第224話:夢は見れたか?
「「……」」
クロウの魔法を至近距離から見ていたエリラを始めとした彼女たちは、目の前で起きた惨状を理解するのに時間がかかった。爆発四散と良く言うが、そんな生温いレベルではない。まさに「灰すらも残さず」だった。
普段からクロウの魔法を目の前で見ている彼女たちからしてみても、これほどのレベルの魔法を見たのは初めてだった。勿論、事前に聞かされてはいた。
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「とりあえずトドメに全員吹っ飛ばす魔法を使うからな。皆には当たらないように制御するけど一応気を付けておいてな」
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「これをどうやって気を付ければいいのよ……」
エリラの言葉は全員の心の内を代弁するものだった。ふと街の方を見ると自分たちより遥かに爆心地から離れている街近くの森の木々の一部はその枝に葉を残していなかった。地面に咲いていた草花は最早どこにも見えず、先ほどまで緑が広がっていた草原は一変しまるで火山地帯のような荒々しさになっていた。
「クロウ様のことですから、『これでも本気じゃないよ』とか言いそうですね~」
「いや、流石にそれは……」
「「……」」
ココネが軽い冗談のつもりで言ったであったが、全員の心の内では「いや、クロウ様のことだからねぇ……」と最早諦めじみた心の声が広がっていた。実際のところはどうかはクロウだけしか知らない事だろうが、一つだけ言えたのは「あの人が敵じゃなくて良かった」ということだろう。
「これはもう夜の営みでしか勝てそうにないですね~」
「その営みでも複数人でようやく対等だからね?」
「……あっ」
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電話やトランシーバーなどの通信機器が無いこの世界で、情報は波状に広がる事が普通である。それはこの世界も例外では無かった。
8月7日、エルシオンにて反乱軍総勢1,300名が消滅。跡形も無く消え去った。そしてこれをクロルパルスに届いたのは8月11日。このとき既に戦況は一変しており、各地で反乱軍が一方的に撃破されるようになっていた。
その戦いを見ていた人たちは言う。
「敵なんていないのに一方的にやられていた」
「何かが爆発していた」
「空から何かが落ちて来ていた」
この世界の人たちからしてみれば摩訶不思議な体験だっただろう。8月8日、まずエルシオンにほど近い周辺都市に謎の攻撃が飛来。反乱軍900人ほどがこの攻撃で命を散らしていく。その日の夕刻、謎の爆撃により壊滅状態になった反乱軍に帝国軍が襲い掛かった。今まで散々にやられていた分、その反撃ぶりはすさまじいものだったと見たものは口々に言ったと言う。
翌8月9日、さらにエルシオンから離れた位置にあった都市にも爆撃があった。もっとも都市とはいえ攻撃を受けたのは反乱軍の主要部分のみで、この二日間で被害に遭った住民は面白半分で反乱軍の所に行った若者が一人巻き込まれた以外に一般市民への被害は皆無だった。
そして、8月10日。クロルパルス以外で反乱軍が制圧していた街全てに攻撃があった。この攻撃により反乱軍は壊滅状態。気付けば残る拠点はクロルパルスのみ、一時期は4000と言われた軍も気付けば僅か400名足らずと最盛期の10分の1にまで縮小してしまっていた。
謎の爆撃。それはクロウがエルシオンで帝国の面々に言った『炎零』による超高度からの爆発系の魔法による攻撃だった。
《マップ》の能力で各地のどこに何人いるかは事細かく分かる。あとは、そこに向けてピンポイントに落とすだけの作業だ。口で言うのは簡単だが、狙った所にピンポイントで爆弾を落とすのは通常では不可能に近いことだ。クロウのスキル、魔法があってこそ初めて成り立つ攻撃方法と言えよう。ちなみにこの炎零はいつかクロウがエリラに間違えてぶつけてしまった物の後続機に当たる。毎日エリラを初めとした全員の鍛錬に付き合い、日中はギルド内の店で経営、夜は獣族達とのハッスル行動とそれこそ寝る時間も無いような生活の中でも着々と作り上げた最新兵器だ。
……ちなみに皆は間違っても二週間不眠不休で活動をするような事は無いように。と忠告だけはしておく。間違ってもしないように。
運命の8月11日。クロルパルスにエルシオンでの全滅の一報が届いた。
「ふ、ふざけるな! そんな情報嘘に決まっているだろ!」
当然、この報告を信じる者はミロを始めとして誰一人としていなかった。だが悪い報告はその後も続いた。その僅か数分後にエルシオン周辺都市での帝国軍による逆制圧。その1時間後にはさらに多くの都市が奪還されたという報がミロの元へと届いた。
まるで準備していたかのように流れて来る報告。実はこれもクロウの作戦の一環で同じ日に報告が集中するように敢えて攻撃日時をずらしていたのだ。クロウが「最短4日」と言ったのはこの時間差攻撃を加味しての発言だったのだ。
最初の報告こそ嘘だと一蹴したミロであったが、その後に続いた報告を聞くにつれ、この報告を認めざるえなかった。一人指令室に籠ると頭を掻き毟り狼狽するミロ。
「ど、どういうことだ……!」
クロルパルスにやってくる早馬の情報を総括し、仮に全てが本当だとしたら、十数個もの都市が僅か2日で全て奪われてしまったということになる。
「どうやって? そんなこと無理に決まっている! 立った二日で最大で数百キロ以上離れている都市間を移動しつつ戦闘をするなど不可能だ。と言う事は、今まで来た情報は全て嘘か!? そうだ嘘に違いない! こんな馬鹿げた話があるか!」
「ところがどっこい、馬鹿げた話じゃないんだよなぁ」
「!? だ、誰だ!」
聞いたこのない声に狼狽したままの声で反応するミロ。見ると窓際に一人の少年が立っていた。
「き、貴様どこから!?」
あの美しい声で演説をしていた彼はどこへやら、今のミロはまるで廃人そのものだった。
「どこ……? ああ、遠いエルシオンから来たんだよ」
「エルシオンだと……!? いや、そんなことは来ていない! どうやってここに入って来たと言うのだ!」
「普通に窓から入って来たんだよ。あんたがあまりにも発狂していて気付いていなかったようだけどな」
「な、なんだと……!? き、貴様は何者だ!?」
「……名乗るほどでも無いが言っておこうか……初めましてミロ・ザームさん。俺の名前はクロウ・アルエレス……ただの冒険者だよ」
「冒険者だと……!? そのただの冒険者が何故ここにいる?」
「それはあんたの兄さん……グラムス皇帝に頼まれたからだよ。あんたを痛めつけてから俺の元へと持って来いってな」
「な、あ、兄がだと!?」
「そうだよ。どうだったかい? 一瞬の幸せは? いい夢はみれたか?」
まるで挑発するかのような口調でクロウは言った。実際挑発しているのだが、と言うのもグラムス皇帝に「痛めつけてから持って来い」と言われているからなのだが。ちなみに本来のクロウなら殴って気絶させて持ってきます。
(うわぁ……俺今すげぇ悪人になってる気分やわ……)
―――スキル《悪人面》を取得しました。
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スキル名:悪人面
分類:生活スキル
効果:脅迫、挑発、詐欺発言に追加補正(相手がより怖がる、挑発に乗りやすくなるなど)
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(あっはい)
「貴様……一体どういう事だ! 説明をしろ!」
「あー、はいはい。今説明するよ」
脳内アナウンスをスルーしつつ、クロウはエルシオンの戦いが起きた8月7日からの説明を始めるのであった。
いい夢は見れたか……これを聞いたらあの言葉が思い浮かぶのは私だけでしょうか?(ヒントは♂)




