第49話:乱戦・後編
まさか、まさかの連続投稿。本日2本目です。同じ日に投稿するなら、分けなければよかったと思っていますが、後悔はしていません(泣)
※11/1 誤字を一部修正しました。
※11/2 誤字を一部修正しました。
「中々やりますね」
クロウ達と魔物の乱戦を眺めながら、ほくそ笑むハヤテ。
「もっとやってください、せっかくこの近辺の魔物達をすべてかき集めたのですからね……クックックッ」
「【炎龍型】《炎牢》!」
クロウの剣からまるで、津波の様な炎が飛び出し魔物たちを襲う。だが、その炎は魔物を焼き殺すことなく、魔物たちを巻き込んだ炎は、檻の形となり、炎に触れたすべての魔物を閉じ込めてしまった。
「【炎龍型】《炎封》!」
クロウの声と共に、炎の檻の中が一瞬光りだしたかと思うと、檻で囲まれた地面と炎の天井から凄まじい爆音と熱風が発生し、中にいた魔物たちは、その熱に耐えれずに恨みの声と共に消え失せ、土へと還って行った。そして、魔物がいた炎の檻は、何事も無かったかのように消滅し、跡形も残らなかった。
クロウは、炎が消えたのを確認すると、開戦からずっと眺めているだけのハヤテを睨みつけた。
ハヤテが見えているかどうかは、知らないがクロウの方は《暗視》スキルと《探索》スキルでいつハヤテが行動をされてもいい様に警戒しているので、ハヤテがいる位置は把握している。
「ちっ、あの野郎……魔物に戦わせておいて、自分は高みの見物かよ……」
本当は、今すぐぶっ飛ばしたいのだが、ここで、自分が抜ければ、エリラたちがやられる可能性があるので行くに行けれなかった。
「だったら、さっさとこんな奴ら全滅させて、引きずり降ろしてやる」
クロウはそう呟くと、再び敵の方へと意識を集中させる。
それにしても、よくこれだけの魔物を集めたな。クロウは戦いながら思った。確かにこれほどの量の魔物が集まれば、チェルストの周辺から魔物がごっそりと居なくなるな。
でも、何で地下? 確かに俺らの視界を奪うと言う意味ではいいかもしれないが、それは《暗視》を持っていない日中に活動する魔物も同じはずだ。この戦場で見えない奴らは迷惑以外でもなんでもない。嗅覚や聴覚も、この乱戦では殆ど機能していないかもしれない。
夜行性、または《暗視》スキル持ちの奴らを集めるのが面倒になっただけか? それとも別の目的が……?
戦いながら物事を考えられるのは、ひとえに父親アレスとの訓練のおかげだな。アレスからしてみれば嫌味以外でしか、ないような褒め言葉を何となくかける。
「アレはまだ出来ていないから、あいつらは駄目だし……やっぱ全滅が先だよな」
独り言をしゃべりながらでも、俺の体は動き続けている。スキルのお蔭で俺が意識していなくても、自動的に角度や斬り込む位置などを判断して斬り付ける。俺の意識が必要なのはいわゆる初動のみなのだ。
だが、これの状態では攻撃を途中で中断することが難しい。自動で動くんだからな、支援システムとか言うレベルじゃない。自動システムだ。
無理やり止めることも出来ないことはないが、体を痛めつけてしまうのでパスだ。
一気に敵を殲滅する魔法を使うしかないか。
「《誘導火炎弾》……」
俺の周りに小形の魔方陣が現れ、そこから小さな火の球が現れる。俺が敵と認識したものだけを攻撃する自動追尾型魔法、実戦で使うのは本当に久々だ(第9話以降未使用)
だが、放置していた訳ではない。俺はこの魔法に改造を加えた。
「《全力射撃》!」
魔方陣に溜めた魔力を魔方式により、常に火弾を出し続ける凶悪な魔法だ。しかも俺が魔力を入れ続けさえすれば、撃ち続けることも可能だ。あと、強制終了も出来る。
魔方陣からゴルフボール程度の大きさの弾が、次々と飛び出す。現時点で一分間に最大で400発を放つことが可能だ。それが今、俺の周囲に10個ほど浮いている。
何故、最初からこれを使わなかったかと言うと、この魔法は非常に便利なのだが、燃費が最悪なのだ。戦いの序盤でまだ先の見えない時に、特大の魔法は使う物じゃないと言うのは、某ゲームで嫌と言うほど見せつけられました。……今となってはいい教訓だが、当時の俺は発狂ものだったな。何度も死んでようやく辿り着いたと思った時にあの仕打ち……。思わずゲームを放り投げ、アパートの窓を壊してしまって、弁償させられたな……。
そんな俺の教訓(と言うか自爆)のお蔭で最小限の被害で戦い続ける癖が身に付いたのだ。
でも、敵の数もさすがに減って来たので、ここら辺で片付けようと思い、使用に踏み切ったと言う訳だ。
あの黒龍ですらも沈めた魔法に、魔物たちは次々と撃沈されていく。多分、上から見たらちょっとした花火見たいな光景が広がっているのではと思う。ただし花火の前にエグイが入るかもしれないが。
そして、魔方陣が撃つのをやめて自然に消滅して行く。これは俺が付けた能力で、敵を感じなくなった場合、強制的に攻撃を終了させ、魔方陣を消滅させるのだ。魔方陣の中に残った魔力は、そのまま俺の体に戻って来るので、魔力の無駄使いもしなくて済む。
辺りには焦げ付いた匂いが立ち込めており、地面には敵の残骸の一部などが散らばっており、ホラー映画なんかよりも数倍の気持ち悪さを感じた。
特待生の面々は全員呆気に取られていた。当然と言えば当然だが、これにより後の説明が面倒になったことは間違いないだろう。
しかし、特待生が何か言葉を発する前に、辺りに高笑いが響き渡る。
「アッハハハハハハ! ……やはり君はおもしろいねクロウ君」
先程まで、高みの見物をしていたハヤテがクロウ達の元へと歩いてくる。
「……これで残りはあなただけです、降参でもしますか?」
「降参……? 笑止! 私は降参などしないよ」
ハヤテの顔は先程からニヤニヤしたままだ。焦る様子も、動揺も感じられない。
「ちなみに、君たちの討伐対象であるベヘモスもさっきの攻撃でやられたみたいだね。おめでとう」
その言葉に俺を含めた特待生全員が驚いた。
「何故知っているのですか?」
「何故かって? 簡単ですよ。あの依頼は我が主が出した依頼なのですから」
「!! ……と言う事はこの依頼は国からと言う事なのか!?」
シュラが信じられんと、言う顔をしながら立ち上がる。
「いいえ、最初も言いましたが、国を仲介人として通しましたが、国自体には全く関係がありませんよ」
「どういうことでございますか?」
今度はローゼだ。光魔法をもうかなりの時間が経っているが、まだまだ明るさは落ちていない。持久力はかなり高い方なのかもしれない。
「言葉の通りですよ。国の名前を使わせてもらっただけですよ」
「……その言葉から予想するに、この依頼はあなたの主個人の依頼……この場合国王と言う事になりますか」
「ん~クロウ君、残念だがそれは違うよ」
「えっ……」
「だって、私の主があんなデブなわけないじゃないですか」
アルダスマン国の王様ってデブなんだな……。
「じゃあお前は一体何なんだよ!」
カイトがこのやり取りにしびれを切らし、前へと出るが、カイトの体が突然くの字に曲がり、吹き飛んだ。
「……静かにして」
サヤだ。サヤがカイトの横腹にこの依頼を受けた後にシュラへやったように沈めたのだ。
「あ~あ……」
思わずため息が出る。カイトのあの短気はもう少しどうにかならない物か……。
「さて、話はもう終わりかい?」
「まだありますよ」
今度は俺が前へと出る。
「クロウ君ですか? 何でしょうか」
「あなたの言葉を全て鵜呑みにするならば、あなたはアルダスマン国の配下では無いと言う事になります。つまり、アルマスダン国に仕えてはいるが忠誠は別の所にある……と言う事になりますね」
「……その通りですよ。あなたは本当に子供か怪しくなりますね。その歳ではまあまあの出来です」
見た目は子供……いや、このネタをやるのはやめて置こう。今はこいつから情報を抜き取ることが先決だ。
俺がさっき言ったことは誰でも分かることだ。問題は誰に仕えているかだ。
前に俺が見たときハヤテの種族は確かに人だった。異種族間での対立が激しいこの世で、他の種族に仕えているとは考えられにくい。となると、主は人間に限られる。そしてアルマスダン国に仕えながら、主はそれ以外……となると、アルマスダン国を快く思っていない人物と言うことになるが、一体それは誰なんだ?他国か? それともレジスタンス見たいな勢力か?
「さて、そろそろお開きにしましょうか。私がなぜこんな暗闇で戦いを挑んだか……あなたたちに分かりますかな?」
「暗闇では俺らの視界が限られる……違うのか?」
シュラが答える。見ると冒険者の勘だろうか、シュラとセレナは剣を構えていた。他のやつらは一応武器は持っているが、隙だらけだ。
そういう俺は、構えていないが、魔法はいつでも出せるようにはしている。無詠唱スキルで殆ど0秒に近いスピードで発動できるが、意識をしていれば、さらに高威力の魔法を発動することが出来る。
「いえいえ、それなら、暗闇に適さない魔物まで集めた意味がないではありませんか」
「なら……一体」
「簡単ですよ。これを発動するには膨大な魔力と血が必要なのです。しかも準備に時間がかかるので、誰一人として見せるわけには行かないのですよ。だからこのような暗闇であることを承知して準備をさせてもらいました。」
「?」
「まず、膨大な魔力は魔物が消滅した時に吸収されます。そして血は……あなたたちの足場を見て下さい」
全員が、足元に目をやる。足元にはそこら中に魔物の死骸が転がっていた。
だが、俺らはここで妙な違和感を感じた。そしてその違和感はすぐにわかった。
「血が……消えている?」
そう地面には確かに魔物の死骸はある。だが血は無いのだ。先ほどまでまるで池の様に貯まっていたというのに。
「これで、発動に必要な物はすべて集まりました……【代償魔法】……」
足元がほのかに青く光だし、文字が次々と浮かび上がってくる。俺は知らない文字に見える。一体どんな文字だ?
それに、この嫌な感じはなんだ?
「―――――――《異転封印》」
ぐぉんと言う音と共に俺を含めた特待生全員を囲むかのように極大の魔方陣が足元に現れる。
考えるより早かった。俺は気づくと魔法を唱えていた。
「《嵐》!!」
エリラを含めた全員を魔方陣の外へと吹き飛ばす。着地の時に怪我をされても困るので、土魔法で着地視点は柔らかくしておいた。
俺もすぐに脱出をしようとした……が、既に魔方陣は完成してしまっていた。
「ちっ、余計な事を……だが君だけ送り込めば問題ありません。異次元で永遠に彷徨い続けなさい」
くそっ、こうなったら……
―――スキル《魔力支配》発動
「……!?」
だが、魔方陣は消える事無く輝き続ける。どういうことだ!? 魔力支配はすべての魔力を支配下に置くことが出来るはず……つまり魔法で出来た物はどんな物でも支配下に置けると言う事になる。
それは魔石でもだ。つまり物に組み込まれていても例外など無く、支配下に置けると言う事だ。
方法を変えて、無理やり魔方陣から抜け出そうと。思いっきり魔方陣を蹴る。だが魔方陣は壊れない。それなら穴を掘って魔方陣から抜けようとしたが、それも出来なかった。
俺は完全に魔方陣に閉じ込められてしまったのだ。
「さすがの君も何も出来ないか。では……さようなら」
魔方陣が青から白く輝きだした瞬間、強烈な閃光が辺りを照らた。思わず全員が目を瞑る。そして次に眼を開けてみると魔方陣と俺は跡形も無く無くなっていた。
「アッハッハッハッ、これであの子はもういないよ……では、要件はすんだので私はこれにて……」
ハヤテはフードを被り、呪文を唱える。するとハヤテのすぐ足元に人が一人横に慣れる程度の魔方陣が現れた。
ハヤテがその魔法陣に踏み込むと、ハヤテの体が一瞬だけ光、そして消えて行った。その直後にハヤテを転送した魔方陣も消えた。
何が起きたのか分からなかった。特待生全員が、その場で硬直し動くことが出来なかった。
エリラだけが、クロウが消えた場所にフラフラと歩いて行く。やがてクロウがいた場所に辿り着くとペタンと両膝から地面に崩れ落ちた。持っていた剣を離し、両手も地面につける。
「嘘だ……」
エリラは現実を受け止めきれなかった。だが時間が経つとともに、起きた目の前の非情な現実に否が応でも受け止めなければならなかった。
エリラの目から涙がこぼれ、頬を流れた涙は、地面へポツポツと落ちていく。
「うそだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
エリラの悲痛な叫び声だけが辺りに鳴り響いた。
皆さん、いかがでしたでしょうか?
正直、これをやるにはかなり勇気が必要でしたが、自分の書きたいことを書くと決めた以上、突き進ませてもらいます。
次回投稿予定は11/3です。
※アドバイス、感想などありましたら気軽にどうぞ。
※誤字脱字などがありましたら報告よろしくお願いします。
※なお、余に酷い誹謗中傷的な発言をする方々はコメントをお控えください。
感想や報告いつもありがとうございます。この場を借りて改めてお礼申し上げます。
これからもドンドン感想を書いて行って下さると嬉しいです。でもあまり苛めないでね?




