第237話:街を整備しよう1
「そうだ、街を整備しよう」
まるで「そうだ、京都に行こう」並みの気楽さでクロウが街の整備をしようと思ったのは、エルシオンに例の御触れが出てから1週間後。御触れのほとぼりが冷めだした頃の事だった。
その間、クロウが何をやっていたかというと、まずは自分がエリラたちにプレゼントとした「クロウ・アルエレスの証」の改良だ。よくよく考えてみればこのブレスレットはかなりと言うかもはやこの世界では伝説級のアイテムに匹敵するものということに気付いたからだ。
前にハルマネで学生たちと契約を行った際のことを覚えているだろうか。
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《契約》に媒介を使うことは珍しい事……と言うよりかなり希少な素材を使用するので滅多に使うことは無いが、クロウからしてみれば、「えっ、書けばいいだけじゃん」ぐらいの安価な物だった。それを聞いた教師の何人かは腰が抜けてへたり込む者もいるほどだった。ちなみに市場でその素材を一個買えば一般家庭100軒分が一生遊んで暮らせるほどの大金になるとか。
もっとも、こんな希少アイテムなど100年に一回見つかるかどうかも怪しいと言われるほどのレアアイテムなので市場に並ぶことはまずないのだが。
そんな媒介を使うメリットは契約を結ぶことで主のスキルを一つ共有することが可能となる事だ。つまりこれを大量に用意して強力なスキルを持った人を主に《契約》を行えば強力なスキルを使える人を大量生産出来る事になる。
もっとも、身体や魔力的な要素は共有出来ず、あくまでスキルだけが共有されるので使えるかどうかは別問題となるが。
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これである。これには契約を結ぶことでスキルを一つ共有することが出来るとある。
つまり、これは裏を返せば「契約をしないとスキルの共有は行えない上に、一つしかつけることが出来ない」ということになる。当然、こんな契約を結ばなくてもスキルを共有できる方法があるなら、この時のクロウも別の手段を用いただろう。
それに対して今回のクロウがプレゼントしたアイテムはどうだろうか? 隷属関係無しにスキルを複数個付与する上に全ての基礎ステータスに+1,500の加算。低レベルのスキルレベルの向上とどう考えても常識外れのアイテムである。この時に腰を抜かしてへたり込んでしまった人がこれを見れば口から泡を吐きながら卒倒すること間違いなしである。
そんなどんな人が見ても「チーターや!」と叫びたくなるような道具を全員付けているとなれば、なんとしても買おうとする輩が現れるのも不思議では無い、もし買うのが無理であるなら奪おうとする者もいるかもしれない。もっとも、奪おうとすれば灰に還されるし、獣族本人も子供も含め強いので早々やられることはない。だが、そんな無駄なリスクを回避するためにクロウは数日かけてバージョンアップを行うことにした。
新たに付与した能力は《解析無効》。文字通り解析スキルの発動を無効化させるスキルだ。これを全員のブレスレットに新たに付与することで解析関係のスキル効果を一切通さなくすることが可能となった。これで外からこのアイテムが解析される恐れは減ったと言えるだろう。
で、アイテム開発に時間を費やしていたかと言うとそういう訳でも無く、エルシオンをよくするために次なる手を考えてもいた。
そこで問題になったのが資金源の確保であった。
何をするにもお金が必要なのはこの世界でも同じである。特に素材関係の収集には殆どの確率でお金が関わって来る(もっともクロウが頑張ればタダでも行けないことは無いが、莫大な時間を要してしまう)
それに、街を運営するとなると当然人手が必要になる。人手を扱うと言う事は人件費がかかるということになる。
現在、クロウの総資産はおよそ20億S、前言っていたときは11億Sだったが、当然、あれからも続々と作ってほしいと言うお願いが来ていたのでそれを受けていたらこういう結果になった。
20億Sぐらいあれば当分は問題ないだろうがいつかは底をつく。運営をする以上は安定した資金調達は必須項目なのである。
税金は? という声があるかもしれないが、現在のエルシオンで徴収できる税金などクロウは殆どあてにはしていなかった。
理由は税金を支払ったか支払わなかったかを調べる手が現在のところないからだ。それを調べるために市民権を作らせるのだが、取得までには時間がかかる。それに、そもそも手続きをする場所が準備できていない以上発行をすることが出来ないのだ。
それにクロウが調べてみるとエルシオンの前の税収はおよそ2億S。現在のクロウの総資産の10分の1程度しか入っていなかったことが分かったのだ。しかもこれは戦前の記録で今徴収してもこの額には到底及ばないだろう。2億と言えばかなりの金額だが、クロウからしてみれば一年かけてこの程度しか集まらないなら最初は無くてもいいと思えるほどの額だった。なんせ、クロウは数か月で20億なのである意味無理もない話なのかもしれない。
話を戻し、じゃあお金はどうする? という事なのだがクロウはここで再び建設関係で資金を調達することにした。長期的に見ると安定しない商売であるが、瞬発的な稼ぎなら行けると判断したのだ(なお、建設者はアーキルドの模様)
で、その建設関係を行うにあたり街をある程度整備しないといけないことが判明したので冒頭の言葉に戻るという訳である。
そんなクロウがまず手を付けたのは水関係の整備だった。
エルシオン税収1年分<<<<<<<<<<クロウの資産
ミュルトさんがクロウの総資産を聞けばぶっ倒れそうですね(笑)




