身の倦怠感は? 力を入れようとしても全く力が入りません。


「やっぱり一気に魔力を使い過ぎましたね。あれくらいの魔法を放ったから仕方ないかもしれませんが」


 そういってクロウさんは自分のポケットから何かを私に差し出しました。 クロウさんが私に差し出して来たのはガラス瓶でした。中には青く輝く液体みたいなのが見えました。


「これを飲んでください」


 私はクロウさんに背中を支えてもらい、言われるがままに瓶の中に入っていた液体を飲み干しました。……甘くておいしいです。

 しばらくすると、先程まで感じていた怠慢感が消え、楽になって来ました。


「これは?」


「エーテルポーションですよ」


「ぶっ!?」


 思わず吹き出してしまいました。何故ならエーテルポーションと言えば超が付くぐらい高価で貴重な薬品だったからです。

 一瞬、眩暈がしました。


「? ああ、お金なんて要りませんよ。私が作ったものですから」


 私の表情から察してくれたのか、クロウさんはそういってくれました。


 作ったって……かなり高難易度の調合のはずなのですが……。まだまだクロウさんには私なんかが出来ないことがたくさんあるようです。


「ところで……いつまでクロに支えてもらっているの?」


 横からクロウさんの従者さんが不機嫌そうに私に言ってきました。よく見ると私はどうやらずっとクロウさんに背中を支えてもらっていました。 


「~~~~///」


 何故か急に熱くなってきました。私は慌ててクロウさんから起き上がりました。


 何故でしょうか? 顔が熱く、心臓の鼓動もいつもより早い気がします。


「って、次はクロの番じゃない?」


「あっそうだった。それではリネアさんまた後で会いましょう」


「は、はい! 頑張って来てください」


 私は笑顔でクロウさんたちを見送りました。クロウさんが去った後私は闘技場外にあったベンチに一人座りこの鼓動が収まるまで一人ポツンと座っていました。

 後書きを書いている時に、もう少しナルシストの無残な姿を入れれば良かったかなと思いました。イケメンのチリチリ頭だけでも十分に私は笑っていましたが(笑)


 本当は、次のクロウの勝負も入れようかなと迷ったのですが、すでに昨日投稿するはずだったこの回が遅れていましたので、キリが言いここで止めました。続きを楽しみにして下さっていた人には申し訳ありません。


 それにしてもいつもと違う人からの視点で書くことは難しいと思いました。けど後悔はしていない(キリッ

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