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第44話:指名依頼

 ※10/24 後書きに大幅修正履歴を加筆しました。

 ※10/26 誤字を一部修正しました。

「国からの指名依頼?」


「はい、皆様宛に」


 校舎の一角にある、理事長室。俺はここに来るのは3回目だ。1回目は入学前日。2回目は依頼で、そして3回目は……今だ。いわゆるnowってやつです。


「魔法学園の特待生に指名依頼って珍しいのですか?」


 テリーがアルゼリカ先生に問いかける。


「珍しい……と言えば、珍しいのですが、初めてと言う訳では無いそうです。過去にも何回、か国から直接来る事が、あったらしいので」


 ……とのことだ。今、理事長室には、特待生組とその従者。あとアルゼリカ先生がいる。前日に、「明日、特待生組は全員、理事長室に集合してください」と連絡が入ったのだ。ちなみに、連絡係はアルゼリカ先生本人です。そこは使者とかじゃないんだな……、相当探し回ってたようで、俺と出会った時には、汗まみれでした。


「依頼内容は【獣魔(ベヘモス)】の討伐です」


「ベヘモス……って、Cクラスの大型モンスターのことじゃ……!」


「ええ、カイト君、良く知っているわね。ええ、そのベへモスよ。水牛や、サイに似ていると言われる悪魔系モンスターよ。本来は、砂漠地帯にいる魔物なんだけど、何故か今回は、旧都市跡地で見つかったらしいわ」


「珍しいのですか?」


 ベヘモスなんて、俺は聞いたことなかったので、アルゼリカ先生に聞いてみた。


「ええ、ベヘモスは、普段、砂漠に生息していますが、体内には大量の水を溜めておく必要があるらしく、一定の期間だけ、川の近くまでやってきて、水を飲み続けることがあるの。1週間ほど飲み続けたのち、また元の場所へと戻るはずなんだけど、今回は何故か跡地の方へと移動してしまったのよ」


「旧都市跡地と言っても、数はたくさんありますわ。アルゼリカ理事長。どこの跡地ですか?」


「【チェルスト】と言う都市です」


 チェルスト? 何でだろ、つい最近聞いたような気がするが、思い出せない。《記憶》スキル仕事しろや。


「それにしても……国が、指名依頼を学園にする理由が、イマイチ分かりませんね」


「先ほども言いましたが、珍しい事です。ですが初めてと言う訳でもありません」


「人材発掘……ってところですか」


 ギクッ


「その可能性は、高いと思いますよ」


「ですが、どちらにせよ、厳しくないですか? この中で冒険者は、シュラとカイト、それからセレナの3人しかいないのですよ? しかも全員Dランクですし」


「ご心配なく。恐らく国も、この人が参加する前提で、頼んだ可能性は高いですからね」


 そういうと、アルゼリカは俺の方を見ると、ニコッと笑った。あっ、やっぱりそうなりますよね。


「? クロウですか?」


「ええ、この子の冒険者ランクはCクラス。炎狼の転異種を討伐する実力の持ち主ですわ」


 カミングアウトしないでぇぇぇ orz と言うのも、俺は、自分が冒険者であることは、他の奴らには言ってなかった。聞かれることが無かったので、言わなかったんだけどな。


「げっ、クロウがですか!?」


「ええ、それに、その3人もDクラスの人じゃありませんか」


「この前の、コアの件はあなただったのね……」


「いや、言うほどでも無いと思ったので」


「どこがですか! 数十年ぶりの出来事とか言っていましたわよ!? それにCってなんですか!?」


「まあまあ、ローゼ落ち着けって」


 シュラがローゼをなだめる。


「強制ではないのですが、どうしますか?」


「もちろん行くぜ!」


 カイトが真っ先に行くことに賛成し、その後にローゼとシュラも賛成をした。

 ……これって俺に拒否権あるのかな? 話の流れ的に、俺は強制参加っぽいのですが。

 

 俺の予想通り、その後、特待生組は全員賛成となり、俺は問答無用で強制参加となった。








「従者は全員残すよね?」


 理事長室から教室へ移動し詳しい打ち合わせをやることになった。

 そして、始まりと同時に、セレナが従者の事について聞いた。


「そうだな、戦闘は避けられないからな……俺の所は留守番だな」


 カイトが従者をチラッと見ながら言った。


「私もね、無理に連れて行く必要ないし」


「……同じく……」


 セレナとサヤの所も行かないみたいだ。


「じゃあ僕らもそうしよう」


「そうだね。ちょっと危険だよね」


 テリーとネリーの所もか


「……戦闘経験とかありませんわよね?」


「申し訳ございません……」


 ゼノスさんも無いか……俺の所は……よし、流れに乗って


「では私の所も……」


「い・く・わ・よ?」


 エリラが俺の方を見ながら言った。デスヨネー。


「クロウの所はどうする?」


「……行くなと言っても、付いて来そうなので、行かせます」


「えっ、戦えるの?」


 つい先日、熱い(?)大食い対決を行ったカイトが、エリラを見ながら言った。


「まあ……、一応元冒険者ですので」


「現役で・す・け・ど・?」


 俺の頭をガシッと手で掴み、グッと力を入れて来るのがわかった。


「いや、そこに怒る?」


「私だけ除け者扱いはさせないわよ」


「いや、この場合、除け者はたぶんお前じゃないか? と言うか除け者と言うより浮く?」


「年下のお世話は年上の仕事でしょ?」


 ピキッ、何か、エリラに言われたらスゲームカつくのですが。


「よし、マジで表出ろ。一週間ぐらい寝たきりにさせてやる」


「オーケー、逆に沈めてあげるわ」


「……この流れ、どこかで見た気が……」


「……ん? 何か言いました?」


「……いえ、なんでもございません」


 本当は覚えているが、あえて伏せておくことにしたのかゼノスは笑顔で誤魔化した。


 そして、表に出る事無く教室内で始まる喧嘩。


 ……と言うには程遠い喧嘩(?)だが。


「……いいの……?」


「いい訳ないだろ……」


 普段無口なサヤも(と言うか殆ど声は聞いたことない)、目の前の光景に思わず突っ込んでしまっている。


「ご心配なく。自宅に来られた時も似たようなじゃれ合いをやっておられましたので」


「ぶっ!? ぜ、ゼノスあなた!?」


「ええ、ローゼ様が来られる前にちょっとですね。ふふ、クロウ様に負けましたね」


「そ、それは言わないでいい!」


「……?」


「まあ、しばらくしたら収まるでしょう」






「|おまふぇ、、じふんのたひばわふれてふぁいか?《お前、自分の立場忘れていないか?》」


「|なんのことふぁしひら?《何の事かしら?》」


「|ばんめひぬきにふるぞ?《晩飯、抜きにするぞ》」


「ぬひぃにするんだったらこのままつふけてやる!《もし抜きにするんだったら、このまま続けてやる!》」


「「ふゅぅぅぅぅぅぅぅぅ」」


 ……最初はそれなりに喧嘩っぽく、格闘戦が行われていたが、どこで間違えたのか、最終的に両者は、互いに相手の頬を引っ張り合うと言う、傍から見たら喧嘩と言うよりか、完全にじゃれ合いになっていた。効果音にはポカポカとかがいかにも合ってそうだ。


「……仲良し……」


「あら、サヤ様もそう見えましたか?」


「……楽しそう……」


 この言葉に、クロウ、エレナ、ゼノスを除いた、この場にいた全員が驚いて、一斉にサヤへ視線を向ける。そして真っ先にセレナが、皆がほぼ心の中で思っていることを口に出す。


「サヤがこんなこと言うなんて……明日は槍でも振ってくr―――」


 完全に言い切る前に、絶対零度のような視線を感じたセレナはあわてて、言葉を切った。本当はサヤの顔を見て見たかったセレナであるが、残念ながら見ることは叶わず、顔を正面に向け、視線だけは絶対に横に向けないよう心に誓った。他の者も似たような心境だ。


「ふにゅぅぅぅ……ん? どうひたのでふか?(どうしたのですか?)


「……いや、珍しい事って重なるもんなんだなって」


「……(コクコク)」


 カイトがはぐらかして答える。他のメンバーも同意するかのように首を縦に振る。


「まあ、クロウが良いって言ってるんだからいいじゃないの?」


 最終的にセレナのこの一言で、このちょっとした騒ぎは終わった。ちなみに、その後の俺とエリラだが、最終的にエリラの方が、この場の空気に耐えられなくなり、「ごめん、もう勘弁して」と土下座したので、俺の勝利と言う形で終わった。







「そういえば、さっき言ってた旧都市ってどこにあるの?」


 精神的に撃沈したエリラを余所に俺らは都市跡地に向かう為の事前準備に入るため、色々と話し合っていた、敵の特徴は無論のこと、周辺の地形も確認する。

 あ、あと、さっきチェルストって名前を思い出した。確か前に読んだ本に「滅びた【チェルスト】の謎」、とかいう本があったはずだ。


「ここから南西に直線で300キロ。アルダスマン国とカナンの国境付近だな」


 セレナの質問にシュラが質問に答える。


「300……往復で約2週間と言う所かしら?」


「いや、舗装されているなら一週間と少しだけど、道中は危険な個所がいくつかあるから、実際には往復で1ヵ月ぐらいかかるはずだ」


 一ヶ月!? 片道で2週間も使うのかよ!


「馬は使えないの?」


「無理だ。途中までなら大丈夫だが、馬車が通れない道や傾きが急な箇所もあるから、馬は連れていけれねぇ、馬の餌とかも考えると、最寄りの村までが限界だな」


 空を飛ぶ……は、俺だけだよな。


「ルートは?」


「ここからまず、エルシオンに向かって、そこから山岳部を通っていく形だな」


「と、なると物資の補給はエルシオンで?」


「そうだな……エルシオンの方が冒険者向けの装備や道具を売っているからな」


「そういえばクロウさんはエルシオン出身でしたわよね?」


「そうですけど?」


「クロウさんのお家に泊まれば宿代も幾分か、浮きそうですわね」


 ……俺は突如、暑くもないのに、冷たい汗が背中から流れ落ちるのを、感じていた。


「えっ、マジで? いいじゃんお泊り会やろうぜ!」


「おいおい、遊びに行くわけじゃないんだぞ。依頼を甘く見すぎや」


「大丈夫だ! 問題ない!」(キリッ)


「大問題だ! 経験者がそれでどうするんだよ!」


 余裕綽々のカイトと、いつもとは違う雰囲気を出しているシュラ。両方とも熱血系で似ていると思っていたが、こんな所では決定的な違いが出ているな。


「……まあ、確かに宿よりかは、心身的にはいいけどな」


 うぐっ……正論だから反論できない……。やばい流れだ……。


「と、言う事だけど、クロウどうするか?」


「全力で遠慮させてもらいます!」


 俺の家は絶対駄目だ! 理由は、獣族の事があるからだ。普通に獣族の奴隷がいるだけならまだ問題ないが、問題は扱いだ。


【普通】

・寝床:小屋でも高いぐらい。

・食事:一日二食は普通。三食でも量は少ないかも

・服装:みずほらしくするのが当たり前。店頭に立つときや人前に出る機会があっても一般服レベルが最大。

・趣味:やっている余裕無し

・金銭:持てるわけがない。せいぜいお使いの時に持つぐらい

・仕事:現代の労働基準法丸投げ状態。仕事によってはブラック企業の方がまだマシの場合も。

・扱い:下手したら家畜レベル。


【クロウの家】

・寝床:一室、しかもふかふかベット付き

・食事:三食? 当然。おやつもあったり

・服装:傍から見れば一般市民が着るような服やメイド服。これでも十分高いが、仕立て屋が見れば口から心臓が出るほどの高品質&高性能(クロウが作った為)であることが判明する可能性も。

・趣味:基本的に自由。やる時間はある。

・金銭:そこら辺の一般市民より安定的に入ってくる。

・仕事:家事のみ。強いて言うなら訓練も仕事かも。自衛するためにさせている。

・扱い:対等



 こんな状態の家を見られたら、面倒事になること間違いなしだ。


「え~いいじゃん、危ない本でもあるのか?」


 何故その言葉を知っている!? この世界にも(ピー)本が存在するのか!?


「何ですかそれは……」


 いいか、俺、クールダウンだ。あとスキル《ポーカーフェイス》さん、頑張ってください。


「カイトのことだから(ピー)な本だベキッ ぐふっ!?」


「……不謹慎……」


「おー、サヤちゃんのパンチが決まったね」


「我が生涯……ガクッ」


「シュラあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 ……なにこれ、三文芝居? ち、ちょっと待て、状況が理解できないんだが……



・カイトが危ない発言

      ↓

・その発言にシュラが完全にOUT発言

      ↓

・サヤ……さんが完全に言い切る前に一瞬でシュラの正面に来てみぞおちに正拳

      ↓

・シュラは某マンガの決め台詞を言いかけて沈黙


 サヤ……さんって格闘が出来るんだな、確か、最初に模擬戦やった時も、素手だったな。あの時は魔道士系かと思ったんだけど、違うようだな。

 今度から、心の中でもサヤは、さん付けしよう。うん。だって怖いもん(汗)


「で、どうして駄目なの?」


「え、え~……と家が狭k―――」


 俺は何とかして断る理由を言おうとしたのだが、


「よし、じゃあ皆で雑魚寝しようぜ!」


 カイトの発言で、あっさりと撤去されました orz その後も何とかして家に来させないように頑張ったが、結局決定されました(泣)



「わかりました! ただし条件があります。僕の家で見た事は一切他言しないでください!」


「なに、バレたらやばい物でもあるの?」


 セレナが若干口元をニヤニヤさせながら聞いてくる。この会話の始めが、危ない発言スタートだったので、想像もそっちに偏っているようです。


「……来たら分かりますよ」


 俺は場の空気に任せることを覚えました。モウ ドウニ デモ ナレ~




 どうやら俺は依頼が始まる前に一つの修羅場を潜り抜けなければならないようです。

 ……隠れさせても、確実に見つかるだろうな。いや見つけるな orz

 あれぇ? 初期に考えていた構想通りなんだけど、何故かエルシオンを通る羽目に(泣)


 設計した時には考えなかったのですが、冒険者とかの道具ってやっぱり、エルシオンみたいに冒険者がいる所に、良いのが集まるのは当然ですよね。

 今更、地形を変えるのもあれなので、泣く泣く突入させます(泣)


 それにしても、修正が進みません。時間はあるのですが、もう一度過去のをじっくり読み返すと、穴に潜りたくなります。(泣)


 修正はのんびりやっていきますので、もうしばらくお待ちください

 m(_ _)m


【大幅加筆修正報告】

・第3話

 ・不必要な個所を大幅カット、また文章を修正しました。物語に影響はありません。

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