第8話:実戦
バッカスさん登場です。
11/03:加筆修正をしました。(大幅修正)
俺とレイナが家を出たころ。遠くで俺らを見ているものがいた。集落内の櫓の屋根の上からこちらを見ている。ちなみに普通に見れば豆粒のようにしか見えない。《気配察知》と《千里眼》のおかげだな。
さて、問題は彼の姿である。上半身裸でしかもマッチョな出で立ちをした龍族だ。皮膚は全体的に黒い。ショートヘアーでスッとした顔立ち顔だけなら間違いなくモテるに違いない。ただしその下の重厚な筋肉を見たらなんというだろうか。
俺は早々にそいつの存在に気づいたのでレイナに言う。
「ありゃバッカスだな」
「バッカス?」
お酒? という俺のつっこみは置いといて、バッカスとはどうやらこの集落一の強さを誇っているらしい。生まれて3か月で龍族の大人でも持ち上げることが難しい岩を持ち上げたり、村一の強さを決める武闘大会でも史上最年少で優勝しているらしい。
ちなみに今でも連続で優勝しているだろうなとのこと。
「どうする?」
「ちょうどいい、お前相手して来いよ」
えっ、なにその近くのコンビニでジュース買ってこいや見たいな気軽な発言は? 仮にも村で一番強いんだよね?
俺が不安になっているのがわかったのかレイナが続ける。
「心配するなアレスと同じくらいの強さなだけだ」
あっ、なるほどってそうじゃねぇって!
「じゃ任せたぞ、私はアレスのところに行くから」
というと《飛行》を使ってどこかに行きやがった。くそぉ何なんだ家の親は……戦いになると子供に無頓着すぎるだろ……お前らは経験の差というものを知らないのかよ……。
そんな俺の嘆きを知ってか知らずか俺の前にバッカスが現れる。
「……いよぅテメェがうちの若者を再起不能にしたのは?」
「な、なんのことでしょうか?」
「とぼけるな、あんな強烈なパンチを忘れたとは言わせないぞ」
あっ○龍拳ですね、確かに全力で殴ったけどマジで再起不能になったんだな。どうやらあいつはこのバッカスとか言う奴の知り合いだったらしいな。
「龍族で戦えない奴はただの役立たずさ、老人ならともかく、若い連中は肩身の狭い思いをしてやがるんだよ」
自業自得じゃん。
「まぁそんなことはどうでもいいんだよ。問題はやったのがテメェのようなガキんちょってことだ。俺としては今回お前に用があったようなもんだよ」
あっ、こいつも戦闘狂なんだ。やっぱり種族別の性格はあるのかな? それとも人間族が異常なのかな?
「それならお父さんあたりにでも行ってください。俺よりかよっぽど強いですよ」
大嘘であるが、俺のなりを見れば納得するだろう。
「とぼけるなよ、お前の強さは最初から見ていた。お前の魔法は特にすごかったな」
げぇ! あの場面から見ていたのか!? ということはあのクレーターを作ってしまったところからか?
アチャーこれじゃあ言い逃れで出来ないな……
深々とため息をする俺、片手を顔に当ててどうしようかと嘆く。
「まぁどっちにせよ、村を襲ってきた輩を放置するわけにもいかねぇんだよ」
バッカスは背中にあった剣を抜く。長さは1,5メートル程度の剣だ。特にこれといった装飾はしてなく一見すると安っぽい剣と見間違えそうだが、俺の眼はその剣がかなりの代物だということを警告していた。
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アイテム名:【大剣】
分類:武器
属性:無・斬・打
効果:打撃スキル1アップ
詳細:両手剣の基本武器、切ることよりも武器の重さを生かした
打撃攻撃に特化している。
素材:ミスリル
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そう、俺の眼が警告しているのは素材だ。今まで特に注意して見ることはなかったが、錬金術などで武器が作れることがわかると意識して見るようにしてきた。ちなみにまだ武器を本格的に作ろうとは思っていない。木剣なら一度作ったことあるけど一撃で壊れたし。
ミスリルはこの世界で一般的に扱われる鉱石の中で一番丈夫らしい。(と言っても所詮は本の知識。たぶん世の中にはまだまだ知らない鉱石があるだろう)
しかも、基本武器のくせに付加付きかよ。
次にバッカスの能力を覗いてみる。
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名前:バッカス・スト・ローリア
種族:龍族
レベル:50
筋力:1,030
生命:2,050
敏捷:1,550
器用:770
魔力:0
スキル
・固有スキル:《龍の眼》《千里眼:5》《透視:5》
・言語スキル:《大陸語》《龍神語》
・生活スキル:《倉庫:4》《換装:7》
・作成スキル:《武器整備:3》《防具整備:3》
・戦闘スキル:《身体強化:7》《見切り:7》《気配察知:7》
《回避:7》《状態異常耐性:3》《跳躍:2》
《打撃強化:6》《心眼:7》
・武器スキル:《大剣:7》《鈍器:6》《盾:5》《格闘:7》
・魔法スキル:―
・特殊スキル:《フォース:6》
・特殊能力 :《硬化:6》《飛行:7》
――――――――――
……なんというか普通だな。やっぱり数値はアレスたちより上か、さすが村一番なだけはある。やっぱり実戦での叩き上げだから戦闘スキルは高いな。
なんて確認をしているとバッカスがすでに戦闘モードに移行していた。あっこいつも戦闘狂だったんだ。
俺も持っていた青龍剣を構える。この剣もかなりいい武器なんだけど素材が鉄だからな、素人の俺が打ちあったら簡単に壊れそうだ。
「おっ、やる気になったか?」
「別にそんなんじゃありませんよ。ただやらないと死ぬので」
一応逃げることも視野に入れている。飛行スキルだけじゃ俺の方が熟練度が下だから逃げ切れないけど、魔法と組み合わせれば早く逃げれるしな。
先手でも取っときますか。俺はさっそくこの前獲得したばかりの《瞬間詠唱》も試してみることにした。
「《雷撃》!!」
いやぁ無詠唱って楽だね。
補足しておくとこの世界の魔法は前に述べたとおり創造で作り上げるものが基本だ。だが中には例外もある。それは雷撃見たいに本とかに乗っている魔法だ。お手本と言うわけだな、イメージをつけやすいように魔方陣という形で存在している。
簡単に言うと。
雷撃 → 魔方陣型魔法(創造でも詠唱でも可能)
炎風拳 → 創造型(魔方陣での使用は不可、ただし作ることは可能)
上に書いてある通り創造型の魔法は魔方陣に作ることも可能だ。そういって書かれた魔法は【魔法札】というアイテムとして売り出されるらしい。
しかも魔方陣に変えれば次回からはその魔法の名前と使用属性だけ選べば即使用可能だ。もっとも俺の場合あまりにスキルレベルが上がりすぎてもう名前をチョイスしている感覚しかないのだが。
イメージとしてはロック○ンあたりかな、バトル○ップが魔法札だ。
だからっと言っていきなり魔方陣に出来るわけじゃない、まずは創造型で作り上げることが大前提だ。つまり具体的な流れとしては「創造型で魔法作成→魔方陣に書いて固定」という感じだ。
魔方陣に作りかえるということは、忘れないように紙にメモをしておくようなものだ。
……あれ? じゃあもっと上の魔法があってもおかしくないような気が、なんであんなに簡単な魔法だけしか本に載っていないんだろ。初級編だったけ? 今度聞いてみるか。
いきなりの雷撃でもバッカスは後ろに後退することによって回避する。うぉっあれ避けるか? だが俺もそんなことで一々動揺はしない。
「《炎風剣》!!」
炎風拳の派生魔法で剣に炎と風の魔力を溜め前方に放出する魔法だ。こちらの方が一回剣を媒体とするので威力があがるのだ。
暴風と火炎がバッカスを襲う。横に回避するが完全に回避しきれなかったのか足が一部やけどをしていた。
今度はバッカスが動いた。体勢を立て直すとそのまま一瞬で俺の眼の前まで詰めてくる。そしてそのまま俺を真っ二つにするために剣を振り下ろしてくる。
俺はこの勢いでは完全に受けきれないと判断し剣と剣がぶつかり合った瞬間、斜め向きに軌道を切り替えそのままバッカスの剣を受け流す。勢いがあった分バッカスが後ろに行く勢いもかなりのものだ。
バッカスはそのまま後ろに転がったかと思うとすぐに飛び上がり体勢を立て直した、さすがにこの辺りは慣れたもんだな。
「ちっ、無詠唱かよ……しかもかなりの速さだな。二つ目の魔法はなんだ? 俺も見たことがないぞ」
あー複合魔法のことか。確かにほとんど俺のオリジナルだしな。
「お父さんの魔法ですよ」
嘘だけどな。
>スキル《詐術》を取得しました。
what!? 俺今まで両親に嘘ついたことあるよな!?(家を襲撃してきたやつらをタコ殴りにしたとき、詳しくは第3話参照)
まぁ、いまさらだしいいか。
「ふ、面白い、これで本気でいけるな」
あー、やっぱりそうなりますよね。バッカスはふっと一息すると一瞬で体中が鱗へと変質していった。さすがにあの熟練度になると中々の速さだな。さらに翼も生えている《飛行》スキルか。
「お前も死ぬ前に見ておけ、これが本物の龍族だってことをなぁ」
さ、殺気が来る。こえぇ……
バッカスは再び俺との距離を詰めてくる。さっきよりも速い。俺は咄嗟に跳躍をする。スキルのおかげで30メートルぐらいまで飛び跳ねてしまった。だが飛行している相手ならあんまり関係ないだろうが。
俺はすぐに意識を集中させる、《硬化》《飛行》を使用。こっそり手と足には《強化魔法》で付加属性をつけている属性は風、静かにしたら風の音が聞こえるだろう。もっとも空間魔法を使えば音も遮断できるかもしれないが今は置いておこう。
全身が青色の鱗に覆われ翼が背中に生える。その様子を見ていたバッカスがおいおい冗談だろと苦笑しているのが見えた。
俺は剣を鞘に戻す。《格闘》と《対龍戦》スキルのおかげで互角に戦えるはずだ。
バッカスに一気につめよる。風のブーストでめっちゃ早くなる。あまりに勢いをつけすぎて危うく地面に頭突きをするところだった。要練習だな。
俺の速さについてこれないのか、地面に着地した音でようやく視線を俺へと移すが、その時にはもう遅い。俺の風属性を付加した拳が彼の顔面を捉える。
ドンッと言う音とベキッと言う音がほぼ同時に鳴る。見ると顔を覆っていた鱗が見事に壊れていた、バッカスは苦痛に顔を歪ませながら俺との距離を取る。
「くそっ、なんつうぅ強さだ……硬化した俺の皮膚を軽々と破ってきやがるとは」
「そろそろいいですか? もう十分でしょ?」
あくまで俺は平和主義者だ。ラブアンドピース精神だ。どこかの戦闘民族じゃないぞ。
だが戦闘民族には無意味な発言だったようだ。
「馬鹿かテメェは、ここから勝つことに意味があるんだよ」
そういうと鱗の間から流れ出る血も無視して再び剣を構える。その眼はもう完全に俺しか見えていないようだった。そのため俺の魔法にも今回は気づかなかったようだ。
「……《雷撃》」
バチィンという音が鳴り、バッカスが「あばばばばばば」とか言いながら地面に倒れる。ピクッピクッと痙攣をしているが一応死んでいないようだ。
「はい、おしまい」
とりあえず手錠だけして俺はレイナたちのところへと戻ることにした、何とも簡単なお仕事でした。
なんじゃこれゃ?
アレスたちの周りにあったのは死体の山、山、山。正直吐きそうだいえ吐いていいですか? いえ吐きます。近くの民家に近づきとりあえず朝食べたものが出てくる。
>スキル《精神耐性》を取得した。
「おいおい大丈夫か?」
レイナが駆け寄ってきて俺の背中をさする。あとで気づいたが返り血がついていた、このやろぅ……。
しばらくすると俺も正常な心を取り戻していた。
「で、これは?」
俺は気を取り直してアレスに質問する。もちろん俺は見ないようにしている。早く精神耐性ついてくれ。
「何って死体だが?」
いやそういう問題じゃないのですが、数にしたら200はあるぞ、さっきの入口のとここまでの数を数えたら悠に400は超えないか?
あああ……なんでこいつら躊躇なく人を殺せるんだろうか、もう正直ついていけれないのだが、せめて魔物みたいなので慣れてからここに来たかった。
「残りの奴らはどこかに隠れてやがるな、もうこの村燃やすか?」
「そうだね、中途半端にやっちまったらまたやって来るだろうしね」
お前ら……それにしてもどうやって倒しているんだろ? いくらレベル差があってもこんな数をまとめて相手して勝てるとは思わないんだが、しかも相手は硬化とか飛行とか使うやつらだぞ?
なんかスキルを持っているのかな? 俺でも看破出来ない遮断とか聞いていないが、まぁこのスキルが本当に万能かどうかわからないからな。
とにかく今は、この殺人魔をどうにかしないと
「こ、これくらいやれば十分なのでは?」
「だめだ、あいつらはこれくらいのことで諦めるような奴らじゃない、村の掟を破ったからには死んでもなんとかするぞ」
「だから全員殺すのですか?」
「ああ、そうしないとこれからもイタチごっこになるだけだろうな」
ああ、面倒だな……結婚なんかどこの種族とやっても変わりないだろ、別に人を殺したわけじゃないのに、あっもう殺したから手遅れだ……。
そう思っていたときどこからともなく音が聞こえてきた。地鳴り? 地震かなと思っていると
「!! アレス! クロウ! 逃げるぞ!」
レイナが山の方を睨みながら警告した。
俺も《透視》と《千里眼》を使ってレイナの向いてる方を確認すると、そこにいたのは
「……本物の……龍?」
そこにいたのは真っ黒な龍だった。
黒龍登場。
読んで下さった皆様ありがとうございます。
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===2017年===
03/28:一部修正しました。