第157話:エリラ救出作戦5
今回、後書きにお知らせがあります。
※ 7/13 誤字を修正しました。
「……クロ……」
エリラの姿を見た途端レシュードを放り投げエリラの元に駆け寄るクロウ。疲れた顔付であったが、意識はハッキリとしているようにみえた。
「ああ、今外してやるからな」
そういうとエリラの腕に付いていた手錠に綺麗な川を描く如く切りつける。するとエリラの手首には傷一つ付けることなく両手に付いていた手錠とそれらを繋ぎ合わせていた鎖が切れ地面へとドスンと落ちた。それと同時に解放されたエリラの腕がだらんと落ちる。
「……ごめんなさい……」
「いや、俺のほうこそg―――
「謝らないで」
「えっ」
「私が悪いのよ……出来もしないことを出来るとか言って……結局この有様……自業自得よ」
「……わかった……無事でよかった……」
自分にも思うところがあったがクロウはあえてその言葉は飲み込んだ。こんな所で無駄な言いあってもいいことは何もないし、何より早くこの結界の範囲外にまで移動してエリラの治療をしたかったのが大きい。意識はあるが声自体にも力は余りなく、全身に付いた無数の傷がエリラの今の状態を物語っている。
そっとエリラを抱きしめてあげる。それに応えてエリラもクロウの背中にそっと手を回す。
「……が……」
クロウの背後で妙な呻き声が聞こえて来た。クロウが振り向くと、意識が覚醒したレシュードがどこかに行こうと這いずりながら移動をしようとしていた。
「……」
クロウは迷った。ここでトドメを刺すのが一番いいだろう。だが、腐ってもレシュードはエリラの父親である。切っても切れない同じ血が流れている肉親を目の前で殺すのはさすがに些か腰が引ける。
だが
「……クロ……剣を貸して……」
「エリラ……?」
「私が決める……いい……?」
「……エリラがそれでいいなら……」
エリラがそう言ったのでエリラに最後を任せることにしたクロウ。エリラは自力では立てないほど弱っていたのでクロウは自分の肩を貸し、ゆっくりと立ち上がるとそのままレシュードの前まで移動をした。
「ぐっ……!」
「……」
無言で刀を持つエリラ。そのエリラを睨み付けるレシュード。お互い、今何を思っているのだろうか気になるクロウであったが、この関係には入らない方がいいと思い黙っていた。
「……チッ、まさか自分の娘に殺される最後とはな……」
「……娘に殺される? 私の事を心の底から……自分の娘だと思ったことがあるの?」
「……」
「……もういい……あなたとはここで完全に蹴りを付けさせてもらうわ……」
スッと刀を振り上げると、そのまま一度も躊躇することなくレシュードの首へと振り下ろした。重力に任せるがままに見えた振り下ろしだったが、クロウの持っている【漆黒】の切れ味は物凄く、いとも簡単にレシュードの首を切断してしまった。
ゴンッ ゴロゴロとレシュードの首が胴体から離れ地面に落ち転がっていく。
その様子を黙ってみるエリラとクロウ。やがて、動きが止まったのを確認するとエリラがポツリと呟いた。
「……これで私にはもう……両親はいないのね……」
「……さみしいのか……?」
「……分からない……もともといなかったに等しい存在だったから……でも、心のどこかでは“存在する”だけでも……」
エリラはそれ以上何も言わなかった。暫く黙っていたクロウだったが、突然エリラを再び抱きしめた。急な行動に驚いたのかエリラがびっくりしたが、傷に響いたのか苦痛に少しだけ顔を歪めた。
「……俺がいるだろ……両親の代わりは無理だけど、そのさみしさを少しでも埋めてやる……!」
その言葉に、先ほどまで痛みに歪んでいたエリラの顔が安心したような顔になり、瞳から涙があふれていた。
「……ありがとう……」
「……家族だろ……」
「……うん……」
暫くの間、クロウは時間を忘れエリラを抱きしめていた。それに対しエリラも自分の傷の事など忘れたかのようにクロウへとしっかり抱きしめ返していたのだった。
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「治さなくていい?」
「うん……」
例の小屋を出た二人は結界の範囲外まで移動をし、そこでまずエリラの治療をすることにした。
そこで初めてクロウはエリラの傷がただの傷では無く《不治の剣》によって傷つけられた傷だと知った。
エリラから簡単な経緯を聞いたのち、クロウは「ちょっと待っててくれ」と言うと再び小屋へと戻っていた。
数分後、クロウが戻って来た。手にはエリラが言った《不治の剣》を持って。
そして、まずクロウは剣を解析し、その後エリラの傷を見た。やや間があったのちクロウは素早く《創生魔法》で魔法を作り上げた。そして出来上がったのが《状態異常回復》だった。
これで治療が出来ると言ったクロウであったが、エリラはそれには十分感謝しつつも治さなくていいと言ったのだ。
「どうしてだ?」
「……今回、私は自分の発言のせいでこうなってしまった……そして、これは一回目じゃない……クロウと初めて出会ったあの時も、私は自分勝手な振る舞いをしてしまっていた」
「……」
「だからね……私はこの傷を残そうと思うの……この傷を見る度に自分の行動や発言は本当に良い事なのか。それは自分の考えばっかりを言っているのではないかと思い返すためにね……頭で分かっていても私はもともと身体が先に動くタイプだから……だから……」
「でも……それは……」
クロウも知っていた。この世界で女性の体に傷が入ることがどういうことか。
エリラの傷は顔以外は、ほぼ全身に傷がつけられていた。レシュードが最後の楽しみにしていたのか顔や胸などの女性としての真の本陣には被害はいってなかったか、それ以外の傷だけでも十分崩壊ものだった。
例えるならリンゴであろうか。中央の種の部分は残っているが、それ以外の果肉の部分はほぼ虫に荒らされてしまっているようなものだった。
だが、それはエリラも百も承知だった。
「……いいの……覚悟は決めている……でも……」
再びエリラの瞳に涙が浮かぶ。声を震わし嗚咽を時折漏らしながらエリラは言った。
「ごめんね……クロ……私の事、好きって言ってくれて本当に嬉しかった……でも、こんな姿をした私じゃあ、もう……好きになれないよね……まあ、もともと外からは奴隷と主の立場だし、それが正しい形かm―――」
全てを言い終わる前にクロウは動いた。
いきなりエリラの顔を引き寄せると唇に熱いキスをする。モガモガー! とエリラが何かを言いたそうにしていたが、それすらも無視をしクロウは黙ってエリラと唇を合わせ続けた。
何十秒たったか。クロウとエリラの唇がそっと離れた。エリラは「ふえっ!? 何!? 何!?」とでも言いたげな顔をしていた。それに対し当のクロウはと言うと至って真剣な眼差しだ。
「馬鹿、俺がエリラを外見だけで好きになった訳じゃない! こんな俺に奴隷としての立場だったかもしれないけどここまで付いてきてくれた。それが嬉しかった! 気付いたら好きになっていたんだ!」
「えっ……えっ……」
「例え世界中の奴らがエリラの事を馬鹿にしても俺は絶対にエリラを離さない! そんな奴は俺が許さない!」
「……!!」
口を両手で隠すかのように当て、涙を流すエリラ。口はまだ何かを言いたそうにしていたがクロウがそれを許さなかった。
「エリラがその傷を戒めのために残すのならそれでもいい。だけど、俺はエリラのことは好きなんだ! だからよ……そんな事言わないでくれよ……エリラはさ……今でも俺の事は好きなんだろ……?」
「うっ……うっ……うわぁぁぁぁん!」
ついに大声をだしながら泣き始めたエリラ。その勢いのまま今度はエリラがクロウにガバッと襲い掛かるかのように抱きしめた。クロウは今度は自分が黙ってエリラの顔を自分の胸元に包み込むかのように抱きしめた。
「大好き!! 大好きだよ!! 離れたくない!! クロとずっといたい!」
自分の言葉は本当に良いのかととか、色々言っていたエリラが、この時ばかりは全てを忘れ自分の本音を全て吐きだしていた。
「ああ……これからも宜しくな……」
「……うん!!」
気付けば夜は明け朝日が深い森の木々の上から見え始めていた。この日の天気は、雲一つない快晴だったという。
まるで、これからの二人を祝うかのように……
いかがだったでしょうか? 私個人といたしましてはもう少し、言葉を上手く使えたらなぁと反省はしていますが、後悔は一ミクロンもしておりません。これが私クオリティーです。
さて、お知らせですが、最近リアルが忙しいと嘆いておりましたが、その原因は何とか落ち着いてきたのですが、代わりじゃぁ! と言わんばかりに次の波が来ちゃいました。正直なところ夏休みもちょっと微妙な所です。
そこで、今後の方針なのですが、更新は多少落ち着かせ約3~4日に一回出来たらいいと思っています。その代わりと言ってはなんですか、一回一回の内容を濃ゆくしていきます。
そして、感想返しですが誠に言いにくいのですが、今後活動報告にていくつかピックアップをして返す形にしたいともいます。この手だけは使いたくありませんでしたが、このままでは忙しいのが続いて感想返しが全く出来ないという負のスパイラルが襲って来そうでしたので、早々に手を打たせてもらいました。
誠に申し訳ありません。
これからは感想返しの分を執筆作業に力を入れていけれるぐらい頑張りたいと思いますので、よろしければ今後も応援よろしくお願いします。
以上、黒羽でした。本当に申し訳ありませんでした!!(土下座)
……エリラが何でもs(グサッ!)
「……天丼禁止……」
すいません(土下座)