第165話:ミュルトの心配事
取りあえず農地を少しだけ作ったが、あれだけじゃ当然足りないので後で増加させたいが、その辺はエルシオンの住民に任せておくことにした。
何でも与えるだけではダメ人間になってしまうだろうし、何より俺の時間が取られまくるから駄目だ。色々やりたいこともあるし、やらないといけないこともあるしで時間はあってもあっても足りないのが現実だ。
さて、当然人は小麦だけでは生きていけれないのでその他にも色々な物を作る必要があった。
取りあえず目先の必要なものとしては調味料が必要だが、これはまた他の街で売買すれば手に入るだろうし後に回そう。
やっぱり商人に運んで来てもらうのが一番手っ取り早いのだが、状況が状況なので商人たちもそれなりの値で吹っかけて来ていたのでお金が結構必要になる。
昔《猫亭》に泊った時の宿代は確か1000Sだったはずだ。(第12話参照)
銀貨にして10枚ほど。これならランクFの人でも何とか食っていけるぐらいの金額だが、この時の商人が商品に付けていた値段は通常のおよそ2倍~4倍程度。
そんなにお金を使っていたらすぐになくなってしまうよな……。
もっとも、俺も金欠なのは間違いないのですが(主にギルドへの借金で)
そこでちょっと意地悪いが、前に獣族たちが中心になって行った狩りの時に得られた肉を格安で売りつけることにした。
タダじゃないのかって? それが出来たらいいが、残念ながら俺の所も余裕があるわけではないので無理なお願いだった。
ただ、前回無料で配布をしているので、今回値段を付けて売るには少し手を加えなければならないだろう。
そこで家の獣族の出番だ。
皆には今度はちょっとした料理をしてもらう事にした。と言っても材料は肉と森から取ってきた調味料だけなので出来ることは少ないが、焼き肉程度の事は出来るのでお願いをすることにした。
もっとも料理スキルが軒並み高い彼女らの手にかかれば肉だけでも至高な焼き肉になってしまうのでスキルとは恐ろしいものだと我ながら感じずにはいられなかった。
さらに前に取ってきたこの肉は星4ほどに匹敵するような美味しい肉なのでさらに美味しくなりそうだ。
肉だけを作ってもすぐに飽きられると思うので、獣族の人たちに頼んで森で色々な食料を集めてもらうことにした。
獣族が食べる料理となれば、謙遜する人はいくらでもいるかもしれないがちょっとアレンジをしたら大丈夫だろう。むしろ食べている料理を知っているのだろうか?
ま、まあその辺はどうでもいいか。餓死寸前ならそんな事言ってられないだろうしな。
「ミュルトさん。ちょっといいですか?」
例の農地を作ったその日の午後のこと。俺はギルド(未だに仮設)に出向きそこで仕事をしているミュルトさんの所に来ていた。
「えっ、なんですか?」
「ここではアレですので少しこちらに」
そういうと俺はミュルトさんをギルドの外へと連れ出した。ギルドにはミュルトさん以外にも従業員がいるが、彼女らに聞かれてはミュルトさんも聞きにくい事だからだ。
俺はギルドから少し離れ、未だに瓦礫の山がある南部の方に来た。ここなら人も少ないしちょうどいい場所だと思ったからだ。
その辺にあった瓦礫にお互い腰を降ろし本題に入る。
「で、何ですか?」
「……ガラムの事何か知っているのでしょ?」
俺は単刀直入に聞いた。ミュルトさんの眉がピクリと僅かに動いた。分かりやすい人だなぁ。この世界の人たちは非常に分かりやすい人が多いなと思う。
「何のことですか?」
「別に隠さないでいいですよ。俺もガラムの事は怪しいと思っていますので……少なくともエルシオンにとって良い事をしているとは思えませんしね」
「……クロウさんはマスターの何を……?」
「それはミュルトさんが話してからですね」
「……実はですね」
ミュルトさんは俺とエリラがギルドでガラムとレシュードに会った後、彼らが話していたことを話してくれた。
「……と言う事がありまして」
「……やっぱりか……」
第2次エルシオン防衛の時に思ったことはどうやら間違えていなかったようだ。
Dランク相手に簡単に負けた軍隊。それと同時にガラムとレシュードの不在。想像以上に面倒な事態になっているようだ。
ミュルトさんが話したので、俺も自分なりの仮説と知っている情報を教えた。なおエリラのことに関しては言っていない。言う必要も無いと言う俺の判断だ。
「……つまり、マスターが裏で今回の襲撃を起こした可能性があると……?」
「確信はありませんが、その可能性はあります」
「……」
不安、怒り……そんな感情が心の中で戦っているのだろう。膝の上に置かれた手はギュっと握られプルプルと震えているのが分かった。
もっとも彼女も信じたくは無いのかもしれない。まあ、ガラムとミュルトさんの出会いとか全く知らないが。
「……これからどうなるのでしょう……」
「さぁ、それは分かりません。ただ、ガラムの行動には今後、細心の注意を払うべきでしょう」
「……ええ、分かりました……。それじゃあ私はギルドに戻らせてもらいます。やらないといけないことは沢山ありますし、何より早くこの街を復興させたいですから」
そういうとミュルトさんは立ち上がった。
「クロウさん。出来れば今後も力を貸してください」
昨日力を貸すって言ったのだが……。いや……怖いのか?。
「ええ、出来る限りのことでしたら喜んで」
ただ、俺も守らなければならない家族がいるので、優先はそちらになるけど。この優劣はしっかりとしておかないと何のために魔法学園からこっちに戻って来たのか分からなくなるからな。
「ありがとうございます。では私はこれで失礼させてもらいますね」
そういうとミュルトさんはギルドへと戻って行ったのだった。
少し訂正をさせてもらいます。
前回の第164話のタイトルにある「1」を消させてもらいます。と言うのも予想以上に書くことが少なかったのです。
その言葉の通り165話の半分ほどでかけてしまうほどの薄さ。いや、もっと書かないといけない内容は多いのですが、半分以上は今はまだ出来ないことで、かける事を書いたらこうなってしまったんです。本当に申し訳ありません。




