第55話:v.s.テリュール
俺がこの世界に来てから7年の月日が流れた。
俺は今年で、15歳。体つきも誰かさんに鍛えられたおかげで、丈夫に育っています。腹筋なんかもう6分割してしまっていますよ。
本当は早く戻る方法を探したかった。だけどあの木を斬り倒すまではと、心を鬼にしてやり続けた。
道中は何があるか本当に分からない。スキル、魔法をすべて封印されている今,俺が頼れるのは、高いステータスだけだ。
だから、7年間、それを活かす剣術と体術をひたすら磨き続けた。
そして、俺は目標である巨木を斬り倒せた。
テリュールの親父はまだとか言ったけど、悪いがこれ以上は待てない。
今まで、目標によって止められていたようなもんだ。
だから、俺は決めていた。
だけど
「あ、明日!?」
「ええ、あれを斬り倒したらと決めていました」
「いきなり過ぎない! 確かに私はお父さんの決めた事には納得していないけど……」
「……ごめんなさい。でも、帰らないといけないんです。あちらの世界で、自分の帰りを待ち続けている人たちがいるのです」
もちろん例え戻っても、もう誰かに連れて行かれたかもしれない。そもそも向こうに戻れる保証も無い。
それでも、戻らないと行けない。いや、戻りたい。と言った方が良いかもしれない。
俺がそういうとテリュールは、少し寂しそうな顔をする。
他の世界からやって来た俺の話を一番よく聞いていたのはテリュールだった。俺と初めて会った時も元気な子と言うイメージがあったけど、俺の話を聞いているときはそれを特に感じさせていた。
目をキラキラさせて聞いていたから、俺も話すのが楽しかったな。
テリュールは俺の胸元を掴んでいた手を離す。それに合わせて俺もまだ、重い体を起こす。
しばらくの間、流れる沈黙。どれくらい時間が空いたか分からなかった。先に口を開いたのはテリュールだった。
「……ねぇ、あっちに戻ったら……もう戻ってこれないの?」
「……戻れる可能性はああります……」
「! ……本当?」
「でも……もし、それをやるとするなら……何百、何千と言う生き物を殺さないと行けない可能性が高いのです」
もし、ハヤテの魔法をそのまんまやろうとするならだが。創造魔法で作れるかもしれないが、保証は無い。
確実に出来る方法がない以上、こう言うしかなかった。
「……ごめん……」
彼女の寂しそうな顔を見たら、自然と謝っていた。
「いえ、私こそ、ごめんなさい……」
すると、彼女は立ち上がり部屋の隅にあった木刀の方を手に取った。
「……お願い、私と勝負してくれない?」
唐突だな……。
なんでだ? と俺は聞こうと思ったが、彼女に悪い事をしたと思っていたので、せめても、と思い何も聞かずに受ける事にした。
「いいよ、今から?」
「もちろん」
彼女も親の影響を受けてかかなり剣の扱いは出来る方だ。スキルレベル的には6~7ぐらいはあると思う。最初の頃は良く負けてた。今でも気を引き締めてかからないと冷や冷やする場面は多々ある。
道場にはここに通う生徒が練習をしていた。数は十数人ぐらい。さすがに今は負けることはないが、それでもかなりの実力者揃いだ。あの先生は性格的にはあんまり好きじゃないけど、実力は本物だからな。
生徒たちは、俺たちが勝負をしたいと言うと、快く場所を貸してくれた。と、同時に観戦者になりました。
「時間は無制限。一本勝負です。両者準備はよろしいですか?」
俺とテリュールは頷く。
「では……はじめ!」
両者一気に間合いをつめ、道場の中央で剣と剣がぶつかりあう。すぐに剣を戻しもう一回ぶつかり合う。
ぐっと、そのまま力を入れ、抑え込みにかかるが、テリュールは木剣の側面を合わせ、そのまま後ろへと流す。
俺はそのまま、テリュールの後ろ側へと転がり、二転三転と転がり、間を開ける。案の定テリュールが、そのまま俺の方を見ないで剣を振って来た。だが、その剣は虚しく床にぶつかり、剣が一回だけ飛び跳ねた。
俺は転がる勢いを使い、中腰の体勢にすぐになると、テリュールの剣を叩き落とそうと、前へ出る。
だが、その時
「おい、お前ら」
その声にピタッと二人の動きを止め―――
―――ゴン!
「ぶっ!」
衝撃と共に、俺の体がエビ反りとなりお腹から地面に崩れ落ちる。鼻からは赤い水がたらたらと出る。
それと同時に俺の頭にも同じような水が滴り落ちる。
そして、俺の頭の上にはテリュールが持っていた木刀が―――。
「……えっ」
テリュールは何が起きたか分かっていないのか、ポケッとしていた。周りにいた生徒も固まっている。
「……せめて軌道を逸らしてくださいよ……」
俺は自分の鼻を押さえながら立ち上がる。声に反応したのは良いが、テリュールは剣の勢いを止めずにそのまま俺の、鼻にクリーンヒットしたのだ。
ちなみに、俺は寸止めだ。ちょっと手が痛かったけど止めたぞ。
「ゴゴゴゴゴメンナサイ! 大丈夫!?」
……なんで俺の周囲の女性は事の事態に気づくのが遅いんだよ……。
「血が出てるけど、取りあえず大丈夫です。しばらくしていたら止まるでしょ……それより、なんですか?」
この事態を招いた声の主に問いかける。声の主は鬼の形相でこちらを睨んでいる。
「さっきまで寝込んでいた輩がやけに元気だな。明日もまた訓練する身だぞ?」
ああ、もうこんな事を言われるためだけに、俺は、鼻を犠牲にしたのかよ……。この親父め……
何故か、鬼の形相で睨んで来るテリュールの親父に対して真っ直ぐと体を向けると。(血はまだ出ています)
「その問題は、ありませんよ」
「何?」
「明日にはここを出ますから、今までありがとうございました」
俺が言い終わるかどうか分からなかったが、突如の殺気が、俺を襲った。そして、俺の眼球の前に突きつけられる木剣。
ねぇ……なんで、こんなに血早いの?
「言ったじゃろ、お主見たいな未熟者が外に出るのは早すぎると」
ちなみに、この人には俺のステータスの事は言ってない、俺が身に付けたかったのは技術だから、あんな力は出さないし(無論、あの巨木にも使っていないからね? 使ったら木刀折れるからな……)
まあ、「あって言って無かったや」と思ったけどスルーしていただけなんだけど。
「確かにそう言われました。ですが、私にもやらなければならない事があります」
俺は持っていた剣を、先生と同じように付きつける。
「ですから、それは私との一戦で決めてもらいませんか?」
「……いいだろう、その慢心をしている精神を、すぐに鍛えなおしてやる」
こうして、俺と先生の勝負が始まる事となった。
今回、俺は今まで通り、ステータスには極力頼らない方針で行こうと思う。ステータス使って、勝っても嬉しくも何とも無いし、なにより本当に強くなったのか分からないからな。
俺は生徒の一人が持ってきてくれたタオル見たいなので顔を拭き、先生が立っている方へと向かっていく。
あんな事が起きるとは夢にも思わずに。
「早く話進めろ」と思っている方々本当にスイマセン。実はこの辺りの話や描写にすごい悩んでいます。
頭の中にはアニメ見たいに動いているのが想像出来るのに、いざ書くとなると難しいと、いつも思います。
描写は他の人の作品を見て勉強します。 ガンバリマス
思ったより帰還編が長引きそうです(ドウシヨウ……)




