第67話:羞恥心って大事だな
本日、2本目、行きます!
前回から若干の下ネタ系が入っていますが、オブラートに頑張って隠していますので、ご了承ください。(土下座)
「ふぅ……そろそろきついわ」
「塩くれ塩!」
「……あの、まだ続くのでしょうか?」
「普通、あのおっさんが最後まで、残るんだが、今年はシュラも頑張っているな」
「……いつから入っているのよ……」
セレナが、全員が聞きたかった事を代表して言ってくれた。
「多分、今日の早朝からじゃないか?」
「えっ!? もう昼よ!?」
「バカとしか言いようがありませんわ……」
「……まあ、やる気にはならないよね……」
「……アホ……」
「ちょっと、理解に苦しみますね……」
「あはは……」
全員が、苦笑いをするしかない。俺はむさ苦しいと思ってはいるが、日本にも寒中水泳とか、やる人がいるので、あんまり酷くは突っ込めないのが現実だ。
まぁ、俺も「何でそんなことするんや」と思っていますが。
シュラとおっさんのすぐ横に置かれている、塩がさっきからすごいスピードで無くなっているのだが……。間違っても真似をしないようにしないと……ってか、する気ないわ。
水? あの熱湯から飲んでいますよ。
どうしたものかと思い、群がっている群衆たちの方をチラリと見る。群衆の端には、顔を真っ赤っかにして、伸びきっている人が見える。おそらく、参加者だった者だろう。かなり無理をして、頑張っていたやつもいるのか、《火傷》を負っている人も、ちらほらと見受けられる。どんだけ我慢すりゃあそうなるんだよ……。少なくとも普通の人間では無理だ。魔力がある程度、耐熱の効果も持っているから出来る芸当であって、マジの生身の人間がやれば、半永久的な水ぶくれを起こしかねない。
「アレは間違いなく体に悪いよね……」
セレナが、呆れた顔で対決の様子を見ている。ちなみに、腰にはタオルを巻いているので、息子が見えることは多分ないだろう。いや、無いことを祈りたい。こんなところで赤の他人の息子なんて、見たくもない。
「悪いですね」
「悪いな」
「……うん……」
満場一致で、体に悪いことが決まりました。
と、ちょうどその時。
「ぬぉ! 我慢出来んわ!」
と、言いながらおっさんが熱湯風呂から飛び出した。しかもご丁寧にタオルを付けずに。
フラグ回収ですね。お疲れ様です。
特待生組の女子メンバーらは、一斉に顔を背けた。まあ仕方ないよな。俺も見たくねぇよ。「お巡りさーん、この人でーす」と言いたい。日本なら、確実にOUTだ。
……と、殆どの女性が顔を背けたが、一部例外もいた。
「……案外小さいわn (ゴスッ」
「言うなボケ」
「あい」
エリラだけは、平常運航でした。つーか、誰と見比べたんだよ。ちょっと聞いてみたかったが、色々な意味で、怖い回答が返ってきそうなのでやめて置こう。
ちなみに、この光景に一番耐性が無かったのが、意外とテリュールだった。見るんだったら一番見てそうなんだけどな。
地面に蹲って、「何も見ていない、何も見ていない、私は何も見ていない」と自己暗示を必死でかけている。意外と初心なんだなと思った。
遠くの方で、「よっしゃあ! 勝ったぜぇ! と熱湯風呂から飛び出したシュラが、勝利のVサインを片手に高々と宣言していた。そして、お約束の息子を隠していない。バカだ。観衆からも「隠せバカヤロー!」と言う声が聞こえてくる。
肝心の本人は、「あっ、やべっ」と言った顔をしていたが、特に恥ずかしがる事無く、普通にタオルを巻くと「これで、文句ねーか!」と言っている。ただ、微妙に下の部分が隠れていないのですが。
「どこがだよ!」と言われてるし。
ただ、どこからともなく「あら、良い体ね、うふっ食べたいわ」と言う低い声が聞こえてきた。
アレ オカシイナ キキ マチガエ ダヨネ?
その後、真っ赤っかになっている、おっさんの手から、優勝トロフィーが手渡され、「また来年も参加してくれよな!」「あたりめーだ!」と、むさ苦しい光景と握手を見て、SAN値がガリガリ削られまくった大会は、幕を降ろした。
……今後、この辺りには近づかない方がいいな。
俺は、心の中でそう決めました。
「……ねぇ、なんか俺に急に冷たくなってない?」
乗り込んだ、馬車の中で優勝トロフィーを片手に持っているシュラが、周りに問いかける。
「……考えろ……」
冷えた目つきでサヤが切り返した。他の面々に至っては、顔すらも合わせていない。シュラ君完全アウェイ状態です。
「? 俺なんか悪いことでもしたか? 出発前には終わったはずなんだが」
いや、そういう事じゃねぇよ。
「……今回は、俺も何も言えないわ」
「……スイマセン、シュラさん……僕もです」
同性のカイトとテリーも呆れた目でシュラを見る。
「……クr―――」
「右に同じです」
「「「……」」」
しばらく静まる、馬車内。辺りに馬の足音と車輪が地面を蹴る音だけが、響き渡っている。いつもは何も思う事は無いが、今は非常に助かっている。無音とか一番嫌だからな。日本生まれの俺は、こんな風景を何度も経験しているから正直、この音は有りがたかった。
「俺が何をしたんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
シュラの絶叫が、青い空の元で虚しく聴こえていた。
結局、シュラのアウェイ状態は、学園に到着する直前まで続きました。




