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第47話:暗闇

 ※10/30 名前の間違えを修正しました。

 暗闇へのスカイダイビングって怖いですね。今の率直な気持ちです。


 謎の鯨(?)による襲撃で、暗闇の中に落ちていく俺ら。既に俺は作っておいた《暗視》スキルで下までの距離は大よそ分かっている。この時、俺は落ちている辺りを見回していた。

 周囲は、土があるかと言うと何も無く。空間が広がっていた。


(おいおい、何だよこの空間は……?)


 石レンガで舗装されていた下が、まさか空洞だとは……。


「オチるぅぅぅぅぅぅ!」


「きゃあぁぁぁぁぁぁ」


 特待生組の叫び声が聞こえる。


 下を見ると地面がもうかなり近くまで迫っていた。この勢いで地面に落ちたら、どれくらい勢い良くバウンドするんだろうな……。と、前の俺だったら……と言うか、普通の人だったら落ちながら思う事ではない事を思っていた。


 まあ冷静でいられるのも、魔法があるからなのだが。


「《空術》」


 俺を含めた全員に浮遊効果のある魔法をかける。これにより加速し続けていた落下速度は、徐々に低下し始め、やがて地面に着地する頃には人が歩くくらいの速度まで低下していた。


 俺は全員が地面に降りたことを《暗視》スキルで確認し、俺は魔法を解除する。


「み、皆、大丈夫か!?」


 こんな事態でもシュラは冷静だな……。


「なんとか……」


「だ、大丈夫です……」


「よ、よし、取りあえず集まるぞ。ローゼ、済まないけど光魔法で灯りをつけてくれないか」


「分かりましたわ」


 しばらくすると、ポッと暗闇に光が浮かび上がる。ローゼが光魔法で灯りを付けたのだ。その光に全員が集まる。だが、灯りはあんまり強くないので、全員の表情までは分からない。


「よし……全員無事だな。まずは一安心か」


「それにしても……地面に落ちる前の、あの浮遊感は一体……?」


「僕が落ちる前に付加魔法で、全員に浮遊効果をエンチャントする魔法をかけました」


「……クロウ。お前、本当に万能だな……」


「たまたま使えただけですよ」


「まあ助かった。ありがとうな」


「いえいえ」


「……どうするの……?」


 サヤの一言で、辺りにちょっとした沈黙が流れる。

 上を見てみると明かりは殆ど見えず、かなり深くまで落ちて来たことが分かる。


「くそっ、暗いせいで周りが見えないな……」


「ローゼさんの魔法をもう少し強くすることは出来ないのでしょうか?」


 この声はテリーだな。


「そうしたいのは山々なのですが、これ以上強くすると私の魔力が持ちませんわ。まだ先が分からない以上、魔力の消耗は出来る限り抑えておく必要が……」


「そうですね……」


「兎に角、出口を探さないとな……」


「だけど、どうやって? こんな暗闇じゃ探しようがないぜ?」


「発火棒では長くは持ちませんし……」


 発火棒は確かに魔力さえあればいつでも使うことが出来るし、非常に小型なので持ち運びにも便利だ。だが弱点もあり非常に燃費が悪いのだ。このような場合は、発火棒より大きいが、魔力型蝋燭を使うのが普通だ。だが今回は出来る限り荷物を軽くしようと言う事で持ってきていない。

 松明が必要な時は、辺にある木の棒に付けて代用していた。まあ魔力型蝋燭は結構高額なので初心者の冒険者などは、松明の方を使うことが多いのだが。


 俺は念の為に持ってきてはいる。《倉庫》ありがとうございます。だけど、数は2つ(俺とエリラ用に)しか持ってきていないので、出しても殆ど使えないだろうな。しかも灯りも大して強くないし……。どれくらいかというと豆電球と同レベルと言えばわかるだろうか?


「はぁ……どうしたものか」


「完全なミスでしたわね」


「だれだったけ? 置いていこうと言ったのは?」


 カイトがあーあーと言った口調で言った。


「悪かったな! 俺だよ!」


「だから、俺は持っていこうぜと言ったんだよ」


「てめぇ―――」


「お、落ち着いて今、言ってもしょうがないでしょ?」


「くっ……あ、ああ……そうだな……」


 ……やばいな、少し空気が悪いぞ。


 イレギュラーな事態に加え、準備不足。皆明らかに動揺をしている。


 そして、すでに俺は次の危機を感じ取っていた。


 それは、俺が都市に入ってから感じていた視線だ。今までは、見られてはいるが、どこにいるかまでは確認できなかった視線が、今はハッキリと感じていた。


 どうする? 今、動くか?


 だが、応戦したところでこんな暗闇で戦えるのか? 俺は迎え撃つことは可能だが、他のメンバーは戦おうにもこんな暗闇では、下手に動けない。


 《暗視》スキルを付加させることも考えたのだが、あれはまだ未完成なのでリスクが高すぎる。というのも付加魔法は体の一部に能力を付けようと思うほど難易度が飛躍的に上がる。

 俺のスキルレベルでは可能なのだが、問題はまだ、俺自身が使いきれていないのだ。例えるなら、パソコン初心者の人に行き成り、高性能かつハイレベルのソフトを与えた状態と全く同じだろう。


 もちろん練習はしているが、あまりに高レベルなので苦戦しているのが現実だ。各属性系の魔法はそれなりに扱えるが、他の部分がなぁ……。



 と、その時



「チッ、生き残りましたか……」


 突如聞こえた声。周囲を見回すが姿は見えない。と言うのは他の面々だけで、俺にはハッキリと分かっていた。


「全く、普通の人間……しかもまだ子供たちに回避させられるとは……後でお仕置きですね」


「誰だ!」


 カイトが剣を構えたまま叫ぶ。だが謎の声はカイトの質問を無視し、話を続ける。


「まあ、いいでしょう。ここで消せば問題ないのですから」


「おい! 誰だ! 正体をあらわs……」


 カイトがもう一度叫ぶが、その返答は、突如飛んできた物体が答えを表していた。


「!? 《防壁(ウォール)》」


 俺は全員を守れるように防壁を展開。展開が終了したと同時に、キィンと言う音が全方位から聞こえた。見るとボールペンほどの針が、防壁によって弾き飛ばされ宙を舞っていた。やがて、カランコロンと地面に次々と落ちていく。


 ちっ、答える気は無いのかよ。


 俺は《防壁》を解除し、ローゼが先程まで小さくしていた光を大きくする。視界が先程より良くなり、敵の姿が見えた。


 紫色のローブを着ている人が一人立っていた。顔はローブに隠れているので見ることが出来ない。


 辺りを見渡すと、小形の魔法陣が大量にあった。なるほど、あれからこの針が飛んできたのか。


「やはり、あなたがいると面倒ですね。クロウ君」


 !? 今、俺の名前を呼んだのか?


「何で、知っているのですか?」


「それは見たことがありますからね。あの時は散々でしたよ」


「……あっ、お前まさか……!?」


「ええ、おそらくあなたが思っている通りですよ」


 謎の人物が顔を隠していたローブを取り外す。そして見えたのは


「やっぱりか……ハヤテ……」


「ええ、お久しぶりで」


 アルマスダン国軍第2部隊の隊長。ハヤテ・シーオンだった。











「これはなんですか? 国が僕たちを殺そうとしているのですか?」


「いえいえ、これは国は関係ありませんよ。まあ仲介人にはさせてもらいましt―――」


「おい!」


 カイトが、先程の勢いそのままに、ハヤテに向かって怒鳴る。おいおい、まだ俺が会話途中だろ……。


「お前は誰だ! 何故こんなことをする!」


「おや、私をご存じありませんか? そちらの令嬢辺りは知っていると思われますが?」


「……ええ、何故あなたがいるのですか? ハヤテ・シーオン隊長」


 ローゼか……そうか、貴族だから国のお偉いさんと話す機会が遭ったのかもしれない。


「アルマスダン国軍の部隊長でもあるあなたが何故、こんなことを!」


「国の隊長だと!? ローゼどういうことだ!」


 カイトが、ローゼに食い下がる。


「彼はハヤテ・シーラン。アルマスダン国軍第2部隊の隊長をやっている人ですわ」


「まあ、私からしてみれば、そんな肩書、必要ありませんけどね」


「どういうことですか?」


「知る必要はありませんよ。どうせあなた方はここで死ぬのですから」


 ハヤテが右手を挙げると、暗闇の奥から魔物が出て来る。その中にはハヤテと同じように紫色のローブをした人の形をした者もいた。


「クッ、なんて数だ……」


「おいおい……Cクラスのモンスターがうじゃうじゃいるぜ……」


 俺が見た限りではE~Dクラス系のモンスターが約2、30体。その後ろにはCクラス系モンスターがうじゃうじゃといる。暗闇で全部は見ることが出来ないが、その後ろにはさらに数がいるようだ。

 《暗視》スキルで見てみると、Bクラスも何体か確認できた。


「さて、君たちは我が主から危険と判断された者たち……特にクロウ君。君は将来、我々の計画に非常に邪魔だ。……消えろ!」


 ハヤテが上げていた右手を振り下ろすと、一斉に魔物たちが全方向から押し寄せてきた。


「くそっ、どうするんだよ……」


「戦うしかないでしょ!」


「でも、どうやって戦うんだよ! こっちは9人しかいないんだぞ!」


「私は、光の維持に精一杯ですわ」


「と、言う事は8人でか……」


 たった8人で10倍とも20倍とも言える魔物の大軍を相手する。しかもこちらは視界不良。普通に戦えば勝率は何分……いや、下手をしたら何厘と言う確率だろう。


 全員の間に絶望と言う名の空気が流れる。


 一人を除いて。


「……いい度胸じゃないか……」


「? クロウ何か言ったか?」


 シュラの声が背中から聞こえて来た。だが、この時俺には既にシュラの声はほとんど聞こえていなかった。

 

 全神経を集中させる。


 スキル《明鏡止水》の効果により、敵の動きがすべて手に取るようにわかる。


「エリラ! 行くぞ! あいつはもう一度、ぶっ飛ばす!」


「はは……全く、こんな時でもクロは……ええ、わかったわ!」


 エリラが俺の横まで来て剣を構える。俺とエリラが持っている剣は共に俺が作ったオリジナルの魔法剣だ。

 エリラが持っている剣は俺が初めてエリラ用に作った両手剣(第21話参照)を強化した剣だ。名前は【蒼獣・改】。素材に獣形モンスターを多く使ったので、分かり易くて良いかな? と言う事で命名した。前の両手剣の能力に加え《対魔物》《対火耐性》を加えた。さらに前よりも切れ味、耐久性も向上させている。

 一方、俺の持つ剣は全身が黒く光っており、斬る事に特化させた刀タイプの剣、【漆黒・改】だ。これも改良をしており、《斬撃強化・改》《対魔物》《対人間》など色々な特殊能力を付けている。これは魔物から取った素材を加えたことにより、自動的に付いた能力だ。魔法式を書き込めば、意図的に付けることが出来るが、こっちの方が手間がかからず、作りやすいのだ。


「他の人もボケッとしないで、考える前に動きましょう!」


 俺の言葉にサヤがその場から一歩前へ出る。その動きに釣られて他の特待生組も前に出る。


「……戦う……」


「わかっているわ!」


「当然だ!」


 己の武器を構え、目の前の敵に集中する。


「全員、一体に集中してください! あとは僕たちがやります!」


 力はこういう所で使わないとな。今回は出し惜しみをしている暇は無い。そんなことをしたら、下手をすれば死人が出かねない。


「行きます!」


 こうして、暗闇での戦いが幕を開けた。

 話しの途中で書いてある通り、クロウはスキルレベルはかなり高い物ですが、完全に使い切るかと言うと使い切れていないのです。

 逆に言えば、まだまだ成長の余地があると言う事に。オソロシイ…


 次回更新予定日は11/1です。

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