第84話:予選
今回も投稿遅れて申し訳ございません(土下座)
「こほん……では、これより魔闘大会のルール説明、及び予選を始めたいと思います」
司会進行もアルゼリカさんのようだ。闘技場入口前に設置されたミニステージの上に立ちマイク(拡散器、電力は無論魔力から)を片手に説明をしてくれた。
まず最初に、この大会のルール説明を受けるのだが、要約すれば以下の内容になる。
1・お互い持てる武器は練習用の木剣。
2・魔法は自由に使ってもよい。
3・制限時間は10分。
4・制限時間内に相手を、降伏、またはノックアウトさせれば勝利となる。
5・制限時間内に勝負が付かない場合は審判による判定戦へと移行する。
6・レフリーストップがかけられた場合、即座に攻撃をやめなければ失格となる。
その他にも、モラルがかけた行為など様々なルールがあったが、試合にかかわることはこれくらいだった。特に変わったことはないが、制限時間が10分しかないのか。確か最初は20分とか言っていたよな?(第69話参照)。まあルールは変わらない訳では無いからいいか。
むしろ、数十回も試合があるのに、20分で回す方が無理だよな。それも一日で。そう考えると、この大会ってかなりハードだなと思う。
「では、予選を始めたいと思います。本大会参加者数182名から32名を選出する今回の予選は……これです」
そういいながらアルゼリカさんがバッと手を指した方を見ると、そこには何やら見られない機械(?)見たいな台座があった。
台座の中央は手の形に掘られていた。恐らくあそこは手を置くところだろう。……見れば分かるか。
台座の上部分には、水晶も飾ってある。
「あれは通称MPMと呼ばれる物です。あの機械に自分の魔力を流せばそれが数値となって表示されます。そのポイントが高い上位32名が本選出場となります」
周囲が騒がしくなる。なるほど、去年と比べたら随分と平和的に決めることが出来るな。
「ただし、一つ注意があります。MPMに魔力を流せば当然、自分の魔力が消費されます。本日は勝ち続ければ最大で3戦。多くて4戦を行いますので使う魔力には注意をしてください」
「サヤさんには少し不利な予選ですね」
サヤは今まで格闘に特化していた分、魔力はそこまで高くない。総合力では勝っていても魔力が負けていれば本選出場は出来ない。
「……問題ない……」
サヤは顔色一つ変えずにそう答えた。うん、確かにサヤなら問題にならないと思うけど、一応ね。
「これより、予選を始めますので順番に並んでください。なお魔力数値は随時更新していきます。では皆さん頑張ってください」
こうして、魔闘大会の予選が始まった。
「……数値【109】です」
「だぁ! その程度かよ!」
数値を測り終えた男子生徒が悔しそうにしている。その周りで、数値を見た他の男子生徒が笑っている。ああいうのを見ると、学校でテストが返却される時を思い出す。教室の隅っこで、せーので一斉に却ってきた解答用紙を見せ合い、「勝ったぁ!」とか「あ゛あ゛あ゛負けたぁ!」と言う声がよく聞こえてきた。時折、「ざまあwww」という若干小馬鹿にしている発言も飛び交っていたな。
俺はそんな光景を思い出しながら自分の番を待っていた。
「あと半分か……」
長い。一人一人はそんなに長くないけど、とにかく人が多いから待ち時間が長い。
「まだ結構あるわね……」
あくびをしながらエリラが呟いた。
闘技場の入り口前には既に観戦者が続々と集まってきていた。聞くところによると、一般生徒は無料で見れるらしい。あとは一部のお偉いさんとかもちらほらいるとか。
有能な人がいたら引っこ抜く気だな。
「皆は大丈夫かな?」
「さあな……冒険者のシュラやセレナ、あと無駄に強いサヤとかは大丈夫だとは思うけど」
「あの兄妹のこと?」
「いや、セレナの方かな。最初に会ったときサヤと並んで魔力が低かったから」
「まあ、大丈夫だと思うわよ、あの子たちも頑張っていたはずだから」
と、エリラは言っていたが正直なところかなり不安だ。参加者の魔力は全体的に見てかなり高い方だと思言う。さっきの【109】を出していた男子生徒ですらも、ステータスを見ると160はあった。
俺が見た限りで現時点での平均的な数字はおよそ200前後。ステータスに直すと、およそ300程度だ。シュラ、カイトたちですらもギリギリだ。
そうやって見ると、冒険者の魔力が低いのが謎だな……。レベル的には10ぐらいしか無いのにな。恐らく魔法のことばっかりを学習しているので、称号などの影響があるのかもしれない。ほぼ一年中勉強しているから魔力面では不利か。
もちろん、本選になれば圧倒的に特待生組の方が有利だ、理由はスキルレベルの差が顕著に現れるからだ。
でも、この予選を突破しないと始まらないからな。
おっ、次はあのナルシスト野郎の番か。相変わらず謎のスピンをしながら台座の前に立ちやがった。
「……数値【340】」
「フッ……これくらい当然さ」
「「キャーーーーセルカリオス様ーーーー」」
イラァ! 殴りてぇ、あの顔面半分つぶしてやりたい。
ただ、実力はやっぱり認めざる得ない。340ということは、ステータスに直すと600前後ということになる。
「……なに、あの集団……」
エリラが、ナルシスト野郎とその周りに群がる女子生徒たちを見ながら若干後ろに動いていた。ああ、そうかエリラはアレを見るのは初めてだったな。
「さぁ?」
俺は知りませんよと言う感じで首を横に振った。
ナルシスト野郎は女子生徒たちに囲まれ、その中央でスピンをしながら台座から離れていった。いや、だから、なんでこんな地面でフィギュアスケート並みのスピンをしながら移動が出来るんだよ。
もはや物理法則完全無視だな。
しばらく待っていると、次はあの縦ロールの子がやってきた。俺はあんまり見ないように顔を逸らしていた。向こうもこちらに気づいているのか、特にこちらを見る仕草は見受けられない。
「……数値【287】」
やはり高いか。口だけじゃないのは確かか……特待生組が彼女と当ったら厳しいかもな。台座から去り際、彼女の目線が僅かにこちらに動かした気がしたが、瞬きする間にその視線は元に戻っていた。
気のせいだったのかな? もしかしてこれが自意識過剰と言う奴なのだろうか?
その次に行ったのはリネアだった。
「……数値【251】」
周囲が少しざわめく。確かに見た感じ一般生徒で200を超えているのは全体の3割。さらにそこから250に到達できているのは半分程度。
かなり上だな。まあリネアのすごさは別の所にあるんだけど今はいいか。
「中々の数値ですね」
判定から戻ってきたリネアに俺は声をかけた。
「あっ、いえ、クロウさんのお陰ですよ」
リネアは頭に手を当てながら、照れくさそうに答えた。
と、そこに
「AHAHAHAHA~、やあ、不幸ちゃぁん、相変わらずラブラブd―――」
言い終わるよりも早く俺の《魔弾》が、どこからもなく湧いてきたナルシスト野郎の顔面にクリーンヒットした。
※魔弾……魔力をボール状にしてぶつけた物。低コストで、威力は低い。
ナルシスト野郎は、そのまま背中から地面に激突した。
「誰がラブラブだコラ。喧嘩売っているなら本選で相手してやるからどっか行け」
のっけから喧嘩口調で追い返そうとする。というか俺からしてみれば、もう生理的に受け付けることが出来ない。
地面に仰向けに倒れていたナルシスト野郎が、周りにいた女子(野次馬)に支えられ立ち上がる。
「HA! 不幸ちゃんは知らないが君にそんな実力あるのかい? あの機械は筋力を測るものじゃないんだよ?」
「あ゛っ?」
こいつの言い方はどうも気に入らない。というかこんな奴にキャーキャー騒ぐ女子の気持ちが分からないのですが。
懲りていないようなので、もう一発入れようかと思い立ち上がったのだが。
「次の人」
「クロじゃないの?」
タイミング良く順番が回ってきた。仕方ないと俺は思い、計測器の方に向かおうとしたとき。
「ねぇ、そこの君! もしかしてあの不幸ちゃんのボーイフレンドの従者かい?」
「だから何?」
ナルシスト野郎がエリラに問いかけた。その問いにエリラは無愛想に答えた。
「oh、折角可愛いのにあんなボーイの元にいるなんて、まさに宝の持ち腐れじゃないか、お兄さんの所に来ないかい?」
恒例になりつつあるスピンをしながらエリラに詰め寄るナルシスト野郎。恐らく心の中では口説き成功と思っているのだろう。あの自信満々な顔がそれを物語っている。
エリラは口説きに対する答えを言わず、代わりに彼女の強烈な右ストレートがナルシスト野郎の鳩尾に見事に決まった。
「!!!!!!?」
「あーあ……」
膝から崩れ落ちるナルシスト野郎。思わず俺は天を仰いだ。
ナルシスト野郎は無言のまま地面に這いつくばっていた。恐らく呼吸ができないのだろう。彼の周りにいた女子たちが慌てふためき、何人かの女子は鬼の形相でエリラに詰め寄っている。そんな、女子たちを無視し、エリラは俺の方へと向かって来た。
そして、ニコニコしながら俺の右腕に抱き付いて来た。
「容赦無いな……」
俺は苦笑いをするしか無かった。
「私、あーゆータイプ嫌いなのよ。なんていうか……世界は俺を中心に回っているとか思っていそうで」
「気持ちは分かるけど、あれは行き成りすぎるだろ……」
「いーの、いーの、私はクロしか見ていないから」
少し顔を赤らめながら言ってくれた。
「お、おう(汗」
う、嬉しいけどよ、今このタイミングで言うか?
というのも、後ろの女子'sの視線が痛いだけど。
「ちょっと! そこの奴隷! 奴隷の風情で何セルカリオス様を殴っているのよ!」
一人の女子がそういいながらエリラの肩を掴んできた。エリラは振り返り、その手を掴み返し在らぬ方向へと捻じろうとしている。脱臼しそうな痛みと恐ろしさで掴んでいた女子がエリラの手を振り払おうとした。
しかし、エリラの手はピクリとも動かない。
「いだだだだだだ! ちょっ、離してよ!」
「文句を言うなら行き成り口説いてきたアレに言いなさい」
うわぁ……理不尽だ。行き成り口説いてきたのは問題あるけど殴るのは良くないだろ。と言いたかったが今のエリラにそんな突っ込みを入れたら俺にも火の粉が飛んできそうなので置いておくことにする。
というか、早く測定したいのだが。
「君、早くしなさい!」
案の定、計測者から催促がかかる。
「あっ、ハイすいません。ほらエリラ、来るんならさっさと来い」
「はーい」
掴んでいた女子生徒の腕をパッと手を放し笑顔で来た。こ、怖い……。
腕を掴まれていた女子は、イタタタと言いながらこちらを睨みつけていた。だが余程痛かったのだろう、こちらを追いかけようとはしなかった。
「ほら、君早く測定しなさい、後がつっかえているんだよ」
計測者は目の前で起きた出来事に無関心を装っていた。もしくは本当に興味がないのかもしれないが。
言われるがままに、俺は台座に手を乗せた。
フゥと一息入れ、そして魔力を流し込み始めた。
もう少し……もう少し……
(……あっ、流しすぎた)
だが俺がそう思った時にはすでに遅かった。
「……数値……【2579】!?」
先程の出来事に無関心だった測定者も目の色を変えて浮かび上がった数値に目を見張っている。周囲にいた参加者たちの目が一斉にこちらを向く。
「……クロ……」
「あっ、ハイ。マジですいません」
エリラの呆れた声に、俺は何故か咄嗟に謝っていた。
今回も投稿遅れて申し訳ございません。書いているとどうしても、アレやコレも入れたいと思い、文が上手くまとまりません。
ナルシスト野郎の介入がいい例です。
こんな行き当たりばったりの面もありますが、これからもよろしくお願いします。
あと早く元の更新速度に戻せるように頑張ります。コメント返信遅れていますが、すべてのコメントに目は通していますので、いつも書いてくださる皆様には本当に感謝です。これからもよろしくお願いします。




