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【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~  作者: 黒羽
第4章:アルダスマン国の崩壊
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第144話:幻想人形操り・後編

 

「思ったより魔法耐性があったな……まぁ、このレベルをどうにかしないと話にならないんだけどな……」


 何やらそんな独り言をつぶやいているクロウ。その後ろには先ほど倒れた生徒を襲おうとしていたゴーレムが立っていた。だが、ゴーレムが自慢としている腕は肘から先が無く、代わりにクロウの周囲に土塊が落ちてあった。


「あ……あの」


「ん?」


「あ、頭から……血が……」


 倒れていた生徒から指摘されようやく気付いたのか、クロウは自分の額に手を当ててみた、当てた手を確認してみると、そこには血がべっとりと付いていた。


「……やっぱりノーガードはきつかったか……」


「えっ……? 今何て―――」


 周りの騒音でクロウの声が聞き取れなかった生徒が問いかけようとしたとき、いきなりクロウが後ろを振り返ったかと思えば、それと同時に足を蹴りあげる。

 その足はクロウの背後にいたゴーレムの胴体に当たったが、一瞬も止まることなく振り抜かれていた。胴体を抉られたゴーレムはそのまま崩れ落ち、ピクリとも動かなくなる。

 その生徒は気付いていなかったが、ちょうどクロウとゴーレムが重なって見えていなかったのだろう。


 あまりに突然の事で先ほど言いかけた言葉などどこ吹く風か、生徒はただ唖然とするしかなかった。


「…話は後だ。ほら立て…戦場は待ってくれないぞ」


「は……はい」


 生徒はクロウが差し出した手を掴み立ち上がる(勿論血の付いていない方で)。生徒が立ち上がったのを確認だけすると、クロウはゴーレムの集団の中へと消えて行った。その際にクロウは自分の周りにいたゴーレムを殴って粉々にして行ったのでクロウのいた周囲にはゴーレムの姿は無く、代わりに土塊と血痕だけ残っていた。


「……」


「だ、大丈夫!?」


 生徒の友達が傍に駆け寄る。


「う、うん、私は……で、でも彼が」


「あんな奴放っておいていいでしょ! ほら、ここに一人でいたら危ないよ!」


 そういうと、生徒の手を引っ張って行く。クロウに助けられた生徒も流されるがまま移動を開始した。


(……ちょっとかっこよかった……)


 頭の中では彼の事を思いながら、その生徒もすぐに戦闘へと戻っていった。








==========


「もう少しだ! 踏ん張れ!」


 長く永遠に続くかに思われた戦いにも終わりが見えて来た。


 クロウが生徒たちの元へと戻って来たこともあるが、サヤ、リネアの活躍によりゴーレムの数は着実に少なくなって行き、ついに数えれるほどにまで減って来た。


 数が減って来たことにより生徒たちの視野にも余裕が出来だした。


「……マジかよ」


 シュラはクロウが最初に立っていた位置を見ていた。

 そこには、土塊が山のように積まれていた。しかもその量が尋常では無かった。どう見ても自分たちが倒した量よりも多い土がそこにあったのだ。

 つまり、彼は一人で自分たちが倒した敵よりも多く倒し、尚且つこちらの援護に来たと言う事だ。いくら彼の強さが規格外で、ゴーレムを作り上げたのが本人であったとしても、自分らが手こずる相手にここまで圧倒するのだから改めてクロウの強さと、自分らの不甲斐なさを感じていた。


「……くそぉ! 俺も負けてられねぇ!!!」


 このような光景を目の当たりにした場合、人々の気持ちはいくつかに分かれるだろう。自分の不甲斐なさを感じる者、クロウの強さや恐ろしさを痛感するもの……これ以外にも数多くの心境があるだろう。そして、それらの心境ののち、さらに幾つかの分岐点がある。

 それは、行動するものと諦め投げやりになる者だ。


 シュラは行動をした。もともと熱い男(色々な意味で)だったのもあるが、昨日からおんぶされっ放しの自分を変えたいと言う思いが強く出たのだろう。


 果敢にゴーレム向かって行こうとしたその時、シュラの目にクロウの姿が映った。群がるゴーレム相手を次々と殴ってぶっ壊していくクロウの姿を見て、ますます無駄に燃えて行くシュラであったが、その時妙な事に気付いた。


「……あれ? 何であいつ剣とか魔法を使っていないんだ?」


 クロウが戦っている姿を数多く見た訳では無いシュラであるが、見た限りでは彼は剣(刀)を使った近接攻撃と同時に、魔法を併用する戦いを主としていた。

 そんな物を使うまでも無いと言えばそれまでだったのだが、チェルストに向かった時やその帰りで魔物と遭遇した時も剣や魔法を使っていたのをシュラは覚えていたので、違和感を覚えたのだ。


「これで……最後だ!」


 シュラがハッと現実に戻されたとき、既にゴーレムは最後の一体を残すのみとなっていた。そして、その一体ももう間もなくクロウが仕留め終えようとしていた。


 クロウがゴーレムを殴ると殴られた個所に穴が開き、その周囲へと亀裂が走りそして崩れ落ちて行った。


「……終わったか」


 最後のゴーレムが崩れたのを確認した生徒たちは次々と地面へと腰を下ろしていく。中には大の字になって寝そべる者もいた。


「おい、休憩をするのは怪我人を運んでからにするんだ」


 うわぁと嫌がる生徒が大半であったが、流石に怪我人を放置して休むのは気が引けたので、重い腰を上げしぶしぶ運び初めてた。


「―――っ!」


 クロウは自分の頭を押さえながら何かを言っているように見えた。


「おい! クロウ!」


 クロウが誰だと声がした方を向くと、カイトがすぐ目の前まで迫ってきていた。少し怪我をしているようにも見えたが、軽傷のようだった。この辺りは冒険者としての経験の違いが出ているのかもしれない。


 クロウが何かと聞く前にカイトの口が先に動いていた。


「この嘘つきが! アレはどういう事だ!」


「アレ……? ゴーレムを使っての戦いのことですか?」


「違う! 俺が言ったのはそうじゃない! お前が前で戦うって言っておきながら俺らも戦ったじゃないか!」


「ええそうですよ。文句ありますか?」


「当たり前だ! それじゃあ約束g―――


「黙れ」


「……何」


「黙れって言ってるんだよ」


 散々反対していたカイトにキレ気味のクロウが今度は詰め寄る。その一部始終を見ていた特待生たちが嫌な予感がすると判断し、止めにかかり、その様子を一般生徒たちが見るという構造になっていた。


 もっとも、当の本人たちは気付いていないようであったが。


「お前、戦争舐めてるだろ? 戦いは正面からぶつかり合うだけなのか? 違うだろ? 時には横から受け、時には後ろから受けることだって十分ありえる。それが分からない屑なのかお前は?」


 どこか罵倒したような言葉と、いつもよりも悪い口が重なってかカイトはムキになりかけていたところに、セレナたちが割って入って来た。


「カイト! そこまでにしなさい!」


「なんでだよ! 嘘を付いたのはクロウの方じゃねぇk―――」


「黙れっ! ボケが!!」


 後ろから来たシュラにカイトは胸倉を捕まえられる。


「シュラ! お前何のつもりだ!」


「それはこっちのセリフだ! クロウがこんなことをした理由が分からねぇのか!」


「何……?」


「お前や俺も含め、全員考えが甘かったのを教えようとしてたんだよ! クロウが一人で前で戦う事が出来る戦いばかりじゃない事を身をもって教えられたじゃねぇか!」


「じゃあ、あそこで反対すれば良かったじゃないか!」


「反対しても無駄だと判断したからこうしたんだろ! 俺らに言っても無駄だってな」


「……チッ!」


 ようやくひと段落ついたところでシュラも疑問に思っていたことを言い出した。


「クロウ、確かあれは本当にあった戦いを再現したって言っていたが本当のことなのか?」


「……」


「クロウ?」


「! えっ、なんて……?」


「おいおい、聞いていなかったのか? あれは本当にあった戦いを再現したのは本当かと聞いているんだ」


「え、ええそうですよ。俺が実際に身をもって体験した戦いですよ」


「あんなゴーレム集団とどこで……?」


「ゴーレムは俺の実力不足でああなってしまっただけですよ」


「じゃあ、何と戦ったんだ?」


「龍族」


「龍……族?」


「ええ、今この国が戦っている相手の一つですよ。龍族は魔法耐性が無いので、それは訓練にならないと判断してそうしませんでしたが、敏捷性以外のパワーと体の丈夫さなどはほぼ再現していますよ。魔法もダメージこそは再現できませんが、あの装甲を突破出来ないと言う事は、自分らの魔法では龍族の皮膚を貫通することは出来ないと言う事になりますね」


 その言葉を聞いた特待生は勿論のこと、その話を聞いていた一般生徒もたちも動きが止まっていた。



 それは、彼らが予定通りに向かっていたとした場合、龍族と当たる形が十分にありえたからだ。


 いくら魔法耐性が違うといっても、自分らの魔法があそこまで歯が立たないのを昨日の事も含め二重に受けた気分だった。魔族という魔法耐性が高い相手ならまだしも、まさか龍族の装甲すらも貫けないとは思わなかったのである。


「……もういいですか?」


「えっ……あ、ああ……」


「では、今日はこれで終わりましょう。ですが、明日、もう一度同じことを行います。いいですね?」


「あ、明日も……?」


「当然です。昨日今日であなたたちの魔法が歯が立たないことは痛感したはずです。死にたくないのであればやるしかありませんね。もっとも今日は居ないようでしたが明日の訓練で死人が出る可能性も無きにあらずですが……それに、俺が一人だけ前に出るという意味も十分理解したと思いますので、改めて明日もう一度聞きましょうかね」


「……」


 誰も言葉を発する者はいなかった。


「……じゃあ、今日は終わりです。私は先に帰っていますよ……」


 それだけ言うとクロウは校舎の方へと消えて行った。


「……はぁ」


「……」


「マジかよ……」


「もう嫌だ……」


 色々な事が重なり合い、明日の事を考えて嫌気が指す人が過半数を占める中、近くでクロウを見ていたサヤは他の事を考えていた。


(……変……)


 いつもなら、もう少し理論的な事を言うと思ったが、今の言動には少し疑問を覚えていた。


(……いつもより弱かった?)


 なんというか……漠然とであったが、どことなく弱まっていたように感じられた。シュラが問いかけた時もボーとしていたみたいであったし、それに―――


「……サヤさん?」


 ハッと顔を上げるとそこにはリネアが立っていた。


「クロウさんは?」


 どうやら、彼女は怪我人を運んでいてクロウの姿を見てなかったようだ。


「……クロウならあっちに……えっ?」


 サヤはその時、嫌な予感がした。確かにクロウは「帰ります」と言っていた。《門》を開く事は考え難いので、この場合での帰るは街にある宿屋に戻ることを表しているはずだ。


 だが、彼が向かって行った先は……


「……あっちは街とは反対の方……」

 今回は語彙力が無いなぁと痛感した回でした。

 それと、同時に第4章は長引きそうだなとも思いました。

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