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第4話:フォース

 ※8/5 加筆修正しました。

 ※8/10 誤字修正をしました。

 ※10/29 加筆修正を行いました。(大幅修正)

 ※11/3 誤字を一部修正しました。


 

 ぬぉぉぉぉぉ!

 俺は《見切り》をフル活用して、襲い掛かる魔の槍を必死で回避する。

 レイナは基礎能力ではアレスよりやや下だが、それを補うほどの技術で襲い掛かって来る。正直アレスより強い。

 俺もショートブレードで応戦をするが、突破口を開けないでいた。跳躍か何かで飛び跳ねて、魔法を放てば終わりそうだが、さすがに自分の母親に魔法を打ち込むのは気が引けるのでやめておく。


 槍の軌道を《見切り》で読み、スレスレで軌道を変える。口で言うのは簡単だが、一歩間違えれば致命傷になりかねない危険な技である。


「ちょ、お母さん見せるから落ち着いて!」


「やめてほしいなら全力でかかってきな!!」


 やめてー! やっぱり夫婦だ! 戦闘狂いだ! もう当初の目的からかけ離れているような気がするんですが。


 これはもう、アレスと同じようにするしかないな。


 すばやく後ろに引き魔法を発動しようとするが


「させない!!!」


 一気に前に詰め寄って来る。正直槍との戦いはこれが苦手なんだよな。この長いリーチをなくさない限りは、中々有効打を打てない。


 あーもう! なんで両親揃ってマジでやってきてるの!? さっきの言葉は!?

 もしかして俺と戦うために無理やりアレスを退場させたのか!?


 仕方ない。俺は跳躍でレイナの槍が届かない位置まで飛び上がると


「―――《炎風拳(フレイム・インパクト)》!!!」


 もちろん手は抜いている。レベルでいうなら1~2程度の威力だ。魔力制御も多少荒くして威力を落とすようにしている。


 そして、その魔法は一直線にレイナへ向かっていく。

 レイナはそれを避けて……って避けない!? おいマジで当たるぞ!?


 地面に魔法がぶつかり、あたりに熱風が吹く。さっきほどではないがそれでもかなりの威力がある。


 そして焼けた先にはやけどしたレイナが……否、なんか鱗を纏った戦士がいました。


 ……えっ? 鱗を纏った……人?












 いや、あれはレイナだ。皮膚が鱗になっただけで色や角、体の形には変化がない(あとメロンも)


 いやいや、あれ何!? もしかして、と思い俺はとあるスキルを調べてみる。


――――――――――

スキル名:《フォース》

分類:特殊スキル

属性:―

効果:人族以外が扱える力。個々によって使える能力は変わってくるが

   種族別に大体固定されている。

   例:龍族 → 飛行能力、皮膚の硬化 など

     妖精族→ 魔力アップ など

――――――――――


 やっぱり! くそぉ、先に調べとけばよかった。

 なぜ調べなかったのか自分でも不思議なくらいだ。他の基本スキルに目が行き過ぎていたか


 硬化したレイナの背中に翼が生える。あれフォースって一人につき一個じゃないの!? それとも複数の能力を総合してフォースにしているのか?


「とりゃああぁぁぁぁぁあああ!!!」


 飛び出して一気に間合いを詰めてくるレイナ。早い!


「くっ!」


 間一髪で槍の攻撃は防ぐが、次に繰り出された横からの蹴りには反応しきれなかった。思いっきり蹴り飛ばされ近くの木々の間に落下してしまう。

 ま、マジだ! マジでやってる! 死ぬ!

 いや大して痛くないけどこれでハッキリとわかった。俺の両親は戦闘のときはマジだということを


 だったら俺も遠慮はいらないよな。いや、さすがに魔法は手加減しますけど。

 少なくともレベル1~2程度の攻撃ではあの鱗にダメージは無いのだろう。

 となると、威力はは4~5程度が必要か。


 いや、まて確か―――


 考えていると、辺りが急に暗くなったので上を見てみると、そこには


「もらったぁ!!!」


 全力で槍を突きおろしてくるレイナが、ちょっ、心臓一直線コースじゃないですか!

 《回避スキル》で全力で回避する俺。地面を転がるように移動し、家のまん前(初期位置)へと戻る。レイナも続けざまに出てきた。

 再び相対する俺とレイナ。レイナは相変わらずフォースを使用したまんまだ。一体どれほど持つんだろうな。まっ、それはこれから自分でやっていけばいいか。


 さきほど考えてたことを実行する。手に小さな水魔法を作り上げると


「―――《水衝撃(アクア・ショット)》!!」


 撃つ。時速にしておよそ60キロ程度。威力はゴム鉄砲ぐらいだろう。スキルレベル1ではそれが限界だ。当然―――


「そんなもの効かない!」


 槍で水玉を簡単につぶしていく。だがそれでも俺は撃つことをやめない。そのたびにあたりに水しぶきがまき散らされていく。


「ほらほらどうしたぁ!!!」


 避けるの面倒なんだね。濡れても全然気にしてないや。もっとも、透けるというラッキースケベイベントは起きない。ただエロいとは思う。


 そして4、50発、撃ちこんだ辺りで、俺は撃つのをやめた。


「はっ、疲れたか? じゃあそろそろ……ん?」


 槍を構えたときレイナは異変に気付いた。


 スキル《危険察知》は自分が危険だと体が反応したときに発動される。それは今までの経験や勘がものを言う。特に経験はスキルレベルに大きく響いてくる。

 より多くの魔法を使う。見る。剣を振る。こうやってこの世界の人はスキルを身に着けていくのである。

 まぁそれが普通だろう。俺が例外なのだ。

 つまり、俺らでいうスキルレベルはこの世界でいう経験のことを指すといえよう。

 まあゲームみたいに好きに振り分けれるポイントとかじゃないからな。


 おそらくその経験が無かったら気づかなかっただろう。いや目の前にいる人物が魔法を使い自分の夫を凌駕するほどの魔法を使えるということを知らなかったら気づかなかったのかもしれない。


「……気づきましたか? だけど、少し遅かったですね。いや水を槍で受けておらず避けていれば、俺の方があぶなかったんですけどね」


 レイナと俺の周囲は俺が放った水魔法により一面水浸しになっている。そしてその水は地面に吸い込まれ―――否、吸い込まれることなく停滞している。傍から見れば乾いた地面の上に水が乗っている状態だ。


「これは……!?」


「まず言っときます。ごめんなさい。そして―――」


 手に貯めた雷を地面に向かって思いっきり振り落す


「―――恨まないでくださいよ! 《雷撃(コール・ライトニング)》!!」


 だが、この魔法で当たるなら苦労しない。レイナはもちまえの身体能力で一気に詰め寄る。


「させない!!」


 だが、それが狙いだ。俺は魔法を発動したままサイドに飛ぶ。そして手にまとわりついてる雷を水(地面)に叩き付け放電をする。


 そして、雷は水を伝わり、同じく濡れているレイナへと移っていく。

 避けることができないその技は、頑丈な龍の鱗の防御力も余裕で超えた。


「ぐわあああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」


 さすがのレイナもこれには耐えきれず叫び声をあげる。おそらく今まで感じたこともない威力だろう。俺は初めての襲撃の時ふと思ったことがあった。


 戦いが終えた後の龍族はやたらと怯えていた。初めはアレスの怒鳴り声に怯えていたのかなと思ったが、それはどうかと思った。確かにアレスの怒鳴り声は煩くて多少は怖かったが、その程度の精神で人を殺したり出来る物かなと思った。もっと。も初めはそういうやつらもいるだろと思ったので対して深くは考えなかったが、ふと思い直した。


 そう、彼らは6人【全員】で怯えていた。


 そして彼らに共通する出来事、それは俺の【雷魔法】を受けたことだ。3人は雷撃による不意打ち。残りの3人も罠による雷攻撃で沈んでいた。


 もしかして龍族は雷に弱いのか? 俺の頭の中でそんな考えが浮かんだ。

 そしてその考えはほぼ確信になった。


 さきほど俺が撃った《炎風拳(フレイム・インパクト)》はスキルレベル的に言うと威力は3クラス程度。強さ的には中級者クラスだ。

 そして俺が使った《雷撃》は《加減》スキルを限界まで使い威力は1クラスもないだろう。初心者に加え、魔力がほとんどない人が使った程度のものだ。おそらく普通の人間が受けても、多少ピリッと来る程度のものだ。

 だがその魔法は今、レイナを痛めつけている。3クラスの攻撃でも全く効かなかったレイナがだ。


 これは俺の推測だがおそらく龍族の皮膚は電気を通しやすい性質なんだろう。普通の人間でも大したダメージがない雷であれほど痛がっているんだから、たぶんそうだろう……oh……自分の親になにやってるんだろう俺、そして今頃気づくか俺。


 あわてて雷を解除する俺。水もすべて蒸発させ、雷もかき消す。


 レイナは、ピクピクしながら地面に伏している。あわてて俺は治癒魔法を唱える。しばらくするとレイナは回復した。


「くっ……完敗だな。あんな魔法見たことなかった」


 見たことなかった? ただ単に雷と水を合わせただけなんだが、俺は雷は見たことあると聞いてみた。レイナはあるけどそれが何かと言ってきた。


 あれ、雷は見たことあるのか、じゃあ水と雷を合わせたところか?


 あれ……ちょっと待て、俺が今扱っていた魔法って……


・土魔法:《土魔法(アース・ウォール)

 ・土を固めるため、土の材質だけいじった。

 ・水を地面に染み込ませないため

  (雷を使っても威力が半減する可能性があったので

   後、家の前を泥沼にしたくなかったので)


・水魔法:《水衝撃(アクア・ショット)

 ・水を作る実行のため。

 ・また火が効かなかったので効くかなと思ったから、結論は

  全く効きませんでした。まぁそのおかげで雷が弱点とは確信したけど。


・雷魔法:《雷撃(コール・ライトニング)

 ・雷が弱点という推測を確かめるため

 ・水と合わせて感電を狙った。


 ……三魔法同時? 


 普通、水魔法とかは撃ったあとは魔力制御さえあれば自由に消すことはできる。ただし四散した魔力を集めて再び作ることはできない。

 魔力を移動させて任意で発動することができるが、それにも結局魔力は使う。

 そして、俺は必要以上に水が外に行かないように水を集めていた。同時に地面も固めていた。これは一見魔力を消費しないように見えるが実はかなり俺なりに凝ったことをした、そこまでしないでいいだろうと言うぐらいのことをしたが、俺は自分がまだ弱い(経験で)と思っているので、確実に行く方法を取らせてもらった。


 ふつう罠系魔法はばれない様に魔力を極限まで消し発動と同時に一気に魔力を開放する。それは気配察知で感づかれないようにするためである。

 それを土魔法に応用した。水魔法を撃ちながら地面に目が行かないように少しずつ地面を固めて行ったのだ。

 あとは罠同様少しの維持だけでいい。維持なのでやっぱり多少の魔力はいる。


 そして最後に雷の止め。


 つまり、俺は今3種類の魔法を同時に扱っていたのである。終わった後にレイナは気づいたのである。俺も気づいていなかったことを。


 そう気づいたとき


―――特殊条件《賢者》を満たしました。

>スキル《魔法合成》を取得しました。


 えっ、なにこれ?《魔法合成》って? 調べてみると。


――――――――――

スキル名:《魔法合成》

分類:古代スキル

属性:神

効果:取得している種類の魔法を自由自在に合わせることができる。

   威力は各魔法のスキルレベルに依存。

――――――――――


 なんかまたキターーーーー!?

 もうなにこれ!? えっ? チートスキル!? もうこの世界の法則完全に無視していませんか!?もういやだ、遊ばれているような気がしてなりません(泣)


 しかもそこに


「ふっかあぁぁぁっつつつ! さぁやるぞぉ!」


 ドアをぶちやぶってアレス復活!

 

 もういやだぁ!


 その後アレスは俺とレイナでフルボッコにしました。(レイナは主に、ドアをぶっ壊したことに対して、俺はもうやけくそです)











 その夜、俺はこっそり家を出ると家が少しだけ離れたところで《フォース》の練習をしていた。人によって固有能力が違うようなので、俺は何を持ってるのか気になったのだ。

 親の前で見せたらまた面倒なことになりそうで怖いので夜に決行したのだ。ちなみに親は爆睡している。寝たら中々起きない。まだ歩けない時に夜おしっこしたいと思ったときは、散々暴れまくったのに起きなかった。

 その後の結果は聞かないでくれ、もう思い出したくねぇ……


 気を取り直し、眼をつぶり意識を集中させる。スキルには固有発動(魔法系など)と自動発動(見切り、気配察知など)があり、フォースは後者にあたる。

 これも《理解・吸収(スキル・スティール)》の効果なのかなんとなく使い方がわかる。 


 やがて全身に力があふれる感覚がある。


 眼を開けてみて俺の手を見る。暗闇でよく見えないので、火の魔法を手に当て皮膚を見る。

 するとそこにはいつも見慣れている肌色の皮膚ではなく、青色をしていた。レイナみたいに青空色っていうわけではなく普通の青とでもいうのだろうか。


「うぉっ!?」


 思わず声が出てしまいあわてて抑える。どうやらレイナと同じ硬化の能力があるようだ。じゃあ他はどうだろうか。

 再び意識を集中させる。するとふと体が浮く感じたので目をあけ今度は背中あたりに手を当てる。

 するとそこには翼らしきものが……


「……マジか……」


 すげぇな。軽く飛んでみたけど普通に俺の思い通りに飛べる。こんなに初めから飛べるものなのか? それとも風魔法系とか覚えているからその分の補正があるのかな?

 ともかくこれは便利だ。いざというときは、これで逃げよう。空中からなら龍族相手には雷で行けるな。ほかのが来たら……その時は考えよう。


 さて、ここまではほぼ予想通りだ。問題はここからだ。


 俺には他に特殊な能力があるかどうかだ。色々試して見ることにする。











 できねぇ……


 いろいろ試して見たが何もできねぇ、例えば、爪が生えてドラゴンクローみたいなのができるかなと思ったができない。

 もっとも、爪が生えないだけで近いことはできる。硬化で体の強度が上がっているので、あとは身体強化で強引に切り裂いたり、手に風を纏い前方に飛ばすことはできる。風魔法で《風斬(ウィンド・スラッシュ)》という技があるが、それより魔力の消費量が低くても使えるので、これは何かに応用できそうだ。

 しかしあとはこれっといったのはなかった。


「うーん、他にはないのかな」


 しばらく考えていたがそろそろ時間も時間なので帰ることにする。



 それからしばらく夜はフォースの練習をしていたがこのあと特にこれというものはなかった。


 ある日の夜、フォースばかりの練習もあれなので、俺は一番成長が遅い魔法《水魔法》の練習をしていた。しかしフォースの練習もかかせないので硬化したまんまでやっている。フォースを使える限界時間を調べるためだ。

 《水魔法》の中には《氷》の属性も入っている、そのため氷で細かい細工品を作る練習をしていた、別に何か商売をやろうとかない。けど細かい創造は難しいので練習になるのだ。魔力の消費量のわりに周りにバレにくいのもある。


 しかし思ったより難しい、日本にいたころの細かい装飾を思い出し、似たような物を作ろうとしたが、どうしても小さいところは無理だった。


 うーん、あんまり器用じゃなかったけどなぁ、俺の想像力が足りないのかな。まぁ日本にいたときはネックレスとかに縁がなかったからな……

 ええ、あげる人なんかいませんでしたよ25年間。


 思わず昔の嫌な思い出を思い出しため息がでた。その時だ。



 妙に口の中がパリッとした。あれ? なんだ今の感覚は?


 口の中に何か入ったのかなと思い唾を吐く。だが特に、これっといった感覚は無く何も入っていなかった。

 なんだったんだ?


 もう一度ため息を吐く感じで息を吐いてみる。すると同じようにパリッとした感覚があった。この不思議な感覚はなんなんだ。しばらく考えていると……


 そして俺はあることに気づいた。もしかして……



 今度は意識的にイメージする。そして―――


「―――《咆哮》 !!!!」


 すると凄まじい音と共に前方へ雷を放出しつつ龍のブレスが飛んでいく。威力を加減していなかったせいか、かなりの威力だった。


「……すげぇ」


>特別条件《龍の力》を満たしました。

>スキル《フォース》が《龍の力(ドラゴンフォース)》に進化しました。


 ……あっ、これやばいかも……スキル進化も気になるけど、それよりもまずいことが……


 すでに感じていた。気配察知でこちらに来る人が二名。大ジャンプをしている。お前ら人間じゃねぇ、つーか《跳躍》スキル持ってないのに何でそんなに高く飛べているんだよ。


 この辺で来るやつはあいつらしかいないだろ。


「ぬぉぉぉぉぉ、みつけたぞぉぉおぉぉぉっぉ!」


 アレスが突っ込んでくる。あっ、あれ俺の姿わかっていないパターンだ。レイナはわかっているのかな?


 ちょうどいい、試して見よう。


「だれだぁぁぁぁぁぁてめぇはぁぁぁぁ!」


 あっ、マジでわかっていない。そしてあの声はアレスだ。間違いない。

 最近、俺はアレスに対しては特に躊躇は無くなった。アレスが全力でこいやぁというのでやっているのと、手を抜くと後々面倒ダダこねるので。


 再びさっきと同じように意識を集中させる。咄嗟に発動できないのでまだまだ実戦では使えないだろう。

 息を大きく吸い込み―――


「―――《咆哮》 !!!」


 再び、あたりが明るくなる。今度は雷ではない。周囲を明るくするために光属性のブレスだ。《魔力合成》のおかげなのか任意のブレスを出すことができる。


 そしてそのブレスはピンポイントでアレスに向かっていく。先程よりか範囲を抑えている。もっとも威力は縮小されたことにより上がっているが。


 ちなみに放つ前にどっちがアレスかは確認した。暗くても片手剣と槍の違いはあかりました、あとメロ(ry


 その後、辺りにはアレスの絶叫が響いていた。









 俺の目の前には、俺のブレスを受けてボロボロになっているアレスがいる。レイナは朝食の準備をするために台所にいる。もっとも朝食にはまだ些か早く、まだようやく朝日が登り始めた時間帯だが。


「……で、あそこで練習していたと」


「はい」


「全く、お前には驚かされるばかりだ」


「いえ、それほどでも」


「それにしても、もうおれたちじゃ太刀打ち出来ないようだな。正直たまに来る面倒な連中らもなんとかなるんじゃないか?」


 いや、勘弁。また龍族とやりあうんですか? 正直もう、あんなことになるのは嫌なのだが。


「いっそ殴りこむか?」


 後ろから危険な発言と共にお盆をもったレイナが現れた。お盆の上には今日の朝食が乗っている。この世界では小麦が主な主食として扱われる。パンだな。

 米はあるのかな? 近いのはあるといいな。味わいたい。お茶漬けとか。


「おいおい、殴りこむって……」


 さすがのアレスも躊躇する。というよりたぶん話題にしないようにしていたのだろう。アレスたちがどれほどの規模の集団に襲われているかは知らないけど、規模としてはかなりのものだろう。


 もう、数えるのが面倒なほど来てるもんな。一週間に1、2回ぐらい来てるよな。


「正直、そろそろあいつらも諦めて欲しいんだよ。私は、未練なんかないし」


 おお強い。アレスも目を瞑り考える。

 それにしてもこの世界の生き物は平気で殺しに行くような世界なのか? いや必ずしもそうとは限らないだろうな、そうと願いたい。

 でもたぶん正当防衛の延長だろう。やらなければやられる。やられる前にやれ。この理論じゃないのかな?


 しばらくしてアレスが眼を開ける。


「だめだ、俺たちだけならまだしも、クロウもいる。下手に攻撃をしてもだめだ。そのうち諦めるのを待つしかない」


「……」


「それにこれ以上必要以上に血を流す必要もない」


「そ、それはそうだけどよぉ……」


「あ、あの~……」


 たまらず俺が動く。俺も仮説でなんとなく理解はしているが、本当のことを知りたい。


「なんで、お父さんやお母さんは襲われているのですか?」


「……そうだな、お前にも話しておかないとな、この話をするには俺らが出会ったことからだな」


 アレスの言葉を訳すとこうだ。


 アレスとレイナが出会ったのは今から5年前。俺が生まれる2年前のことだな。当時人間の国「アルマスダン国」にいたアレスは龍族を攻撃する兵の一兵として動いていたらしい。


 戦争した理由は至極簡単。龍族がアルマスダンの大規模商隊を襲ったのだ。しかもその商隊はアルマスダン国直下の商隊だったのだ。

 当然このことに襲った龍族の村に弁解を求めた。ああ、話し合う気はあったんだな。だが龍族の回答がまずかった。

 「貴様らが我らの領域に踏み込んだので襲ったまでだ」

 とのこと。ああ、バカだ龍族……。ストレートすぎる……。当然この発言にアルマスダンは大激怒。そして戦争に発展。

 開戦当初から人間族は有利に戦いを進めたという。個々の力は龍族の方が高いが、集団戦による戦いは人間の方が圧倒的に強かったらしい。

 弱いからこそ、集団で行動をし文化、技術を磨いてきたので当然と言えば当然だろうな。そして龍族にはない魔法はたとえ4クラスでも龍族を十分に葬れるほどだ。魔力耐性がないやつらからしてみれば紙装甲に車が突っ込むようなもんだもんな。


 しかし、戦いが終わりに近づいたとき、龍族は思わぬ奇策を使ってきたという。


 それはまさに捨て身の技だった。


 谷間に人間を誘い込み戦う。ここまではまぁいい。問題は次だ。

 なんと龍族側は自分らの同士もろとも谷を挟んでいる山を崩し生き埋めにするという作戦だったのだ。アルマスダン側は参加していた兵の半数が死んでいった。一方龍族側も尋常な無いほどの被害が出た。これは推測だがほとんどの龍族は教えてもらっていなかったようだ。龍族も半数以上が生き埋めになったのだ。


 当時にアレスはこの戦いで、かろうじて生き埋めだけは避けることが出来たが土砂崩れの衝撃で気絶していたらしい、しかも落ちたとこが運悪く人目につかないような場所だったのだ。


 どれくらい時間が立ったかはわからないがアレスは目が覚めた。あたりを見渡してみると、狭い洞窟みたいなところだったらしい。

 土砂崩れの影響でできたと思われる小さい洞窟だったという。打撲したのか全身が痛かったらしいが治癒魔法ですぐに治ったそうだ。

 とにかくここを出ないとなと思い立ち上がった。


 そのとき洞窟の片隅に誰かがいたように感じだ。誰だと叫びながら幸いにも落としていなかった剣を構え気配を感じた方を向く。

 だが反応は無い。少しずつ距離を縮めながら近寄っていく。洞窟の隅は人が立てるところでなくまた太陽の光が届いていないところだった。


 アレスの顔に汗が浮かぶ。味方か敵か? 反応が無いのがより一層、緊張させられる。火の魔法を唱え、灯りをつける。灯りをつけたときに襲い掛かられてもいいように剣は構えたまま詠唱する。


 やがて、あたりが明るくなる。そして誰かが、うつぶせで倒れてるのが見てみえた。


 だがそれは敵だった。薄青色をした皮膚、二本の角。すぐに龍族だと分かった。


「うう……」


 そのとき龍族が動きゆっくりと起き上った。

 アレスは反射的に後退し武器を構え直す。手は両手を扱えるように灯りを火から光へと変える。今まで火にしていたのは、敵だった場合、火で攻撃するためである。


 今なら一撃で行けるか? 起き上った龍族の動きは非常にのろいので簡単に狩れそうだった。


「……あれ? ここは?」


 どうやらあいつも落ちたんだなと思っていた。アレスは龍族語を少しだけ使える。敵国の偵察をやるときは言葉は少なからずも必要なので各々サブで覚えるらしい。


「……?」


 その龍族は女性だった。髪が長かったので薄々感じてはいたのだが。あたりをキョロキョロと見回しアレスと目があった。

 来るとアレスはおもったらしい。だがレイナは見るだけで一向に襲ってくる気配がなかったという。

 アレスはレイナから妙な雰囲気が漂っているのを感じた。なんというか殺気もなければ隠している様子もなかったという。まさに素の状態だったという。歴戦の戦士とまではいかないが、かなりの戦いをしてきたアレスにはそう感じたらしい。 


 そして彼女が言った一言は


「ここはどこ? ……あれ? 私……誰?」


 そう、レイナは記憶を失っていたのである。

 終わった。主人公にチートスキルがつきまくっとる……見切り発車とは恐ろしいですね。

 それでもやりたいのをやり続ける作者。気分は崖に向かって全力疾走中です(泣)

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