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第220話:炎零

01/26;誤字を修正しました。

「さて……では、始めて行きましょうか」


 俺とグラムスが出会った2日後、俺はグラムス、及びその配下にあたる者たちの前に立っていた。場所は帝国軍本陣の作戦会議室。会議室と言っても周囲を陣幕で覆った実に簡素な作戦室だった。


「まずはこれをご覧ください」


 俺の目の前にあった机の上には、ラ・ザーム帝国領土内の地理が描かれた地図がある。その地図の上に俺は《マップ》を応用した《プロジェクトマップ》を展開した。

 説明をすると、このプロジェクトマップと言うのは俺のみが閲覧できる《マップ》を他人も見れるように可視化したものだ。立体的な映写を行うことが出来るので、360度どの角度からでも見ることが出来る。

 さっそく見慣れないスキルを見た将兵は驚きの声をあげた。そんな声を俺は無視して説明を続ける。


「現在の帝国軍と反乱軍の勢力図はこちらとなります」


 マップの上に赤と青の凸マークが表示され、マップの各地に浮かび上がって来た。各地方に多く存在する赤色の凸とエルシオンにポツンと存在する青い凸。この二つを見ただけで、どれが何を表しているか、これを見たことが無いラ・ザーム帝国の将兵にも直ぐに分かった。


「このマップ上に浮かび上がったマークのうち赤いマーカーが反乱軍、青いマーカーが帝国軍を表しています。御覧の通り現在、帝国軍のうち動ける部隊はここエルシオンのみ、それに対し反乱軍はその数を徐々に膨らませており、ラ・ザーム帝国の領土は無論、旧アルダスマン国の領土も大半を勢力下に置いています」


 次に俺は凸の上に数値を浮かび上がらせた。エルシオンの青い凸の上には『7,421』と言う数字が、赤い凸には『1,298』その他の赤い凸にも数百ずつの数値が表示された。


「これが、現在の各方面にいる兵数です。敵は数百名ずつを一部隊として、各方面に回し都市などを制圧している模様です。現に今も動いている部隊があるようですね」


「ま、待ってくれ、この数値が兵力数と言うならば、何故お主のような一冒険者がこのような情報を知っておる? 我らでも各地に散っている大方の兵数や場所はわかれど、ここまで詳細には知らぬぞ!」


 一人の家臣が最もな声を上げた。


「ええ、そうでしょうね。これは私が独自に調べ上げた結果です。こちらとあなた方との情報と食い違いがあっても無理は無いでしょう。私は自分のスキルを使用して調べました」


「し、調べた……?」


 そのようなスキルなど当然聞いたこともないだろう。使ったのは《マップ》の能力である検索を使ったのだが、この世界で、この能力を持っているのは俺ぐらいのようだ。


 家臣たちがひそひそと話し合っているのが見えた。無理もない、いきなりこんな物を見せられて理解が追いつかないのだろう。目の前にいる青年は自分らすらも知らない方法で自分たちよりも詳しい情報を持っていた。

 もしかして、こいつは内通者では無かろうか? そんな声が聞こえてきそうだった。


「静かにしろ! お前たちは黙って聞いておればいいのだ!」


 ざわめき出した場を沈めたのは、先ほどから黙って聞いていたグラムス皇帝だった。

 まさに鶴の一声。先ほどまで五月蠅かった将兵たちは一斉に黙り込んでしまった。まるで学校で先生が怒鳴った時のようで俺は内心面白いなと笑っていた。


「話を戻しましょう。見てのとおり兵力数にそこまでの差はありませんが、皆さんがご覧になった通り敵は帝国軍を一瞬で葬り去るほどの強力な兵器を揃えています。このままでは帝国側に勝利は絶望的と言っても過言は無いでしょう」


「そんな事は先日聞いた。それよりもお主がどうやって勝つか、我らはどうすれば良いかを聞かせてもらおうか?」


「陛下はせっかちですね」


「それほどまでに時間が惜しいのだ」


「そうですね。では説明しましょう。まず陛下たちにやってもらう事ですが……一言で言うならば私たちが攻撃した後の都市の制圧をやってもらいたいのです。流石にこればかりは人数が少ないので帝国軍にお任せします」


「ふむ、それでお主はどうする?」


「私は……まず、このエルシオンを包囲している敵軍ですが、これは私たちの実力を見せるために、私と私の家族で蹴散らしましょう。そして、各地方の敵ですが」


 俺は《倉庫》から作成したばかりの武器を取り出す―――

 銀色に輝く胴体。滑らかな形を描く翼。後端に取り付けられた円状の筒はまるで火を噴きだしているかのような朱色の模様が特徴的だった。


「この『炎零』で超高度からの爆撃で殲滅します」


 聞きなれない道具、言葉にグラムスを始めとする将兵たちは一斉に首を傾げた。無理もない、銃すらも生まれていないこの世界ではこの兵器は余りに未来の物なのだから。


「これは、魔物のように空を飛ぶことが出来ます」


「空を飛ぶだと!?」


 現在、魔族の中で飛行を行える魔物に対抗するために使用されているのは、カタパルトや弩と呼ばれる弓系の武器だ。だが、これらの武器は必ずしも有効とは言えなかった。まず当てるのに技術力。敵の動きを読む経験と勘。そして、有効範囲に敵をおびき寄せる事と多くの技能が必要とされる。それに加えある一定以上上空に逃げられると、そこまで矢が届かなくなり、たとえ届いたとしても魔物たちの皮膚を貫通させることが不可能となるのだ。

 そこで、矢の有効範囲を広げるために弦を強化しようとするが、当然強くなればその分弓を弾く力も必要になり、結局誰も扱えなくなってしまう。

 次に有効な攻撃は魔法であるが、言わずも分かる通り、魔法の取得、詠唱技術の向上、魔力の向上と弓以上に扱う者を選ぶ攻撃手段だ。

 それに対し飛行系の魔物は、自身が疲れなければいくらでも攻撃をすることが出来る。さらに遠距離武器は無くとも大きい石を持って上空から落とすだけでも人間にとってはかなりの脅威になる。

 誰しもが思うだろう「空を飛べたらな」と。風魔法を使った浮遊術もあるが、それが出来るのは極僅かの者たちのみだ。


「ええ、しかもこれは魔物たちよりももっと高い所まで飛ぶことが出来ますよ」


「ほう、どれくらい飛ぶのだ?」


「私が試した限界ですと10,000メートルまでは余裕で行けますよ」


「い、一万!?」


 この世界の生き物では到底届くことが出来ない高さだ。エベレストよりも高い位置を飛んでいる事になるので当然と言えば当然なのだが。


「はい、でその高度10,000メートルから、これに内蔵してある《倉庫》から爆発の魔法を応用した爆弾を一方的に落とします。これをするだけでも大半の敵を滅せられるでしょう」


「……」


 唖然とする一同。もしこれが本当なら、今まで自分たちが恐れていた物はなんだったのだと思い知らされたからだ。敵が持っていた武器は、文字通り未知なる武器だった。だが、今目の前にある炎零といったこの武器は、その未知なる武器すらも軽々と凌駕する技術の塊であることは誰しもが予想することが出来た。

 もしこの武器を売ってくれと言ったらいくらかかるだろう。

 現代の人の技術では到底作ることが出来ない武器だ。万とかの単位ではない。それこそ億単位と言われても全く不思議では無かった。

 ちなみに、ラ・ザーム帝国の年間予算はおよそ1000億S。仮に炎零を一つ100億で売りつけようとすれば、10機も買えば国家運営が出来なくなってしまうレベルだ。当然、実際の価値はもっとある。


「私はこれを現在50機ほど持っています。これを反乱軍の拠点のある所に重点的に落としていきます、私の情報では、ミロは現在クロルパルスで多くなった兵たちの分配や新しい武器、食料の調達を行っているとのこと。クロルパルスを攻撃するのは最後として、今のうちにすべての都市を奪還します。この作戦期間は最短で4日。最長でも一週間で終了させます」


「……はっ? 今なんと言った……?」


「一週間で終わります。と申しました。一週間で反乱軍の組織的な行動を出来ないようにします。その後の残党については、皆さんの働きによって結果は変わるでしょうね」


 とんでもない事をケロッと言った青年にもはや何かを言う者など誰一人も居なかった。当然、この話を聞いた者の中にも「戯言だ!」と信じない人もいた。だが、それを口に出すものは一人もいなかった。何故なら皇帝からの有無を言わせぬ雰囲気が漂っていたからだ。

 グラムス皇帝も当然、この話には疑問を抱いていた。いくら何でも話がうますぎる。それにそのような武器を何故、ただの冒険者であるこやつが持っているのかと。

 まるで、この青年はこの世に生まれたときから知ってたかのように……。実際、知っていたのだが、それを考えても疑う事は出来なかった。お話がうますぎる以前に飛躍しすぎているからだ。


「作戦開始は明日。まずは皆さんに私たちの実力をお見せしましょう」


 この場にいた者たちは黙って頷くことしか出来なかった。

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