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第50話:辿り着いた場所は

 ※11/3 誤字を一部修正しました。

 ※11/3 後書きに加筆しました。

「う、う~ん……」


 頭が痛い。

 目覚めてすぐに感じたのは、それだった。ガンガンとする痛みを感じながら、俺は眼を覚ました。


「……ここは?」


 目を開けると、雲一つない青空が広がっていた。快晴とはこのような空の事を言うのだろうと俺は思った。しばらくボケッとしていると、だんだん記憶が鮮明になってくる。


 えっと……俺は何をしていたんだっけ? 確か依頼を受けて、それから都市に行って……それから……


「……!? そ、そうだ! みんなは!?」


 急に思い出したかのようにガバッと体を起こし、辺りを見渡す。


 辺りは木がポツポツと生えており、近くに森が見えた。自分が倒れていた周囲は高い木などは見られる草が広がっている。

 どうやらここは、草原と森の境界辺りらしい。


「くそっ、どうなったんだよ……」


 分かることは、あの妙な魔方陣により変な所に飛ばされたことぐらいか……。


 それにしても、あの魔法……確か【代償魔法】とか言っていたな。セラからそんな魔法の事は一言も聞いていなかったぞ。まあセラも必要ない魔法は教えなかったのかもしれない。


 よっこらしょと、クロウは立ち上がり、さてどうやって戻るかと考える。


「ここが大陸のどこか分からないから、空を飛ぶのはちょっと非効率だな……。そうなると、近くに町があれば、そこから情報を聞き出すことが出来るな……」


 平原があるから、もしかしたらこの近辺に村でもあるのかもしれない。


「じゃあ、早速町でも―――」


 と、その時、森の方から「キャァ!」と言う女の子の悲鳴が聞こえた。咄嗟にクロウは森の方へと走り出す。


 スキル《探索》を使うまでも無く、すぐに見つけることが出来た。


 少女が一人、熊見たいな獣に襲われていた。熊見たいな動物は見た目こそは熊に近かったが、体長は数メートルぐらいあり、爪は鋭くまるで爪一本一本が刀見たいだ。


 俺は、一発で仕留めようと《雷撃(コール・ライトニング)》を発動しようと準備をする。


「《雷撃(コール・ライトニング)》」


 だが、何も起きない。


「あ、あれ?」


 日本の街中で言うならば傍から見れば、「何アレ? 中二病?」と言われそうな光景だろう。


 なんで発動できないんだ? と思ったが熊は一歩一歩少女に近づいて来る。逃げろよと言いたくなるが、どうやら腰が抜けてしまっているようだ。少女は「あわわわわ……」と言いながら後ろにずり下がっている。


「くそっ、何で発動出来ないんだよ」


 だが、考えている暇は無い。熊モドキはノッソリと二本脚で立ち上がると、刀みたいな爪が生えた腕を高々と挙げ、今にも振り下ろしそうだった。

 武器を出す暇は無い。俺は持てる限りの全力疾走で走り出す。


 そして、熊モドキが今まさに爪を振り下ろさんとしたとき、間一髪で俺は少女と熊の間に割り込むことに成功した。

 熊の振り下ろした腕を、俺はご自慢のステータスに物を言わせた方法で無理やり右手で受け止める。爪が長いせいで多少、顔を切ったが問題ない。


「ぐっ……こいつ、かなり力があるぞ……」


 俺は本気と言う訳ではないが、それでも中々のパワーだ。あと、少しでも気を抜いたら押し切られそうな程の力だ。


「チッ……大丈夫ですか?」


 俺はすぐ自分の後ろにいる少女に振り向かずに声を掛ける。


「え、あ、はい」


「良かった……じゃあ……」


 グッと全身に力を入れると、熊モドキの横っ腹に蹴りを食らわせる。俺の攻撃にバランスを崩した熊モドキの力が一瞬だけ緩くなる。

 その隙に熊モドキと鍔迫り合いをしている右腕で熊モドキの左腕の肘辺りを掴み、そのまま俺の方へ引き寄せる。バランスを崩していたので、簡単に引き寄せることが出来た。

 そして、開いている反対の手で、熊モドキの鳩尾へ強烈な左ストレートを繰り出す。熊モドキはそのまま地面に背中から叩き付けられた。俺の鳩尾への一撃が効いたのか、倒れたままピクッピクッと痙攣をするだけで立ち上がる気配は感じられなかった。


「……ふう、何とか上手くいったか」


 それにしてもどういうことだ? 魔法が使えなかった事なんて、この世に生まれてから一度も体験したことなんてない。魔力が空っぽになっているなら別だが、今は、魔力が空っぽになったときの怠慢感などは、感じない。

 俺が頬に負った傷も、治癒魔法で治そうとするのだが、全然うまくいかない。まるで前世の俺の世界みたいだ。


「あの……」


 声を掛けられて、俺は現実に戻った。声を掛けたのは、先ほど襲われて腰を抜かしていた少女だ。見た感じ年齢は12~15ほど。前の世界のリアルではまず見たことなかったツインテールに白色の髪。と言っても歳を取った時に出来る白髪ではない。白色の髪には艶を感じ、綺麗と言う言葉が当てはまる。服装は、もう見慣れた市民たちが着るような服だ。この服装を見る限り、少なくとも過去に戻ったとかそんな訳じゃないようだ。

 幼さをまだ少し感じさせる顔に、ツインテールの白髪……少なくとも日本(あっち)でお眼にかかる事は、まずないだろうな。


「助けてくれて、ありがとう。私はテリュールっていうの。あなたこの近辺では見かけない顔だよね?」


「え、えーと、僕はクロウって言います。実はちょっとした迷子になってしまって……」


「迷子? 一体どこから来たの?」


「エルシオンって言う街からなのですが……」


 もしかしたら、知っているかもしれないと、僅かに期待はしたのだが


「エルシオン……? 聞いたことも無い街……」


 知らないか……。となると少なくともここはアルダスマン国では無いみたいだな。いや……もしかしたら、この子が知らないだけなのかもしれない。


「道に迷ったのなら、村に来る? 長老ならすべての村の道順を知っているから」


 長老スゲー。俺は素直に感心した。前に一度だけアルマスダン国とその周辺の街道や街の名前が載った地図を見たが、正直、小学校の時に見た地図帳と張り合えるぐらいのごちゃごちゃ度だった。


 まあ、この近辺に道や街が少ないだけかもしれないが。


「付いて来て、お礼に案内してあげる!」


「それは、助かります。ありがとうございます」


「いいの、いいの、私を助けてくれたんだから気にしないで」


 こうして、俺はテリュールが住んでいる村に案内される事となった。










「着いたよ~、ここが私の村だよ」


 テリュールが案内してくれた街……いや、村は昔の日本の村を連想させた。木材で造られた家。整地がされているだけで、舗装など何もしていない土の道。

 一瞬、江戸時代にタイムスリップしてしまったのでは、と思ってしまった。もっとも、村の人たちが着ている服が服なので、そんな思いは一瞬で無くなるが。


 その中で一際大きい建物に俺は案内された。大きさとしてはエルシオンのギルドと同じくらいかな? 横幅こそ、数十メートルぐらいはありそうだが、一階建てなのだ。


「長老様~ 入ってよろしいですか~?」


 と、言いながら建物の中に入っていく、テリュール。おいおい、まだいいよとか何も言っていないぞ……。

 俺も呆然と立っているのもあれなので、中に入って行く。家の外観こそは、昔の日本の家見たいな造りだが、廊下には絨毯(土足で入れる模様。この世界では土足は当たり前)が敷かれており、装飾もゴテゴテな造りばかりで、日本に住んでいた俺からしてみれば、外見と内見が合って無いとツッコミを入れたくなる。


 俺の考えを余所にテリュールは家の一番奥ある、部屋のドア(引き戸)の前まで来ると、「はいりますよ~」と言いながら開けていった。言うのと開けるのが一緒になってると俺は心の中でつっこみながら、部屋の入口まで行く。


「……テリュールよ……何度も言ってるが私が返事をしてから入りなさい」


 デスヨネー。部屋の中には、頭が禿げては、いるが髭がめっちゃ立派な初老のおじさんがソファーに座って、こちらを見ていた。

 仙人だ……完全に仙人だ……。


 その仙人おじさんは、俺を一目見ると、何やら急に険しい目つきになった。


「……お主……封印者か……」


 封印者?


「ふういんしゃ? 長老、なんですかそれは?」


「テリュールは知らないでもよい……お主……名前は?」


「クロウです」


「クロウか……付いて来なさい」


 言われるがまま、俺は付いていくことに。テリュールは来るなと長老に言われ渋々引き下がっていた。


 封印者……どういうことだ? ハヤテ(あのやろう)が使った《異転封印》と何か関わりがあるのか? 俺は自分なりの推理を頭の中でしながら長老の後を付いていく。長老が案内してくれた部屋は先程の部屋よりも大きな部屋だった。と、言うか図書館だ。部屋一面に広がる書籍はどこの図書館ですか?

 と聞きたい。しかし、部屋の壁一面に本棚が並んでいるので、部屋は暗かった。蝋燭で灯りを灯すが、逆に、そのせいで部屋がより一層不気味に見える。肝試しですか? それとも怪談話でもやるのですか? と聞きたい。

 どう考えても、本を読むには適さないような部屋だ。


 中央には本を読むためにあるのだろう、小さな木の椅子が3つほどある。そのうちの二つに俺と長老は座った。

 

「さて……封印者よ……」


「その前に……ここはどこですか?」


 長老は、そこからかと呟くと


「ここは、【チェルスト】の村じゃ」


 と、言った。

 その名前を初めて聞いたとき、俺には何が何やらサッパリと分からなかった。

 と言う訳で、この小説も無事50回目を迎えることが出来ました。始めた頃は30話位が良い所かなと思っていましたが、次から次へとやりたいことが出てきて、こんな所まで来ちゃいました。

 でも、まだまだ全然書き足りないのが現実です。これからもエンジン全開で突き進んでい行きたいと思いますので、出来れば応援して頂けると嬉しいです^^


 ※アドバイス、感想などありましたら気軽にどうぞ。

 ※誤字脱字などがありましたら報告よろしくお願いします。

 ※なお、余に酷い誹謗中傷的な発言をする方々はコメントをお控えください。


 感想や報告いつもありがとうございます。


【大幅加筆修正報告】

・第5話

 ・誤字修正を行いました。物語に変化はありません。


・第6話

 ・《無詠唱》を《詠唱短縮》に変更しました。

 ・誤字修正を行いました。


・第7話~第10話

 ・誤字脱字を修正しました。

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