第80話:前触れ
※ 2/23 誤字を修正しました。
「なんですか? やるのなら相手になりますよ?」
その言葉に合わせて縦ロールの子の後ろにいた二人が前に出る。
それと同時に俺の背後から鋭い視線を感じた。見るとローゼやサヤだけでなく、残りの特待生たちも鋭い視線を縦ロールたちに送っていた。
やばい、何とかこの場を押さえないと……。
前回のナルシスト野郎の時の反省を生かし、冷静にする俺。だが周りの面々はどうやら平和的な解決をやろうとする気は無いようです。
学校でこんな雰囲気が発生すると、大抵次に起きるのは決まっている。
「……怪我する前に帰れ……」
サヤがナックルダスターを着けながら縦ロールらに近付いて行く。
「その言葉、そのままアナタたちに帰しましょう」
「……そもそも何故あなたはここにいる……?」
あっ、そう言えば闘技場って特待生たち以外は普段授業以外は原則許可なしでの出入りは禁止のはずだ。
「許可をもらっらに決まっているじゃない」
縦ロールの子が胸を張って答える。
「よく許可がおりましたわね。で、ここに何をしに?」
「それはーーー」
縦ロールの子がなにかいいかけ瞬間、突然前置き無しに縦ロールの後ろにいた二人が剣を抜きつつ前へと飛び出して来た。
だが、この程度の不意打ちに反応出来ない特待生組では無い。ローゼとサヤがほぼ同時に武器を構え、同じように飛び出して来た。
まあ、一触即発の状況だったのだ、不意打ちなど無理だったんだけどな。
そして両者の武器が交わるその瞬間
「ゴンッ)いたぁ!?」※ローゼ
「ゴンッ)ひゃう!?」※サヤ
「ゴンッ)げばっ!?」
※↑↓縦ロールの後ろの子たち
「ゴンッ)あべっ!?」
4人の動きが一斉に止まった。
いや、止まったというより無理矢理止められたと言った方が正しいのかもしれない。
4人とも顔を擦りながら互いに何が起きたの? と顔を見合わせた。
「勝手に開戦しないで下さいよ」
俺はそういいながら顔を擦っている4人に近付いた。
「……くひょうがやひゃったの……?」(訳:クロウがやったの?)
顔を擦りながら言っているのでサヤの言葉がイマイチ分からなかったが、まあ言いたいことは大体分かった。
「すいません。咄嗟でしたので……」
そう、こんな状況になったのは俺の《防壁》のせいだ。時間があったら地面を緩くして沈める方法もあったけど残念ながら無理だった。4人には少し申し訳ないと思ったので、治療魔法をかけることにした。
「……で、行きなりなんですか?」
治癒魔法をかけながら俺は縦ロールの子を睨んだ。縦ロールの子は特に口調などを変えることなく淡々と話す。
「なにって……あなたたちが大会で恥をかくのが可愛そうですので、その前に病院送りにして差し上げようとしているのですよ」
なんだよこの人……物騒なことを平然というな……いやその前に行動したのが恐ろしいな……。
「へぇ……逆に病院送りにして差し上げましょうか?」
そう言うと俺は自分の真上に半径5メートルくらいの巨大な魔方陣を展開した。
恐らく学校でも見たこと無いだろう。このクラスの大きさとなると、国の優秀な魔導士が複数がかりで発動するような規模になるからだ。
まあこの魔方陣は完全に見かけ倒しなのだが。いわゆるハリボテと言うやつだ。
おそらく初めて見る魔方陣を見た縦ロールの子は言葉を失っていた。
……というよりかこの場にいるほとんどの奴が固まっていた。唯一エリラには一度見せたことあったので俺の後ろで「ざまぁ……」と呟いていた。
「……お帰りくださいますでしょうか?」
やや声のトーンを低くおさえながらスキル《威圧》の力も借りつつ威嚇を続ける。
ちなみにこの魔方陣。このままではハリボテだけど、少し回路を弄れば家一軒を吹き飛ばす凶器になる。
暫く縦ロールの子は黙っていたが、ハッと我に返ると
「くっ……か、帰るわよ!」
と言うと早足で闘技場を後にした。治療を終えた二人も慌て縦ロールの子の後を追っていった。
「……はぁ……なんか最近こういうことが多いよな……」
「疫病神?」
「……お祓いってどこで出来るかな?」
エリラのボケにも真に受けてしまう。笑えないから怖いよね
「……なんかゴメン……」
予想外の反応だったのかエリラが謝ってきました。
「……ま、まあ取り合えず落ち着いたということで」
「そうだな」
「……あの様子ですと大会にも出てきますわよね?」
「ああ………恐らくな」
「………潰す………」
サヤ………さん………怖いです。本当にボソッと言うので怖さ倍増です。さらに今のサヤのステータスなら本当に物理的に潰しかねないので怖さに拍車がかかる。
「……なんか今日は疲れたね」
「………そうですね今日はもう御開きにしましょう」
と言うことで、この日は御開きと言うことになった。
だが、事件はここで終わらなかった……。
と言うことで今年最後の投稿です。一年間(実質5ヵ月)ありがとうございました。
そう考えると約150日で80話なんてよく書けたなと思います。まあ内容は薄いのですが(泣)
応援してくださった皆さま本当にありがとうございます。来年も宜しくお願いします。
では、皆様よいお年を




