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【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~  作者: 黒羽
第5章:クロウのエルシオン開拓日記編
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第204話:開店(2)

 さ、さあ気を取り直そうか。

 開始早々……いや、開始前から酷い目にあったけど負ける訳には行かない……いや、何に負けるのか分からないのだが。


「ん? なんだ獣族が店員をやってるのか?」


 最初に店を覗いたのは冒険者では無くラ・ザーム帝国の兵士二人組だった。統一された国軍の鎧を来ているから直ぐに分かった。

 この店は周囲をガラスで囲んで外からでも見えるようになっている。ただ、外から丸見えかと言えばそういう訳でもなく、肩ぐらいの高さまで戸棚のせいで外からは顔しか見えないだろう。例えるなら街中にあるコンビニみたいな感じだろうか。


「ん? 従業員が獣族は悪いですか?」


 そんな外見だから獣族が見えてもおかしくは無いのだが……もし獣族が嫌なら入ってこないはずだが……嫌味でも言いに来たか?

 と、場所が場所、世界が世界なのでやはり構えてしまう。だが、帰って来た答えは意外な答えだった。


「何をいまさら、ラ・ザーム帝国では国軍に他種族がいるほどだぞ? 別に今更獣族一人や二人で文句をいう奴なんざいないだろ」


「へぇ……その話ちょっと詳しく聞きたいですね。もし質問に答えて下さるならポーション関係をいくらかサービスしてあげますよ」


「ほーそうか、だが、それは商品を見てから判断させてもらおうか、悪いが国軍の兵士と言えども懐が広いわけじゃないんでな」


「ええ、勿論かまいませんよ」


 よし、食いついた。話が気になるのもあるが、まずは買ってもらわないと話にならない。最初に言った通りビラ配りなどの宣伝は行っていない。唯一あるのはギルド内にあるという、前世で例えるなら駅前一等地並の立地条件だけだ。売り上げを伸ばしたいならこういう所で売っておいて宣伝してもらおう。


「こちらの【基礎傷薬(ライフポーション)】、一見どこにでもあるポーションに見えますか?」


 そう言って俺は商品のポーションを差し出した。


「……一見見たら普通だな、ちなみにこれでいくらなんだ?」


「500Sです」


「……すまん、もう一度聞く、いくらだ?」


「500Sです」


「……本気で言ってるのか!? 普通の店なら3000Sに達する場合もあるんだぞ!? 粗悪品じゃないのか!?」


「いえ、粗悪品ではありません。むしろ一般の店よりも品質は高いと思われますよ」


 嘘は言っていない。なんだってこれは俺や獣族達で作ったオリジナルのポーションだからだ。高いスキルレベルと《SLG》を使用して市販のとは成分も全く違う。だが、材料は非常に安価……というか、森から取って来たもので作ったからタダだな。しかも一つ一つの必要材料数は少ない上に、森からは材料が豊富に取れるので大量生産が可能と言うおまけつきだ。


「試してみましょうか?」


 そういうと俺は、おもむろに《倉庫》からナイフ(投擲用の試作ナイフ)を取り出すと、スッと自分の腕を切りつける。


「「あっ!」」


 驚いたのは獣族達だ。兵士たちも驚いているようだが、それよりもポーションの方が気になるのか反応は微妙だった。

 斬った箇所から血がプシャっと弾けるように飛び出し、その後からスーと垂れて行く。


「で、このポーションを飲むと」


 瓶の口をふさいでいるコルクを取り外し、中身をクイッと一気飲みして見せる。するとどうだろうか、飲んだと思うとすぐに効果が発揮され、みるみるうちに血が止まり、傷口が塞がっていくではないか。


「「おおっ」」


 時間にして10秒足らずで傷口は跡形も無く消え去ってしまった。腕を軽く振って傷口が治っている事を確認する。


「どうですか? 市販のポーションではこんな即効性は無いと思いますが?」


 ポーションといってもピンからキリまで効果の幅は広い。人間の治癒能力を高めるだけのポーションもあれば、今飲んで見せたポーションのように傷口を直ぐに治すものも存在する。一般市場に売られているので多いのは人間の治癒能力を高め、少しだけ傷口を治すタイプが多い。つまり、人間の治癒能力を高める能力はあるが、即効性は高くないのが一般市場に売られている。

 そして、効果の割りには高い。先ほどの兵士が言った通り市場での定価は2000~3000Sほどの値段だ。


「ね、どうですか? これが定価で500S。さらにお話を聞かせてくれるなら400Sで売りましょう。今回だけのサービスです。どうですか?」


「も、勿論買った!」


「お、俺も買った! そんなに即効性が高いポーションをこんな格安で買わない訳には行かないだろ!」


「交渉成立ですね。本日は100本ほどありますので、その範囲でしたらお好きなだけ買って行ってください。ですが、その前に」


「あ、ああ何が聞きたいんだ? といっても一兵士に答えられる量なんか高が知れてるぞ?」


 よし、もう言う気満々だな。しかし、こんなポーションを400Sでなぁ……正直なところ大量生産すれば千単位で準備できるから50Sぐらいの使い捨て感覚で売ってあげてもいい気がするぐらいだ。


「いえいえ、簡単な質問をいくつか聞きたいだけですよ。まず先ほど言っていた他種族兵士のことですが、何故他種族などを?」


「簡単な話だ、安く兵をそろえたいからだろ。他種族の力を借りるなど他国ではありえぬ話であろうが、安く兵士を雇えると言うメリットがある」


「へぇ、でも忠誠心とか無いに等しいですよね?」


「だからこその《契約》だろ? お主も現に獣族二人を奴隷にしているではないか」


「ああ、それもそうですね」


 忘れている人も多いかもしれないが、奴隷の《契約》は絶対。一度契約をしてしまえば、契約が解除されるまで、主人には一切歯向かえなくなる。そういう契約をしていればだが、俺はそんな事をしたくないから超緩い契約をしているけどな。


「《契約》をしてしまえば簡単な話だ、捨て駒にでも何にでも使える。まあ、そんな無駄死にさせるアホな事をする上司はいないだろ、兵士を減らしてどうするんだよってな」


「結構現実的な感じですね……」


「俺も他国に滞在しているときがあったが、まあ理不尽な仕打ちをしてるな。まあ、同じ立場とかには絶対になれないが、家畜ぐらいには扱えよなとは思うわ」


 それでも家畜レベルかよ。なんで他種族だからってそんな扱いするんだよ。だが、それがこの世界では普通なのだ。日本で鯨を食べることが何気ない事でも(最近は減ってるが昔は結構普通だったとのこと)外国では異常であるのと同じことなのだろう。

 この話だけを聞いているとどうやら彼らは、他種族こそ嫌いではあるが、そこに目を瞑って過ごしているうちに多少の険悪感は無くなっているのかもしれない。慣れたと言う事だ。


 言われてみればこの街でも、獣族は結構いるためか他の種族(龍族とか)に比べて嫌悪感は少ないように感じる。まあ、じゃないとこうやって従業員はもとい、性行為を行ったりする相手として見る事はできないだろう。


 しかし、なんでこんなに他種族と仲が悪いのだろうか? これもいつかは向き合わないといけない問題なだけあり、今から頭を悩ませるものになりそうだ。


「なるほど、では次の質問です。兵士たちはギルドによく顔を出すのですか?」


「あー、休日の奴は飲みに来たりする奴らも多いな。もっとも俺らもそれで来たんだけどな」


 朝っぱらから!? まだ午前中だぞ!?


「へー、そうなのですね。あっ、じゃあそのポーションの事是非広めて下さい」


「ああ、こんなに安価で高性能な物を買えることを俺らだけ知っててももったいないからな」


「そうして下さいますと、助かります。では、聞きたかった事は以上ですので、後はどうぞご自由に。ポーション以外でも気に召すものがあるかもしれませんよ?」


「そうだな、そうさせてもらおう」


 それだけ言うと兵士たちは店内の商品を見回りに行った。

 よし、取りあえず最初は上手くいったな。


「く、クロウ様って結構喋り上手なのですね」


 一連のやり取りを見ていたフェーレが率直な意見を言った。シャルも同じ意見だと頷く。


「いや、これくらいは大したことは無い、皆も出来るさ、フェーレとシャルには仕事を早く覚える上では身に着けてもらうからな」


「えぇ~、私かしこまったしゃべりとか苦手なのですけど……」


「別にしゃべり方を直せとかは言わないよ。大切なのは行動だ。口だけ達者な人よりも何倍も大事なことだと俺は思う。フェーレとシャルもそれだけは覚えておいてくれよな」


「わ、分かりました」


「はい!」


 その後、俺にいろいろ話をしてくれた兵士たちはポーションを20本ほど買ってからギルドのカウンターへと向かって行った。そういえば飲むって言ってたな。


 その後、店に来るのはラ・ザーム帝国の兵士たちばかりで冒険者は殆ど現れなく、気付けばお昼になっていた。


 お昼休みは一人ひとり交互に休憩室で取る事にしている。と言っても、日本のお店みたいに、これをやらないといけないアレをやらないといけないと言う事でもないので、一人でも結構何とかなるものなのだ。むしろ自然で育った獣族達にとってはこれくらいの事は屁でもないとのこと。むしろ「1モフリの為ならずっと働けます!」と豪語するぐらいだ。どれだけ1モフリが楽しみなんだ君たちは。


 と、こんな感じで開店初日の無事(?)半日が終わった。


 さて、残りの半日も頑張るとしますか。

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