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【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~  作者: 黒羽
第4章:アルダスマン国の崩壊
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第148話:心を決め、守るべき者の元へ

===同時刻、アルダスマン王国・首都「メレーザ」===


 この日、メレーザは戦火に包まれた。


 空から降り注ぐ大量の火球が人々に襲い掛かる。ある者は火球に全身を焼かれ、ある者は体の一部を吹き飛ばされ、ある者は頭に直撃し原型を留めることなく潰された。


 建物は焼かれ、崩れ落ちて行く。崩れ落ちた建物が道に溢れ出て、その度に生存者の逃げ道を奪っていく。


 兵士たちが応戦しようと敵を探すが見当たらず、空を見上げても見えるのは落ちて来る火球とその遥か上で輝いている星の光だけだった。


「城壁の外だ! 外から飛んできているぞ!」


 一人の兵士が城の外に指を差し叫んだ。その声に反応した兵士たちが続々と城の外へ向かうべく城門へと急いだのだった。








===ハルマネ・魔法学園=====


「クロウさん、調子はどうですか?」


「ああ、体は動くようにはなって来たよ、まだ頭はガンガンするけどな……」


 魔法学園の保健室では、クロウと様子を見に来たサヤとリネアがいた。他にも一般生徒が数人いたが全員、重症者で口もまともに聞けない人たちばかりだった。

 そのため、彼らの話声だけが保健室で飛び交っていた。


「……良かった……」


「ああ」


「もう、あんな無茶二度としないでください! 心配したんですからね!」


 クロウに説教をするリネア。ただ、怒っているというよりも「めっ!」と叱っている感じなので怖さなどは微塵も感じられないのだが。


「あーもうその言葉は耳に胼胝ができるぐらい聞いたよ」


 ここに来る度に説教されているクロウは聞き飽きたと耳を手で塞いでしまう。


「……そうでも言わないと……また無茶する……」


「アッハイ」


 クロウはサヤの的を射た発言に思わず片言になってしまう。倒れてしまって以来彼女たちに殆どまかせっきりになっているので、下手に反論も出来ずにいた。


「所で……彼らの様子は?」


 クロウの質問にサヤは一瞬だけ躊躇したが、首を横に振った。


「……相変わらず……生温い人たち……」


「はぁ……もうあいつらには何をしても無駄なのか……?」


「……理解をした人もいる……けど……少ない……」


「そうですね……一般生徒の中にもクロウさんがあんな事をやった理由を理解した者もいますが、それでも圧倒的に少ないのが現実ですね……」


「……放置……それも考えた方がいい……」


「……」


「……したくないかもしれないけど……このままじゃ……理解した人にも被害が……」


「分かっているよ……」


 ただえさえ頭が痛いのに、そこに別ベクトルから新たな痛みがクロウの頭にのしかかる。正直な所逃げ出したいのが本音だろう。

 だが、一度任された身である以上、易々と放棄をするなどクロウには中々出来ない事だった。もっとも、クロウ自身もあんな勝手な連中たちにいい加減見切りを付けたいのも事実だ。


どうしようかと頭を悩ませていたその時であった。


===INTRUSION!!===


よい思い出が全く無い言葉がクロウの脳内に響く。


慌てて《マップ》を開くと、そこには赤いマーカーが数多く浮かび上がっていた。そしてそのマーカーの正体はつい先日全滅させた魔族だった。


「!? また来たのか!?」


だが、数は大したことは無く数百体ぐらいの小規模な軍勢だった。


これくらいなら大したこと無い、今の俺でも十分対処可能だと判断したクロウは手短にサヤとリネアに説明をした。


「……と言うわけだ。今すぐ迎え撃つぞ」


そういってベットから降りようとしたクロウをサヤが制止した。


「……まだ駄目……」


「何を言ってるんだよ、頭が痛いだけなら行けr」

「駄目」


「……いや、だから平気……っ!」


ズキンと急に来た痛みに苦虫を噛み潰したような顔になる。それを見逃さなかったサヤは無理矢理クロウをベットへと寝かし付ける


「……休んで……私達なら大丈夫」


「……で、でも!」


クロウが反論をしようとしたとき、何処からともなくピーと聴力検査の時に流すような音が聞こえてきた。


「? 何の音でしょうか?」


 リネアが周囲をキョロキョロ見渡す。この音の正体を知っていたクロウは迷うことなく、ズボンのポケットに手を突っ込み、中から一枚のカードを取り出した。


 カードは手のひらサイズで裏には何も装飾などなくただ黒一色に染まっていた。表の方はカードの淵が赤く点滅を繰り返し、中央には「緊急要請 NO.02」の表記があった。


「くそっ……こんな時にか……!」


「それは……?」


 リネアの問いに躊躇をしたが、話した方がよいと判断したのか口を開く。


「……エルシオンにいる家の者たちからの緊急連絡だ。恐らく向こうでも同じような事が起きているのかもしれない……」


「! な、ならそちらに行った方が……!」


「……クロウ……行って……」


「くっ……!!」


 尚も躊躇うクロウにサヤたちは言葉を投げかける。


「……大丈夫……私たちを……信じて……」


「クロウさん、私たちはクロウさんから見たら弱い存在かもしれません……ですが、信じてほしいのです! お願いします!」


 リネアが頭を下げ、サヤはクロウの方をじっと見つめる。その瞳はとても力強く、意志ある者の目をしていた。

 クロウは下を向き暫くの間動かなかった。だが、時間は待ってはくれない。覚悟を決めると顔を上げる。


「分かった……死ぬんじゃないぞ……絶対だからな」


 コクリと静かに、だが力強くサヤとリネアは頷いた。


 バッっとベットから飛び出すと、そのまま救護室を後に走り去っていくクロウを二人は彼の足音が聞こえなくなるまで見送った。


「……行くよ……」


「……はい」


「……リネア……」


「?」


「……生き残りなさい……」


「……もちろんです。約束しましたから」


 お互いの顔を見合い頷く。そして、サヤとリネアも救護室を後にするのだった。

 

 今回も遅れて申し訳ありません。


 今週から来週一杯までは忙しい時期が続くようです。ちなみにその先も未定です。

 ですので、感想返しなどはそれらが落ち着いてから行いたいと思います。度々お詫び申し上げます。

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