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第234話:御触れ

 さて、エルシオンを統治するにあたり前々から考えていたことを実行しようと思う。


 その一つに新しいルールがある。今までのルールに変更を加えたり新たに追加したりとそれなりの規模での変更だ。

 特に、いくつかの内容はこの世界の住人にとっては信じられない内容であるだろう。

 もちろん、バッシングを受ける事など覚悟の上で行わせてもらう。



==========

 その日、早朝からエルシオンは大騒ぎだった。


 街のギルドに掲示されたエルシオン新領主からの御触れは住んでいる住民にとって……いや、この世界に住んでいる者からしてみれば異質な内容ばかりだった。


「一体どういうことだ!?」


「新領主は頭がおかしくなったのか!?」


「いや、でも俺らには関係ない事だろ? それよりか最初の内容の方が重要だ」


 街の人々の反応は様々だったが、半数は不評、半数は好評と賛否両論であった。

 特徴的なのは賛成する人と反対する人の地位や階層がくっきりと分かれたことだろう。

 その内容はこうだ。まず税率の大幅な改正。今まで多額の税が取られていた住民税を大幅に下げ、さらに日用品や食料品にかけられる関税や消費税も一律下げられた。具体的に言うと今まで20%程度かけられていた税率が5%にまで下げられたのだ。現代日本人の感覚でもこの税率改正は異常なことだと分かるだろう。その感覚はこの世界でも同じで、急激な税率低下に逆に不安になる住民も少なからずいた。もっとも、そんな思考深い人はごく一握りで大半の人は大喜びしていた。

 次に新たな市民権の制定を行う事が発表された。今後、新しく作成するルールにエルシオンの民であるかどうかがかなり関わって来るからだ。これまでエルシオンにどれくらいの人がいるかおおよその人数は把握されていたが、具体的な数までは把握できていなかった。それを厳正化してきちんとした数を把握しようというのが今回の狙いだ。

 そのため、続きには子供が生まれた場合や、身内が亡くなった場合は然るべきところに届け出を出すようにとも書かれていた。だが、気になるのは肝心の届け出場所は「後日発表」とだけ書かれており、具体的な場所については記述が無かった。


「いや、人はいねーわ、場所も確保してねぇし」


 新領主であるクロウはこう語っている。場所ぐらい決めておけよと現代の行政に関わっている人から文句を言われそうだが、この世界はこれでも問題ないのだ。なんせ人口どころか税収も詳しく把握しきれていない行政もあるくらいだからだ。そこから比べるとクロウのこの新しいルールは細かいと言えば細かい分類になるだろう。

 なお、このルールの記述には続きがあり、「市民権の取得は一定以上の納税者に限られる」と書かれてある。要は金払っていない奴は国民じゃねぇと言う事だ。

 その他にも市民権がある人が受けられる特権についてや新しい人材の募集など大小さまざまな事がかかれてあった。書かれている内容はどれも今の日本人にとっては馴染み深いものばかりであったが、この世界の住人に取ってはとても新鮮に感じられたと言う。


 しかし、そんな事などどうでも良かった。何故ならその御触れの最後に書かれている内容に全住民の視線が釘付けになってしまったからだ。


 エルシオン内での奴隷の売買を一切禁止する(種族は問わない)。またエルシオン内で奴隷を所持する場合は役所に届け出を行い、奴隷一人1ヵ月につき1000Sを収めること。


 どよめく住民。その住民の殆どはこの内容には関係の無い人たちだ。なんせ奴隷なんて商人や貴族が持つようなものだったからだ。しかし、その関係が無い人たちからしてみても、この内容は衝撃的な内容だった。

 これが人族に限るならまだ騒がれることは無かったのかもしれない。

 だが、種族は問わないと書かれている。つまり獣族であろうが妖精族であろうが一切関係ない。全ての隷属を禁止するということだ。今まで異種族は敵、家畜以下の存在と教えられて来た人々にとっては、この御触れは信じがたい事だった。「頭がおかしくなったのか!?」という言葉は言い過ぎな気がしないでもないが、この世界ではそう言われてもおかしくないほど常識外れの内容なのだ。

 当然、奴隷を持っている商人などは怒った。ふざけるなと。奴隷商人にとっては絶望感しかなかっただろう。

 もっとも、騒ぎはしたが住民たちにとっては本当に無縁な話でもあったりする。先ほども言ったが奴隷を持つのはそれこそ商人であったり貴族であることが大半で、一般市民には手が出せない代物だからだ。奴隷と言えば安いイメージがあるが、その後の維持費などは意外と馬鹿に出来ない部分がある、それに一般市民は持っていたところで役に立つことなど殆どないと言うのもある。

 そのため、この新たな御触れに不満を持つものは必然的に階級が高い者が多くなり、逆に一般市民は税率の低下やその他の恩恵から新たな御触れに賛成だったりする。

 その不満を持つ者も中にはそれ以外は賛成だったりする者も多くいる、それほどまでに奴隷の件以外の内容は魅力的な物が多かったからだ。その詳しい内容は追々話して行くとして、この新しい御触れに対しての町の住民の反応は最初に述べた通り賛否両論状態で、この御触れのせいで街が一日大混乱してしまった。


 勿論、御触れを発令した当の本人であるクロウはこれくらいの事は予想していた。


「反対があるのは当たり前。寧ろない方が恐ろしいよ。問題はこの後だ、俺が住民に理不尽な要求をせず、街の暮らしをより良くしていけば、今回の件も良かったと思えるようになるだろう。そうなるようにこれから俺が努力していかないといけないがな」


 クロウがかつてセラにお願いされた「異種族との対立の解消」この御触れはまさにその第一歩と言える内容だろう。クロウからしてみれば奴隷関係の制度を一切廃止して、この街にも自由に異種族が出入りできるようにしてもいいのだが、そんな事をいきなり出来るはずもない。

 物事には順序がある。絶対君主制からいきなり民主主義になって混乱を招いた現代の中東のようなことにならないように少しずつ、だが確実に歩を進めて行く必要がある。最終目標を達成したときにクロウは既に生きていないかもしれないが、それでも良いとクロウは思っていた。あとの事はセラに任せる。俺が出来るのは俺の手が届く範囲までの事しか出来ないのだから。と割り切っている面もある。


 新しい御触れが発令されてから暫くの間、エルシオンは騒がしい状態が続き、その混乱が静まったのは御触れが出てから一週間後のことだった。


―――称号【常識から外れる者】を取得しました。

―――スキル《外道の心得》を取得しました。

―――称号【常識の開拓者】を取得しました。

―――スキル《常識の先駆者》を取得しました。


==========

称号:常識から外れる者

取得条件

・ある一定以上の同種族が共有する共通認識から大幅に外れた行為をすること

効果

・生命+500

・《外道の心得》を取得

・称号【常識の開拓者】を取得

==========

スキル:外道の心得

分類:生活スキル

効果

・嫌悪の対象になる行為に対して嫌悪感を抱きにくくなる

==========

称号:常識の開拓者

取得条件

・ある一定以上の同種族が共有する共通認識から大幅に外れた行為をすること

効果

・生命+600

・《常識の先駆者》を取得

・称号【常識から外れる者】を取得

==========

スキル:常識の先駆者

分類:生活スキル

効果

・嫌悪の対象になる行為に対して嫌悪感を抱きにくくなる

・新しい発想が生まれやすくなる

==========

書籍化決定!


 リンダパブリッシャーズとTSUTAYAが開催した『TSUTAYA×リンダパブリッシャーズ第1回WEB投稿小説大賞 A賞』にこのたび受賞作として【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~が選ばれました。いやぁ、有難い限りです。ここまでこれたのも読者の皆様の声援があってこそだと思います。本当にありがとうございます!

 これからも頑張って行きますので皆さん、どうかよろしくお願いします。

 

 結果ページのリンクを掲載しておきますので、宜しければこちらも見て下さい!

 

 リンク:http://www.redrisingbooks.net/taishou20170330


03/30:称号、スキル取得が抜けていましたので記載しました。

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