第39話:自己紹介
※10/23 誤字を修正しました。
「……色々スイマセン」
「いえ、私ももうちょい手加減すればよかったかなと」
魔法学園の理事長室(?)で謝りまくる両者。どっちが悪いかと言えばあっちだけど立場っていう問題があるので俺も謝る。
「とりあえず出来るだけの補助でいいのでお願いできますか?」
学校の一番お偉いさんが学生である俺にお願い(報酬付きで)するってなんか変な気分だな。
それをやりに来たのでもちろん頷き、俺は患者(特待生組)の所へと向かうことになった。
依頼を出していた理由だけど、ちょいと重症なので手が足りないとの事。どうやらこの世界の治癒魔法の性能はあんまり高くないみたいだ。
切り傷などはすぐに治せても、骨折や重度の火傷などには時間をかけて回復していくしか方法が無いとのこと。
なので、腕が千切れても生やせたりとか天に召される一歩手前まで来た人を急に治すことは無理との事。再生魔法とかは無いと言う事だな。
いや、まて俺前に一度自分の砕けた右腕を治したことあるぞ?(第11話参照) あれは上位スキルだったから出来たことって事か?
っと、着いたようだな。
ドアを開けて中を見てみると……はい見事に俺と戦った特待生組がベットに伏していました。
これを俺がやったと思うと若干胃が痛くなりそうです。
特待生組で大丈夫だったのは8名中2名。青髪の子ともう一人杖を持っていた黒髪の短髪の女の子のみだ。青髪の子は直接打撃を与えたわけでは無いのでもちろん無傷。黒髪の子も同様の内容だ。
従者の人もジト目で俺の方を見てくる。ココロ ガ イタイ デス。
そしてエリラ、見返さなくていいから! 落ち着け! 頼むからこの空間で火花を散らすような行為はやめてくれ!
俺の姿が見えたときの特待生組の反応は色々だ。シュラとカイトは「次は勝つ!」とか言って騒いで痛みが出てベットに伏してを繰り返している。君たち病人なんだからジッとして置けよ。
縦ロールの人は俺を睨むような感じだ。
青髪の子と黒髪の子が立ち上がり、「本当にごめんね」と誤ってきた。特に青髪の子は昨日のノリのいい人見たいなイメージは感じられなかった。
「そういえば、まだ自己紹介をしていませんでしたね。私はセレナっていいます、でこっちが」
青髪の子……セレナは丁重な挨拶をする。
「……サヤ」
サヤ……これまた東日本でいるような名前だな。でも黒髪だからソラよりも日本人って感じがする。
残りの2人は……伸びていますね。茶色い髪にどこかすっとぼけたような顔をしている少年と、似たような顔をした少女か。兄妹とかかな?
「さて、治療を再開するかの、クロウ君だったの早速じゃが準備を―――」
「必要ありません」
「はっ?」
治療班……もとい保険の先生が「何言ってるの?」と言った顔をしている。その言葉に従者の人も何人か剣に手が出かかっている。おいおい、ここで抜いたらアウト……ってエリラ、お前も下ろせ。気持ちだけはありがたく受け取るから下ろしてください(切実)
「一人で充分ですよ」
数にして6人。複数の人の治療をやるの初めてだが問題ないだろう。むしろあのスキルを試させてもらおう。
両手を前に出し意識を集中させる。普通治癒魔法は一人に対して意識を集中させるのだが、今回は6人全員一斉に意識を集中させなければならないので普通より大変だな。
「《女神の祝福》」
《治癒魔法》の上位スキル《天空魔法》の光はすべての闇を退け術者に恵みを与える。FFなどでは白魔法と言われる分類の上位に相乗効果が乗ったものといえるかもしれない。
後は全員に光が降り注ぐようなイメージをしたら完成だ。色はやっぱり緑だよな。
光は怪我人やその周りにいた人すべてに行き渡る。もちろん普通の人には無害だ。そして光は怪我人の怪我を時間にしてわずか十数秒足らずで完治をさせてしまった。
当の本人からしてみれば緑色の謎の光が飛んできたかと思うといきなり痛みが引いていくという、日本にあったら「何それ? 危ないお薬?」とか聞かれそうな出来事だな。
>特別条件『聖者』を取得しました。
称号についていは今はスルーでいいか。
真っ先に気づいたのは縦ロールの子……えーと名前は……聞いてなかったな。後で聞いておこ。
まあ、その子が真っ先に痛みが無くなったのを感じ、ベットから飛び跳ねるように飛び出した。従者からしてみれば大怪我を負った主人が行き成り空中1回転を決めるというアクロバティックな動きを見せたように見えるんだろうな……。従者さんの顔真っ青です。
「……治った? あなたのおかげですの?」
「ええ、まあ治癒魔法は少々得意なので」
「あれのどこが少々よ」とエリラから愚痴がこぼれる。エリラも治癒魔法は初期の初期だが取得しているので俺がやった難しさが多少でもわかっているのだろう。ましてや専門職である学校の先生は目をパチクリさせながら「えっ、何が起こった?」とアルゼリカ先生に聞いている始末だ。
「あっ、それより従者さん大丈夫?」
縦ロールの従者さんは今にも卒倒しそうな勢いだ。大丈夫だから、現実に戻って来い! 縦ロールの子が自分の従者の顔をペチペチ叩き「ちょ、どうしたのよ!?」と言いながら必死で従者の両肩を持ち揺さぶっている。で従者はと言うと一応意識は戻ったみたいだけど、今は別の意味で飛んでいきそう。主に自分の主のせいで。ご愁傷様です従者さん。
「こんなの見たことないぞ!? クロウ君一体どうやったのだ!?」
あっ、保健の先生がアルゼリカからの説明を諦めた。
「天空魔法と言われるスキルです」
「な、なんだそれは? 治癒魔法ではないのか?」
そういえば、治癒魔法を始めとするスキルの上に存在する《上位スキル》の存在はまだこの世にないとかセラが言ってたな。
例え治癒魔法のスキルレベルを10にしてもそこから進化して上位になると言う事は今まで無かったらしい。唯一の例外が俺との事、つまり上位スキルを持っているのは今、世界で俺だけになる。……セラの説明が正しければ。
名前だけは公開してもいいとのことなんだが、ただし説明については決してしないように。と釘を刺されている。
理由は話してくれなかったけどセラにもセラなりの事情があるんだろうな。と俺は思ってそれ以上深入りするのはやめたんだっけ?
「お、教えてくれ! どんな魔法なのだ!?」
当然知りたいですよね。でも残念説明は出来ません。
「それは秘密です。冒険者が簡単に教えるわけないでしょ」
俺はここの学生であって学生ではない。特待生として呼ばれたから来ただであって、別に今すぐやめてもいい。しつこく来るようならこれで仕留めればいい。
……図書館が使えなくなると言うデメリットに目を瞑ればだけど。
「……そうか残念だがしょうがないな」
あれ? 意外とアッサリ引いてくれたな。まあそっちの方が俺的にも助かるが。
「ほれ、約束の10万Sと基礎魔法薬じゃよ」
保健の先生が戸棚から引っ張り出してきた袋の中には報酬の10万Sと基礎魔法薬が5本しっかりと入っていた。
アイテム名:【基礎魔法薬】
分類:道具
属性:―
効果:魔力の回復
詳細:魔力を直接体内へ入れるタイプの薬。魔力が速めに回復するが体力や怪我などは回復しない。
まあ、基礎魔法薬はいらないけどな。でももらえる物は貰っておこう。
ほかの面々も復活しだしたことやし、俺はさっさと行くとするか。
「じゃ、今日はもう用事は無いのd(ガシッ」
俺が反転した瞬間に俺の肩に何やら違和感を感じた。なんというか……掴まれているよね?
「ふふふ、クロウもう一度勝b―――」
「《土鎖》」
すまんがカイト、しばらくはやめてくれ。俺のsan値がやばいんだよ!(色々な意味で)
「うわっ、な、なんだこれ!?」
「土魔法で作った鎖ですよ。あっ、今すぐ戦いたいのならそれぐらい引きちぎってください。ただの土に魔力を込めただけの代物ですので」
「上等! ふんぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
精一杯力の限りに引きちぎろうとするカイト。だが、土の鎖はピクリとも動かない。
(まあ、筋力ステータスが5000ぐらいないと無理だと思うけど……)
あれは、アレスとレイナと俺で行った龍族の集落を襲った際に敵を無力化するのに使用した手錠を改良した魔法だ。
「はい、では」
「ちょ、こ、これどうするの!?」
アルゼリカ先生も壊すのに参戦しながら言った。やっぱこのままじゃ駄目か。
「あ~、はいはい」
俺が鎖に触れるとまるで無かったかのように消えていった。
「ふーむ、鎖か、今度生徒が暴れたとき用に一つぐらい欲しいの」
……保健の先生は苦労されているようです。
「じゃあ、今度こそ」
「お待ちなさい」
……今度は縦ロールの子か
「なんでしょうか?」
「その……あの……こ、今度、私の家に来なさい! 借りを作ったままではテルファニ家の名折れですわ! 個別にお礼はさせてもらいます!」
何故か顔を赤くしながら言う縦ロール。そして次の瞬間には「い、今のは見なかったことにして」と自分がついさっきまで寝ていたシーツに顔を隠している。
「えっ、いえお礼なんていいですから」
ただ治療しただけなんだけどな。……俺が怪我させたのを。と、そこから思いがけない追撃が来る。
「クロウ様、どうかローゼ様の好意を受け取ってくださいませんか?」
ローゼ……それが、あの縦ロールの子の名前か。と言うのも、その名前を言ったのがついさっきまで縦ロールの子の動きに顔真っ青にして、さらに縦ロールの子からのまるでM○3のアオア○ラの動きにあるプレイヤーを上下に激しくシェイクさる動きを食らった人だったからだ。
「な、何てことを! 何言っているのですか!?」
シーツに顔を隠していたローゼが自分の従者を両肩を揺さぶり激しく前後にシェイクしている。ちょっあの従者さんの顔、また青くなっていませんか!? 耐性無すぎない!?
「あの~」
このままだと、逝きそうなので救援をすることに。縦ロールの子……ローゼは顔を赤くしているは半泣き状態になっているわで大変な状態になっている顔をこちらに振り向けた。
「別に行くのは構いませんよ?」
「なっ……」
顔をさらに真っ赤にしたローゼがいやあぁぁぁぁと言いながら保健室から飛び出していった。そのまま何やら分からない言葉を発しながら遠くへと消えて行った。
……何でだろ。今マンガの中の主人公の気持ちが何となくわかった気がする。
「申し訳ございません。うちのローゼ様が」
ってうぉっ!? 復活早っ!?
「急で悪いのですが、よろしければ明日にでも学校に来てくださいませんか? ローゼ様にもそれまでに準備させますので」
「え、ええ、俺はいいですけど……」
「すいません本当に……では私も失礼させてもらいます」
丁重な挨拶と共に去っていく従者さん。なんというか……さすがだな……
「よし、俺は特訓だ! カイト! 行くぞ!」
「うぉっしゃあぁぁぁぁ!!!!」
ズダダダダダダダダダッッッッッ!!!! ……
……もう言葉が出ません。
「あっ、わ、私も行きます。クロウさん本当にありがとうございました」
「……ありがとう」
セレナとサヤも二人の後を追いかける。日本でもこれくらい明るくて元気な子に会いたかった。従者さんは大変そうだけど。
「……クロウ君だっけ?」
声のした方を振り向くと、特待生組の残りの二人が立っていた。
「ありがとう。無理に試合組み込んで治療もしてくれたらしいね。詳しいことはメイドから聞いたよ」
メイド……こちらでも聞く日が来るとは。いやそれに近い人はたくさんいたけど、大抵、部下とか奴隷とか従者とか言われていたからな。
「ありがとうなのです!」
元気だな。ちなみに最初の方が少年で後の方は少女だ。
「僕はテリーと言います」
「妹のネリーなのです!」
あっ、やっぱり兄妹だった。妹は活発そうだけど、反面兄の方は少し落ち着いた人かな?
「今度、お礼でも……」
「あっ、それなら食事とかでいいですよ。本当はお礼とか充分なんですけどね」
取れるところから取ってるし。俺はどこかの某RPG見たいに人の引き出しから物を盗む趣味とかないし。
「いえ、そうじゃないとこちらが落ち着きませんので、では今度、お勧めの店を紹介しますよ」
「あそこですの!? ネリーも楽しみなのです!」
うーん、多分この年齢でも行く店だから俺も大丈夫だよな? 少しだけ年下に見える程度だよね?
「ええ、是非」
「では、僕たちのこれにて、ほらネリー行くよ」
「はい、なのです! クロウさんまたなのです!」
二人仲良く揃って保健室を出ていく辺り仲がよさそうだよな。
こうして、残るメンバーは俺と保健の先生とアルゼリア先生のみとなった。
「……なんというか元気な人たちですね」
正直な感想だ。サヤを除くと、熱血2名、ツンデレ(?)1名、元気な子2名、普通ぐらい1名という編成だもんな。
「先代の理事長は、若手を育てることに重点を置いていたらしくて、ああやって可能性のある子は率先して引き入れたのよ。それこそ周囲の批判なんか目もくれずにね」
そう言ってる割には全員、ステータスは高めだったぞ? そう考えると先代っていい目していたんだな。今は知らないけど。
「では、私も行きます。クロウ君本当に、ありがとうね」
「あっ、いえいえ、では私も」
「クロウ君、また大変な時は頼んでもいいかね? もちろんそれ相応のお礼はするよ」
「ええ、いつでも」
こうして、俺の依頼は無事、終了した。今こそ言えるが嫌われてないか多少心配だった。
でも、皆全然そんな雰囲気は無かったな。本当よかったよ。
俺は安堵の息を吐きながら学校を後にした。
特待生のステータスは後日本編にて紹介します。




