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【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~  作者: 黒羽
第2章:魔法学園・魔闘大会編
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第74話:その涙

「……行こう」


「……そうですね」


 謎のダンサー(?)を無視して回れ右。


「無視かい? だがそれがいい!」


 ……Mですかあなたは? てか、何で普通(?)の芝生でアイススケートのスピンが出来ているのですか!? あんたどういう原理で回っているんだよ! あと、こんな気持ち悪い奴にキャーキャー言ってる奴らもうるせぇ! 


「ねぇ、ねぇそこの不幸ちゃぁん!」


 謎の少年がクルクル回りながら近づいてくる。酔わないのかなあれ……。てか不幸ちゃん? リネアの事か?


「知り合い?(ボソボソ」


「いえ……ですが、彼は今年に入って来た三人衆の一人だったはずです(ボソボソ」


「三人衆?(ボソボソ」


「今年入って来た優秀生の中でさらに上位3人につけられたあだ名です(ボソボソ」


 ああ、あの凄い奴らとか言っていた奴の一人か……残念な奴だな。


 俺らと残り3メートルぐらいの所で、スピンをやめ


「君、さっきすb……まって、吐いちゃいそう!」


 予想通り。地面に四つん這いになって、悶えている少年の周りに、先ほど追っかけていた女子たちが群がる。キモイ。こいつもキモイが、周りの女子たちも群を抜いてキモイ。こんな奴のどこがいいのだろうか? 確かに顔立ちはスッキリとして、イケメンかもしれないが、こんな残念な行動を見せつけられたら、ドン引きするしかないわ。


※この世界の学校は入らなくてもよく、いつ入っても構わない。そのため、同じ学年でもかなりの年の差がある事もしばしばあるとのこと。


「よし、もう大丈夫だ! 君、さっき素晴らしい魔法を使っていたね。是非教えてよ!」


 復活した瞬間に、行き成りリネアに魔法を教えてくれと迫る謎のダンサー。


「い、いえ、そ、それは……」


 リネアが解答に困惑している。チラッとこちらに目線を動かし「どうしよう」と目で訴えて来る。はぁ……仕方ない、助けますか。


「お断りします」


 俺はリネアの前に立ちはだかるように割り込む。


「ん? 君は誰だい? 君のような男には興味無いのさ!」


 キラキラオーラを放ちながらさりげなく、どけよと言う感じの言葉を放ってくる。


「もしかして、不幸ちゃんのボーイフレンドかい? HAHAHAHA~それは済まなかったね」


 いや、違うし、つーかまず話を聞けや。


「心配しないでいいさ、僕が興味あるのは彼女が使った魔法だけだよ」


 サラッとリネア自身には興味ない発言をしやがったな。


「そーだーそーだー」


「セルカリオス様の邪魔するんじゃないわよ!」


「そこを、どきなさいよ!」


 後ろの女子たちも援護攻撃を仕掛けて来る。女子の発言の中から目の前にいる、ナルシスト野郎の名前はセルカリオスと言う事が分かった。

 つーか、君たち関係ないよね?


「まあ、そういう訳さ! という訳でどいt―――」


「断ります!!」


 頑固として動く気はない俺。俺の後ろで「どうしよう……私のせいで……」とオロオロしているリネアの声が聞こえる。


「第一、他人からオリジナルの魔法を聞き出すのはマナー違反ですよね? 冒険者……いえ、学校でも暗黙の了解のはずです」


「ノー! それは普通の奴らだからさ! 僕は、世界で一番カッコ良くて、美しいセルカリオス! そんな私に常識など通じないのね!」


「その通りよ!」


「「そーだーそーだー」」


 うわっ、こいつ想像の斜め上……いや、別次元にかっ飛んでいるレベルのナルシスト野郎だった。そしてさりげなく、女子sの援護攻撃もうざい。


「はぁ……じゃあ、この魔法を共同で作った私から言わせて貰います。この魔法をあなたに譲渡する気はありません!」


「おー、そうかい!」


 おっ、諦めたか?


「でも、残念ながら僕は君には聞いていない! 僕が聞いているのは後ろの不幸ちゃんだよ! さぁ、答えを聞かせておくれぇ!」


 違った……一瞬でも、物分りの分かる奴と思った俺がバカだった。どうしようか、と俺が思っていたその時、今まで俺の後ろに隠れていたリネアが前に出て来た。そして、スゥと息を吸うと。


「お、お断りします!」


 と、言った。


「オー何でだい?」


「これは、クロウさんと作った魔法です。クロウさんが教えないと言うのであれば、私も教えません!」


「……と、言っていますが?」


 これで、教えてもらう筋合いはもうないはずだ。俺はそう思ったのだが、残念ながらこのナルシスト野郎には常識と言う言葉は無いようです。


「何を言っているのかい、君みたいに、魔法で他人に誤射してしまう様な人物に使われるなんて、魔法もきっと泣いているさ、それよりも魔法も出来て、なおかつイケメンの、この僕が使うべきだと思わないかい?」


「「そーだーそーだー!」」


「っつ! ……」


 顔を下に向け、歯を食いしばるリネア。言いたいことは山ほどあるだろう。だが、数の暴力&理不尽すぎる考えの前に、沈黙をしてしまった。


 ……もう……怒っていいよな?


「さぁ、おしえt―――」


「失せろ」


「ん? そこのボーイ何かいっt―――」


「失せろと言ったんだよ……」


 《威圧》をばら撒きながら、俺はリネアの肩をポンッと叩いた。


「大丈夫ですか?」


 俺がそう、声をかけると彼女の顔が上がった。顔を上げた彼女の目には涙が浮かんでおり、それでもまだ我慢しているのが分かった。


「おー、君には聞いていないって言っただろ!?」


 俺の威圧を受けているにも関わらず、余裕綽々のナルシスト野郎。後ろの女子達は流石に、気付いたのか俺の《威圧》を前にジリジリと後退をしている者もいた。

 だが、何人かは今だに、ナルシスト野郎の後ろで「はぁ? なに怒ってるの?」と言った顔で俺を見ていた。


 ……こいつら、良く平然としてられるな……。余程自身に満ち溢れているか、または威圧すらも感じられないアホなのか……まあ、そんな事はどうでもいいか。


「はぁ? そんな事知らねぇよ……。さて、答えろ……ここで病院送りにされるか、それとも尻尾を巻いて逃げるか……どっちかを選べ」


「何を言っているのかい? そんなの決まっているじゃないですか! ことわr―――」


 ナルシスト野郎が完全に言い終わる前に、俺は《倉庫》から【漆黒・改】を取り出しナルシスト野郎の首筋に刃を立てた。


「答えろ、先に言っておくがハッタリとかじゃないからな……」


 その時になって、ようやくナルシスト野郎の後ろにいた女子たちも退きだした。だが、肝心の張本人はぞ若干顔を引き攣らせながらも、未だに退く様子は無いようだ。


「オー、そんな事やっていいかい? 僕は沢山のフレンドがいるんだよ? 噂になるだろうね「不幸ちゃんと付き合っている、暴力男」ってね」


 チッ、面倒な事をやりやがって……俺はどうでもいいが、そんな事をやればリネアの立場も危ない。どうしようかと思い、思わずリネアの方をチラッと見た。

 まだ、半泣き状態だった彼女の視線と合った。視線を向けられても困るよな……と俺は思った。


 彼女は俺と目が合うと目を瞑った。一瞬「逃げた?」と思ったが、次の瞬間彼女が、そっと近づき俺の後ろに回りこむと、刀を握っていない反対側の手をそっと両手で握って来た。そして、俺だけに聞こえるかのように、ボソッと呟いた。


「……クロウさんに全てを託します……」


 その言葉を聞いた俺は、一瞬、思考が完全にストップしてしまった。思わず後ろに回った彼女を見る。彼女は、涙も拭かないまま俺に笑顔を見せ、そして何も言わずに頷いた。


 その顔を見たとき、俺の中で何かが吹っ切れた。


 もう、何も言わなかった。


 次の瞬間、俺の右足がナルシスト野郎の横腹を捉えていた。


「!?」


 捉えたと同時に、ミシッと言う感覚が足に伝わって来る。だが、特に気にすることもなく、俺はそのまま振りぬき、ナルシスト野郎を吹き飛ばした。


 ナルシスト野郎は吹き飛ばされるとそのまま、中庭の真ん中から校舎すれすれの場所にまで吹き飛んでいき、ツーバウンドほどしてようやく止まった。


「……失せろ。テメェの顔なんざ見たくもねぇよ……」


 吹き飛ばされて行ったナルシスト野郎のもとに女子達が駆けつける。女子達に支えられナルシスト野郎はよろよろと立ち上がると。


「ぼ、僕に歯向かった事を後悔するがいい! 覚えておくがよい!」


 と、捨て台詞を吐きながら、女子の肩を借りながら去って言った。逃げ際に何人かの女子が、中指を突き立てて来たが、すべて《威圧》で沈黙させた。



「「……」」



 先ほどまでの事が、まるでなかったかの様に中庭は静まり返っていた。


「……スイマセン……」


 俺はリネアに向きなおると真っ先に、頭を下げて言った。


「……こちらこそ……本当に何て言えばいいのか……巻き込んでしまって……」


「巻き込んだのはこちらの方です……すいません……どうしてもリネアさんがあんな事言われるのが許せなくて……」


「いえ……また……私のせいなのでしょう……」


「? どういう事ですか?」


 思わず顔を上げて問いかける。


「私……自分で言うのもなんですが、物凄く運が悪いのです……それも自分だけならまだしも、それが周囲にいる他人も巻き込んでしまうのです……木の下にいれば、上から枝が落ちてきて怪我をしたり、魔法の授業でも失敗したら周りの人に飛んでしまう……。いつもの事です……」


 ……それが、不幸と言われた理由か……。


「それで……友達もいなくて……でも、あの時クロウさんが助けてくれて……大好きな魔法の事も手伝ってもらえて、誤射をしても笑顔で許してくれて……うれしかった……」


 いつの間にか、彼女の目に再び涙が溢れていた。


「でも……結局……また巻き込んでしまって……本当にごめんなさい……私っていない方がいいn―――」


 その時、俺は彼女の頭にそっと手を乗せた。


「えっ……」


「そんな事を言わないでください……誰もいなくていい人なんかいる訳ないじゃないですか」


「でも……こんな私だから……親にも見捨てられて……誰も……誰も私の事なんて……必要と……し……な……い……」


 彼女はそこまで言うと我慢の限界だったのか、遂に顔を下げ両手で顔を隠してしまった。手の隙間から嗚咽が微かに聞こえて来る。


「必要としている人なら目の前にいるじゃないですか」


「……えっ?」


 リネアの顔が上がり、涙ですっかり残念になってしまっている顔が露になった。


「私は必要としていますよ」


 励ましでも嘘でも無い。俺が本当に思っている事を言った。彼女がいつも書いてくる魔法式には驚くばかりだ。彼女のお蔭でどれくらいの魔法が改良されて、新しく作られただろうか。

 こんな人を必要としないなんて間違っている。


「だから自分に必要ないなんて言わないで下さい」


 彼女の目が、俺をジーと見つめてくる。そして一言だけ言った。


「……ありがとう……」


 俺は、その言葉を聞くと、リネアをそっと手繰り寄せた。リネアは嫌がる素振りを一つもせずに、むしろ自分から俺の胸元に顔を沈めて来た。


「……泣いていい?」


 顔を埋めたままリネアが聞く。


「……ええ、好きなだけ」


 その後、しばらくの間彼女は静かに泣き続けていた。

 甘い! 自分で書いて感じておりましたが、口の中が砂糖で溢れかえっております。ブラックコーヒーをペットボトルで下さい!(まあ、私はブラックは飲めないのですが……)


 それにしても、書き始めた当初はハーレム要素なんて、ないだろうなぁと思っていたのですが、いつの間にかあちこちでフラグが乱立しまくっております。私はどこで道を間違えたのでしょうか(汗)

 まあ、これはこれでいいのですが、私が書くたびに悶える事以外は。


 PCは相変わらずですが、まあ……頑張っていきます。いつも応援・感想を書いてくださる皆様、本当にありがとうございます。m(_ _)m

 次回も頑張って書いていきます^^


 次回更新は12/17を予定しております。

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