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【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~  作者: 黒羽
第4章:アルダスマン国の崩壊
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第152話:約束をした……

今回、短めです。

 クロウが魔物の掃討をしている頃、ハルマネでは同じく魔物の襲撃に対応するべく特待生らを中心に部隊編成が行われていた。


 生徒たちの顔は緊張に引き攣っていた。あの襲撃から初めてとなる実戦にあの時の恐怖を忘れきないで思い出す生徒が数多くおるのも事実だった。


「まあ、クロウがいればいけるんじゃね?」


 そんな中、カイトがさらっと言い放った一言がちょっとした問題になっていた。


「何を言っているんだよ! クロウは無理だろ!?」


「でも、サヤが言うには体の麻痺は取れていて、症状は改善しているんだろ? だったらあいつが出た方が一番被害が少ないと思うんだが?」


「だからクロウを出すと言われますの!?」


 そんなのいくらなんでもおかしいとシュラ、ローゼの二人が真っ先に反対した。


「あなた最近クロウに冷た過ぎではありませんか!? 彼も人間なのですよ!?」


 最近のカイトのクロウへの接し方に疑問を覚えていたローゼがカイトに聞いた。だが、カイトはローゼの質問に少しも応える素振りは見せず、今のこの事態を打破することだけを言った。


「でも、そんな余裕ないじゃないか! 俺らだけであいつらを止めることが出来るのか!?」


「……止める……」


「サヤ!?」


 カイトたちが言い争っているとき、その会話にサヤが割り込んでくる形で戻って来た。その後ろにはリネアの姿もあった。


「……止めなければ……死ぬだけ……」


「そんなのわかってる。だからクロウが前に出t」


「……クロウは……エルシオンに戻った……」


「はぁ!? おい、一体どういうことだ!」


 サヤの思いもよらない答えに、カイトは無論ほかの特待生たちも驚きを露わにしていた。


「言葉の通り……向こうも襲撃があったらしい……」


「だからってこっちは放棄したのかあいつは!?」


「……私が行かせた……」


「なんだと!? ふざけるな! あいつ無しで俺らが戦えるわけn


 カイトがサヤを問い詰めようとしたその時、突然カイトの身体が真後ろへと吹き飛ばされ、暫く宙を浮いたのち地面に激突をし、転がり周りようやく止まることが出来た。

 見ると、カイトがいた場所には代わりにサヤが立っていた。腕にはナックルダスターが取り付けられており、血が滴り落ちていた。


「……ふざけるなはどっちよ……」


 サヤはカイトの方へと歩き出した。カイトのお腹には血がべっとりと付いており、そこから血が噴き出していた。

 それを見た仲間は慌ててカイトのもとへと駆け寄ったり、サヤを止めたりと奔走しだした。


「サヤ落ち着いて! まずは知っている事情を話して!」


「サヤ、ここで仲間割れをしても仕方ないから落ち着くんだ!」


 セレナがサヤを背中から抱きしめる形で止めようとして、シュラがサヤの前に立って彼女を宥めにかかる。

 だが、セレナとサヤでは筋力ステータスが既に何十倍と差が開いているため、足止めすらも出来ず、シュラはサヤの放つ独特な威圧に押され引き下がるしか他ならなかった。


「……普段は散々クロウの意見に反対して……いざ困ったら助けて下さい……?」


 言葉の一つ一つに憤怒の思いが込められているかのような恐ろしさがにじみ出ていた。その気迫に押されるかのようにカイトの周囲に集まっていた人たちも徐々に彼の回りから離れ始めていた。


「……クロウが……どんな気持ちで……あんなことをやったか……あなたは理解しているの……? 自分の意見を言いたいだけ言って……人の気持ちも考えない……あなたに……何が分かるの……?」


 カイトの前まで来たサヤが倒れているカイトを持ち上げる。当の本人はと言うと痛みに顔を歪ませることしか出来ず、なされるがままだった。ナックルダスターを付けたままだったので、サヤが掴んだところから新たな傷が生れ血が流れ出ていた。


「あなたに……物を言う資格は……無い……」


 それだけ言い放つとポイッとまるでゴミでも捨てるかのようにカイトを地面へと放り投げた。その様子を見ていた周りはこんなサヤを初めて見た。

 物静か、無口、冷静。そんな言葉が似合う普段の様子とは打って変わり、まるで鎌倉の金剛力士像や毘沙門天立像を思い浮かばせるかのような、オーラは見る者を恐怖で覆いつくさんとばかりに放っていた。


 カイトはその恐怖に負けたのか、はたまた痛みに耐え切れなかったのか白目を向けて気絶をしていると言う失態を犯していた。


「……私は勝つ……約束をした……」


 サヤはカイトに背を向けるとそのまま、正門の方へと歩き始める。その様子を黙ってみることしか出来きず、あっという間にサヤの姿は消えてしまっていた。


 我を忘れ呆然していたが、ハッと現実に戻りだしていた。


「……俺たちは彼に頼り過ぎていたと言う事か……まあ、分かっていたことだけどな」


「私たちも行きましょう。ここでじっとしている訳には行きませんわ」


「そうだね……サヤだけに戦地に立たせる訳には行かないわね」


 そういって、続々と自分たちの配下の元へと行き動き出す生徒たち。狙っていたかそれとも偶然かは分からなかったが、少なくともサヤの行動は特待生たちには起爆薬になったようであった。


 こうして彼らは、戦地へと再び向かう事になった。ちなみにカイトはと言うと一部の良心的な人たちの手によって救護室へと運ばれて行き、この戦いに参加することは無かったと言う。

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