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第226話:神からの授かりもの

「さーて、どこから喋ってもらおうか」


「くそがぁ! なんだこの鎖は!? パワーでは魔族の上位に入る私が引きちぎれないだとぉ!?」


 拘束した縄を解こうとジタバタする魔族であったが、鎖が斬れる様子は全く無かった。俺が作れる《土鎖》の中でも最大の強度を持つ鎖はどうやら魔族でも切る事は出来無い様だ。


「だから、あんた程度の力でどうにかなる代物じゃねぇって俺がちぎるか解くかのどちらかだよ」


 正直、この様子を見て少し安心している。この前のハルマネでは俺の魔法が殆ど通じなかったから魔族に俺の魔法は通じないのかなって思っていたところだし。


「まて……お前まさかグーロスとハザムに(コレ)を付けた者か!?」


「グーロスとハザム? 誰だそいつら? 言え」


「共に魔族幹部の者だ。エルシオンに出て行ったと思ったらこれと同じ鎖を付けて帰って来たのだ。しかもその鎖も丈夫で私たちがどんな手でちぎろうとしてもびくともしなかった……お蔭で、今も彼らは縛られた生活を余儀なくされてるわ!」


「うわぁ……」


 マジかよ。多分エルシオンっていうことは、いつかの逃げられた魔族二人のことだろう。てか、まだ縛られたままなのかよ……俺の魔法持続性がありすぎないか? 既に数か月は経過しているぞ? 数か月間縛られたまま生活? 俺だったら発狂してるわ。

 自分のやったことに若干ドン引きしてしまったが、聞きたい話はそんなことではない。気を改めて聞きたいことを順次聞いていくことにする。


「まず一つ目。あんたらの目的はなんだ? アルダスマンといい今回の件といい、人同士で争うのを見る趣味でもあるんか?」


「貴様らみたいな下等種のつまらぬ争いなど見る趣味は無い。簡単な話だ。人には滅んでもらいたい。だが、人を滅ぼすには魔族は数が少なく時間がかかる。なら人同士で消し合ってもらおうという算段だ」


「ふぅん……で、人同士の争いで武器を渡していると? あんな強そうな武器をか?」


「ふん、我らは魔族ぞ? 人に数百程度あれがあったぐらいで何が出来る? それに量産できる技術が人族に無い事も確認済みだ。あれを渡したところで我らには殆ど被害は無い。それに対し人はどうだ? あんな武器があれば持って一列に並んだだけで、相手を屈すことも可能だろう。そんな物を殺してでも入手しようとは思わぬか?」


「ふぅん……ちなみに量産されたらどうするつもりなんだ? あんたは出来ないと言ったが……」


 そういうと、俺は普段使っている銃を取り出した。それを見た瞬間魔族の眼の色が変わった。


「御覧の通り、俺は量産……いや、あんたらが作ったポンコツなんかより強力な武器を作れるぞ?」


「ばっバカな……!? 人がいつのまにそんな技術を……!?」


「そこで二つ目の質問だ。あんたらが人に手渡した爆炎筒は誰が作……いや、誰が提案をした?」


「提案……? それは知らぬがそれを授けたのは我が主君の魔王様だ」


「魔王……」


 俺が魔王って聞くとやっぱりドラ○エの魔王を思い出す。この世界にも魔王と呼ばれる奴はいるんだな……。


「その魔王は発明家か?」


「発明家などでは無いが聡明で魔族一の美貌を持つ我らが魔王様は神との通信を行う事が出来ると言う。そこから作り方を聞いたと同胞の誰かが言ってたぞ」


 美貌って……魔王様は女性か……この世界は前世とは違い男尊女卑の考え方は本当に無いんだな……。領主が女性と言う事もよくある事らしいし、アルゼリカ理事長みたいに一国の軍隊の一つを任せられるほどだもんな。

 いや、そんなことは問題では無い。問題は後半の言葉だ。神って……いや、確かにセラから話は聞いていたし、この世界の文明レベルからみたらどう考えても可笑しい兵器だったから薄々は感じていたけど神様思いっきり地上に干渉してるじゃん!


「そうか……じゃあ次の質問だ。お前らは身体を魔力に汚染させるようなアイテムも作ったりするのか?」


「ああ、作るぞ。魔力を体に過剰に取り込み一時的に身体能力を爆発的に上げれる薬だ。だが、使用すれば最後、過剰に取り込まれる魔力の前に体が支えきれなくなり消滅するがな」


「それは量産できるのか?」


「それは無理だ。調合に時間がかかる上に作成難易度も高く、おまけに材料は見たことが無いそうな物ばかりらしいからな」


「らしいと言う事は、あんたは見た訳じゃないんだな?」


「作れるのは魔王様だけな上、材料は秘匿になさっているからな」


「ふぅん……これ、人が持っていたんだけどどういう事だ?」


 そういって俺はレシュードから奪った紫色の錠剤を魔族に見せる。


「!? この薬……何故貴様が持ってる。先ほどの武器と言い貴様は一体何者だ!?」


「ある人間が飲もうとしたのを止めたんだよ。あと、俺はただの冒険者だ運がいいだけのな」


 なるほどな……どうやらあの武器もこの薬も神がこっちに上げたもののようだ。

 何故武器は神から授かったと言って薬は秘密にする? こんな常識はずれな薬なうえ材料は秘密……武器の話と組み合わせれば薬も神が魔族に授けた物と言っても間違えでは無いだろう。もし、神のでなければ作り方ぐらい魔族が分かってもおかしく無いはずだ。

 ……これはセラに報告だな。


「う、運がいいだけだt―――」

「はいはい、その話はお終い。最後の質問だ……ガラムとハヤテという人物を知ってるか?」


「―――何……? 二人とも我らが魔王様の幹部だが、貴様とどういう接点がある!?」


「魔王幹部ねぇ……」


 よし、今度会ったら消そう。魔族が人間の中で重要なポストに就いているとか洒落にならないわ。エリラの一件も含めガラムは出会ったら消して、ハヤテも見つけ次第海の藻屑にしとこう。もっともアルダスマン国が滅んだ今あいつがどこで何をしているのか全く分からないのだがな。


「何故お前らは人の中にそこまで溶け込める? ガラムといいハヤテといい、役職的にはいい位置に着き過ぎだ」


「スキルだ。我らには彼らのスキルから欺くスキルを持っている。それを活用すれば人の生活の中に溶け込むことなど朝飯前だ」


「それはこちらがどんなに良いスキルを持っていても看破出来ないレベルなのか?」


「ああ出来ない。何故ならスキル自体を無効化できるからな」


「スキルを無効化……? もしかして魔法の無効化も可能か?」


「当然だ」


「よし、今目の前でやってみせろ」


「無理だ。あれは特殊な装置をや魔法陣を使わなければ出来ない。少なくとも今の私では不可能だ」


「チッ……それはお前らが作ったのか? それとも神からの贈り物か?」


「そんな事は知らん。ただ唯一言えるのは古くから魔族に伝わると言う事だけだ」


「……面倒な……」


 ハヤテにチェルストでやられた転送魔法……あのとき俺の《魔力制御》が聞かなかったたり、エリラを探すときに魔法探知外の場所が出来たのはそれが理由か……ならば……


「質問を追加だ。その装置や魔法陣の事を出来るだけ詳しく教えろ」


 そこからは魔族のちょっとした講座タイムが始まった。結論から言うとウィルス対策ソフトと同じで特定のスキル、魔法に対して動きを無効化するスキルや魔法陣を使う様だ。

 ただ、聞いた魔法陣を見るとスキルや魔法の能力を一部変えれば無効化されないことも同時に分かった。これは後で俺のスキルとかも書き換えておくか……なんかやっている事がハッカーみたいだな。


―――スキル《交換(コンバート)》を取得しました。

==========

スキル名:交換

分類:特殊スキル

効果:スキル、魔法の魔法式を一部自動で書き換える。

==========


 ……こ、これで無効化されることも無いだろう。


「……以上で質問は終わりだ。その鎖は解いてやる、ついでに《強制》も解除して置こう」


 そう言って俺は土鎖を解除する。


「!」


 その瞬間、魔族は窓から外へ飛び出し一目散に逃げようとした。だが―――

 一瞬で魔族に追いつくと、背後から刀で一刺し。ズンッという音と共に魔族から赤黒い血が溢れ出る。


「き……貴様……」


「勝てないと判断して逃げようとしたのは賢明な判断だが相手が悪かったな。鎖は解いた、だが誰か殺さないと言った? 鎖を解いたのは刀が傷つくのが嫌だっただけだよ……死にな」


 刀に膨大な魔力を注ぎ込む。刀の刃から既に刀に収まり切れない魔力が外へとあふれ出している。


「起爆」


 刀に貯めた魔力が瞬間的に一か所に凝縮。そして一気に外側へと拡散を開始。音速の数倍程度の速さで飛び出した魔力の粒は魔族の体を内側から抉り魔族の体はあっという間に細切れになり四散してしまった。


「……さて、用件は済んだ。ミロ(あれ)を回収してとっとと戻るとするか」


 刀についた血を払いのけたのち、俺はミロを片手にエルシオンへと帰還した。







==========

「帰って来ました、約束のやつです」


「ほぅ……本当に戻って来るとな……どうやっ……いや、聞かないことにしておこう」


 エルシオンに《門》を使って戻った俺は帝国軍の指令所で待つ皇帝の元へと来ていた。僅か数時間でエルシオンからクロルパルスにいるミロをどうやって持ってきたのか皇帝は非常に気になったが、聞かないことにした。


「それは有難いですね。まあ、聞いたところで答えませんけど」


 それは、きっと俺がこう答えることを分かっていたのだろう。無駄な話をしないで済むので俺としては有難い限りだ。皇帝との話は大したものは無かった。お礼の件も含め後日また改めて話をするということだけだった。


「そうだろうと思ったわ、さて……そやつは我が貰う。後日、話を聞くつもりだがお主にも同席してもらう。お礼の件はそこで話そう」


「そうですか。では私は帰りますね」


「……それにしても、まさか本当に数日で片を着けるとはの……どうやら我は良い買い物をしたようだ」


「それは光栄ですね」


「ふっ、戯けを。我から言わして貰えば最後までお主の手のひらで踊っていた気分だ」


「……まあ、いい勉強になったと思えばいいのでは? 世の中には頭のねじがおかしいぶっとんだ奴もいると言う事が分かったじゃないですか」


「フハハハッ、自分で自分を頭のねじが外れた奴と言うか?」


「少なくとも世の中の理から外れたことをしている自覚は持ってますよ」


「そうだな。そんな奴が力を持っておると言う事も重々承知しておこう。では、後日改めて顔を出してもらうが良いか?」


「いいですけど……どこで? 数日間エルシオンにいるつもりですか?」


「なに、どのみちエルシオンとハルマネは見て回る予定だったのでな、クロルパルスからの報告が来る前に見回って来るだけだ」


「そうですか。では、日時が決まりましたらまた会いましょう」


「そうしてもらおうか」


 こうして俺は皇帝のもとを後にした。

 これで、やることは全てやり終わったかな?


 ……家での私用が終わってないけど。なんでだろう、帰路が重く感じる……主に性的な意味で。

 数か月間、拘束されっ放しな魔族のお二人。今回殺された魔族の方が実は幸せだったりして……?


 次回、クロウが夜の活動で本気になります。

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