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【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~  作者: 黒羽
第5章:クロウのエルシオン開拓日記編
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第213話:新たなる戦火

 クロウが億万長者になってしまった頃。一つの戦火が燃え広がりそうになっていた。


 場所は、エルシオンから遠く……といってもラ・ザーム帝国領内のお話なので、物理的には遠いが決して他人ごとではないのだが。

 話を戻して、場所はクロルパルス。そこで内乱とも反乱とも受けとれる戦争が始まろうとしていた。


 クロルパルスの中心部。そこで一人の青年が演説をしていた。

 顔は、美男子と言われるに相応しく整っており、金色で後ろで束ねられた髪、全身を白を基調とした鎧が特徴的で、ザ・王子様と言われてもおかしくない外見をしていた。

 その青年を守るように兵士が二人、青年を挟んで立っていた。彼らは周りの地形よりも高い位置に存在する役所の屋上にいた。その役所を囲むように周囲には数千ともいえる人々が青年の演説に聞きほれていた。


「人は働くだけの生き物か? 違う! 勉学に精を出すのもよし、魔法の鍛錬に精を出すのもよし、のんびり生活するもよし、冒険者となり各地を旅するのもよし、恋愛するのも良し、若い子たちを育成するのもよし。喜怒哀楽、人により様々な生き方があるのが人間ではないか! それを他人が奪う権利などあるはずがない。いや、あってはならない!」


 青年の声は周囲にこだまし、マイクなどの拡声器を使っていないにも関わらず広範囲にまで広がった。

 青年が一言話すたびに聴衆は賛同の声を上げ、拍手をする。


「私は決心をした。罪なき人々を守るため。誰もが笑っていられる国を作る為。私は自らの命をかけ、戦うことを……これは聖戦だ! 人々を苦しめる王から人々を開放する聖戦である!さぁ、立ち上がるのだ圧っせられし民どもよ! その身を投じ自由のために戦おうではないか!」


 今日一番の盛り上がりを見せる。青年の言葉に同調するかのように民は自らの拳を天高くつき上げ、武器を持っていた兵士たちは拳の代わりに剣を高く掲げる。


 そんな聴衆たちを哀れむかのような目で見る者もいた。


「偉そうに……なにが聖戦だ……この地にまた戦いを呼び入れるつもりなのか?」


「その気だろう……また戦争か……こりない奴らだ」


 嘆いてるのは老人たちだった。若き頃、戦乱の渦中に放り投げられた彼らからしてみると戦争という誰も幸せになれない行為は馬鹿らしいと思っていた。


「こんな街にいたらまたいつ戦争に巻き込まれるか分からん、ワシは疎開でもさせてもらおうかね」


「わしは残るよ。色々あったが結局、ここが故郷だからの」


 事実、この演説の後若い人よりも歳がある程度いった老人たちの方が多くこの街から離れていた。勿論、上記のとおり例外もいたことは頭の隅にでも覚えておいてもらいたい。


「これは……陛下にお伝えしなければ……」


 演説を聞いていた一人の男はそう言うや否や、すぐに街を出て行った。実はこの男、ラ・ザーム帝国現皇帝の家臣の一人であり、青年を監視すべくこの街に赴いていたのだ。

 既に青年が怪しい動きを見せている事は知らされていた。だが、ここまで早い動きだとは彼は思ってもみなかった。


(この早さ……ミロ様だけでは到底無理だ……誰が……?)


 様々な憶測を浮かべながら男は街を出て行く。その様子を笑いながら見ている者がいた。


「クク……いいぞ、さっさと知らせてこい、どうせお前らでは勝てないだろうがな」


 フードをかぶり、全身をマントで包み隠した人物は、大急ぎで街を去って行く男を見ながら笑っていた。


「戦果はこの前の戦争で十分、分かった、まさかこんな武器が実在するとな……魔王様には頭があがらんな……さて、種は巻いた。問題はガラムの野郎が報告してた少年だが……まあいい。こっちは混乱さえ起こせれば十分だからな、せいぜい派手な争いをみせてくれククク……」


 フードをかぶった謎の人物は、それだけ言うと闇の中へと姿を消していった。







==========


「皇帝陛下! ご報告です!」


「なんだ?」


 皇帝陛下と呼ばれた人物は不機嫌そうに答えた。

 ここはラ・ザーム帝国首都『ラ・ザーム』にある王の間。王の間と言うにはあまりにも簡素な作りであり、飾り気なども一切ない間だった。他国のものと比べたらその差は一目瞭然で、石で造られた部屋には皇帝が座る椅子とその机があるだけでそれ以外には、僅かに観葉植物が隅にポツンと置かれているだけであり、同時代に造られた建造物と比べると豪華さでいうならば月とすっぽんの差であった。

 だが、質素倹約、金券質素が基本のこの国では当たり前のことだった。むしろこれ以上派手なものを作りでもしたらこの国では大問題になりかねないほどだ。


「ミロ様が動き出した模様です。報告によると数日以内に行軍が始まる可能性があるとのこと」


 王の間に飛び込むかのようにやって来た家臣が息も整えるままに報告をする。


「数日か……早いな……で、こちらの準備は?」


「早くて3日後には動ける模様です。既に招集をかけておりあとは準備が整い次第動けるとのこと」


「そうか、早急に準備をするように伝えろ。それと今回は私も動くと言っておけ」


「こ、皇帝陛下自らですか!?」


「そうだ、弟の不祥事。その責任は我が取らなければならまい」


「で、ですが今……動くはいかがなものかと……まだ、旧アルダスマン国の統治も完全に済んでおりませぬ、下手に動かれると、そこから飛び火する可能性が―――」


「それも含めて我が動く。まずはミロを仕留め、その後エルシオン方面にも我が行こうではないか、これで文句はあるまい?」


「ハッ……ありませぬ。では、早急に伝えてまいります」


 それだけ言うと家臣は速足に去って行った。


「ふむ……面倒なことになりそうだ……この速さ……もはやミロだけでは無いな……」


 現場を見て来た家臣同様に異変に気付く皇帝。

 黒色の髪に銀の鎧。顔はクロルパルスで演説をしていた青年と似ていたが、こちらの方が些か大人びており、知識深い様子が見て取れた。


「馬鹿者が……こんなことをして何になる……いや、それが分かっていながらも伝えきれなかった我も同じか……」


 皇帝は自らを嘲笑うかのように言った。


「なんにせよ、早急に鎮圧する必要があるな、エルシオン方面で起きた例の報告も気になるし、暫くは忙しい日が続きそうだ」


 皇帝はそういうと、王の間を静かに出て行くのだった。

 以上を持ちまして第5章は終焉とさせて頂きます。

 気付けば一年以上この章で止まっており、自分で「遅っ!?」と嘆いておりました。


 次回、第6章はラ・ザーム帝国内を中心に物語は展開していくつもりですが、相変わらず一筋縄ではいかない様子が早くも醸し出していますね……。

 でも、クロウとその家族ならどうにでもなりそうな気がします。と言うかクロウ一人で国一個沈めれるので彼らだけどう見ても過剰戦力です。


 次章、クロウ領主になります。では、また次回以降もよろしくお願いします。

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