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【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~  作者: 黒羽
第4章:アルダスマン国の崩壊
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第155話:エリラ救出作戦3

「テキダ! イソゲ!」


 幅3メートルほどしかない狭い直線通路に集まるコボルトたち。手には《爆炎筒》がそれぞれ一丁ずつ握られていた。

 通路の壁は地層がそのまま剥き出しになっており、まるで炭鉱の中にでも潜り込んだような感覚になりそうだった。


「カマエロ!」


 銃口は前方から向かってくる一人の人間に向けられていた。だが、その様子に特に驚いた様子などは無く、人間はドンドンと近づいてくる。人間は刀を持っており、刃先は一寸もぶれることなくコボルトたちに向けられてい居た。だが、コボルトたちはそんなことは意も返さなかった。何故なら、このときのコボルトたちは誰もが「馬鹿め!」と完全に舐めていたからだ。


 無理もない。魔法もスキルも使えず、尚且つここは隠れる事も出来ない直線通路、普通に考えればここを駆け抜けるという王道は死に急いでいるようなものだ。例えるならレインボーブリッジで戦車の砲口がズラリと向けられており、その戦車に向かって真正面から何も持たずに走り抜けようとしているような感じであろうか。


「ウテェ!」


 一体の指示が降りるとコボルトたちは一斉にトリガーを引いた。

 銃口から激しい爆発音が響いたかと思えば、銃口から野球ボールほどの火球が飛び出し、それが走り寄って来る人間に向かって一斉に放たれた。


――――ドォォォン!


 火球は逸れることなく人間に当たり爆発を起こした。その爆炎の中に後から来た火球が飛び込み連鎖爆発を起こし始める。

 爆炎筒の特徴である爆発直後に飛ばされる破片弾がはじけ飛び、撃った本人たちにまで襲っていた。目に当たったコボルトは両手で目を庇い地面で暴れまわり、被害が無かったコボルトたちは暴れまわっている同士の銃からの暴発を恐れ後ろへと引き下がる。


 離れた位置にいたコボルトたちでさえこのような有様だ。ましてや直撃を食らったであろう人間はひとたまりもないだろう。


 そのとき、突如発生した風圧により狭い通路全体に煙が広がった。コボルトも魔物とは言え生きていることは間違いない。煙を大量に吸い込めば一酸化炭素中毒で死ぬ可能性もある。もっとも、人間が中毒を引き起こす何倍もの量を吸い込まなければならないので、彼らにとってはそこまで問題では無かった。


 だが、問題は別の所で起きた。


 先ほどまで広がる一方だった煙の流れが逆に流れ出したり、その場で渦を形成しだしたりなど不規則な流れを作り出していた。

 と、その時、煙の中から先ほど爆撃を受けたはずの人間が飛び出し、最も近場にいたコボルト3体が人間の一振りによって胴体を真っ二つにされてしまった。

 地面に倒れて暴れていたコボルトは顔をピンポイントで足で潰され絶命をし、さらに近くにいたコボルトから順番にまるで蚊を潰すかのように淡々と切り殺していた。


 その光景に恐怖を覚えたコボルトは持っていた爆炎筒を放り投げ一斉に逃げ出した。コボルトの俊敏力はそこそこの高さであったが、その人間はそれを遥かに上回る速さで追いついては刺して行く作業を淡々とこなしていた。


 勇気のあるコボルトが一体、自らも被害を受ける覚悟で目の前まで迫ってきていた人間にほぼゼロ距離で爆炎筒を撃ち放ってみせた。

 ゼロ距離で発砲をしたので当然、爆炎や破片が撃った本人を襲い、撃ったコボルトは肢体バラバラに飛び散るという大惨事が起きてしまった。

 だが、そんな命を懸けた特攻攻撃も煙の中からバラバラになったコボルトの死体を踏みつぶしながら出て来た人間によりあっさりと無にと返されてしまった。


「ニ、ニゲロ!」


「バ、バケモノダァ!」


 この光景を見たコボルトは今度こそ全速力で逃げ出した。だが、機動力も上の相手に狭い直線通路の中で逃げ切れるはずも無く、最初に侵入者を迎撃したコボルト20体余りの命は呆気なくこの世から消え去ってしまったのだった。






==========


「キタゾォ!」


「オイ! ナカマハドウナッタノダ!?」


「ヤラレタノカ!?」


 コボルトたちの声が耳に入って来る。


「カマエロォ! ウテェ!」


 爆炎筒が一斉に火を噴き火球の球が飛んでくる。魔法もスキルも使えないこの結界内で何故魔法武器が使えているのか謎だった。

 おそらく、この効果は生きている物にだけ効果があるものかもしれない。


 だが、そんなこと今はどうでもよかった。


 火球の球に対し剣先で小さな音速波を作り当てる。火球が爆発した後に飛んでくる破片に対しては刃の側面を爆発方向と平行に向け弾くような形で防ぐ。

 例え高いスキルレベルを保有していようが出来ないだろう。元の世界でなら某200キロのバッティングマシーンのボールなどまるで止まっているかのように見えるほどにまで鍛え上げた動体視力、及び身体があればこそ出来る芸当だ。


 なお、普通の人間にはいくらやろうとしても無理だと思う。


 つくづく人間離れしているなぁと思いながらも、群がる敵をなぎ倒し奥へと進んでいく。


 まさか異世界に飛ばされた7年間の技術がこんな所で役に立つとは思わなかった。おそらくあの7年間が無ければここで死んでいたことだろう。

 異世界に飛ばしたハヤテに感謝するべきなのか怒るべきなのか妙な心境になるな……。


 そうこうしているうちに通路の奥にまで到達をした。今、俺の目の前にはこじんまりとした扉がある。


 それにしても、外から見えたのはちっぽけな小屋だけだったので、まさか地下にこんな空間があるとは思いもしなかったなぁ……。

 通路の壁を見るに殆ど手作業で掘った跡が見えるに、魔法などほとんど使わなかったのだろう。デコボコしている壁や天井がそれを物語っている。


 そんな事は置いとき、俺はゆっくりと扉を引き始めた。。いつ何が起きてもいいように周囲に神経を張り巡らしつつ、扉を開ける。


 先にあったのは同じく壁に地層が露出をしている空間だった。ただ、先ほどまでの通路とは変わり、こちらはまるで多目的ホールを連想させるような広さだった。後で思ったことだが、この洞窟、見れば見るほど突貫工事な構造になっていた。ただ、この時の俺はそんな事に気を配ることは無く、エリラの安否だけが心配だった。


 空間の中央には大きな机が置かれており周囲にはそこらかしこに爆炎筒が置かれていた。


 そして、その直後俺は広場の中央に鎮座している男に気付いた。


「……ビンゴか」


 その人間の顔を見た瞬間、俺は咄嗟にそう呟いていた。男は両手に剣を握りしめこちらをじっと睨んでいたが、俺の姿を確認したのかスッと立ち上がり一歩二歩と前へと出る。


「小僧……いや、クロウか。何故ここが分かった?」


「知らなくていいだろ……どうせ死ぬんだから」


 次の瞬間、広場に3本の剣が交わり激しく火花を散らしていた。

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