第135話:その犠牲は何の為に?・中編
※今回、少し短めです。全部入れようかと思ったのですが、それをやると想像以上に長くなりそうだったので、少し少ないですが上げさせてもらいました。
何も無ければ後編は2日以内にしっかりと投稿しますので、それまでお待ち下さい(土下座)
※ 5/24 誤字を修正しました。
※ 5/25 誤字を修正しました。
「……めんどくさいなぁ……」
思わずそんな小言が口から漏れてしまう。
「れ、レミリオン様! 落ち着て下さい! 気持ちは痛いほど分かりますが……!」
「五月蠅い! あんたは黙っていなさい!」
レミリオンの後ろで彼女に必死にしがみ付いている生徒の姿が見える。体のあちらこちらに包帯が巻かれており、彼もまた全校集会に参加しなかった生徒の一人だなと俺は思った。さらに、よくよく見てみると魔闘大会でレミリオンに付き添っていた二人の生徒のうちの一人であることも分かった。
彼が必死に制止をしようとするが、レミリオンは止まらずにこちらへと向かって来る。
「お、おい! 君たち大人しく救護室に戻っておk―――」
「いえ、先生。止めなくていいですよ」
彼女らの姿を見た教師の一人が救護室に戻るように指示をしようとしたのを俺は止めさせた。めんどくさいはずなのに何故止めさせたかと言うと、理由は二つある。一つはここで引き下がってもまたどこかで現れることが目に見えていたからだ。
もう一つは……止めても無駄だろうと諦めているからだ。
「……取りあえずカイトさんは離して下さい」
「……チッ」
舌打ちをしたと思えば、次の瞬間には胸元を掴んでいた手を放していた。カイトのせいで乱れた服装を整えている間に彼女は俺の目の前にまで来ていた。引きずられながらも彼女に必死にしがみ付いていた生徒は校庭のど真ん中で倒れていた。その光景を見た何人かの教師が彼の元へと走り寄って行った。
「……なんですか?」
半分分かってはいたが一応聞いておくことにする。
「……!!」
すると、いきなり彼女のが俺に詰め寄って来てカイト同様俺の胸元を掴んだ。またかと思う俺に襲い掛かってきたのは、俺を掴んでいる腕とは反対の腕からの強烈なストレートだった。おい、まさかの武力行使かよ。しかも怪我をしている筈の腕で殴りにかかっているし。
「あッ!?」
教師が止めにかかろうとしたが、時すでに遅く彼女の拳は、俺の目と鼻の先の距離にまで近づいていた。
だが、彼女の不意打ち程度で後れを取る俺では無い(多少は焦ったが)。俺は表情を変えずに彼女の拳を両手のうち左手だけで受け止めにかかる。
―――ビシッィ!
そんな音が昼下がりの青空の下で虚しく響く。彼女の放った一撃は俺の顔を捉えることなく、その直前で俺の片手に遮られた。
「……何の真似ですか?」
俺が問いかける。だが、彼女は腕が止められたと否や今度は俺を引き寄せながら自分の頭を思いっきりこちらへと振り下ろして来た。要するに頭突きをしに来たのだ。おいおい……それが女子のやる事かよ……。
予想外に次ぐ予想外な行動であったが、俺は特に焦ることなく、今度は余らせておいた右手で彼女の頭を受け止めてみせる。 ドンッと受け止めた位置から少しも俺の方に近づく事無く彼女の動きを止ることが出来た。
「ぐっ……!!」
彼女から悔しそうな声が漏れる。
「落ち着て下さい。何故こんなことをしているのですか?」
「ふざけないで!!」
止められているにも関わらず、彼女の拳と頭がグググとこちらへ押し込もうともがくが、筋力ステータスが100倍以上の差があるので動くわけもなく、衝突した衝撃で傷口が開いたのか彼女の腕に巻かれている包帯のから赤い血だけが虚しくにじみ出ていた。だが、彼女はそんな事は意も介さずに言葉を続けた。
「あんたわざとでしょ! 私が昨日の集合に集まらなかったのを良い事に他の人たちに細工したんでしょう!? 一般生徒があんな障壁を半日で使えるようになるわけないじゃない!」
はぁ!?
余りに身勝手すぎる言葉に俺は言葉を失っていた。誰がどう見ても明らかにそちらに非があると思うのだが……。俺は半ば呆れ気味になっていたが、なんとか彼女に言葉を返す。
「いやぁ……だって昨日の午後から来なかったじゃないですか」
「だから放置したの!? 終わった後にでも伝えることぐらいは出来たでしょう! それもせずに、何も教えずに今日のアレに参加させたの! ふざけるんじゃないわよ!」
いや、ふざけるなと言いたいのはこちらの方なのですが? 何、その「私が世界の中心よ」みたいな発言
?
レミリオンの言葉に流石の教師たちも「いや、あんた何言ってるの?」という顔をしている人が出だしていた。ただ、このまま言っても無駄だろうなと思っているのか特に発言することなく静観をしているだけだなんだが。
「すいません。少し自己中心過ぎませんか? 来なかったのはあなたたちが悪いわけですし、さらに言うなれば今日こんなことになるなんて誰が予想できましたか?」
ここでキレたら面倒な事になるのは前世でも感じていたので、なんとか冷静に取り図ろうとしたのだが。
「それを予想するのが指揮官でしょうが!」
と、言われた。キレたい。この自己中女に今すぐキレたい。一発殴って終わらせたい。でも、キレたらキレたで後日面倒な事になりそうなのでしたくないんだよなぁ……。
「クロウ、レミリオンの言っていることも一部は当たっているだろ? せめて伝えたりしておけば、今日の死傷者もいくらかは軽減できたかもしれないんだぞ?」
そこにカイトが割って入る。彼もさすがに全部は認めなかったが、それでもほぼ援護射撃に等しい言葉を放ってきた。
んな無茶な理論がまかり通る訳ないだろ……。つーか昔の名将と言われた軍師ですら不可能な事を言っているのだが。
そして話は思わぬ方へと飛び火したのであった。
「そういえば、あなた聞いたわよ。あの時リネアだっけ……? その子だけ自分の背後に周らせていたそうね」
「はぁ?」
「確か、あの子ってあなたが可愛がっていたとかね…素晴らしいね自分の指揮する隊に入れてかつ優遇してあげているのだから指揮官っていいわね、気に入った子を自分で好きに動かせるのだからね。私なんて一人失っているのよ!? 分かる!? この気持ちわかr―――」
ブチッ
次の瞬間、レミリオンの体は空中で逆さまになった状態で浮かんでいた。