第137話:処罰
お待たせしました。いよいよ彼らの処罰が決定します。
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翌日、魔法学園の生徒たちは再び学園の校庭に集められていた。
「「……」」
だが、昨日今日で気分が簡単に晴れるわけでは無く、口数はいつもより皆少なめだった。
「一体今日は何があるんだ?」
隊長格のみは生徒が集まっている所から少し離れた場所に集められていた。何も聞かされていないシュラは周りに答えを求めた。
「知らないわ。私も聞いていませんもの」
「……私も……」
「私もよ。多分クロウが集めさせたんだと思うのだけど……」
ローゼ、サヤ、セレナは何も聞いていないと首を横に振った。
「特待生組も聞いていないのか……僕も聞いていないな……」
リーファも右に同じくと言った感じだ。
「HAHAHAHA~どうでもいいけどさぁ!? まだ始まらないのなら女の子の所にいかs(ゴスッ!」
セルカリオスがもはや恒例とも言えるべき回転をしながら生徒たちの方に向かって行こうとした瞬間、どこからともなく鈍い音が聞こえ、次の瞬間にはセルカリオスの顔面が地面と密着しているという謎の光景が出来ていた。
「……時間を弁えろ……」
見るとセルカリオスのすぐ近くにサヤが立っていた。リーファは何が起きたのかサッパリ分からなかったが他の特待生組は全てを理解し苦笑いをするのであった。
勘のいい人……出なくても気付いていると思うが何故こんなことになっているかと言うと、サヤがセルカリオスの腹に自慢の拳を放ち、セルカリオスは耐え切れずに倒れてしまったのだ。
「HAHAHAHA……これでも弁えているつもrふぁべらぁ!?」
「……死にたいの……?」
「すびぃばせん……」
サヤの拳を受けても懲りなかったセルカリオスに今度は蹴りを入れる事でようやく大人しくなったセルカリオスを見て、セレナたちは思わず笑いが出てしまう。ただリーファは生徒たちの方から伝わって来る物凄い殺気じみた視線に冷や冷やしていた。
「……」
そんな中、昨日のやり取りを目の前で見たカイト、テリー、ネリーたちは黙り込んでいた。
「ん? どうしたんだ? 今日はやけに静かだな?」
「いや……何でもない」
最初から静かだった事に気付いていたシュラがカイトに聞いたがカイトは答えをはぐらかし、まともに答えようとはしなかった。
「……始まる……」
特設された台にクロウが昇って行く様子が特待生組たちの所からも確認が出来た。
「……クロウ……少し怖くない?」
「そうですね。少なくともいつものクロウの雰囲気ではありませんわ」
いつもと違う雰囲気のクロウに少しだけ驚く。そんな中、生徒たちの前に立ったクロウの口が開く。
「……昨日の事から一夜が明けたが……どんな気分だ?」
そんな問いに誰も答えれる者はいなかった。
「まだ怖い人、次こそはと思っている人、色々いると思う。だが、それでも時間は待ってはくれない……今回の襲撃を受け国へ出撃中断要請を出したが、俺の見立てだと恐らく国は拒否をするだろう。そうなれば今度こそ戦地へと送られることは間違いない」
生徒の何人かがひぃっと小さな悲鳴を上げる。
「勿論、ただ殺されに行くような馬鹿な真似はしない。だが、そうするためには互いが互いを信頼しなければならない。味方を警戒しているようでは駄目だ」
「「……」」
「……と、言っても口では簡単に言えても実際は難しい事だろう……そこである掟を定めたいと思う。なぁに簡単な事さ「命令には忠実に動け」ただこれだけを守ってもらえればいい。後は自分自身のモラルに問いかけろ。これはやっていいのか? いけないのか? よくよく考えて行動をしろ」
今まで生徒たちと向き合っていたクロウが特待生の方に顔を向ける。
「もし、命令に意見があるなら自分たちの隊長を伝って俺に伝えろどんなことでも聞いてやる。だが意見が無いのであれば、その命令は承諾したとみなし以後、命令違反をしたものには処罰を下す……いいな?」
「「は、はい!」」
「よし……では早速命令違反をした人たちを処罰しようと思う」
クロウの言葉に生徒たちがざわめきだす。だかクロウはそんなことは意も介さずに言葉を続ける。
「一昨日の午後の全校集会に来なかった奴ら……前に出ろ」
一昨日の全校集会……つまりクロウが生徒たちに《契約》をした集会のことだった。
「……」
やや間があったのち、まずレミリオンが前へと出て来た。昨日の事があってかすっかり大人しくなっていた。
レミリオンが前に出たのを皮切りにポツポツと前へと出だす生徒たち。
やがて数人出た所でピタリと出て来る者がいなくなった。
「……チッ」
その様子を見てたクロウは舌打ちをすると、いきなり生徒たちの上空に飛び出した。そして、少し移動したのち生徒たちの中へと降り立ち、一人の生徒の前へとたった。
「な、なんだよ……」
目の前にいきなり来られたクロウに焦る生徒に何も言わず無言で生徒の襟を掴むとそのまま、ズルズルと引きずるように前へと戻る。
「ちっょ、な、なんだよ!?」
「とぼけるな。逃げられるとでも思ったのか?」
その生徒は一昨日の集会をボイコットした一人だった。何故それが分かるかと言うとクロウが全員と結んだ《契約》の効果だ。《マップ》にマーカーがない生徒は《契約》を行っていない……つまりはボイコットをした人物と言えるからだ。
ちなみに教師の情報からクロウはその日に休んだ生徒はいなかったことは確認済みだ。
「何のことだよ!? 俺は集会のときにいたぞ!」
そんな事は露知らず、生徒は来たと言い張った。
「ほう……じゃあその集会で俺はお前らに何をしたか覚えているか?」
「あ、ああ覚えているよ! 全員と《契約》を結んだじゃねぇか」
どうだとニヤケ顔になる生徒。これで逃げれるとでも思ったのかもしれない。だが、クロウは答えられることなど想定済みだった。
「そうか……じゃあ」
と言うと、いきなりクロウはその場から飛び出し、上空へと移動する。勿論生徒は掴んだままだ。
「その契約の効果で《自動防御》を会得してるはずだよな?」
「へっ?」
「術者の魔力量で防御力は変わるがまぁ、俺のパンチ(手抜き)一発ぐらいなら耐えれるだろ?」
そういうとクロウは、掴んでいた生徒をバッと空中で離すと、そこからまるで見えない壁でも蹴ったかのようなロケットスタートを切り生徒へと右ストレートを繰り出した。
生徒は何が起きたか分かっていなかったが、クロウにとってそんな事はどうでもよかった。何故なら《自動防御》は完全に術者の意識とは無縁で発動するからだ。
当然、一昨日の集会に参加していない生徒にそれが発動する訳も無く、完全にノーガードの状態でクロウのパンチを顔面に受ける事になった。
ゴンッと鈍い音……と何かが折れた音が響いたかと思えば、次の瞬間、校庭の誰もいない所に殴られた生徒が着弾するかのような勢いで落ちた音が響いた。
「……馬鹿野郎が……」
クロウはそう呟くと、生徒が着弾した個所に飛んでいくと、そのまま顔が地面にめり込んでいた生徒を引上げ、台へと戻る。生徒はと言うと、今の一撃で完全に伸びてしまっており、気を失っていた。一応クロウは《不殺》スキルでセーブをしたが、それでも鼻の骨は折れてしまっているだろう。
「前に出ていない奴!! こうなりたくなければとっとと前に出てこい!! 逃げられると思うな!!」
今の光景を目の当たりにしてしまった以上、前に行かないと言う選択肢は無いだろう。予想通り一昨日の全校集会をボイコットした者たちが続々と前へと出て来る。
「チッ……やっぱり口で言ってもダメだったか……」
クロウはこの現状に少しだけ落胆をしたのだった。
「さて、これで全員だな」
前に出てきた生徒の数は14名。のち男子が8名。女子が6名だった。怪我人の分はと思うかもしれないが、きっちりクロウが昨日のうちにある程度は回復をさせておいたので、これで全員だ。なお、完全回復はさせなかったのは罰のおまけなのかもしれない。
「こいつらは、俺の集合命令を無視した者たちだ。特にレミリオンは解散後に俺への暴力を振るうなど二重の意味で罰を受けてもらう」
クロウが《倉庫》から刀を取り出し、自分の一番近くにいた生徒の首筋へと刀を当てる。当たられた生徒はヒッと逃げようとしたが「逃げるな!」とクロウに言われ震えながらも何とか居残っていた、
「本来ならお前らの行動は作戦を乱したのも勿論、同時に他の生徒たちにへの間接的な攻撃をしたとみなし打ち首……要は死んでもらうところだ」
その言葉に前に出ていた他の生徒たちの顔がみるみる青白くなっていった。レミリオンについては顔をうつぶせたまま一言も話さずただ黙り込んでいただけだった。
「……だが、今回は最初と言う事でそれは無しにしてやろう」
ホッとした空気が場に流れる。だが、打ち首が無くなっただけというのを忘れてはならない。
「代わりに別の罰を下す……お前ら全員……服を脱げ」
今度は、はっ? とした空気が場に流れ出す。
「服を脱げって言ってるだろ? 下着とかも全部だ、そして手とかで大事な所を隠すんじゃねぇぞ?」
「ど……どういうことよ……?」
今まで黙りこくっていたレミリオンが初めて声を出した。
「言っただろ? 罰だ。もう二度しないと誓わせるためのな。ほら、さっさと脱げそして、全員で生徒たちに向かって謝れ「勝手な事をしてすいません。もう二度としません」とな」
「ふ、ふざけているんじゃないわy―――
「ふざけてねぇわ! 何だ? それともやっぱり打ち首がいいか?」
持っていた刀を突き出しレミリオンの鼻へと剣先をピタリとつける。ぐっと呻く声がレミリオンから漏れる。
「命があっただけマシと思いな! いいか? これは面白半分でやっている訳じゃねぇ……これ以上無駄な損害を出さないようにと俺流の躾けをしているだけだ……いいから、とっとと脱ぎな!! てめぇらに拒否権があると思うなよ!」
気迫におされた生徒たちがいそいそと自分の服を脱ぎだす。レミリオンも何かいいたそうな顔をしたが、やがて服を脱ぎだした。
そして、まだ成長途中の体が露わになる。隠すなと言われているので陰部なども全て丸出しになる。女子の何人かが堪え切れずに泣きだすハプニングが起きたがクロウはそんな事も全て無視をする。
そして、前に出ていた生徒は全員で一斉に復唱をする。
「「勝手なことをしてすいません。もう二度しません」」
そう言って頭を下げる。彼らにとっては一生忘れられない思い出になることだろう。この光景に見ていた生徒たちの背中にも凍り付くような恐怖の旋律が流れた。
「……よし、オーケーだ。頭を上げて服を着ていいぞ。それから後で《契約》をするから台から降りたら分かりやすい所に集まって起きな」
その言葉を聞いた瞬間。生徒たちが一斉に自分の服に群がり、そのまま台を降りて行った。
「くそっ……いつか殺してやる……!」
「殺せるものならな? その前に戦争で死なないことを願っておきな」
レミリオンが涙目になりながらクロウに向かって言う。クロウはその言葉にやれやれと言った顔で言葉を返した。
こうして、一昨日の集会に来なかった者たちへの制裁は終わり、クロウはこの事態を打破するために行動を開始するのであった。
如何でしたでしょうか?
私個人としては、どうしても殺すと言う事だけはしたくなくてこのような結果にしました。一回目と言うこともありますし、『兵士』では無く『生徒』でとしての配慮をしました。
殺さずにかつ忘れられないようなトラウマを産み付ける方法と言うことでしたが、中学生頃の生徒には酷だよなぁと思いながら書いていました。私だったら泣いていますね。そしてトラウマになっているでしょう(汗)
次回、クロウのチートスキルで超強化を行っちゃいます。