第63話:猫耳フサフサ
翌朝、朝日が顔を出し始めたころ。俺らは野営地に戻って来ていた。結局、昨晩は一睡もしておらず、ちょっと肌寒い夜空の元でエリラといちゃついていました。前の俺から見てみれば「死ね! リア充共が!」と絶対言っていたでしょう。
穴があったら入りたいです。後で思い直したら、超が付くぐらい恥ずかしいです。
で、エリラはと言うと……
「……エリラ……そろそろ立てないのか?」
「……無理……」
なんか、今日、戻ろうとしたときに立ち上がれなくなった模様。変なことはしていない。ただ、完全に気が抜けてしまっただけだと思う。
仕方ないので、俺が背負って戻ることに。
「……クロの背中、温かい……」
……俺って本当に体温高いんだな……。そういえば、こっちの世界も、これから寒くなってくる時期だったよな。……戻ったら冬用の服でも作るか。
「……なあ、エリラ……」
「……」
「……? エリラ?」
「……zzzzzzz……」
「……」
こ、こいつ寝やがった! Σ(゜Д゜)
轟沈したエリラを背負って、野営地に戻ってきた俺。まだ、起きていない人もいるが、見張り組は全員なぜか起きていた。
「あっ、夜中に出て行ってから、どこ行っていたの?」
「……気になる……」
「若い二人で、夜に出かける……気になりますわ」
いや、あんたも若いだろうが。
「ちょっと夜の空気を吸いに、それで寝てしまっていたのですよ」
ここは、適当に嘘でも言って誤魔化そう。正直に言ったら、絶対、深入りしてくると思うから。
「ふ~ん、まあ何もなかったいいわね」
……ほっ
「あっ、それからさっき思い出したのですが……ハヤテってどうなったんですか?」
「……逃げられた……」
サヤが答えてくれた。
「クロウが成長していた方に気を取られてて忘れていたわねー(棒」
逃げられたか……。というか、君たちハヤテの扱い酷くない? 一応、今回の事件の実行者だよね?
……見つけたら一発殴っておこう。もちろん全力で。
その後、何の問題も起きずに、1週間後、無事エルシオンに戻りました。
「な、何に!? あの大きい壁は!?」
俺たちはエルシオンの目の前まで来ていた。テリュールは、初めて見る町を囲っている城壁に目を奪われていた。ちなみに、何も問題は起きなかったが、時間はかかった。テリュールが見るもの見るものすべてに、興味を示して、一々説明をしたりしたからだ。
さて、今回もエルシオンに一泊する予定だ。まだ陽は登り始めたばかりなので、このまま通過して、次の町に行くことは可能なのだが、
「……モフモフ……いいでしょ……」
と言う、サヤの一言で今回は、1日だけ、自由行動という形で泊まる事に。
「モフモフ~♪」
「……♪」
ダメだ、この二人もうあの耳の事しか考えていない……。俺は心の中で合掌した。
ローゼも俺たちと来るようだ。「どこにも用事はありませんし、少し疲れを取りたいですわ」とのこと。確かに、あいつら元気だよな……あんな、仕事の後なのに。
んで、シュラはというと、「熱湯我慢大会って言うのがあるらしいから行って来る! 今日は帰らないぜ!」と、どこから仕入れてきた情報かは知らないが、どこかに行った。
というか、この町にそれなりにいたけど、そんな大会があったんだな……。
テリーとネリーはと言うと「少し自分たちについて考えて来ます。このままでいいのか、それとも……、明日には合流をします」と言って、何処かへ行ってしまった。
今回、彼らには苦い経験になっただろうな……、俺も何か手伝える事があったら手伝う事にしよう。
カイトも「俺はパス。一人で泊まるぜ」と行って一人で宿を探しに行った。うーん、もう俺の中では7年前の話だが、確かあいつ、獣族を見て嫌がっていたよな? 何か嫌な経験でもあるのだろうか? もし嫌な事だったら聞くのもアレだから、聞くのはやめておこう。
さて、街中に入ってもテリュールの好奇心魂は尽きることを知らず、建物の説明や、店の商品の説明。まるで子供のようだった。まあ、彼女からしてみればすべてが新しく、新鮮な光景だから仕方がないかもしれないが……もう少し22歳らしい行動をして欲しい。
セレナ達は早くアレ(猫耳)を触りたいみたいで、俺の家に着くごとには、手が怪しい動き方をしていた。えっ? どんな動き方か? そりゃあ……危ない方向にと言う意味で。
ようやく俺の家に辿り着いたのは、陽が既に沈みかける頃だった。
久しぶりに見る自分の家。この世界での時間では大した日数は経っていないが、俺の中では、もう何年も前に出て行ったきりなので、非常に懐かしく感じている。
今の俺を見て、どう思うだろうな……、絶対驚かれるのは目に見えているが、他にもどんな反応があるのか気になるところだ。
久しぶりに手をかけた家のドアノブ。少しだけ緊張するな。
「ただいm―――」
「クロウお兄ちゃんおかえりーーーー」
「ドンッ)あばっ!?」
突如、俺の視界は左へと傾き、体がくの字に曲がる。どうやら横腹に何かが突っ込んで来たようだ。まあ、犯人は分かっていたので、ワザとノーガードだったのだが、思ったよりか強かった。しかも、クリーンヒットするというパターン。いわゆる入ったというやつだ。そのまま地面に横向きに倒れる俺。
「アレ?」
俺の体の上で、フェイがキョトンとしている。
「間違えたですか?」
「イテテテ……いや、間違えていないよ、フェイ」
「? クロウお兄ちゃんの声ですけど……大きくなりました?」
意外と鋭いな。だいぶ声変りをしているのだが、気づくとは。俺の予想ではもう少し、混乱すると思っていたのだが。
「まっ、そういうことだよ、ほら《風術》」
俺が魔法を唱えると、俺の上に乗っていたフェイが、フワッと浮かび上がる。
「おお、やっぱりクロウお兄ちゃんです」
俺はヨッと立ち上がり、フェイを降ろしてあげると、フェイの頭をなでなでした。猫耳のフサフサの感触が手から伝わってくる。フェイは嬉しいのか、耳がピクピクしている。
そんな、光景を見て唖然としているのが、大人たちだ。「えっ、なにこれ?」状態である。あの時同様、休憩中だったのか、テーブルを囲んで、座っており、テーブルには
「ああ、それじゃあ説明を―――」
と、俺が言いかけた時。
「ひゃう!?」
獣族の一人が、いきなり気が抜けるような声を上げ、椅子からずり落ちて行った。もしや、と思い後ろを振り向いてみると、そこにいたのはエリラ一人だけであった。
椅子からずり落ちた人は、ここからでは見えないが、耳を触られて悶えている光景が、目に浮かぶ。
「や、やめてくだひゃ、あひゃ、ひゃい、だ、だめですぅ~~」
近寄ってみると、俺が予想していた通り、サヤ、セレナ、テリュールが一人の獣族を囲んで一斉に触っていた。
しかも、偶然か、それともワザとか被害に遭っていたのは、あの時の獣族だった。
我慢していた反動なのか、とにかく触りまくるサヤとセレナ。テリュールは「すごい! これ本物!?」と生まれて初めて見る、獣族に興味津々だ。
「……ゴメン、今度どこかで埋め合わせをするから、頑張って」
「そ、そんな、にゃはぁぁぁ、ひゃう!? も、もうひゃめぇぇぇぇぇぇ~~~」
……エロい発言だ……。
その後、あの時と同じようにずりずりと部屋に連れ去られて行った。俺は、残りの獣族に事情説明をして、戻ることにした。
なんか……色々と疲れた。
その夜
「……」
俺は家の屋根で仰向けに寝っ転がり、空を見つめていた。ただ単にボケっとしている訳ではない。待っているのだ。じゃないと、あのエリラの抱き締めから、態々抜け出す意味が分からないからな。
しばらく、して俺が待っていた者が降りてくる。
「久しぶr……!?」
白色美人という言葉がピッタリと合いそうな美しい女性は、俺の姿を見た瞬間、ギョッとしていた。
「……クロウですよね?」
「……ああ、やっぱり見ていなかったのか?」
「はい、私も常に見ている訳ではありませんよ。私にも仕事がありますので」
「まあ、その辺も一緒に説明するよ」
「はい、お願いしますね」
創生者である、セラが俺の隣にチョコンと座った。そして、まず俺が一番気になっていることから話を切り出した。
「……セラさんって名前は襲名制なのですか?」
「……えっ?」
セラと言う、女性は唐突な質問にポカンとした。
「いや、実は……」
そういうと、俺はセラさんに、俺が成長した理由と、あちらの世界で何を見てきたかを説明し始めた。
繋ぎ回みたいな内容になってしまいましたね。タイトルと内容が微妙に合っていないと思っています。大丈夫ですか?
さて、第一章も残すところあと少しとなりました。と言っても、あと何話で終わるかは未定なのですが……。
それと、PCは一応直ったのは直ったのですが、何故か起動するときに、電源を入れて、ある程度時間が経っても動かないなら、強制シャットダウン、そしてまたつけるという動作を3回ほど繰り返さないと、起動しないようになりました。
一応、動いているからいいかと言った感じです。まあ直ったことは直ったので、時間があるときにコメ返しをしたいと思います。書いてくださっている人に全員必ず、何かを返すようにしているのですが、見落としていたらスイマセン。
いつも応援してくださる皆様。本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
m(_ _)m
ところで、話が変わりますが、今現在、本編とは別にクリスマスと正月用に特別編を書こうかなと思っていますが、どこに載せようかなと思っております。私の活動報告の処で投稿するべきか、それともこちらで書いて出すべきか悩み中です。
ちなみに前、特別編を書いたのは活動報告のところでした。
もし、よろしければ皆様のご意見を聞かせてもらえますでしょうか? よろしくお願いします。




