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【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~  作者: 黒羽
第4章:アルダスマン国の崩壊
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第128話:Survive it till the last !!

 英語の意味は「最後まで生き抜け」です。和訳サイト様に感謝です。ちなみに私が最初書いた文は The last survive でした。

 構文……分からんかったんや(泣)


※ 5/10 誤字を修正しました。


 クロウが生徒たちを校庭に集合させたのは、その日の午後だった。


「……全員集まりましたか?」


 クロウはアルゼリカ先生に点呼をお願いしていた。普段点呼などはあまりしないらしく、来ない奴は放置をしているとのことだった。

 そのためか、クロウの高校時代の点呼と比べ倍以上の時間を要する結果となってしまっていた。まあ、年齢的には小学生~中学生ぐらいの集団なので多少は目を瞑りたりが、明日から向かうのは戦場だ。自分勝手な行動や命令を聞かない者が一人でもおれば連携は乱れ、兵は軍としての力を発揮できなくなる。


「……十数人……いえ、数十人……来ていないらしいわ」


 アルゼリカ先生がクロウの伝えるとクロウはやや落胆したような顔つきになる。


「そうですか……」


 クロウはこの結果をある程度は予想していた。レミリオンやセルカリオスを筆頭に特待生組を快く思わない連中は数多く学園内に存在している。思春期真っ只中の生徒ならそれぐらいはあるだろうと予想はしていた。

 だが、まさか数十人規模で抜けてくるとは思ってもいなかったのだ。


(そりゃぁそうだよな……)


 行き成り戦いや戦場を知らない生徒たちで部隊を作れと言われ。隊長は指揮経験が皆無でしかも自分たちと同じ生徒なのだ。さらに言えば特待生の看板がなお生徒たちの不満に拍車をかけていたのだ。勿論、不満を持っていようと集団を乱すような行動を慎んだ生徒も多数いる。現にセカリオスはこの集合に参加をしていたからだ。ある意味、一番集団行動をしなさそうな人がいたのだから、クロウも驚きを隠せなかった。


「……これ、明日全員揃うなんてこと無いですよね?」


「それがそうでも無いのよ。国の方から『部隊に参加しない者は終戦し次第処罰を与える』っていう伝令が来ているから有無を言わさずに揃えないといけないのよ。最初は生徒の親などから参戦反対と言っていたのが、これを見た途端シュンと大人しくなってそれから文句を言う人が出なくなったのよ」


「はぁ? 何ですかそれ?」


 あまりにも無謀すぎるお願いと思われる方もいるかもしれないが、昔の戦でも逃げ出した者には罰則があり、このこと自体は別段不思議な事では無い。

 ただ、それをこんな子たちにも無理やり罰を科せるのには多少どうかと思われるが、戦いに出れば年齢、性別など全く関係無い。非力な兵が強靭な兵に勝つこともありえるのだ。

 クロウは生徒たちの両親の心の痛みを思い歯ぎしりをした。子に先立たれるほど辛い経験など数多くないだろう。出来るだけ失いたくは無い。それがクロウの本心だった。


「……分かりました。もう彼らは放置しましょう」


 だが、クロウは放置する道を選んだ。これが、出発1か月前とかならクロウも何かしらの手を打っただろう。だが、出発は既に明日に迫っていた。

 そのような状況下で話を聞こうともしない生徒に構っている時間など到底割けるわけが無かった。クロウはやむを得ず話を聞いてもらえる生徒の方を優先したのだ。


 クロウはアルゼリカ先生に始めるとの趣旨を伝え台座に登り生徒たちの前に立った。


「まずは話を聞いてくれてありがとう……この中には特待生組を快く思っていない人も沢山いるかもしれない。だが、それを一時置いて参加してもらった皆には最大限の敬意を表すことでお礼とさせてもらう」


 クロウは《倉庫》からこちらに来るまでの馬車の中で作り上げた魔法式が書かれた紙を取り出した。


「さて、今から俺たちが向かう場所は戦場だ。戦場はその辺の魔物を狩るのとは訳が違う。明日も分からないまさに死地と言うに等しいものかもしれない。隣にいる友達はもしかしたら明日にはもういないかもしれない」


 その言葉に反応してか隣の人たちと顔を合わせる生徒が出て来る。


「友達だけじゃない。自分たちもだ。明日にはその命は消えているかもしれない……一番前の君」


「は、はぃ!?」


 クロウは一番最前列の中央にいた生徒を指し、続けた。


「君は俺に『明日死ね』と言われたら……死ねるか?」


 シーンと静まり返る校庭。その質問に生徒は口を噤んだ。


「素直に言っていい、別にそれでどうこうしようとは思っていない」


 躊躇っているのを感じたクロウは安心させるためにそう言った。その言葉に少し安心した生徒は自分の答えを言った。


「し、死にたくないです!」


「そうか……隣の君は?」


「わ、私もです!」


「君は?」


「……嫌です。死にたくありません」


「……そうか分かった。その言葉を聞いて俺は少し安心した」


「「「??」」」


 クロウの言葉に教師たちは首を傾げた。戦いに参加したことが無くとも、彼ら大人は色々な事を知っている。

 この国の兵士に課せられた唯一で絶対の掟。それは「上の指示は絶対」だった。基本的に訓練の時以外では、自由で国からの安定した高収入を得られ特権もある兵士たちのルールだった。

 死ねと言われれば死ななければならない。上の命令は絶対。それが厳密な軍を組織し巧みな連係戦術を可能として来た。故に人は個々の能力は低くても人は大陸の大部分を制圧することが出来ているのである。


 そんな明日も分からないような兵士のことを知っていた教師たちはクロウの言葉に疑問を覚えたのである。


「わざわざ戦地に死ぬために行くような人より、生きるために必死になる人を俺は求めている……死んだら何も残らない……国のために死んだ英雄? そんな言葉なんか俺は求めていない」


「「……」」


「俺が皆に求めるのは規律を守ることもそうだがもう一つ……『最後まで生きるために足掻き続けろ』……だ。猛獣に食い殺されそうでもナイフで喉を一撃刺せば腕は食いちぎられるかもしれないが、命は残る。どんなに泥臭くてもいい」


「「……」」


「生き抜いてみせろ……いいな!?」


「「「は……はい!」」」


 クロウは生徒たちの返事を聞いて納得したような表情を浮かべた。教師たちも色々言いたいことはあったが、クロウに全権を委ねている以上下手な発言は許されないので黙っていた。


「よし、ではこれから皆には一人ひとりこれを受け取ってもらう」


 持っていた紙束の一枚を手に取り生徒たちに面が見えるように見せる。紙は縦10センチ。横3センチ程度の長方形の紙で出来ており魔法陣が一つだけ書かれていた。


「本当は指輪みたいなアクセサリーにしたかったのだが、時間が無かったので紙に代用させてもらった。君たちには今から俺と一時的な《契約》を結んでもらうことにする」


 生徒たちがざわめきだす。当然と言えよう、彼らにとって《契約》とは下僕になれと言っているのと等しいことだったからだ。


「静かに! あくまで戦いの間だけだ。約束する。なんなら契約内容に『戦争終結後に契約を破棄しなければ主に死を与える』と入れてもいいぞ?」


 《契約》に主へのルールを取り入れるのは異例の事だ。だが、クロウはそれぐらいしないと皆が安心して結んでもらえないと思いこのルールを入れたのだ。勿論、当の本人は端から約束は守るつもりだったのだが。 

 死を与える。それ程までの言葉を聞いて多少なりとも納得した。


「でだ。《契約》はこの紙を媒介にして行う」


 《契約》に媒介を使うことは珍しい事……と言うよりかなり希少な素材を使用するので滅多に使うことは無いが、クロウからしてみれば、「えっ、書けばいいだけじゃん」ぐらいの安価な物だった。それを聞いた教師の何人かは腰が抜けてへたり込む者もいるほどだった。ちなみに市場でその素材を一個買えば一般家庭100軒分が一生遊んで暮らせるほどの大金になるとか。

 もっとも、こんな希少アイテムなど100年に一回見つかるかどうかも怪しいと言われるほどのレアアイテムなので市場に並ぶことはまずないのだが。


 そんな媒介を使うメリットは契約を結ぶことで主のスキルを一つ共有することが可能となる事だ。つまりこれを大量に用意して強力なスキルを持った人を主に《契約》を行えば強力なスキルを使える人を大量生産出来る事になる。

 もっとも、身体や魔力的な要素は共有出来ず、あくまでスキルだけが共有されるので使えるかどうかは別問題となるが。


 さて、先ほど覚えれるスキルは一つだけと言ったが。クロウが今回用意した紙にはクロウのみが読み解ける特殊な魔法構文が組み込まれておりいくつかの効果が付けられていた。


「効果は……まぁ、実際になれば分かるから今は省いておこう。強いて言うなれば全員を管理する表だとでも思ってもらえれば結構だ。全員の位置を特定するためのな」


 それだけ聞いてもなぁと言う思いが生徒と教師たちの間に流れたがクロウはそれ以上説明はせず、自ら一人ひとりと《契約》を結び始めたのだった。

 《契約》を使える事を初めてしった生徒(全員)は驚き、教師たちは「どこかで奴隷販売でもしていたのでは?」と疑った。特に生徒たちは自分たちと同じかやや年上のこの人はこれ以外にも何が使えるのか密かに敬意と恐怖を覚えたのだった。


 こうして、集合から約2時間。集まった生徒246名分の《契約》を済ませたのだった。


 クロウは、そこからさらに特待生組とセルカリオス、リーファを各小隊の部隊長になるように指示をし、そこからさらに生徒たちを振り分けて行った。

 セルかリオスを隊長にするのはどうかと思ったクロウだったが女子からの圧倒的な人気から指示を通しやすいと判断したのだ。

 ちなみに最初は本人も拒否したが、どこからか突如としてやってきたリネアから「クロウさんの言う事を聞かないならアレをもう一回受けとく?」と脅され首をコクコクと振って了承した。当のリネアは自ら進んでクロウの直属になることを望んで入った。

 その他にも、セルカリオスの部隊に女子が殺到したり、リーファの部隊に一般生徒が集まったりと色々な問題があったが、夕刻ごろにはクロウも含めた10の部隊に生徒たちを分け終え、部隊情報までクロウが回収し終えると明日に障ると悪いからと言うことで、今日はそこで解散となったのだった。

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