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【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~  作者: 黒羽
第4章:アルダスマン国の崩壊
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第141話:ゴーレム再び

「おい、どうしたんだ? いきなり自分が説明するって?」


「まあ、まあ見ておいて下さい、別にシュラたちの意見を蔑ろとかにする訳じゃありませんから」


 ここで彼らに説明をしてもいいけど、何を言われるか分からないのでやめておこうと思う。

 予定の30分が経ち、レミリオンたちに《契約》をさせ、いよいよ訓練と行く前に俺は説明を変わるようにお願いした。

 ちょっと疑問に思われたがいいよと言われたので俺は台に立つ。


 生徒たちには訓練とだけ言ってあるが、まだどんな訓練かは話していない。まあ、知らない方がいいだろうな。

 何故なら、彼らが今から体験するのは、俺が実際にあった戦いだからだ。








「さて、実は先ほど隊長たちからとある案が出された」


 俺はそう切り出した。


「それは、これから戦う上での陣形についてだ」


 陣形。聞きなれない言葉に首をかしげる生徒。陣形ぐらい分かれよ。と言っても、この世界では陣形なども戦術に含まれるので仕方が無い事なのだが。


「でだ、隊長たちは俺一人を前衛にして、残りの皆は後衛として援護射撃をすると言う案なのだが……皆に聞いておきたいんだ。皆は今の案に賛成するか?」


 生徒たちが騒がしくなる。


「賛成する人は挙手をしてくれ。自分の考えでだぞ? 別にこれに賛成、反対で処罰をするとかそんな事はないからそこは安心してくれ」


 選挙とか言いながら、投票所に行くと兵士が立って、一人ひとりの投票内容を見て場合によっては無理やり書き換えさせたりする国が前の世界のどこかにあった気がするが、そんな理不尽なことはしないからな。


 隣同士でヒソヒソと話している者もいれば、何やら誘っているのか積極的に周りの子に声をかけている者もいた。やがて、ポツポツと手を上げだす者が出て来る。それを見て、どうしようか迷っていた生徒たちも手を上げていく。


 5分の4……いや、6分の5か? 手を挙げた者が大半をしめており、挙げなかった者は殆ど見られなかった。

 ここで、反対が大半を占めればシュラたちに考え直させるつもりだったのだが、そんなに甘くは無かったか。


「皆は賛成と言う事でいいんだな? ……分かった、では陣形はそれで確定をする。次に訓練内容だが……当初の予定では隊長たちから案が出ていた学園の授業の一つである魔力訓練をするつもりだったのだが、時間が圧倒的に足りないと言う事でその案は却下させてもらう」


 シュラたちが「はぁ!?」と言った顔をしているのが見えた。悪いな、あんたらの意見を全て認めていたら何人死人が出るか分からないんでな。

 まあ、全部否定するのもそれはそれで問題なので、陣形だけは案を通らせたが(つーか、通ってしまった)、悪いけどこの案も通すつもりは微塵も無い。


 だが、俺が口で言っても無駄なのは分かっている。ならどうするか? 身をもって体験させるのが一番手っ取り早い。

 いや、それが上手く行かなかったじゃないかと言う声が聞こえてきそうだが、確かにその通りだ。しかし、物事を覚えさせるのは体に染みつけるのが一番早いのには変わりがない。

 スポーツの練習でもそうであろう。頭で色々考えるよりも実際に動いてやる方が、動きが染みつき、試合でも自然と体が動くようになるものだ。


 だが、それは一度やっただけでは出来ないことが多い。どんなにそのスポーツが得意でも、見たことがないような動きや技を一度やっただけで、さあ試合でやれと言ってそうそう簡単に上手くはいかないだろう。

 なら、出来るようにするにはどうすればいい? 答えは至極簡単、何度も同じことをやればいいのだ。


 そして、それは躾にも同じことがいえることだ。犬などに「お座り」や「お手」、「おかわり」を覚えさせるさい何度も何度も同じことをさせる。また、悪い事をすればその度に罰を与えれば、本能的に「これはやっては駄目だ」と覚え、やがてしなくなるだろう。


 俺が考えているのは、こういうのとは多少違うが、簡単に要約すると「何度も何度も戦いをさせ、恐怖を身に沁みこませる」戦法だ。一度で覚えないなら何度でも何度でも体験させればいい。そうすれば戦争を舐めている奴らも、どこかで考えを変えるかもしれない。

 勿論、やや賭けに近い方法だとは思っている。馬鹿に付ける薬はないと言う言葉があるが、実際何度も何度もやっても懲りない奴らは多くいる。

 そんな奴らでも無理やり体に覚えさせればいい、それも一度だけでは無い。何度も何度もだ。


 で、その恐怖体験をどうやって何度も体験させるかと言う事だが、前に俺が作った自重しないゴーレム(第11話参照)の応用を行ってみる事にする。


 と言っても、一体だけでは現実からかけ離れてしまうので、能力は低く、数は大量に用意する必要がある、

 問題は、それが出来るかどうかなのだが、正直なところ考えがまとまっていない。その数をどうやって短時間で用意して、どういう思考で動くなどのアルゴリズムを入れて、更に、そこに集団で動くように設定をしなければならない。


 で、そんな魔法式を書いている暇は当然無い。そこで、俺が考えたのは簡単な攻撃手段をセットするだけで、残りは全て俺が指令を出す作戦だ。これなら、魔法で量産できるし、魔法式を書く時間もほとんど必要ない。

 だが、俺一人で()を守らないといけないので俺も、戦わなければ実戦にはならない。というか、戦わなければシュラたちに文句を言われるのは俺の方だ。従って、戦いながら指令をするということを強いられるのだが、当然、やるのは初めてなので、どうなるか予想がつかない。


 一歩力加減を間違えれば何人かが死ぬ危険もあるが、手を抜き過ぎれば実戦とはならないので、弱すぎることも出来ない。


(出来るか……?)


 リネアが背中を押してくれたことで、そこまで不安ではないが。それでも、大丈夫か? と不安に駆られる。

 だが、他にいいアイディアが思い付かない以上やるしかない。



「さて、では何をするのかと言うと、陣形を組み実際に戦いを行ってもらう。これなら魔力訓練と同時に部隊としての練度の向上も望める、時間が無い以上、同時に行えるこの訓練を行う事にする。では、全員校庭の真ん中に集合し、各隊長の指示に従って陣形を組んでもらう。では、移動してくれ」


 その言葉に従い生徒たちが校庭の中央へと向かって行く。それを確認して俺は台から降りた所で当然のことながらシュラたちが歩み寄ってきた。


「おい、クロウ。どういう事だ? 勝手に変える前にせめて俺らに言ってもy」


「……うるさい」


 シュラの言葉を遮ったのはサヤだった。自前のナックルダスターを両手に取り付けながらシュラを見る。顔は無表情であったが、どことなくシュラを睨んでいるように見える。


「……司令官はクロウ……クロウにも考えがある……」


「で、でもよお―――」


「……シュラは戦いを全て知っているの……?」


「えっ、いやそれは」


「……知っていないなら言うな……」


 それだけ言うとサヤは、生徒が集まっている方へと歩いていった。


「さ、サヤ! 待ってよぉ!」


 セレナがサヤの後を追いかけて行った。いつも一緒にいる所を見るとあの二人は仲がいいんだなと思う。


「……どうしたんだあいつ? さっきは何も言わなかったのに?」


「……とにかく、俺たちも行きますよ」


「お、おいちょっ」


「文句は後で聞きます。今は黙って付いてきてください」


「……ああ、分かったよ」


「お、おいシュラそれでいいかよ!?」


 カイトが折角諦めたシュラに余計な油を注いだが、シュラは仕方が無いと言った顔をした。


「クロウがトップだ。それにサヤが言った通りクロウにもクロウなりの考えがあるんだろう。俺らに何も言わなかったことを含めてな」


「だ、だが―――」


「もういいだろ? これ以上言い争っても仕方が無いだろ。ほら行くぞ」


「くっ!」


 まだ、色々言い足りないようだったが、シュラによってやや引きずられるような形で歩いていった。それに乗るような形で他の面々も後に続いていく。

 思ったよりも反論が少なかったので、多少ホッとしたがこれからが本番だ。と気を引き締め、俺も皆の後ろから付いていく形で行くことにした。その道中、思い出したかのようにカイトが俺に相手の事を聞いて来た。


「所で、実戦って誰と戦うんだ? クロウが相手だと意味が無いとはさっき言った―――」


「ええ、そうですよ。だからとっておきの相手を用意しましたから」


「それは一体どこに?」


「始まれば分かりますよ」


 俺は答えをはぐらかしておいた。今言った所で余計な混乱を招くだけだろうし、それでまた言い争いになったらたまったもんではないからだ。


(さて……出来るかな? ……いや、やらないと駄目なんだな)


 俺は自分を鼓舞して、一般生徒が待つ元へと歩いていった。

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