第229話:反乱鎮圧後1
夜の営みのチートなスキルを入手した数日後、帝国軍エルシオン駐留所にて、俺はグラムス皇帝に呼び出されていた。
ちなみに、この数日でこの前の優勝者との褒美(と言う名のイチャイチャ)は済ませておいた。その際、スキルは無効にして相手をしてシャルとニャミィは大変満足したようで、全ての行為が終わった時には安らかな表情で気絶していた(死んでないからな?)
なお、今回の一件で大人の威厳はダダ下がりになった模様で、子供たちはあんまりお母さんたちに近づかなくなってしまった。
テリュールが必死で親をお膳立てしている姿を見ていると涙が出て来そうでした。
「では、始めようか」
呼び出された一室には、俺と皇帝とミロの三人だけだった。普通、こういうときは家臣たちも一緒に集まるものではないだろうか? と思ったが、今回はあくまで非公式扱いらしく、後に正式なあつまりはザームで行われるそうだ。
俺と皇帝が向かい合う形で座り、その間に縄で縛られたミロが地面に座っている形から会談は開始された。
「さて、ミロよ今回は派手にやってくれたな」
「……」
「別に我はお主の意見に不満を持っていたわけでは無い。人は十人十色、様々な意見があってもおかしくはないしむしろそれが普通だと我は思う」
「……」
「だが、民を唆し一時にせよ帝国領を侵略したその罪は例え兄弟であっても許されるものでは無い」
「唆した……? 笑止な、私は民を導こうとしただけだ」
「ほう、導くとな……」
「そうだ、今の帝国を変えるために、人々を幸せに導くため―――」
「戯けを言うな! それが今回の乱の発端か!? そのために帝国民1万もの命を土に還したというのか!?」
「そうだ! 必要な犠牲だ! 今を変えるための致し方ない犠牲だ! それに兄を見て見ろ! 日々戦いに明け暮れこれまで何人の民の命を奪ってきた?」
「勘違いするな! 守るための犠牲と変えるための犠牲は違うぞ! 何故もっと違う方法を思い付かなかった? 論理主義の帝国では実績が全てだ。なら、お主の考えでもっと国を豊かに出来る方法があったなら試せば良かったのだ。我はそういう意味でクロルパルスを任せたんだぞ! そこで実績を出せば帝国もその方針に変わる事は十分ありえたことだぞ」
「私には兄が頷くとは到底思えない。どうせ理由を付けてやらないに決まっている。もしその気があるならば何故私の意見をもっと聞いてくれなかったんだ!?」
「それが無理だったからに決まってるだろ。学校を建てろ、税金を引くしろ……と何でも出来るものと勘違いしてるのか?」
「国の財源の半分を軍事費当てているのを減らせばいいだけでしょ!? 何故減らそうと思わないのですか!?」
「減らす? 今の国の現状で減らすことなど出来ると思っているのか!?」
「ああ、出来るさ。人件費や研究費など減らせるものは沢山あっただろ!?」
「……もういい……どうやらお主は事の上っ面だけしか見えてい無い様だ。そんな阿保に何を言っても無駄だ」
「逃げるな! そう言って言い返せないだけだろ!? この暴君めg―――」
「いい加減にしたらどうですか?」
「!?」
話が始まってからずっと黙っていた俺は、口出ししない方がいいと思っていたが、この兄弟のやり取りを聞いていると兄が不憫でならなかった。悪いが、擁護ぐらいはさせてもらおう。
「ただの冒険者が何だ!? 帝国の事に口を出すとでも言うのか!?」
「ああ、そうだ出させてもらう」
「なに……!?」
「そもそも帝国は周りと常に交戦状態の国だ、なんでだと思う?」
「そんなの兄が仕掛けたからに決まっている。国を守るためと言いながら領土拡大のための戦争を行えば当然周りとは交戦状態になるだろ」
「違うな、帝国領土は奪いたくなるほど魅力のある土地が多いからだ。豊かに肥えた大地や地下資源が豊富な山脈、大都市を築きやすい開けた平原など数え切れないほどある。そんな宝の山を前に他国が動かない理由は無い。さらにいれば帝国を滅ぼすために他の国同士で同盟を結んでいるところもあると聞いた。常に多方面に戦線を抱える帝国の軍事費を落とせなど死ねと言ってるのと何一つかわらないぞ?」
「なら仲良くすればいい。こちらが仲良くすれば向こうもむやみに我が国を奪おうなど考えることもないはずだ! 現に私は既にいくつかの国に私が勝った際には争いをやめようと書簡を送ってある」
「何を言ってるんだ? そんなお花畑のような考え方をする馬鹿なんてあんたぐらいだ。言ったはずだ、あちらはこちらの領土が欲しいとな、ならそんな仲良くしようという言葉など戯言でしか受け取られないだろうな。むしろ、敵は仲良くしたいほど困っていると思って強気に出る可能性もありうる話だ」
「何故そんな事がお前に分かる? お前は敵の何を知っているのだ?」
「じゃあ逆に聞こう。あんたは敵の何を知っている? 平和的解決を向こうが望んでいると誰が言った?」
「人は平和を愛する生き物だ。なら平和的解決を望むのは当然だ! お前のような好戦的な奴の方が珍しいのだ!」
(えぇ……)
どうしようこいつ、本当に頭の中がお花畑だった……。
「もうよいぞクロウ。お主の言いたいことは十分分かった」
俺とミロの言い合いにグラムス皇帝が待ったをかける。言いたいことはまだまだ沢山あったが皇帝に言われたのと、これ以上言っても無駄と判断した俺はさっさと引き下がる事にした。
「ふむ、どうやら世界を見て来た冒険者の方が考え方はいい様だ。お主のように温室育ちで育った者は駄目なようだなミロよ」
「な、なんだとぉ!?」
「もうよい、我もお主との会話にはいい加減疲れたのだ。悪いが話はここまでとしてもらおう」
「に、逃げr―――」
「黙れ!」
話を切ったグラムス皇帝にミロが食って掛かろうとしたが、そんなことはさせないと言わないばかりに皇帝の蹴りが地面に座っているミロの首元に襲い掛かった。
ドスッと鈍い音と共に帝国が蹴りぬいた方向へミロが好き飛ばされ、地面を転がって行き、やがて壁にぶつかり止まってしまった。
「あーあー……」
地面で打ち上げられた魚のようにぴくぴくしているミロに呆れるばかりだ。
「さて、この話は終わりだ」
「あっ、そうなのですね。てっきり私にも意見を求めるものかと思ってました」
「あ奴はザームに戻ったのちに地下に永久投獄だ。あんな奴には死よりも恐ろしい罰を与えねばならない」
「怖いですね、一応血を分けた兄弟なんですよね?」
「ふん、兄弟だから刑を甘くするなどもっての外。そんなことをすれば他の者にも示しがつかん」
そうだな。前の世界でも「泣いて馬謖を斬る」という有名な言葉があるぐらいだからな。まあ、あれは親しい仲というだけであって兄弟とは違うと思うが。どっちにせよ、俺が口出しする事でもないし、これは口を出さない方がいいだろう。
「話を戻すぞ。まず、今回の戦いではお主のお蔭で帝国は救われた。こればかりは感謝してもしきれないことだ。改めて礼を言うぞ」
「どういたしまして。と言っても私も私利私欲でやっただけなんですけどね」
「それで帝国が助かったなら、私利でも義理でも構わん。さて、お主には約束通りエルシオンの統治権を全て譲ろう。都市国家としてこれからは独立することになるな」
「そうですね。まあ、独立したところで今までと何も変わりませんけどね」
「そうか。それでだな……ちょっとばかし提案なんだが……」
「?」
「お主、ハルマネも治めてみる気は無いか?」
「……無いですね。前も言いましたが私は家族が平和に過ごせればそれでいいのですよ。別にハルマネも一緒に治めるメリットも意義もありませんよ」
「ふむ、そうか……なら、ハルマネにある魔法学園を傘下にする気も無いか」
「……今、なんと?」
「ハルマネにある魔法学園を傘下……まあ、管理下に置かないかということだ」




