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【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~  作者: 黒羽
第4章:アルダスマン国の崩壊
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第126話:決戦場所と不吉な言葉

アルゼリカ先生からのお願いを承諾したクロウは、アルゼリカ先生の言葉を伝えに来た教師と共に馬車に揺られながら魔法学園を目指していた。


「しかし……何故、あのとき急に行くと決心なされたのですか?」


「あっ?」


作業中の手を止めることなく声だけで反応したクロウ。多少不機嫌な感じが流れているが、これはほぼ徹夜2日目に突入しているからであろう。


「いえ、それまで行かないとおっしゃっていましたので、なぜ急にと思いまして……あの奴隷と言い争ったからですか?」


「うーん……」


クロウは作業をしていた手を止め天を見つめると、やや間があったのち、こう答えた。


「そうだな……そうなるかな……まあ、過保護過ぎていた面からってのもあるけどな」


「と、言われますと?」


「俺に依存し過ぎるのも問題かなって……ただ、今回は状況が状況だけに失敗だろうけどな……せめてあと一週間あればなぁ……まあ、無い物ねだりをしても仕方が無いか……」


「ときに……身内内のお話かもしれませんが、あの言い争っていた人は貴方の奴隷ではありませんか? ……私の経験からすればあのように言いたいことを言う奴隷など私は見たこともありませんのですが」


「それは、主人から絶対服従を《契約》で定められているからだろ。俺はそんな契約をさせていない。ただそれだけだよ」


「そうですか……ですが、公の場ではもう少し立場をわきまえさせるべきでは?」


「そうだな。その辺は教育不足……まあ、エリラも気付いているとは思うけどな」


「では、何故あのように自由にさせているのですか?」


「自由って……意思ある者には当然の権利だろ? 奴隷とか異種族とか関係ない……誰しもが持つべき権利を俺は尊重しているだけだよ」


「はあ……?」


「もういいだろ? 俺はこれを完成させなきゃならないんだから、一人で作業をさせてくれ」


「あっはい」


 再び、紙に目を落とし何かを書き込み始めたクロウ。結局クロウと教師が馬車の中で話した会話はこれと、書いている魔法式のことだけだった。

 と、言うよりクロウから放たれる異様なオーラのせいで、これ以上教師が話すことが出来なかったと言った方が強いかもしれない。


(うぜぇ……)


 誰でもそうだとは思うが、真剣に作業しているときに話しかけられたりしたら、誰でもイラッとするものだろう。教師としてみれば、先ほどの嫌な空気でそのまま移動しているので、静かなのが耐えられないのだろう。要は『気まずい』ということだ。


 結局、その後魔法学園に到着するまで、二人は一切しゃべらなかったのであった。










「クロウさん、着きましたよ」


「ん……?」


 重い瞼を開き、目をごしごしと擦る。クロウが上を見上げるとそこには魔法学園の校舎があった。


「くそ……まだ、全然寝てねぇよ……」


 到着まで3日、そのうちの殆どを作業に費やしたクロウ、そしてつい先ほど作業が終わり眠りについていたのだ。時間にして2~3時間程度だろう。某テレビ番組で三徹した人に比べればアレだが、それでもかなりのきつさだろう。


「取りあえず、まずは理事長室にまで来て下さい。たぶんアルゼリカ理事長も戻られていると思いますので」


「ああ……」


 魔法学園とメレーザの距離はエルシオンのおよそ半分、休まず進めば1~2日でたどり着ける距離だ。ただしこの場合、馬を1頭潰してしまうのを頭に置いておかなければならないが。


 教師の案内で理事長室まで足を運び部屋に入る。そこにはアルゼリカ先生が机の上に伏しているのと、何人かの他の教師たちが口々に何かを言っている様子が目に入ってきた。


「ふざけるな! 一方過ぎだ!」


「こんな事に参加する義務など無いぞ!」


「そうだ! 参加などしなくてもよい!」


「しかし……もし参加をしなければ、この戦争が終結した後が怖くはないか?」


「出資の殆どは国が行っている……もし、資金を停止させられたら運営が不可能になりますぞ」


「それだけではない、国に協力をしなかった罪を問われ下手をすれば何かしらの制裁すらも考えられるぞ!」


「だからと言って、魔物すらろくに戦ったことが無い生徒が大半を占めている部隊など案山子同然だぞ!」


「お前は学園が無くなってもいいというのか!?」


「あんたは、生徒がどうなってもいいのか!?」


 最初はお互いに意見を述べ合っていたが、次第にエスカレートして行き、お互い罵倒したり髪を引っ張り合ったりと、終いには子供の喧嘩みたいになってしまっていた。薄くなり始めた髪を必死に守る教師の姿は非常にシュールで現実的な光景だ。


「……! クロウ君!?」


 ようやくクロウに気付いたアルゼリカ先生の一言で、これまで言い合っていた教師たちの手が止まり、その視線は全員クロウに向けられていた。


「お待たせしました。アルゼリカ理事長、約束通りクロウ君をお連れしました」


 クロウは連れてきた教師の言葉は無視をして、言い争っていた教師の間を何の躊躇もなくすり抜けアルゼリカ先生の前に立った。先生などの目上の人たちが話している間を何も言わず抜けることは失礼に値するが、クロウには関係無いと言わんばかりの堂々した通りっぷりだ。先ほどの興奮の熱が冷めていないのか、教師たちが口々に何かを言ったが、クロウからしてみれば「お前らどけよ」なので無視(スルー)をすることにした。


「よく来て下さいました。クロウ君、話は聞いていると思うけど、あなたにお願いしたいことがあるの。それはあなたほどの若者には重すぎる物です。ですが……私はあなたが適任と判断しました」


「で、部隊長(これ)をやってくれと……」


「ええ、その通りです。来て下さったということは引き受けて頂けると判断して良いのでしょうか?」


「まあ、そういう事でいいですよ。本当は家が心配で来たくは無かったのですけどね」


「家……? そういえばいつもの従者さんはどうしたのですか?」


「……留守番ですよ」


 あんな形で家に置いて来たので留守番と言って良いのか分からなかったが、無駄な心配をさせるのも嫌だったクロウは留守番と答えておいた。事の事実を知っている教師も、言わない方がいい(言ったら殺されそう)と判断し、黙っておくことにした。

 

「そうですか……すいません。このような時に家を空けさせてしまって」


「大丈夫ですよ(多分)。それより出発日とかは決まっているのですか?」


「予定では……明後日ですね」


「明後日!? 早くないですか!?」


「これでもかなり出し渋らせた方なのですよ。これ以上は無理だと断言されて今に至るわけです」


「理事長! まだ出すと決まった訳ではありませんぞ!」


 クロウとアルゼリカ先生の間に割って入るような形で先ほど言い争っていた教師の一人が言った。


「決まった事です。私もこの参加には当然反対です。しかし、国が潰れればそれこそ、この学園はお終いです。それなら出来ることをやるべきと判断した訳です」


「ほざくな! 結局国に良いように使われるだけですぞ! 良くて前線。悪くて単独特攻させられるのですぞ!?」


「では、あなたが国の軍部のトップと話してきなさい。それで認められればこのことは無しに出来ますが?」


「ぐっ……!!」


 それが出来たら苦労しねぇよという雰囲気が辺りに流れる。


「前線? 特攻? アルゼリカ先生。一体どういうことですか?」


「そうですね……クロウ君にも言っておきましょう。今回、すでに向かう先が決まっているのです」


 向かう先……つまり、学園の部隊の向かう先と言うことになる。

 実はクロウもそのことについて多少なりとも考えてあった。子供たちで作り上げた部隊を一体どのような所に配属するのか。

 首都は論外だろう。子供たちの部隊など見れば士気が落ちる事は目に見えている。同じような理由で都市などの防御にも適さないだろう。

 しかし、もしそれらを消した場合残るのはどこかと聞かれると、前線や補給部隊などに限定されてくる。あわよくば補給部隊として運用してもらえることを願っていたのだが(補給ならクロウ一人で《倉庫(ストレージ)》に入れて持ち運べるから)どうやら、そんなに甘くはないようだ。


「……一体どこなのですか?」


 どうやら、補給と言うことは無さそうだった。では、一体どこに連れていかれるのか。クロウは聞きたくなかったが聞かないことは許されない立場なので、渋々聞くことにした。


「場所は首都メレーザより南東の山岳地帯にある砦です」


「砦……名前は……?」


 クロウはこの世界の地理についてはそこまで詳しくはないので、名前を聞いてもピンとこないのだが。そして予想通りアルゼリカ先生から出てきた名前をクロウは知らなかった。


「名前はフォートと言う場所です」










==========


「ふむ、思わぬ幸運が舞い降りたの」


 ミュルトからクロウが出て行くとの情報を聞いたガラムは内心喜んでいた。ギルドの仮設テントの中でガラムとレシュードが話をする。


「どうやら天は我らに味方をしているようだな、ですぐに行動をするのか?」


 剣を引き抜き今すぐにでも暴れたい思いに駆られるレシュードをガラムが宥める。


「まあ、待て、一週間だ。あ奴の行動範囲を予測出来ない以上、ある程度の距離は取っておきたい。おそらく一週間辺りならあ奴も戦地の中じゃろう。そうなればこちらに目が行きにくくなるワイ。そこを狙うのじゃ」


「オーケー。で、派手にやっていいんだな?」


「小僧がいないエルシオンなど容易いことよ。そのために兵士も寡兵を連れてこさせたのだからな」


「そうか、分かった。それまでは大人しくしておく、じゃ俺はそろそろ宿舎に戻るぜ」


 そういうとレシュードは兵舎へと帰って行った。あとに残ったガラムもテントの奥に引き下がろうと、仕切りを潜ろうとすると


「ひゃっ!」


 ミュルトがガラムの顔を見て驚いた。


「……なんじゃ?」


「いえ……なんか話し声が聞こえたので……何をお話されていたのですか?」


「なぁに、この街の今後についてじゃよ」


 ガラムはそれだけ言うとテントの奥へと消えて行った。


「……一週間……寡兵……どういうこと?」


 盗み聞きをして僅かに分かった言葉を頼りに、話の内容を推測するミュルトだったが結局、その場で答えは分からなかった。ただ、僅かにだが胸騒ぎを彼女は感じてはいた。


 彼女がこの言葉の意味を理解するのは事件が発生した後のことだった。

 

 GWの真っ只中ですが、皆さんはどうお過ごしですか? 私は家に引き籠ってパソコンを前にポチポチしています。今のPCではマイクラのバニラすらも出来ないので、マイクラ動画とvitaで満足をするようにしています。


 本編中に出てきたフォートについては「第122話:フォートの攻防戦」を見て頂けるとある程度は分かるかと思われますので、そちらをご覧になってください。


 では、また次回もよろしくお願いします。黒羽でした。

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