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第241話:翼を持つ者の暗躍

「でりゃぁあ!」


 フェーレが持っていた剣はギィンと音と共に空高くへと舞い上がり、空中で数回転ほどしたのち地面へと落ちて行った。そして、気付けばフェーレの喉元には先ほどとは別の剣が突きつけられていた。


「はい、そこまで。テリュールの勝ち」


 勝負ありと俺がコールをする。


「ふふ、また私の勝ちね」


「うう……また負けた……これで5連敗だよ~」


 しょんぼりするフェーレと対照的にご満悦なテリュール。今何をしているかと言うと訓練と言う名の模擬戦を行っていたのだ。基本的にお互いに剣を持った状態から開始し、魔法、剣と攻撃方法は特に制限せずに好きに戦わせる。必要であれば槍だったり、短剣だったりと武器を切り替えたりもする。ちなみに銃は使わない。だが、銃剣を使った勝負もたまにやったりする。

 最初は色々な相手に自分の力を使い柔軟に対応させるのを目的としていたのだが、次第にその目的は忘れられ対戦による勝敗の方が大事になっていた。まあ、本人たちはマジメにやっているので良しとしよう。

 でも、夜の営みの権利を賭け事に出す必要はないんじゃないかな? 俺の目の前で「今日は私が相手です!」と白昼堂々と宣言されても対応に困るのですが。


 と、そんな事情は置いといて、今の状況だが勝ち抜き方式の勝負でテリュールが5連勝をしたところだ。俺とエリラのレベルはちょっと桁がずれているので参加していないが、この獣族達相手に5連勝したのはすごいことだ。一人一人の能力は中隊にも匹敵するような人物ばかりなのだが。


「テリュールってこの中では新参者なのにすぐ強くなったよな」


「へへっ、剣に関しては前の世界でも鍛えてたから負けないわよ」


 いや、あんた剣だけじゃなくて魔法も直ぐに覚えたじゃねぇか。回復魔法と火と風の魔法。さらには闇の魔法に音の魔法ってあんた魔法だけならエリラよりもキャパシティー上じゃねぇか? 一応注釈しておくと、この世界の魔法は基本相対する魔法でなければ際限なく覚える事は出来る(ただし俺は例外)しかし、それはあくまで論理上の話で通常はどんなに頑張っても3個が限界で、才能あるごく一部の人が4つほど覚えることが出来る程度なのだ。それを平然と無視して5つの魔法を覚えているのだからあんた何者だよ問いたくなる。しかも短期間でそれをやってのけているのだから恐ろしいことありゃしない。多分、この先教えればもっとたくさんの魔法を覚えれるだろう。

 もしかして、テリュールって天才? あのリバースお嬢さんがねぇ……特技は剣とオロロロロするだけじゃなかったんだな。


「……クロウ」


「はい?」


「今、物凄く失礼な事を考えてなかった?」


「ソンナコトアリマセンヨ」


「そう……ならいいのだけどね」


 鋭いなぁ……


「あっ、そろそろ時間だな。じゃ、俺は出かけるけど怪我だけはしないようにな」


 俺は用事を思い出したので早々にここから立ち去る事にした。決してテリュールから懐疑の眼で見られるのを回避するためではない、断じて違う。


「あれ? 今日は店も休みだけどどこに行くの?」


「んー、ちょっと……取り締まりをね」


「?」



==========


 同時刻、場所「???」

 ゴポゴポと気味が悪い音が聞こえる暗い室内。辺りには見たことない文字で書かれた本が散乱しており足の踏み場もないほどだった。

 部屋の中に唯一付いている明りの目の前では翼を持った人物が一人薄笑いの表情で作業をしていた。明りの近くにあった机の上には地上では見ることが出来ない花や誰のものかは分からないが眼、脳と内蔵がいくつか置かれており、その内蔵も人がイメージするような色ではなくまるで墨汁にでも漬けたかのように真っ黒に染まっていた。

 翼を持った人物の前にはボウルが置かれており、中ではウヨウヨと何か動いているのが確認できた。TRPGでSAN値チェックをしてもおかしくないような物体の中に翼を持った人物は机の上に置かれていた花や内臓を手に取るとそのままボウルの中に突っ込んだ。グチャと言う音がしたかと思うとゴポポポポと音を発し始め発酵を開始したのが何となくわかった。


「―――様」


 そんな部屋にノックもせずに入る者が一人。こちらも翼を持っており部屋の中にいた人物と同一種族なのが見て取れた。


「……ノックぐらいしたらどうだ?」


「面倒なので。それよりも例の件ですがどうやら人神に感づかれている模様です。例の薬について調べられているとのこと……それと例の武器をあげた魔族ですが人族の領土を切り取るまでは行かなかったようです」


「チッせっかく知恵をあげても使えないゴミどもだな。先人たちはもっとましな奴を作れなかったのかよ……」


「それと……人族の中にとんでもない逸材が現れたとのこと」


「ふぅん」


「その人物は、例の武器を凌駕する武器を作りこの度の魔族の侵攻も彼により阻止されたとのことです」


「ほぅ……あの武器は古かったが、それでも地上では革新的な技術のはずだ。それをあっさりと超える武器を作るやつが人族にねぇ……」


「……怪しいですね」


「そうだな。人の神……セラっと言ったか。あいつも地上に何かしら情報を流している可能性があるな」


「どうしますか? 早々に堕―――」


「いや、それは軽率だこちらも違法な事をやっている事には変わりないからな。暫くは様子見だ。監視もあまりするな。あまりやってこちらの行動がバレたら厄介だからな。完全に裏取りが出来な限りは動く必要は無い」


「かしこまりました……所で、何故今になって急に技術の提供を?」


「気まぐれだ。昔の奴らが始めた茶番だが別に終わらせても構わないのだろ? それに実験体も欲しかったしな」


「例の龍族ですか……そういえば前に人族で一人実験をしていませんでしたか?」


「ああ、あいつか。龍族の能力を付与して見たかったのだが、大した能力がつかなかったから早々にハヤトに言って切り捨てたわ。抹殺しても良かったが事後経過も見たかったからな。まあ、アルダスマン国が滅んでハヤトも魔領に戻ったらしいから今どこで何をしているか知らないがな、放置しても厄介になる事は無いだろう……おしゃべりはここまでだ、お前も仕事に戻れ」


「……はい」


 ノックをせずに入って来た人物を追い返すと、翼を持つ人物は再びボウルの中身を注視する。音を立てて変化していた中身は先ほどほどの勢いは無く小さい音を立てているだけだった。


「クク……さて、どんな変化を見せてくれるか……楽しみにしているぞ竜王とやらよ」

 GWは遊びに行かずスリーピングGW状態でした。寝正月と言われますがスリーピングゴールデンウイークという言葉があってもいいと思いません?


 という訳で、GW中に更新出来たら良かったのですが、睡魔には勝てませんでした。申し訳ない。


 ちなみに、今回のお話ですがかなり大事がお話がいくつもあります。また既に出ているお話の伏線の続きもありますが、皆さんは気付きましたでしょうか? たぶんこれは分からないよね。という内容もあれば、これはバレバレだなという内容もありますが、皆さんの想像を膨らませてもらえると嬉しいです。でもハードルは上げないで下さい。


 では、次回もよろしくお願いします。

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