第181話:騙されました
※12/7 最後の場面の主人公のセリフを変更しました。
地響きが響き渡り、地面が揺れる。まるでこの世の終わりだとでも言うかのような激しさだ。
復興中であったエルシオンの人々は手を止め、あたふたとすることしか出来ず、あるものはどこかへと逃げようと、ある者は祈りを捧げ、ある者は呆然とするだけだった。
そして、どれ程の時間があっただろうか、数秒だったかもしれない、数十秒だったかもしれない、だが、人々にとっては何時間にも感じたであろう地響きは終わりを告げ静寂が訪れた。
人々がゆっくりと立ち上がり辺りを見渡す。地震かと思われたが辺りに新たに壊れた建物などは見受けられず、変わらない光景が広がっているかのように思えた。
だが、人々はこれまでにない違和感を感じていた。そして、その違和感の根源はすぐに判明をした。
「……! おい、アレを見ろ!」
一人の住民が指を刺した先を見た人々は一斉に凍り付いてしまった。
何故なら、普段そこにあった巨大な城壁が跡形も無く消え去ってしまっていたからである。
「派手にやりましたね」
「うっせぇ、言い出したのはお前じゃねぇか」
夕刻。陽が沈み薄く月が見え始めた時間帯。俺は街の片隅に腰を降ろして考え事をしていた。そんなとき、レウスがやって来て俺を煽っているわけだ。
「いやぁ、いいものを見させてもらいましたよ。久々に満足しました。お礼として何かお手伝いできる事がありましたら、手伝いますよ」
「……あんた、本当に楽しむためだけに言いやがったのか」
「ええ、言ったじゃないですか最初に、面白そうだからと」
えっ、何言っているのこいつ? みたいな顔でレウスは俺に言ってきた。こいつ……喧嘩売っているのだろうか? 多少イラついたが、怒る気は起きなかった。何故だろう、俺はこいつは悪い奴じゃないと思っているのだろうか? 面白そうで城壁ぶっ壊す案を平然と出してくるあたり悪い奴というよりか冷淡な奴というイメージだろうか? いや、違う。どっちかと言うと自分が面白ければいいとでも思っているのか?
考えてみるが、何とも雲を掴むような考えでならなかった。もやもやした思いだけが残りとてもじゃないが、答えは出そうにない。
「……ところであの筋肉馬鹿はどうしたんだ?」
「ああ、テルムなら『くそっぉぉぉぉぉ! 女子に負けるとは屈辱! ちょっとチ○コを鍛えて来るでござる!』とか言ってどこかに出かけて行きましたが?」
「あっ……そう……うん、分かったもう言わなくていいよ……アレ? そう言えば長男は?」
「アレですか? 逝ってしまいましたよ」
「逝った!? いや、納得だけよそんな淡々と言っちゃう!?」
「嘘です」
「嘘かい!」
「嘘ですよ。彼ならちょっと宿で昏睡状態になっているだけですから」
「昏睡状態!? どっちにしろやばいじゃないか!」
「大丈夫ですよ。2か月に1回ぐらいのペースで昏睡状態になりますから」
「2か月!? そんなペースで!? そのうちマジで死んでしまうぞ!?」
「そういって早二十数年、生き続けていますから大丈夫ですよ。何、死んだら骨はその辺の動物にでもあげますよ」
犬かよ!? と言いたそうになったが、この世界に犬はいないので言うのはやめておいた。(犬に近いのはいるが、どっちかというとコボルトみたいな動物なので犬と言うべきか悩むところである)
「……ああ、なんかあんたら兄弟と関わっていたら疲れるわ」
結論、こいつら全員良く分からねぇわ。
「で、どうするのですか?」
「どうするって何をだ?」
「これからですよ。ラ・ザーム帝国の支配下になったこの街でこれからどうするのですか?」
「ああ、そういう事か」
あのあとアルダスマン兵は戦わずして降伏。敗因は城壁の崩壊による戦意喪失だった。これによりエルシオンはラ・ザーム帝国の支配下になったのだ。
「別に、やる事は変わらないが……強いていうなら金儲けでもさせてもらうとしようか。返済の件も残っているしな」
いい加減何か商売でもしないとお金がすっからかんなのだ。ギルドで依頼を受けようにもエルシオンに今の所依頼などは無い。これから復興すれば徐々に出て来るだろうが、そうだとしても安定して収入を得る必要はあるだろう。
「そうですか、あっ言っときますけどラ・ザーム帝国ってかなり重税をかける所で有名ですからね。多分土地代とかでごっそり持っていかれるんじゃないですか?」
「マジで!?」
衝撃の事実。もしかして悪名高いってそこから来てたりするの!?
「商売をしようにも店を開く商税や物を売った時に出る消費税や維持費こみこみでアルダスマン国の数倍はかかりますよ」
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「それを最初っから言えよ!!」
「いや、お金の話はしましたが、税金のお話なんてしていないじゃないですかヤダー」
「くっ、こ、こいつぅ……!」
「HAHAHAHA~、では私はこれでサラバ~」
「オイこらマテヤ!」
「あっ、そうそう」
俺が颯爽と逃げて行こうとするレウスを追いかけようとしたとき、レウスが後ろをくるっと向き。
「壁の修理ですがラ・ザームでは防衛系の事業は全て国が受け持つのでクロウさんの出番はありませんよ」
と、更に俺にダメージを与えるかの如く言って去って行った。
「……」
あとに取り残された俺。夕日は完全に沈み辺りは先ほどよりも暗くなっていた。俺はガクッと膝から崩れ落ち両手を地面についてしばしの間黙っていたのち顔を上げ
「……ああ、俺完全に遊ばれたな……」
と、嘆くのであった。
卒業研究難しいです。私はソフト開発を行っていますが、環境整備とか言語を調べたりとかでとにかく大変です。二人組でやっているのですが、もう片方の方がいなければ私は何も出来なかったでしょう。いや、マジで。
結構忙しいのでペースは暫くこんな感じになるかもしれません、マジですいません。
あっ、そういえば今回のお話で最後クロウが叫んでいますが、最初は某閣下の人みたいに「ちくしょうめ!」と叫ばせようと思ったりしました。ネタ入れすぎやと怒られそうなので自重しましたが。
>>追記『セリフ変更理由』
読者に指摘されたのもありますが、読み直すと「城壁ぶっ壊して金儲けしようぜ」と受け取れたからです。私としてはレウスに遊ばれたと言う部分を強調したいので変更しました。