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第30話:許せない者

 ※10/15 一部に加筆修正をしました。

「いやああああああああぁぁぁぁぁ!」


 暗闇の中で響き渡るエリラの絶叫。竪穴の深さはおよそ20メートルと言ったところか。透視スキルでギリギリ見えた限りではだが。今度は《暗視》スキルとか作っておこう……。


 さて、あんまり叫び続けられても困るのでそろそろ助けますか。


「《空術》!!」


 風魔法を魔法制御で完全に操り空へ浮かび上がらせる魔法だ。俺だけなら自由に飛び回れるんだけど他人の飛行実験とかやっていないからな、安全面を考慮して浮かび上がるだけの魔法で行かせてもらう。


 フワッ、そしてスタンと地面に降りる。あたりには松明が立ち並んでおり、意外と視界は良好だ。これなら暗視スキルとか今は作る必要は無いな。


「く、クロウさんすごいです、あんなまほうを使えるなんて」


 フェイが俺の背中で褒めてくれた。まあ多分俺にしか出来ないオリジナルかもしれないけどね。あっでも国の直轄軍ならいるかもな。


「……でエリラ、なんで梯子があったのに何で飛び降りたんだよ……」


 俺はジト目で「い、生きてる!? 私生きてる!?」的な顔をしているエリラを見る。


「うっ……ご、ごめんなさいつい」


 つい か……これからの事が心配だな。一応聞いておくか


「エリラ」


 俺は威圧を発動し(と言っても弱めだけどな)エリラに聞いた。


「……お前は人を殺せるのか?」


「……何言ってるの? 賊を殺してもいいのとか当たり前でしょ」


「……そうか、よしじゃあ行くぞ」


 やっぱりこの世界の価値観は前の世界と比べると大違いだな。特に人や動物の命があまりにも安すぎる気がする。まあじゃないとこの世界を生きて行けないのか、それともそういう教育を受けているのかは知らないけどな。


 でも、やっぱりなぁ……何と言うか……RPGで山賊を倒しても何とも思わないけどやっぱりリアルは違うよな。当然と言えば当然だが。


 でも、俺もこの世界に来てもう6年もたつ。別に斬り合いが初めてと言う訳じゃない。アレスたちと初めて初陣をしたときには数百人規模の死体を見せつけられているし、俺自身も黒龍戦の時に残っていた集落ごと吹き飛ばしてしまうほどの魔法を撃ったからな。おそらく俺もすでに血で汚れているんだろうな。


 だからと言って簡単に殺すほど、俺は悪い奴じゃない。この世界の常識からしてみれば明らかに異質な考えを持った俺だろうが、それでいいと思っている。


 まあ、俺は……言うまでもないか、出来る限り助けては上げたいが……今回ばかりは死人ゼロとは行かないだろう……いや無理だろうな。


 ふと、思った、それはエリラのあの間だ。僅かにだが悩んで答えたように俺には思えた。

 

 もしかして……俺は考え込みながら薄暗い洞窟内を奥に進むのであった。






「いたぞ!」


 通路を塞ぐように武装している山賊がおよそ20名程度。その奥にちょっとした広間が見えるがそこにもさらにいるようだ。どうやら俺が思っている以上に数がいるようだ。


「ここに獣族の奴らが囚われているだろ。悪いが返させてもらう」


 俺が一歩前に出て堂々と宣言する。その宣言にポカンとした山賊たち、やがて一人の男が笑いだし釣られて全員も笑い出した。


「ギャハハハハ!! おいチビ! お前頭がおかしくなったんじゃねぇか? あいつらは家畜なんだよ。森の中にいたから捕まえて持ってきただけなんだぜ? 返させてもらう? そもそもどこに返せばいいのですか? おチビちゃん ぎゃははははははは!」


 その声にフェイが微かに怒りに震えているのを俺は感じた。辺りに響き渡る笑いの声、それはクラス全員からイジメを受けるレベル……いや、フェイにはそれ以上に感じられるだろう。


 昔の俺なら逃げていただろうな。力が無い者が助けても巻き込まれるだけだ。俺が出来ることは誰もいない所でフォローすることぐらいしか出来なかったっけ。

 でも結局最後にバレて……いや、これ以上過去の事を思い出すのはやめて置こう今は今だ。


 ――――お前ら……生きて洞窟から出られると思うなよ


 俺は密かに足に魔力を込め、そして機会をうかがっていた。


「さてと、おチビちゃんその後ろにいる獣人……いや家畜を渡せばここからただで出してあげるよ、もちろんここの事はお母さんたちには黙っておけよなおチビちゃん」


「いや、まとうぜ、後ろにいる女もだ」


「ああ、忘れていたぜ。そいつも置いていきな! 俺たちがタップリ可愛がってやるからな」


「おい、待てあいつの首にあるのは、奴隷のマークじゃねぇか?」


「もしかして、あいつが主人なのか?」


「じゃあやっぱ殺そうぜ、ぎゃはははははは!!!」


 その言葉にエリラが剣を抜く構えに入る


「誰があんたたちに―――」


 その時



 グシャ!!!!!!!!



 まるでトマトが潰れたような音が聞こえた。そしてさらに



 ボキボキボキボキッッッ!!!!!! 

 ベキョベキョ!!!!!

 グチャッッッ!!!!!!


 砕けるそして潰れるような音。山賊たちは一瞬何が起きたか分からなかった。

 

 わかったのは、目の前にいたはずの仲間の首から上が跡形もなくなくなりさらに横にいた仲間の姿が見えなくなったことだけだ。


 数秒後、ようやく山賊たちは我に返った。


 目を下に向けると、そこにあったのは……、首より上が無くなり、あたりに耳や目玉、さらには脳の一部らしき物が赤色の液体と共に転がっており、その横に骨、筋肉、内臓、血ともはやなんの生き物か分からないぐらい原型を留めていない物体があった。


「……えっ?」


「…………次は誰だ?」


 声の方を向くとそこに立っていたのは左足全体が赤く染まっている俺が立っていたのだ。












「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


「あ、あにじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 先程の笑い声とは全く変わり大声で仲間のもとへと駆け寄る山賊。それをじっと見つめる俺。

 悪いが容赦など一切しなかった。身体強化を5倍近くまで跳ね上げ、さらに《不殺》スキルを解除し、獣族の事を家畜呼ばりした奴の頭をスキル《格闘:10》の力を使い膝うちで風船のように潰し、潰した山賊の体を借りすぐ横にいたエリラを置いていけと言った山賊に踵落としをくらわせた。その様子は水風船の用にはじけると行った感じだった。


「……俺からしてみればテメェら全員クズなんだよ……」


 その声に山賊たち全員が一斉にこちらを向く。威圧スキルもフル活用させてもらう。


「生きてここから出られると思うんじゃねぇ……さぁかかってこいやぁ!!!」


 この言葉に山賊たちは誰一人して立ち向かっていくものなど誰一人もおらず、我先にと一斉に逃げ出した。


「逃がさねぇぞ!! 《土壁》!」


 山賊たちが逃げていく先の通路が一瞬でふさがる。何が起こったかわからない山賊たち、すると山賊の背後でキィンと言う音がする。山賊たちが振り返ってみると。クロウが刀を片手に近づいて来ていたのだ。



「さて……誰から死にたい?」


 

 このとき山賊たちは悟ったのだ。自分たちは絶対に相手をしては行けない奴を相手にしてしまったのだと。

 この世界で他種族を襲う事など日常茶飯事だ。そう言うならば山賊たちの方が普通なのだ。だが、目の前にいる化け物はそのすべてを真っ向から拒否をした。

 そして、その非常識の塊は仲間を一瞬でミンチにして今自分たちにも近づいてきている。


 尻餅をついてアワワワと言いながら壁ギリギリまで逃げていく者たち、あまりの恐怖に失禁をする者や気絶をするもの。この場にいるすべての山賊が終わったと思っただろう。


 だが、化け物は刀を鞘に戻した。そして見下すような眼差しを山賊たちに向けた。その目はまるで最底辺の者を見るような眼差しであった。


「お前らの命までは奪わない。だがこれだけは覚えて置け、俺は見た目の違いや文化の違いなどですべてを決める奴らが大っ嫌いだ。この世界の歴史で何が過去にあったかは知らんが俺はそんなことなんか関係ねぇ。あと、エリラは奴隷なんかじゃねぇ、俺の大切な仲間だ!!! もし、一人でも奴隷と言ってみろその時は……」


 クロウはそれだけ言うと微動だにしないエリラとフェイのもとへ戻っていった。あとに残された盗賊たちはもはや何も言う事も出来ずに、ただ命があったことに安堵の思いを浮かべるのだった。

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