第188話:発令! 第一号作戦(5)
「敵兵力残り2割を切りました。どうされますか?」
「引き続き攻撃を続けろ。要人の安全は確認出来ているからそこは安心していい」
「了解しました」
獣族たちに指示を送ると、そのまま《マップ》で要人(アルゼリカ、サヤ、リネア)の確認を引き続き行う。
リネアやサヤは城門前にいるから問題なし。アルゼリカ理事長も街中にいるみたいだから取りあえずは安心かな?
ただ、アルゼリカ理事長のマーカーが先ほどから全く移動していないのが気になるな。場所も路上みたいだし一体何をやっているんだ? 確認しに行った方がいいかもしれない。
「クロウさん!」
そんな事を考えているときに突然、声が聞こえ現実に戻って来る。
「どうs―――
それは一瞬の出来事だった。
獣族の声に反応して後ろを向いた瞬間、突如自分の前に殺気を感じた。バッと前を向いてみるとそこには、先ほどまでこの戦場には見られなかった魔物が立っていた。
魔物は既にその手を俺に向かって振り下ろしており、その手には見るからによく斬れそうな爪がギラリと光っていた。
空を斬る音と共に血飛沫が舞い、獣族たちの叫び声が聞こえて来る。彼女らには俺が一瞬で真っ二つにされたように見えたのだろう。
「―――っ!!」
だが、そんなことは無く、俺は間一髪の所で攻撃を防いだ。魔法は間に合わなかったので《硬化》で自分の腕を硬い鱗に変えるとそのまま自分の上半身ぐらいはある爪を腕一本で防いでみせた。
だが、硬いと思われた龍族の鱗には魔物の巨大な爪が抉りこんでおり、腕の肉は見事に斬られていたのだ。感覚でだが、骨の部分で止まったのだろう。
「グガァァァァァァァッァ!!!!」
だが、辛うじて止まっていた爪は魔物の一声と共にバキャァ! と折れてしまった。だが、僅かにでも止まってくれたおかげで俺は回避をする時間が出来、自分の腕と引き換えにその命を守る事が出来た。
「う゛……」
自分の後ろには獣族がいる。そう思うと対して後ろには引き下がれない。そう判断した俺は僅かに一歩後退しただけで、攻撃を防いだ腕とは逆の方を使った。
「《海神の鉄槌》!!」
ウグラ戦の反省を生かし、《海神の槍》を改良した第二世代型魔法(第一世代が《海神の槍》になる)《海神の鉄槌》。
威力アップは勿論の事。槍状の先端に爆撃魔法とスキル《瞬断》の能力を追加することにより貫通能力を大幅に向上させた。さらに発動の瞬間に一気に加速をするために風魔法を取り入れたことにより威力は桁違いにアップした。
狙うは心臓部。腕から繰り出された槍は一瞬にして音速の領域にまで加速。そして勢いそのままに魔物の胸の中央部に直撃をした。
ボッと初撃の音が聞こえたかと思うと突如、爆炎をあげ強烈な衝撃波が辺りを襲う。その勢いの強さに真後ろにいた獣族たちも後方へと転がるように吹き飛んでいった。(これでも衝撃波が極力いかないようにカバーはしています)
勿論、直撃した魔物もただでは済まされない。一瞬にして数十メートルほど吹き飛び、さらに着地しても勢いは死なず数百メートルほど吹き飛ばされて行った。
だが、そんな光景を見た俺はショックを受けていた。
(貫通をしなかった!?)
威力は申し分なかったはず。恐らくだが俺の単体攻撃魔法としては現時点で最強クラスの魔法のはず。それが通用しなかったのだ。
(やっぱりまだ魔法の扱い型は下手か……7年のブランクも予想以上に響いているのか……?)
そんな事を考えていると突如、ズキッと鈍い痛みが襲い掛かって来た。見ると先ほど魔物の攻撃を受け止めた腕は肘から先が抉り取られており血管や筋肉が露出している状態となっていた。《硬化》状態の名残か鱗がそこらじゅうに散らばっており手の骨や筋肉は地面に叩き付けられ木端微塵に粉砕されていた。
「《硬化》状態の腕がこうもあっさりと……!」
急いで再生させないと。そう思った俺は回復の準備に取り掛かろうとした。
だが、そうは問屋が卸してくれなかった。
「ガァァァァァァァァァァ!!!」
そんな音が聞こえたかと思うと、突如突風が巻き起こり先ほどの爆風で舞い上がっていた土煙が一瞬にして吹き飛ばされていった。
見ると先ほどの魔物がむくりと起き上がり、こちらをジッと見つめていた。その胸には俺の魔法を防いだ後があったが、その傷も既に修復をし終えようとしているように見てとれた。
「あの回復方法は……!」
見たことがあった。それは魔法学園の魔闘大会で化け物へと変わったウグラの回復方法と全く同じだったのだ。
よく見ると姿もウグラの時とよく似ている。だが、その強さはウグラとは比べものにならないのは、俺の腕が証明していた。
「クソッ……!」
俺は後ろに吹き飛ばしてしまった獣族たちに大声で指示を飛ばした。
「全員、街まで走れ! 命令だ!」
そういうと、《倉庫》より《漆黒・改》を取り出し魔物へと俺は走り出した。
転げ回った衝撃で色々と混乱をしていた獣族は俺の声を聞いても暫くの間、動けないでいた。正直、俺の命令も聞こえていなかったかもしれない。だが、体の本能、それから《契約》の能力が補助したのか、全員すぐに立ち上がり街へと移動を始めた。
俺は自分で火の魔法を使い腕の傷口を燃やす。失血を防ぐためだ。回復をしたかったがそんな時間は無かった。
「ウグラの時と言い、何なんだあの化け物は……」
だが、考えている暇は無い。既に魔物もこちらに向かって来ていたからだ。
「……すべては終わった後でだな」
俺はそれだけ呟くとその後、考える事をやめ敵との戦闘に突入した。
ブラスターって日本語に訳すとどういう意味なんでしょうか? と書いてて思いました。まあ、中二風ってことで一つ我慢をお願いします。
一人暮らしを始めたのはいいのですが、ネット環境が無いので週末に家に帰ってこないとネットが扱えないことに気付き慌ててネットの申し込みをしたのですが、工事が3月5日になり、二週間以上できないことに気付き、某閣下みたいに「チクショウメ!!」と叫びました。マジです。