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第240話:とある夜のこと

 夜遅く、魔王城では緊急の会合が開かていた。


「……もう一度言ってみろ」


「は、はい! く、クロルパルスにて発生させた反乱ですが、途中までは上手くいっており、ラ・ザーム帝国の各地を順調に制圧していたとのことですが、エルシオンにて大敗北。その後、帝国の強襲部隊により1週間ほどで領土を奪還され失敗した模様。クロルパルスに潜入させた幹部とも連絡が途絶えており、見つかって殺された可能性は否めません」


 しーん、と静まり返る場内。

 予想外だった。まさか最新兵器を渡してまで実行した反乱作戦が失敗するとは誰も予想だにしていなかったのだ。


「……渡していたアモンは?」


「……帝国側に5割ほど奪われ、残りの5割ほどはエルシオンで消失したとのことです」


「……」


 黙る魔王。周りの魔族も同じだった。ふと魔王を見るとプルプルと震えているのが見えた。怒っている。周りの魔族たちは全員そう思った。新兵器を大量投入してまで実行させた作戦が失敗した上に投入した兵器を全て失うという大失態を犯してしまったのだから、魔王が怒るのは当然だと誰もが思っていた。


 ……が、当の本人の心境は全く違った。


(うそでしょ失敗するなんて、しかもまたエルシオンとか、これ例の人族がからんでいるでしょ間違いなく!? しかもアモンも数百単位で敵に渡らせてしまうなんて、それを持って魔領に侵攻なんてされたら今の魔族じゃ被害が大きくなる事なんて目に見えているし、い、いや、あれを設計図無しで作れなんて無理だ、あんなのを作る技術なんて人族にはない……ああ、でも確か例の人がやばい技術を持っていたらしいから量産されるかも……!? いやだぁぁぁぁぁぁぁぁ、こっちにこないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ!!!!!!)


「……それと……」


(まだあるの!?)


「エルシオンですが、例の人族が新領主となって独立したとのこと。聞けば皇帝直々に先の戦争で多大な戦功を上げたのでその褒美と言われ渡されたとのこと……恐らくですがエルシオンでの反乱軍の大敗はかの人族が関与していることで間違いないかと……」


「……そうか」

(えっ、領主? それって独自で軍隊組めるようになるということだよね? えっ、しかもエルシオンって魔領に近い場所にあったよね? ……うそよね? 嘘と言ってよぉぉぉぉぉぉぉぉッぉぉぉぉ!!!)


「……報告は以上か?」


「は、はい」


 そして再び流れる沈黙。暫く経ったのち我慢できなくなった魔族が魔王に問いかける。


「……魔王様……どうされますか?」


「……暫くは喧嘩を売らないことだな。少なくともこのまま行動していても良い結果が出るとは我には思えぬ」


「し、しかし魔王様。敵は待って下さいませぬぞ? 何とかして対策を立てなければ……!」


「では、誰か案はあるのか?」


「「……」」


「……やみくもに行動をしても良い結果は得られぬ。暫くは国内の状態を良くする方が先決だろう。失った兵器の補充も行わなければならないしな」


 前回の報告会で戦争論を言っていた者も黙って頷くしかなかった。何よりも敵にアモンの大部分が渡ってしまった事が何よりも痛手だった。本来なら戦争後に返してもらうはずだった兵器が全て奪われ、一時的にとはいえ、敵の方が保有数が上回ってしまっているのだから当然と言えば当然と言えよう。


「……今日はここまでだ。下がれ」

(ああ、胃薬がいるわこれ……)






==========


「という訳なんだが、何か知っているか?」


「……いえ、残念ながら私には……」


「そうか、神様でも知らない事はあるんだな」


 魔王が胃薬を飲んでダウンしている頃、真夜中のエルシオンのクロウ邸の屋根にて、俺はセラと会っていた。話していたのは魔力崩壊の件を始めとしたここ数か月のことだった。

 残念ながら魔力崩壊状態のことはセラも知らなかったようだ。この世界の神様は何でも知っているような万能神じゃないんだなと改めて思った。


「しかし、もしそのことが本当なら魔族の神から話を聞かねばなりません。場合によっては処罰もあるでしょう」


「処罰?」


「当然、下界に関与しているのですから、天界のルールに乗っ取って何かしらの罰はあるでしょう。場合によっては一生幽閉もありえますね」


「幽閉って……あんたらって相当長生きするんだろ? それを一生幽閉って……それにセラも俺みたいなのに関与しているんだから不味くね?」


「そうですね。不味いですね。まあ、その時はその時です。あとは頑張ってくださいクロウ」


「投げやりだなおい……」


「……ところで」


「ん?」


「あなた、最近随分と夜はお楽しみの様ですね」


「ブッ!?」


 予想外な事を言われ思わず噴いてしまう。


「いえ、別に止めたりはしませんよ? でも、毎晩毎晩良く飽きないなと思ったので」


「ま、毎晩って……見てたのか?」


「降りてこれなくても見ることぐらいはいつでも出来ますからね。それにしても皆さん盛んですね。それを一人で相手するあなたもあなたですけど」


「い、いや、なんか知らないけど全然尽きないんだよ。肉体的な疲れもあまり感じないからそのままハッスルするわけで……こ、この話はお終い!」


「アラアラ、あなたでも恥ずかしい話はあるのですね。てっきり紅茶のお話だけかと思いました」


「ちょっと!? それどこで知っ―――」


「あっ、もう私は時間なのでまた後日、ではクロウ、街づくり頑張って下さいね」


 そういうとスゥと消えて行ったセラ。


「ち、ち、ち……チクショウメェ!」


 残った俺はただ嘆くことしか出来なかった。

 魔王に胃薬は必須です。


 夜の営みを人に見られるってどんな気持ち何でしょうね。少なくとも私は遠慮願いたいです。


===2017年===

08/09

・誤字を修正しました。

・一部表記を修正しました。

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