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【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~  作者: 黒羽
第4章:アルダスマン国の崩壊
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第127話:全校集会

 GW最終日ですね。まあ、いつもと変わりませんが(笑)

 俺が魔法学園に着いた翌日の朝。いつもなら生徒たちはもう授業が始まっている時間帯だが、教室には生徒の姿は見受けられず、その代わりに学園の食堂には溢れんばかりの人だかりが見受けられていた。

 全員が集めれる場所で何で食堂なのかと聞きたいが、室内で生徒や教師全員が入れる場所と言うのがここしか無かったからだ。


 普段はどこに集まっているのか不思議に思って聞いてみたら、普通全校が集まる集会などは無いので、必要が無いとのことだった。朝礼や連絡は全て各教室で行われるらしい。


 で、俺は今どこにいるのかと言うと、その食堂の外で待たされていた。食堂の扉は薄い一枚の木の板で作られており、閉めた状態で内部を見る事は出来なかった。まあ、俺は《透視》で見えるんだけどな。


 扉の反対側からは沢山の生徒がおしゃべりをしているせいで雑音みたいな音しか聞き取れなかった。ちなみに、俺の場合、集合場所に早めに来て黙ってと突っ立ていることが殆どだった。何故かと言うと、すぐ斜め後ろ辺りにはよく怒る体育教員がいつもいたからだ。誰かとしゃべってみたりしてみろ、たちまち五月蠅い愚痴を聞かないといけない羽目になる。

 それが嫌だったのか、俺の周りの奴らはいつも静かだったな。


 そんな事を思い出していると、ふと食堂の中が急に静かになり始めた。おそらく誰かが前に立っているのだろう。

 

「皆さんおはようございます。本日皆様に集まって頂きましたのは、今度編成されました部隊の隊長が正式に決まりましたので、報告と紹介をさせていただきたいと思います」


 静かだった場内が騒がしくなる。アルゼリカ先生が聞こえて来たので、おそらく前に立っているのも先生本人だろう。


「出発前日に報告することになりまして大変申し訳ございません……では、早速登場して頂きましょう」


 先生の話が終わり、閉じていた扉がゆっくりと開き出す。

 こんな登場の仕方など今までしたことはあるが、それは卒業式などで皆がいた時だけだ。一人で出てくるのは初めてなので緊張する。

 扉が完全に開いたのを確認し、ゆっくりと歩き始める。俺の顔を見た生徒の何人かが周りの人とヒソヒソ何かを話しているのが見えた。

 

 俺はアルゼリカ先生が立っている位置の隣に来ると真っ直ぐと生徒の方を向いた。それを見計らってアルゼリカ先生が説明を始める。


「彼の名前はクロウ・アルエレス。特待生組の一人で冒険者をやっています。ランクはC。つい最近話題になった《炎狼》の転異種討伐者です。この前中止された魔闘大会でも彼の強さを見た者は多いのではないでしょうか」


 ざわめいていた場内がさらに騒がしくなる。転異種討伐かそれとも魔闘大会かは知らないが、俺のことを知っている人は思いのほか多いように見受けられた。


「指揮は彼にお願いをしてもらいますので、皆さんそのつもりでいて下さい」


 アルゼリカ先生が進行をさせようと話をし始めた時だった。


「ちょっと! どういうことよ!」


 場内に高い声が突如響いた。後ろの方から一人の生徒が前へとやって来る。どこかで見覚えがある縦ロールの髪型が特徴的な少女だった。


 やがて、前まで出て来ると俺の方を鬼の形相で睨み付けて来た。


「……どうかしたのかレミリオン?」


 色々いちゃもんを付けるわ、助けてあげたのに敵視されるわで散々な目にあわせたこの顔を忘れるはずが無い。相変わらず立派な縦ロールだことで。


「あんた実践で指揮とか取ったことあるの?」


「無い」


 嘘ついてもしょうがないので、ここはきっぱりと言っておく。


「無い!? 冗談じゃないわよ!」


 レミリオンの視線が俺からアルゼリカ先生へと移る。対するアルゼリカ先生は特に驚いた顔などはしておらず、すがすがしい顔つきだった。


「アルゼリカ理事長これはどういうことよ! まともに実勢経験もないのが大半を占めているこの部隊を指揮経験が無い人がまとめるって言うの!?」


「ええ、そうです。他に人がいなかったので戦闘能力で一番妥当な人を選んだまでです、他意はありませんよ」


「いなかった!? 嘘言わないでよ!」


「嘘ではありません」


 無表情なアルゼリカ先生と感情丸出しのレミリオン。どっちも色々な意味で怖い。


「あんたが自分でやればいいじゃない!」


 レミリオンの言葉にアルゼリカ先生の眉が一瞬上がったように感じられたのは気のせいだろうか?


「……私には出来ませんよ」


 アルゼリカ先生はそう言い返した。だが、レミリオンは納得できないのか言葉を続けた。


「嘘言わないでください! 知らないとでも思っているのですか!?」


「……知らない? 一体どういうことだ?」


 その言葉に俺は反応した。


「あんた何も知らないのね。教えてあげるわよ!」


 レミリオンはアルゼリカ先生を指さして場内に行き届くほどの声量で言った。


「彼女は元アルダスマン国軍第4遊撃部隊隊長……国軍で指揮を取ったとこもある将兵よ!」


 その言葉に会場全体の空気が凍り付いた。


「……あなたそれをどこで知ったの?」


 アルゼリカ先生は顔色ひとつ変えずに聞いた。


「そんな事はどうでもいいでしょ? それよりも元軍隊の一隊長が何故指揮を取れないのか説明をお願いします!」


「……昔の話よ。今じゃ指揮どころか剣も握れない……そんな人を陣頭に立たせて皆が奮い立つと思いますか?」


「……フン、立つ訳ないじゃない。そんな奴は案山子にでもなっていればいいのよ!!!」


「そうですね。その方が役立つかもしれませんね」


「ですが、それでも知識はあるはずよ! あんたせめて補佐ぐらいはやるのでしょうね!?」


 その問いにアルゼリカ先生は首を横に振った。


「はぁ!? やらないっていうの!? なんでよ! 説明し―――」


「君! そこまでにしなさい!」


 見かねた周囲の教師らが飛び出しレミリオンを捕まえるとそのまま、ズルズルと生徒たちの後ろへと引き下げていく。当然、彼女も抵抗をするが大人4人がかりで止められればどうしようも無いだろう。


「ちょっ、話は終わっていないわよ! 説明をしなさいよ! 私は納得していないわよ!!」


「いい加減にしなさい! これは理事長が決めたことだ! 一生徒がどうこう言った所で結果は覆らないぞ! 君一人が出しゃばっていいことじゃないぞ!」


 教師の言葉に歯ぎしりをするレミリオン。ジタバタともがくが、生徒の最後尾を過ぎそのまま食堂の外へと連れ出されて行く。


「クロウ! 私はあんたの指揮になんか従うつもりなんて毛頭ないからね! いいね! 絶対に従わないから!」


 置き土産に捨て台詞を吐きながらレミリオンは食堂の外へと連れ出されていった。


「……アルゼリカ先生?」


「……続けましょう」


 俺はアルゼリカ先生に色々と聞きたかったが、何か事情があるのだろうと思いこの場では聞かない事にした。

 その後、簡単な日程を説明したのち、式は終了した。

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