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第61話:氷の人形

「クロ~説明して~」


エリラの顔は満面の笑顔が浮かんでいる。だが、巻き付いている俺の腕には爪を立てていおり、ギシッと強く握っている。痛い。顔と行動が合ってない!


「………テリュールさんが言う通りだよ………暖房器具感覚で冬場に使われた。あっちの世界、何故か暖房器具が小さいのしか無い上に燃料の薪を作るのも一苦労だったからほとんど使っていなかったんだよ」


「それは大変だったわね、お姉さんが慰めてあげるわよ~」


「………一応言っておくけど、今、同じ年だからな?」


「………えっ?」



………いや、さっき事情を説明していたときに一緒に説明しただろ………


「一応、日数で見たらエリラの方が先になるから一応間違いではないけどな」


俺 → 15とちょっと

エリラ → もうすぐ16だけど一応15。


「………そ、そうなの………ね………」


そう言うと、エリラは急に大人しくなった。なんかモジモジしているように見えたが、気のせいだろうか?


「ねぇねぇ、クロウ、魔法って言うのを見せて見せて!」


テリュールはもう他の方に興味が行ってるようだ。


「いいけど何がいいかな………そうだ、久しぶりにやってみるか」


意識を統一させる。この感覚も懐かしいな。上手く出来るといいのだが………。


団子を作るかのように手を合わせる。辺りに一瞬冷たい冷気が流れる。

俺は手の内で思い通りの形を仕上げて行く。


「………よし、どうだ?」


手のひらを見てみる。

そこにはテリュールの姿を形とった氷の人形が出来上がっていた。


「うわぁ………すごい………触ってもいい?」


目をキラキラさせているテリュールは、既に氷の人形を触っていた。本当に彼女は新しい物には目が無いんだから………。


「冷たい! 何これ? もの凄く冷たいけど!?」


「あっ、氷も初めてか。それは氷って言って、水が極度に冷えると出来るものなんだ。それをくり貫いて作っているんだ。前にエリラにも同じのを作ったことがあるんだけど、もう大分前(俺の感覚だと)に作ったから出来るか心配だったけど、よかった」


「冷たい! すごい! 冷たい! すごい!」


………もう既に聞いてないようだ。


「私にも作って!」


「私にもお願い出来ますか?」


様子を見ていたセレナとローゼが詰め寄ってくる。俺はいいよと言って、セレナとローゼを形とった氷の人形を作った。

二人はわあぁい、と言いながら氷の人形を受け取り自分の手のひらで観賞している。


その時、背中をつんつんと、つつかれた感触があった。振り返ってみると、サヤがいた。顔はいつも通りの無表情だったが、目が、ちょっと違った。

なんと言うか物欲しそうな目だ。綺麗な黒色の瞳でジーと俺の方を見つめてくる。


「………作って欲しいの?」


「………」(コクコク)


無言で訴える彼女。正直かわいい。ちょっとナデナデしたいと思ったのだが、下手に行動したらいつかのシュラ見たいに撃沈されかねないのでやめておこう。(第44話参照)


同じように、氷の人形を作った。


渡されたとき、彼女は「………ありがとう」と一見いつも通りかと思ったが、自分の人形を見ているときは、いつもの顔ではなく、なんと言うか………珍しい物を見る子供みたいだった。「おー」とか言いながら見ていたら、完璧に子供に見えそうだ。


「あっ、そういえばこれ氷で作っているけど、どれくらい持つの?」


あっ、確かに。今は俺が魔力で維持しているから溶ける心配はないけど、流石に、このままという訳にはいかない。


「一応、私が魔力を送り続けている間は、問題ありませんが、補給をやめたら………5時間ぐらいかと」


一応、溶けにくい設定はしているんだけど、完全と言うのは無理だ。


「………残念………」


それを聞いたサヤが、肩をすくめていた。顔はいわゆるショボンとした顔をしており、残念だと思っているのがすぐに分かった。


※ (´・ω・`) ← こんな感じ。


………今度はクリスタルとかで作るか。ガラスは作り方分からないし………。


「でも、本当に凄いよね………氷を扱えるだけでも凄いのにこんな繊細な細工も出来るなんて………」


「クロウがドンドン遠い人になっている………」


セレナは素直に感心し、シュラが空を見上げながら呟いていた。

このまましばらく嘆くのかなと思っていたが、シュラは思い出したかのように、視線を自分の後ろに向けた。


「テリー? ネリー?」


「………」


「おい」


「!? は、はい!」


「………初めての依頼がアレなら仕方ないさ、まだこれからだよ、だから気落ちするな」


「「………はい」」


そういえば、俺が戻ってから一度もしゃべっていなかったな。確かに初めてでアレはトラウマものだよな………ランク的にもAの上位ぐらいはあったからな。


若干、場の空気が悪くなる。氷の人形を観賞していたセレナたちも、どうしようかと考えていた。

ただ、氷の人形はもちろん冷たいので、ずっと持つことが出来ずに彼女らの手のひらでお手玉状態になっている。

ちょっと笑いたくなってしまう。不謹慎だな俺。


ただ、俺以外にも不謹慎な奴がいた。


「クロウ~もっと見せて!」


テリュールだ。さっきの氷に夢中になって、こちらの様子には気付いていないようだ。


「わ、私にも作って」


今度はエリラだ。どうやら彼女は、少しでも明るくしようとしているようだ。

ただ、いつもの元気は妙に無いように感じたが。


「そうだな。テリーさんとネリーさんの分も作りますよ?」


「え………ええ、お願いします」


テリーも少し場の空気を読んだのか話に乗ってきた。それに釣られネリーも乗った。


結果的に場の空気はすぐにいつものように戻った。テリーたちは無理をして、明るく振る舞っているのかもしれないが、今それを言うのは場違いだろう。


ただ………これで立ち直ってくれるとは思わないな………














その夜、俺らはチェルストからおよそ10キロ離れた地点で野営をすることになった。

好奇心旺盛なテリュールのお陰で特に、空気が悪くなると言うことは起きず。無事就寝となった。

今日の見張りはセレナ、サヤ、ローゼだ。俺とエリラはおなじテントで、眠ることに。

テントは2人用×5個。ちょうどローゼは一人だったので、テリュールと一緒に寝ることになっていた。


さて、久々にエリラと二人っきりになったのだが………なんと言うか………さっきから彼女の行動が妙に不自然に感じた。

なんと言うか………俺を避けているように感じた。歩いているときは、ずっと俺に寄り添って歩いていたのだが、言葉が少なかったったように感じた。


そして、なんと言うことでしょう。あのエリラが、俺を抱き枕にしないではありませんか。そして、しない時に起きる寝相の悪さがなんと出ていません。


………と言うか起きてますね彼女。

彼女は狭いテントの中で、俺に背を向けて端で横になっている。その為、俺は少し広く使えるではありませんか。


………いや、そんなこはどうでもいいや。


どうしたんだろう?

試しに背なかをつんとしてみると、ビクッとして、体が一瞬浮いた。


「………エリラ………起きているんだろ?」


「………うん………」


彼女はこちらを向くことなく答える。


「どうしたんだ? いつもの元気が無かったけど」


「別に………何も無いわ」


「ダウト」


「うっ………」


「それくらい分かるぞ、さてどうしたんだ?」


「………少し外に行かない?」


「………? いいけど………」


俺らはテントから出て、近くの平原に出て行くことになった。

いつもコメントを書いてくださる皆様。本当にありがとうございます。

コメントは返せていませんが、読んではいますので、書いて下さると嬉しいです。


………PCはまだです。スマホ打ち、疲れました………(´・ω・`)


次回更新日は11/27を予定しております。

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