第35話:魔法学園
「でけぇ~……」
初めて見た感想はコレだ。昔大きいどーむに行ったことあるけどそこよりも大きそうだ。
ここはエルシオンより東にある都市「ハルマネ」。商業都市として栄えている一方。大陸有数の魔法学園もあり、魔法都市とも言われることがあるらしい。
そして、俺は今、その有数の魔法学園の建物の近くにいる。
「って、見惚れている場合じゃねぇな。どこにいればいいんだ?」
学園の外周りを回ること10分。俺はようやく正門にたどり着いた。いや大きすぎでしょ? 直線距離でこの長さって一体……。
顔を見上げると学園の規模の大きさが見て取れた。赤いレンガで作られた校舎らしき建物を中心に色々な施設が見えている。ただし透視と千里眼を使用して見える範囲でのお話だが。
門をくぐり受付らしき所に向かう。
それにしても今日は休みかな? ほとんど人の姿は見えない静かな学校ってなんか嫌だな、俺の個人的な感想だけど。
そうこうしている内に受付の所へとたどり着く。
「あの、クロウですけど」
「クロウさんですね、お待ちしていました。こちらへどうぞ」
受付の女性は笑顔で俺を案内してくれた。案内してくれた個室で待つこと5分。コンコンとドアをノックする音が聞こえ続いて人が中に入ってくる。
俺は入ってきた人物の顔を見て驚いた。日本では大体どこの学校も校長先生といえば歳がある程度行った中高年の男性が俺のイメージだったんだが、現れたのはまだどう見ても20代ぐらいの女性だったのだ。秘書とかかな?
「あなたがクロウ・アルエレス君ね。初めましてこの魔法学園を統括しているアルゼリカ・マーベルです。よろしくね」
あっ、マジで校長だった。
「えーと、初めましてクロウ・アルエレスです」
挨拶と共に握手を交わす。アルゼリカは笑顔で俺の顔を見ている。楽しそうですねあなた。
「フフ、まだ6歳の子供って聞いていたんだけど、随分と大人びているわね」
「そうですか?」
まあ見た目は6歳でも中身はいい年した20代の精神だからな。どこかの某名探偵じゃないぞ。あんなに頭は切れる方だとは思っていないし。
「では、さっそく話を始めましょうか、まずは推薦を受けて頂いてありがとうございます」
「いえ、私も学園って所に興味があったのでうれしいお誘いです」
「そうですか、それはなにより、ではあなたが編入する特待生についてですが……基本的に自由です。授業などのカルキュラムなどは組み込まれていませんので、どこの授業に入っても結構です。逆に授業を受けずないでも構いません。あなたの場合は冒険者ですので依頼を受けても構いません。ただし月一である朝礼にだけは出席して頂きます」
「依頼が一か月以上かかる物だったら?」
「その場合は特待生の担任を務めている人に届け出をしたら問題ありませんよ。あっ担任は私ですので、依頼などで無理な時は気軽にどうぞ」
「えっ、担任?」
校長先生だよね?
「はい、ここの学園では校長が特待生の担任も兼任することになっているのです。推薦を出すのは校長の権限なのですが、そこ代わりに面倒を見ることが前提ですので」
なるほどな、自分で呼んだんだから自分で責任を取れと言う事か。まあ月一の朝礼以外は校長の仕事が中心だろうからあまり支障はきたさないのかな。
「わかりました」
「あと、特待生枠は一人だけ従者を付けることが出来ますがどうしますか?」
「一応、一人候補はいるのですが、従者はなんで必要なのですか?」
「理由はいくつかあります。まず自分の身の回りの世話。勉学だけに集中してもらいたいからです。次にあるていど実力、または地位をあることを周囲に見せるためですね」
なるほどな、なんかメイド見たいな役割なんだな。
その後も、学校に入学する上での諸注意や軽い説明を受けたのち何故か俺は闘技場に立たされていた。
もう一度言います。私は今闘技場に立たされています。
「えっと、何が始まるのでしょうか?」
「まずはあなたの実力を見せてもらいます。これは特待生枠では必ず行う事で試験などではないのでその辺はリラックスしてください」
いやいや、リラックスってこんな闘技場のど真ん中に急に立たされてリラックスなんか出来るか!
「では、お願いします」
……あれ? 出てこないぞ? 俺の正面にはいかにも何か出てくるっぽい出入り口が口を開いていた。だが一向に時間が立っても出る気配が感じられない。
「……まだかな」
そう呟いたとき
「ふはっはっはっはっーーーー!!!!」
バッと後ろを振り向くと観客駅の上に何故かマスクをした謎の少年がポーズを決めて立っていた。
「……」
「とうっ!」
シュパッと言う音と共に観客席からジャンプをするとそのまま華麗な空中三回転を決め―――
(ゴキッ)「あばっ!?」
……れませんでした。
アルゼリカさんの方からため息が漏れている。
「シュラ君。ふざけないでサッサと立ちなさい」
頭から砂の地面に突き刺さっていた少年はよっこらせっと地面から頭を外す。あの……大丈夫なの? さっき ゴキッ って音が聞こえたんだけど。
俺の心配を余所にシュラと言われた少年は砂を払い落とす。「よしっ、大丈夫だな」と自分の身の周りを確認してから
「俺はシュラだ! よろしくな!」
「あっ、はい、よろしくお願いします」
「……シュラ君はあなたと同じ特待生で去年入学して来たわ。クロウ君、あなたには今から彼と模擬戦をしてもらいます」
「と言う訳だ! よろしく頼むぜクロウ!」
……嫌にテンションたけぇな。
「では二人とも位置に付いて、始めるわよ」
「はい」
「おう!」
……なんでだろ、ここ最近闘技場にやたらと縁がある気がするのですが。
「準備はいいですか?」
「いつでも」
「気合い入れていくぜ」
「武器は使わないようにね」
魔法学園だから魔法を見せるのか。どっちにせよ今の俺は普通の武器を持ってきていないからだせるにだせないんだけどな。後で普通の剣買っておくか。
「では……はじめ!」
先手を取ったのはシュラだ。開始と同時に一気に俺との距離を詰めだした。俺は距離を置くことよりも防御魔方陣を展開する方を優先させる。
「くらえぇ!」
「《防壁》」
ドォンとシュラの拳が俺の防壁を壊そうと襲い掛かって来る。
てか、武器は禁止だけど格闘戦はいいんだね。つーか音やばい! どう考えても普通に受けたら骨の一本や二本は軽くいきそうなのですが!?
「おおっ! すげえな俺のパンチを初手で止めたか!」
シュラの歓喜の声が聞こえる。いや止められてうれしいのですか?
「よしっ、次は全力で行くぞ! 簡単に終わらないでくれよな」
……えっ、全力じゃなかったの?
再び同じ構えを取るシュラ。俺は防壁を今度は二連式にして防御態勢を取る。
「《崩拳》!」
うげっ、技使ってきか!?
防壁と拳がぶつかり合い当たりに砂吹雪が舞い上がる。今度の攻撃も防ぐことは出来たが防壁の一部にヒビが入っているのが見て取れた。
あぶねぇ……普通の《防壁》だったら完全に貫いていたぞこれ。
「今のはなんだ?」
「《防壁》ですよ」
「いや、ただの防壁じゃないだろ? 殴った時の感触が普通の《防壁》とは若干違った気がしてな」
ぐっ、鋭い……
「まあ、少しだけアレンジが入っているいますけど」
少しレベルじゃないけどな。
「すげぇな、お前ちっこいのにすげぇな! 燃えて来たぜ!」
完全にスイッチ入っているよなこれ……。
こうなると俺も応戦をするしかないよな。左手をバッと横に広げると魔方陣が俺の周りに展開した。数にして20個。大きさは人間の頭ぐらいの大きさしかない小さな物だ。
「おっ、どんな魔法を放つんだ?」
「まあ見ていればわかりますよ……《魔弾》」
各魔方陣の中央から一斉に放たれる魔力の塊。形は今風の銃弾でもよかったんだけどあえて昔風の球体風だ。
「ぬぉ!?」
一斉に襲い掛かって来る魔弾を回避するシュラ。右左空中って自在に逃げ回るな、おい今空中を蹴らなかったか!?
ならば……俺は魔方陣を切り替え(もちろん外部からは分からないように)直線型から追尾型へと切り替える。
当然、今までの動きから一転、逃げても逃げても付いて来る魔弾にシュラも回避に苦労しているな。
「なんで急についてくるんだ!? お前何したんだよ!?」
「ちょっと球質を変えたのですよ、ほらしゃべってていいのですか?」
気づくとシュラを囲むように魔弾が空中でホバリングしていた。俺が撃った魔弾だから俺も操作できるからな。
「げっ!?」
「《乱撃弾》!」
全方位からの一斉射撃。さてどう回避するk―――
(ズガガガガガァン)「あぎゃあぁぁぁぁ!!!!」
……しませんでした。
無残にも全方位からの総攻撃で地面に伏してしまったシュラの姿がめっちゃ悲壮感漂わせている。
「そこまで!」
アルゼリカの声と共に勝負は終わった。
「実力はある程度見させてもらったわ。素晴らしい実力ね。特に魔力の球を自分で操作するなんて簡単に出来ることじゃないのにね」
「ありがとうございます」
「さてシュラ君は医務室に運ばないと」
「いえ、必要ありませんよ」
俺はサッと治癒魔法をかける。ほどなくしてシュラがガバッと起き上り辺りを見渡す。
「ハッ!? 俺は今まで」
「ほら、シュラ君の負けよ。それにしてもクロウ君治癒魔法まで使えるのね、他にも持っていたりするの?」
「え、えーと一応土魔法を」
「三種類の魔法を扱う魔道士なんてね」
「クッ! 俺もまだまだなのかぁ!」
「当然よ、世の中にあなたより強い人なんていくらでもいるわ、では本日は解散。明日は一か月に一度の朝礼ですので、必ず顔を出すようにね」
「はい、わかりました」
「へーい」
「シュラ君?」
あ、あの……アルゼリカさんの背後から負のオーラが見えるのですが
「は、はい! わかりました!」
さすがにビビッたのかスッと立ち上がり最高とも言えそうな敬礼をするシュラ。アルゼリカはニコッとすると「じゃあまた明日ね」と行って去って行った。
「くそっ、帰ったら早速修行しなおすぜ! クロウ! 今度は負けないからな!」
そういうとシュラは猛ダッシュで帰っていった。いや……早すぎませんか?
「……って新入生の俺軽く放置?」
本当にルーズなんだな。まっ気楽でいいか。俺はそう考えることにし自宅に帰ることにした。もっとももう夕暮なので歩いて帰れば何日かかるやら。
なので、ここは俺のチートっぷりを発動させてもらおう。
とりあえず怪しまれないように校門から出ると、そのまま賑やかな繁華街へと向かう。そして繁華街に付くととりあえず人目の着かない裏手へと出る。
「よし、ここなら問題ないな」
周囲に誰もいないことを確認し、意識を集中させる。
「……《移動門》発動」
目の前に紫色をした空間が現れる。これは一度行ったことがある所なら何処にでもいける魔法でドラ○エあたりだとルーラに相当する魔法だな。
もっともこんな魔法人まで絶対見せれないけど。
紫色をした何とも言えない門を通り抜けると、そこには慣れつつある我が家の中だった。
……雪国だったらどこかで聞いたことあるような……。
「いたたたた…… 本当に戻って来たのね」
ちょうどばったりと出くわしたエリラが驚いて地面に尻餅をついていた。
「あっ、すまん大丈夫か?」
俺は手を差し出しエリラを起こす。
「大丈夫よ。それにしてもすごい魔法よね。一体どこで覚えたの?」
「本で」
ただし、前世でというオマケが必要ですが。
「そんな本見たことないわよ。古代魔法にでも行かないとないんじゃないかしら」
「まっ、そんな事より、あいつらとは打ち解けられそうか?」
「ええ、まだ言葉は全然だけど多少のことなら」
エリラは今、急いで獣族語を習得しようと猛勉強中だ。まあ獣族語は少しだけ大陸語に似たような所があるから比較的覚えやすいとは思うけど、がんばって欲しい。……人にスキルを覚えさせる方法ってないのかな? 今度セラに聞いてみよう。
あっ、ちなみに料理は俺+獣族の女性達で作っています。正直なところ俺が一番上手いのと(※料理スキル:7)ある程度日本での料理が再現できそうな部分は再現しているので獣族の女性たちから色々質問されたりもしています。
エリラが背後で「私も料理くらい出来るようになりたいわ……」と嘆いていたので今度教えてあげようと思う。
でもエリラも確かレベル5はあったよな?
学校の事もあるしこれから忙しくなるな。俺はそんなことを考えながら忙しい夕方を過ごすのであった。
……一応言っておくがエリラと熱い夜なんてまだ過ごしていないからな、個室あげると行ったのに「クロと同じ部屋でいい」とか言われて相部屋ですが。……一緒のベットで寝ますか
俺の体がまだ発育途中だったことにありがたいと思った瞬間であった。
と言う訳で、次回はたぶん大量にキャラが出てきますよ(たぶん)予定しているのだと10人程度なんだけど、なんかまだまだ増えそうな感じです。
並行して番外編も書いていたりするのですが、話の流れが切れそうなのでまだ控えさせてもらいます。
本日も読んで下さった皆様。本当にありがとうございます。
※アドバイス、感想などありましたら気軽にどうぞ、
どしどし送ってください!
※誤字脱字がありましたら報告よろしくお願いします。




