表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~  作者: 黒羽
第5章:クロウのエルシオン開拓日記編
203/270

第199話:敵はだれなのか(2)

生きてますよ。まずは投稿遅れてすいません。

前回の後書きで反応して下さった皆さんありがとうございます。皆さんの暖かい声で元気をもらえました。


では、第199話をどうぞ。


09/22:密告した人の名称を「将兵」から「部隊長」に変更しました。

「両首脳陣……どういうこと……?」


「……語弊があったわね。正しくは敵は首脳陣、味方は一部首脳陣よ」


「……裏切りか内通者のどちらかというところですか」


「……ことの発端は戦後のこと……戦後処理が終わり軍の再編が行われている最中だった」


==========


 きっかけは一人の部隊長の告白からだった。その部隊長はあの最後の戦争のとき山の外側を進撃する部隊の隊長だった。優しくて人当たりも良く周囲からの人気も高かったわ。

 そんな人がある日、唐突に王の前に謁見したいと言い出した。そしてその人は王の前でこう言った。


「私は国を……皆を……売ってしまいました……!」


 突然泣きながら言い出したことに、何のことか最初は王も含め誰も分からなかったらしい。だけど、その部隊長の口が進むにつれ、恐ろしいことが分かって来た。

 その内容を抜粋するとこうなるわ。


1、軍、及び内政官の一部が敵と連絡し合い、渓谷での決戦に持ち込ませた。

2、敵軍による山での戦法は前もって一部の味方に伝わっていた。だが、それを知った者は逆に敵と商談をして、これを外に漏らさないことで金銀財宝を受け取る(=賄賂)ことを約束。

3、味方内部の勢力で邪魔になるであろう人物もついでに消すべく軍の編成を峡谷での戦いの前に変更をした。


 勿論、最初はだれも信じなかったらしい。だけど、その話はあまりに鮮明に緻密な話で、とてもではないが作り話には感じなかった。そして本人は、この話をしたのちに自害すると言い出して聞かなかったらしいわ。

 結局、その将校の普段の行いも配慮して、その話を元に極秘裏で調査が行われることとなった。作戦は王以下側近中の側近のみで行われ、部隊長が裏切者であると言った人物複数人とその周辺の動きを徹底的に調査した。

 そして、その辺りから事態は大きくなり始めた。


 まず、ある人物が送ろうとしていた手紙を見つけた。なんでも通常の発送方法(馬を使う伝達手段のこと)を使用せず本人の側近が直々、しかも時間帯は夜中に送られようとしてたらしいわ。(通常は配下の配下や、配達を職業としている人に渡して送る)

 手紙の宛先はとある龍族への手紙だった。内容はまずこのたびの作戦成功の謝礼の残り半分の要求。どうやら前金で半分は既に貰っていたようだわ。そしてこれからも宜しくの意味合いを含めた魔石を送るといった趣旨の事が書かれていたらしい。その手紙自体は、私も見たから間違いないわ。


 そして、他複数の調査隊からも似たような手紙を入手したという報告が上がった。


 王様はひっくり返るような思いだったでしょうね。直ちにそのことは報告され大規模な粛清が始まったわ。まず、私を含めた渓谷戦で谷間で進軍をしていた部隊の主な隊長格及び訴えた部隊長が知らないはずと言った人物の中で特に高い地位にいる人たちが集められた。

 ある意味、賭けに近かったでしょうね。部隊長の言葉をどこまで信じていいか分からなかった上に、下手をすれば関係の無い人も巻き込みかねないことだったから。だけど、ここで行動をしなければ国家転覆の可能性もあった以上、仕方が無かったのかもしれないね。


 私が最初にその話を聞かされたときは、耳を疑ったわ。敵と判断された人の中には私が信頼していた人も数人入っていたわ。味方の手によって味方が殺された……その事実は私の今後を大きく変える事になった。


 話を戻して、その報告を聞いた味方将兵たちは当然、怒り狂ったわ。敵に倒されるならまだしも、味方から殺されたなど断じて許さぬと。

 そこで王はこういったわ。


「ここで忠誠を改めて誓い、この命令を忠実にこなすのであれば主らをこれまでのより高い地位に遣わすぞ」と


 脅しだったのでしょうね。あそこで誓わなければ自分も殺される……嫌とは言えない雰囲気だったわ。確かに仲間が殺されたことには許せなかったけど、それで味方をまた殺すなんて……その上、地位と言う餌につられて……これじゃあ、私たちも龍族と取引をした味方と何一つ代わりやしないじゃない……まぁ、そんな事あんな場所ではとてもじゃないけど言えなかった……もっとも、他の人たちは地位よりも仇討ちに固執してたし、一概にそうとは言えないけどね。


 そこからは早かった。報告に上げられた者たちは容赦なく捕まえられ処刑されていったわ。中には取り押さえられた時に殺された人もいたわ。そして、彼らの屋敷などからは、龍族から受け取ったであろう財宝と書簡が大量に見つかったわ。その財宝を始めとした裏切者の財産などは全て没収。親族を始めとした多くの妻子も禁固刑や何らかの処罰を受けたわ。中には反抗に一役買ったとして処刑される人もいたわね。もっとも、口封じと言った方が正しかったのかもしれない。


 国民へは「戦犯者の処刑」と伝えられたけど当然、やり過ぎでは?といった疑問の声も多く飛んできた。しかし、そうした声もどこかで握りつぶされ、発覚から僅か1週間足らずで粛清は終了した。処刑された人物数十名、その他数百名が何らかの処罰を渡された。

 約束通り、私たちには全員今の地位より高い地位が送られた。私が第4部隊の隊長になったのもその時だったわ。






==========


「……ちなみに、その密告をした部隊長はどうなったのですか?」


「……事の終焉を確認したのち自殺したわ……」


「……そうですか……」


「……その時からだったわね……私は何のために戦っているんだろうって……生きて食べて行くために国軍に入ったけど、大切な仲間を失って、味方を殺して……こんな思いしてまでやることなの?って、いつも考えていた。そして指揮をしようとするたびに身体は震え、ときに嘔吐を繰り返し、食事も碌に喉を通らなかった……結局、第4部隊長に就任してから僅か2ヵ月足らずで私は自身の体調不良を理由に軍を退団したわ」


「……それからは……?」


「……数年間は自宅に引き籠りっぱなしだったわね……生活を助けるために軍に入ったけど、結局養われるかたちになってたわ……」


「……」


「国から学徒動員令が出た時も逃げ出したくてしょうがなかった、クロウ君に全部押し付けて自分はどこか遠くに行ってしまいたかった……フフ……卑怯よね……生徒に押し付けて自分は逃げようとしているのよ? 指揮する人は強い人がいいとか他の先生の前では言ってたけど、本当は理由なんてどうでよかった。私が指揮しなければどうでもよかったのよ……笑ってよ……こんな卑怯な私を笑ってよ……!」


 終いには泣き出してしまったアルゼリカ理事長に俺とサヤは言葉を失っていた……いや、かける言葉が思い浮かばなかった。


 アルゼリカ理事長が悪いわけではない。と一声かければいいか? いや、事はそういう訳には行かないだろう。そんな事を言えば今のアルゼリカ理事長にどう受け取られるか分かったものでは無い。下手をすれば抜け出すことの出来ない負のスパイラルに陥りかねない危険をはらんでいるからだ。


 結局、アルゼリカ理事長を泣いている姿を俺とサヤはただ黙ってみているしかなかった。


 そして、アルゼリカ理事長が次に口を開くまでの時間は、これまでにないほど長く感じていたのだった。

暗い話を書くときは指先がどうしても重くなって仕方がありません。一体誰がこんな話を思ついたんだ!(私だ!)




感想いつもありがとうございます。返信は出来ていませんが、すべてのコメントに目は通していますので、宜しければこれからも書き込みお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ