第138話:クロウ v.s. 隊長格
次回、クロウのチートスキルで超強化を行っちゃいます。
といいましたね? アレは嘘です。ごめんなさい本当にすいません(土下座)。どうしても入れたいと思って書いてしまいました。
罰を受けさせた生徒を台から下したのち、今後の指示を俺は出した。
「では、一時解散をして30分後に再び集まってもらいたい。何をするかはその時に話す。それと《契約》をしていない者たちにもそこで《契約》をするからそのつもりでいてくれ。では、解散」
生徒たちが解散をし始めたのを確認してから俺は台から降りた。
それを待っていたかのように俺の元に近づいてくる集団がいた。俺が隊長格に命じた特待生組の面々だった。
殆どが小難しい表情をしており、決して歓迎されている訳では無いなと俺は率直に思った。
「おい、いくらなんでもやり過ぎじゃないか?」
シュラから飛び出した言葉は予想通り俺のやり方に不満を持っていた。
「あれくらいやらないと分からないんですよ。それに罰が甘かったら罰にはならないじゃないですか」
俺は即座に反論した。と言っても心の中ではやり過ぎたかなとは感じていた。というかこんなこと俺だってやりたくはない。やらないで済むならそれが一番いいに決まっているだろ。
「だかららってアレはどうなんだ? あいつらトラウマになるだろ?」
「HAHAHAHA~僕もそれには賛同だね~特に女の子たちにそんな事をやるとは言語道断! 今後そんな事を行うならば僕は反対をしようではないかHAHAHA~」
「その時はそれなりの理由を付けてから言って下さいよ」
「まあ僕に任せておくが良い! ねー」
「「キャー! セルカリオス様すてきぃ!!」」
いつの間に来たのか、セルカリオスの周りに数名の女子が集まってセルカリオスの発言に喜色の表情で賛成をしていた。
「クロウ、昨日の件を見てもそうだが、確かにやり過ぎる面もあるだろ? 俺らはあくまで『生徒』であって『軍隊』では無い。そんな訓練も教育まともに受けていない奴らに軍隊並の罰をやるのは酷すぎないじゃないか?」
「それ、戦場でも同じことが言えますか?」
「何……?」
「戦場ではすべての人間が対等。敵が「まともに訓練していないなら仕方がないね。攻撃しないであげますよ」って言うと思いますか? そんな訳ないでしょ! むしろ率先して潰しに来ますよ! そんな生温い奴をわざわざ戦地に送り込めと言うのですか? 司令官として……いえ、一人の人間としてそんな事は行いたくありません」
「それはそうだが……そうだ! クロウが一人で前線に出ればいいじゃないか!」
「はっ?」
「だってそうだろう! あの魔物の大群を一瞬で消し去ってしまうクロウの力があれば余裕じゃないか! わざわざ戦えない生徒を前に出す必要なんかないじゃないか!」
「それもそうですね……クロウ君が前に出て僕らは援護射撃をすればいいのですから。何のための魔法か分かりませんよ?」
カイトの言葉にリーファが賛成した。
「そうですわね……後ろからの援護射撃なら魔法の力を付ければいいだけですからなんとか出来るのではありませんか?」
「そうね。いつ出るかは分からないけどそれまでに出来るだけ鍛えて、何とか有効打を与えるくらいになれば戦えるじゃないかしら?」
ローゼ、セレナも同じように賛成した。テリとネリーも何も言わなかったが頷いている。そんな彼らを見て、俺はどうしようもない気分になった。
「はぁ……そんな甘いわけないじゃないですか?」
「そうか? クロウが前線で敵を引きつければいいだけだぞ? 多少の攻撃が飛んできてもあの《自動防御》があれば被害を出さないことも可能じゃないか?」
「《自動防御》は魔力消費量が悪い事ぐらい知っていますよね? 俺が多少の改良を加えて改善はしているますが、それでも悪い事には変わりありません。そんなものに頼り過ぎて魔力が切れたらどうするのですか?」
「それを起こさないために魔力を鍛えることに重点を置くんだよ。魔力強化を中心に訓練を行っていけばいいだけじゃないか」
「戦争がそれだけで決まると思っているのですか? そんなのだったらどの国でも魔力だけ鍛えているに決まっているじゃないですか。それが出来ないから兵器や戦術が生まれているんじゃないですか!」
「俺たちに兵器の開発や戦術など考えている暇は無いだろ! そうなれば今できる最善の手を打つしかないじゃないか!」
「だからって俺一人で前線を維持できる訳がないじゃないですか!」
いや、出来ないと言い切れば嘘になるかもしれない。だが、全力で魔法を撃てばどのくらいの被害が出るか分かったもんじゃない。俺自身も被害規模が分からないことを易々とやれとか無謀にも程がある。下手をすれば敵味方共々全滅させてしまうほどの被害を出す可能性だってあるのだ。
最後に本気で撃った時は5歳ころのお話だ。あの時も周囲の地形を変えてしまうほどの威力を誇っていた。
さらに言えば敵と正面衝突することしか想定していないこと自体が間違えている。敵も勝ちに来る、敵によってはあらゆる手を使ってでも来るだろう。そうなれば俺も予想できない事態が起きる可能性も十分にあり得る。
そんな中で俺の力だけに頼ることの危険性を全く理解していない。
「いや、クロウ君なら可能だと思うよ。あのような光景を目の当たりにしたらそう断言できるよ」
うんと頷く特待生組とリーファ。(セルカリオスはいつの間にかいなくなっていた)だが、そんな中でサヤだけが違う反応をしていた。
「……」
先ほどから表情も変えなければ言葉も一言も発していない。普段から無表情で発言もあんまりしない彼女だが意見があるときは口数は少なくともしっかりと言う人だと思っていたのだが。
と、そんな事はどうでもいい。完全にアウェイな流れになってしまった。司令官は俺だが俺一人で部隊を動かすという訳には行かない。いざとなったら彼らの力が必須になる。
そんな彼らの意見も蔑ろにする訳には行かない。だが、彼ら全員を納得させる方法言葉や理論が全く思い浮かばなかった。どんな事を言っても彼らは甘い理由を付けて反論すると思ったからだ。
いくらなんでも隊長格を恐怖で抑える訳には行かない。そんなことをすれば肝心な所で自分勝手な行動をしかねないからだ。
「……分かりました。今後の戦闘は俺が前に出て敵を引きつけましょう」
結局、俺は折れてしまった。
「よしっ、それなら早速全員で魔力を鍛える特訓をしないか!?」
俺が折れたのを確認してからカイトがまず意見を言った。おそらく勝ったとでも思っているのだろう。
「そうですわね……時間も惜しいですし」
「クロウ、30分後の時に何をするつもりだったんだ? 戦いの方針が決まったらそれに合わせる必要が無いか?」
くそっ! 俺は心の中で歯ぎしりをするしか無かった。俺がやろうとしたのは、各部隊ごとに分かれて俺との模擬戦をやる予定だったのだ。レベルを上げるならレベルが300超えの俺と戦うことが一番いいからだ。
だが、それが出来なくなってしまった。当然、俺のレベルは他人に言えるようなもんじゃない。エリラにすらも言っていないだぞ? そのため俺は衝突時の隊員同士の連係という名目をつけてやろうと思っていたのだが、俺が前に出て戦うのならば、そのような演習を行う意味が全く無くなってしまうからだ。
「……模擬戦をするつもりでしたが」
簡単に演習内容を説明すると。
「それ、接近戦をやらなくなる以上いらなくね?」
と、カイトに言われ結局これも折れる事に。で、何をすることになったかと言うと。
「……分かりました。では30分後から行う訓練は魔力増強訓練で行きましょう」
学園の授業で行っている魔力訓練を集中的にやろうと言う話になったのだった。
「その辺は俺は知らないから、リーファが中心となって行ってもらえないでしょうか?」
「分かった。セルカリオスはこの手の訓練は得意としているから彼と一緒にやってみよう」
「それでお願いします。では、解散しましょう」
そういうと俺は速足に彼らの元を離れたのだった。
連続投稿です。すぐに続きは投稿します。




