第20話:火山での激戦
ようやく、鍛冶屋までこぎつけました。2話連続で少なくなってしまい、大変申し訳ございませんでした。
では、炎狼との戦いをどうぞ。
※9/7 誤字脱字を修正しました。
「あっぶねぇ、大丈夫か?」
「ええ、問題ないわ」
ホッと胸を撫で下ろす。危なかったあともう少し遅れていたらエリラに直撃するところだった。舐めていたわけでは無いがイレギュラーなのには弱いな、もっと勉強しないと。
それにしても何であいつの動きが止まらなかったんだ? 刀は振りぬいたはずなのに、とふと目を落とすとそこには信じられない光景があった。
自分の持っている刀の刃が半分ほど消えているのだ、さらに無くなった先端の部分は先程俺があいつを斬った場所でドロドロに溶けているのだ。
何だと!? 溶けたのか!? あいつの熱で!?
この刀の素材は鉄だが、一瞬触れただけで溶けるほど軟な構造はしていない、あいつの表面どうなっているんだよ。
こうなるとさっきの魔法も本当に直撃したのか怪しいよな。
「エリラ、済まないもう一度頼む、あとこれも使っていいぞ」
そういうと、俺は前もって買っていた魔法符(詠唱短縮版)を手渡した。
「こ、これ魔法符!? いいの?」
「いいよ、どうせ俺はいらないし」
《瞬間詠唱》あるしな。一撃で沈めてもいいけど素材が欲しいんだよな。あれくらいの大きさならどれほどの素材が取れるか。
エリラが再び詠唱に入る。それと同時にいきなり炎狼が掛かってきた。
剣はもう使えない。《倉庫》に予備の剣があるけど、たぶん切り付けたら同じ結果だろうなぁ。普通にやればな。
俺は予備の剣を取り出し構える。
「《付加魔法》武器へエンチャント」
持っている剣が今まで灰色だったのが次第に青くなっていく。
俺が付けた属性は水だ。魔力を直接剣に着けるという荒業だ。本来こんな使い方はほとんどできない。剣を振った時に魔力がずれるからだ。
素材から属性を付加させておくことは出来る。さらに魔法剣と言われる剣も魔力を込めれば発動できるのもある。
しかし、ただの鉄の剣に属性を付けることは出来ない。出来ることと言えば魔力を剣に集めることだろうか、しかしこれも一撃与えれはじけ飛ぶので非効率だ。
だが、俺は創世魔法で付加が可能になっている。これは便利だよな、直前まで剣の見た目で属性が分からないのは大きい、特に対人戦では大きなアドバンテージになるな。
大きく息を吐き、意識を集中させる。
炎狼が息を吸うのが見えた。そして感じる魔力の流れ。
「まずい! ブレスか!?」
そう言ったときにはすでに炎狼の口からは炎が吐き出されており真っ直ぐと向かってきていた。
「エリス! 詠唱は続けろ! いいな! 絶対当てろよ!」
俺はそうとだけ言うと、剣を地面に突き刺し素早く両手を左右に広げる。両手に光が収束し手を覆う。そして国お抱えの魔道士が見たら眼を剥きだしにしてみると思われるほどの高度な魔方陣が両手から展開される。普通の魔法は創造だけでも十分使えるが、魔方陣にして作る魔力札のように式にして発動した方が安定する。ましてや強力な物は魔方陣無しでは安定せずに暴発する可能性すらあるのだ。さらに想像力が足りない物が使えば魔力暴発はもちろんのこと、体内で魔力が炸裂することもあるのだ。
「十連魔方陣……展開《多重防壁》!!」
両手に地面を突き魔方陣をから透明な防壁を作り上げる。
名前の通り防壁というこの世界でも基礎魔法として扱われる魔法だ。魔力を固めて目の前に透明な防御壁を作り出す。
ただ、俺の場合それを重ね合わせるということをしている。しかも重ねかけをするたびに相乗の防御力になる。
今は十連なので、10倍の防御力だ。もちろんエリラの所までカバーしている。
炎狼のブレスは俺らに届くことなく、背後に消えていく。ちょっと過剰戦力だけど別にいいよな。
「―――――《水砲撃》!!」
エリラの詠唱も終わり水の砲弾は炎狼に一直線に飛んでいく。
ドォンと水の音には相応しくない音が響き渡る。炎狼の声があたりに響き渡る。確実に当たったなと俺は思った。
だが、炎狼の姿を見たときわかった。当たりはしたがダメージが通っていない事が。
「うそ……」
エリラも倒さないまでも確実にダメージを与えたと思ったのだ。エリラも俺と戦ってきたおかげでレベルは40ぐらいまで上がっている。この年齢では異例の強さだろう。だがギルドには顔を出していないのでギルドの人は誰も知らないことだ。顔を出さないのは面倒事を避けるためだ。
エリラの水魔法のスキルレベルは7だ。もちろん年齢の割に異常な数値だ。普通なら十分対抗できる強さなはずなんだが。(じゃないとAランクはもっと恐ろしいことになるからだ)
炎狼が飛びかかってくる。だが俺の防壁のおかげで近づくことが出来ない。
「マジかエリラの水魔法で無理だったか」
「ど、どうするの? クロも剣が届かないよね?」
「そうだな……一応攻撃が当たっているから攻撃は通っているはずだけどな」
「もしかして転異種?」
「……かもなぁ」
転異種とは普通の魔物より数倍の強さを持っている魔物のことだ。下位に属しているゴブリンなどは強くても問題ないが、ボスクラスモンスターだとこの様に全く攻撃が通じないという最悪なパターンになるのだ。
今回はアンラッキーだな。ボスクラスは個体数が少ないから滅多に転異種とか生まれないのに。
エリラも「終わった」という顔をしている。まあ得意な水魔法が当たらないんだからな。
もしかしてこの防壁も過剰戦力じゃないかもな。
「しゃあねぇ 俺がやるよ」
「や、やるって言ってもどうやって!?」
普段俺の力は抑えているからな。マジでやったらクレーター作ってしまうし。
「行くぞ」
片手は魔方陣に魔力を送るために付けたままにしておく。そして反対側の手で魔法を唱える。
「百花繚乱……」
手の周りに光が収束する。そして徐々に形を形成しながら手の周りで回り始める。一寸も乱れることなく一定の速さで回る光はやがて桜の花びらの形になった。
「《桜吹雪》!」
手を炎狼に向かって思いっきり突き出す。手の平に魔方陣が作られ魔方陣、そして俺の手の周りから一斉に桜の花びらの形をした光の刃が炎狼に向かっていく。
魔法は炎に焼かれることなく炎狼に次々と突き刺さっていく。痛みに耐えられなくなり後ろへ後退した。
だが、それくらいで負けるような敵ではない。炎狼はすぐに体勢を直そうとするが
「まだだ!」
多重防壁を解除し開いた手でさらに魔法を唱える。
「《水龍》」
《桜吹雪》同様に手を突き出す。出てきたのは龍の形をした水だった。今度は並大抵の魔力をつぎ込んでは無い、そのため炎狼の熱にも負けることなく炎狼に直撃をした。
だがそれでも炎狼は耐える。
だが桜吹雪の魔法がついに敵の眼を捉えた。光の刃が炎狼の左目に直撃し炎の中に血が飛び散る。激痛に顔を除けさせる炎狼だが、防御バランスを崩し《水龍》も耐えることが出来なくなり炎狼の体を見事に貫いた。
地面に崩れ落ちる炎狼、じたばたと足掻くが、やがてその動きは少なくなりついに止まってしまった。体を覆っていた炎も消え、紅色をした皮膚が露出している。
こうして、炎狼の転異種は俺らの手によって倒されたのだ。俺らは討伐部位を確保し、必要な部位を取り火山を後にした。
街に戻るとちょうどガラムに出くわした。
「おっ、お主らかちょうど探しておったぞ」
「何の用ですか?」
「何、お前が言っていた例の物だよ」
「本当ですか!?」
素材を持ち帰った日に出来上がるとは。俺は表面は嬉しそうにしているが、心の中はそんなものではない。まさに狂喜して喜んでいる状態だ。叫びたい。
ガラムはついて来いというと俺を案内してくれた。
ガラムが案内してくれたところは《猫亭》からそんなに離れておらず市場に近い場所にあった。
「よく、こんな立地条件がいい所が取れましたね」
あっちだったら地価とか高そうな場所だなぁと俺は思っていた。
「なに、たまたま店を畳むという奴がくれたんじゃよ、正直広すぎると思ったが中途半端に余らせるのもあれだから広めに作っておいたぞ」
案内された建物はレンガ造りの2階建ての家だ。白が基本の家で中々いい造りだと思った。
中に入ると何やら店らしき造りになっていた。なんでも「前の奴が使っていたのを改築しただけだ」と言った。
さらに奥に進むと俺がお願いしていた施設があった。
「おお……!」
思わず歓喜の声が漏れてしまう。そこには国でも有数の人たちしか持っていないような設備が整っていたのだ。
「いいのですか? こんなにいいのを造っていただいて」
「何、金はおぬしから取るから問題ないわい。むしろ爆弾を取ってくれたお主に感謝したぐらいじゃよ」
ちゃっかりしているな。それにしてもこれだけいい設備だと幾らかかったんだろうな。まあ返金は少しずつでもいいからと言っているからのんびり返すか。
俺はガラムに礼を言うととりあえずギルドに報告に行くことにした。ガラムはまだ用事があるといい請求額は後日言うとだけ言って市場に消えて行った。
そして、俺がギルドに歩き出した時、奴らが現れたのだ。
「見つけましたよ」
……もう何でこうなるの。
俺は仁王立ちをしているソラを見て深々とため息をつくのだった。
===2018年===
01/08:誤字を修正しました。




