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第13話:厄介事と昇格試験

 ※8/22 誤字修正をしました。

 ※8/24 誤字修正をしました。

「だからなんなのですか?」


「とぼけるな、ここに昨日登録されたばかりの新米冒険者がいるはずだ」


「新米? 昨日お泊りになられた方は何人かいますが?」


「ちっこい奴がいたはずだ」


「ちっこい? ……ああ、確かその人なr―――」


「俺か?」


 ギョッとした顔で店主は俺を見た。目立つ服装をした奴が俺の方を睨む。


「ああ、こいつですお父様!」


 そばに立っていたヴグラが叫んでいる。もっとも顔の右半分はまだ痣が残っている。治癒魔法で治したんじゃなかったのか? いや、かなり強く殴ったからあんな怪我じゃ済まないはずだ。

 治癒魔法には限界でもあるのか? 俺は腕が粉砕骨折しても治ったんだが。


「なんの用ですか?」


「とぼけるな、この傷を見て忘れたとはいわせないぞ!」


 ヴグラが残っている痣を指さしながら叫ぶ。ああ、なるほど証拠を消さないためにわざと残しているんだな。


「はぁ? それはあなたが手を出してきてから反撃しただけですよ。こちらに非があるとは思えませんが?」


「ふざけるな! 俺の息子が大けがをしたのになんなんだその態度は!?」


 と、横にいる男は叫んでいる。宿屋の店主はオロオロしながらこれからの成り行きを見ている。店主からしてみれば小さな子供が領主の息子をぶん殴ったという事実が妙に信じられないようだ。


「ふざけるな? それはこちらのセリフです。私が取った依頼票をそこにいる人の仲間らしき人に取られてその人が割り込んできて、私に殴り掛かった。むしろこちらがそちらに文句を言いたいぐらいですよ」


「貴様! ここで詫びr―――」


 言いかけた時にはすでに俺はヴグラの親の目の前に立っていた。とてもじゃないが1秒もたたずに近づける距離ではない。


「詫びなかったら? どうするのですか?」


 普通ならここで謝るのが普通だろう。こちらが被害者であろうとも権力と言う刃は正しい事を軽々と打ち破る力を持っているのだ。

 だが今彼の目の前にいる小さな少年はその力を超える力を持っているのだ。したがっていつも彼が行っている傲慢な態度はもはや脅しにもならないのだ。

 もちろんまだ手も出していない人に剣を向けるという事はしない。一瞬で前に行くことをしただけだ。


 それにビビッた男は後ろに身を引いた。俺は軽くそいつらを一瞥すると俺は用があるのでとだけ言うと宿の中へ戻ろうとした。しかし


「待て、まだ話は済んでねぇ!」


 振り向くとヴグラがこちらに指を指しながら睨みつけている。あの一瞬の行動にも怯まないのは単なる馬鹿かそれとも……いや馬鹿なだけだな。


 ヴグラが剣を抜こうとしていたので、俺は《威圧》を発動し睨みつけた。すると急にきた重圧にひぃというだらしない声を出しながら腰が抜けたのかその場に座り込んでしまった。


「……その剣を抜いたら覚悟はあるのか? 俺は別にやりあってもかまわねぇが、命は無いと思え」


 ヴグラはガクガクと顔を上下に動かした。周りにいた奴らも俺の威圧にビビッたのか後ろに後さずりしていた。

 俺はそれを今度こそ宿の中へと戻っていった。












「はい、ではこちらにどうぞ」


 エルシオンの冒険者ギルド内には昇格試験用の闘技場がある。もともとは一般市民も使用していたようだが今ではギルドの許可が無いと入れなくなっている。

 闘技場は石で作られているようだが、壊れないように魔法で補強しているようだ。龍族の集落の城壁より丈夫なんだろうな。


「では、試験のルールを説明します。武器はお互いに木の武器を使用してもらいます」


 なるほどな、ようは技術を調べるのか


「相手はこちらが用意する冒険者です。ランクは昇格するランクの冒険者。あなたの場合はEですね。そして実戦をやってもらいます。勝つことが目的ではありません。あくまでそのランクに相応しいかどうかを試させてもらいます」


「質問です。魔法も使用していいのですか?」


「はい、問題ありません。しかし相手を殺しに行くような攻撃・魔法は禁止です。もし破った場合はギルドから永久追放とさせてもらい、各都市にあるギルドにブラックリストに登録されます」


 おお、怖い怖い。


「では早速始めますか?」


「はい、いつでもいいですよ」


「では、お願いします」


 受付嬢がそう言うと闘技場に誰かが入ってきた。年齢は15歳ほど、赤髪の長髪が特徴的だ。出ると事はようやく出始めたというころかな?(どこが出始めたかは言わないよ)

 腰には剣がある。ただし片手剣ではなく細剣と言う武器みたいだが、細剣は刃が細いため威力は高くないが、軽いため筋力が少ない人でも簡単に扱うことが出来る。しかも細いため関節を突くようなことに非常にすぐれているのだ。


「エリラよ」


「こちらが今回試験の相手をしていただくエリラさんです」


「よろしくお願いします」


 そういうと俺は手を差し出した、しかしその手はパチンと弾かれてしまう。


「ふん、異例の昇格スピードと聞いたからどんな人かと思えばこんなガキだとはね」


「エリラさん!」


「せいぜい相手になるようにね」


 そう言い捨てるとエリラは自分の準備をするために闘技場のベンチらしきところに歩いて行った。くそっ、何でこの世界の子供はこんな奴らばっかりなんだよ……


「す、すいません」


「いいんですよ、この姿を見たらそう思っても仕方ありませんしね。受付さんもまだ私の実力を信じていなのでは?」


「そ、それはそうですが……」


「まっ、死なないように頑張りますよ」


 まぁ死ぬ気も負ける気も少しもないけどな。










「勝負は1本勝負。時間は無制限。異論は?」


「ないわ」


「ありません」


 5分後、俺らは相対していた。エリラは細剣の木剣(レイピアかな?)。俺は片手剣の木剣だ。本当は刀系がよかったんだけどな。ないならこれでいいや。


「では……はじめ!」


 最初は両方とも動かない。俺としてはカウンターで一撃で沈めてやるんだけどな。もっとも敵の攻撃方法がわからないから油断は出来ないんだけど。


「かかってこないの? ビビッたかしら!?」


 安い挑発だな。自分より歳下だからってそんな挑発に乗るわけないだろ。


「好きに言ってればいいじゃないですか、どうせ一手で終わらせますからね」


 適当に払っておく。


「へぇ……いい度胸じゃない」


 あれ? 逆に挑発してしまったか?

 次の瞬間、エリラはすでに動き出していた。レイピアが俺の額を捉え、鋭い突きを繰り出す。身長の差がかなりあるので、上から突かれる形となっている。


(かなりの速度だな。あの高飛車は形だけじゃないようだ)


 だが―――


「甘いなぁ……」


 俺は頭だけ動かしてレイピアを回避する。当たったと思って思いっきり踏み込んでいたエリラは俺に倒れかかってくる。俺は避けた剣を素手でつかむと勢いそのままに放り投げた。


 一瞬だけ宙を舞うエリラ。そして闘技場の壁に激突する。地面に倒れこみ咳き込むエリラだが、すぐに体勢を直そうとするが


「……終了ってことでいいですか?」


 エリラの額には逆に俺の木剣の先っぽが触れていた。


「そこまで勝者クロウ!」


 受付嬢が終了のジャッジを下す。俺は妙にプルプル震えているエリラから剣を下げると振り返り受付嬢のもとに行こうとした。

 だが、何でだろう。嫌な予感しかしないのですが。


 そのとき受付嬢が「あっ!」と叫んでいた。すでにそのときにレイピアがクロウの首に当たろうとしていた。


 もちろん俺はとうに気づいていたがギリギリまで待ってみた。甘く見ているわけじゃない、ただ俺はまだこの街に来て2日しかたっていない、もっと言うなら人間の世界に来て2日だな。だからまずは年代ごとの実力を見ることにしていた。

 アレスやレイナと実戦をしていたが出来れば色々な人の動きを見ておきたかった。《神眼の分析》や《記憶》のおかげでどんな動きでも為になるからな。

 あとは気配などを感じる練習でもある。アレスやレイナのハイレベルな動きだけでなく素人の動きなども見ておく。こうすることで実力を隠しておきたいときや力を温存しておきたいときにどれほどの強さなのかおおよその見当にするためだ。

 ステータスだけですべてが決まるわけでは無いのはレイナとの戦いでわかっていることだからな。


 こんなことで怪我しても仕方ないしな、そろそろ止めるか。


 俺は後ろを振り返ることなく迫ってきていた細剣を指二本で受け止めた。受付嬢が驚いた顔をしているがどこかホッとした顔をしているようにも感じた。


 一方のエリラは俺に止められた剣を引き戻そうと必死に引き抜こうとしている。だが俺もそれなりの力を入れてるのでピクリとも動かない。木剣が折れそうだな。


「……あんた、これがどういうことかわかっているのか?」


 今までの子供っぽい声からは想像できないような低い声で言う。といっても所詮は5歳の低い声だ。たかがしれている。口調も前世の口調でやっているんだけど迫力ないよなぁ……《威圧》が無い俺にはこれが限界か。


 俺はグッと力を入れ細剣を目の前に叩き落とす同時に細剣を持っていたエリラも地面に叩き付けられる。

 ゴハッという声と共に細剣からエリラの手が離れる。俺は受付嬢に目で「すいません」とだけ誤っておくと、細剣をいとも簡単にへし折って見せた。もちろん脅しのためだ。これいくらなんだろうなぁ。


 そして俺は魔法を唱える。今は火魔法しかないことになっているから火しか使えないが十分だ。


「……《炎槍(フレムランス)》」


 俺の手のひらから抜け出すように火柱が立つ、そして一瞬にして槍の形を作り上げた。受付嬢は目の前の出来事にポカンとしていた。おいおいカード作るときに確認しているでしょうが


「……殺す気で来たお前に俺は容赦しないぞ?」


 エリラがようやく震えだした。気づいたのだ自分が決して相対してはならない、本気でぶつかったらいけない相手だということに。


 受付嬢も我に戻るとあわてて止めにかかる。俺は受付嬢が近づいてくるのを確認すると魔法を一瞬で解除した。


「……さて、これはどういうことですか?」


 俺は受付嬢を睨みつける。当初の説明では相手を殺しにかかろうとしたらそのままギルド登録を抹消されるはずだ。そういう意味では俺も魔法を使ったからかなりギリギリの線なんだけどな。戦闘終了後の不意打ち、いくら致死性のない武器でも、低レベルの冒険者でも攻撃次第では後遺症を残すこともたやすい。


「これどうなるのですか?」


 さっそく登録解除なんか嫌だな。


「す、すいませんちょっとお待ちいただいてもよろしいですか?」


 受付嬢もこうなることは予想していなかったのだろう、あわてて奥へと消えていく。おおよそギルドマスターみたいな人にでも報告しに行くのだろう。


 数分後、闘技場に受付嬢と大男がやってきた。ただならぬオーラを感じ、俺は直感でこいつは強いと感じた。そしてその風格からかなり高い地位のものだとも思った。


「ふむ、初めましてだな。ワシは冒険者ギルドエルシオン支部ギルドマスターのガラムだ」


 大男には似合わない丁重な挨拶だ。俺も丁重に挨拶し返す。


「さて事情は大方聞いた。ここではなんだから、こちらでお話をしようか」


 俺は特に異論はないので、ガラムの後をついていく。

 やがて連れて行かれた場所はどうやら来賓を招くところみたいだ。簡素な造りに見えるが、それはあくまで日本人である俺視点で見た場合であって、この世界では中々の部屋だ。


 座れと言われたので言われたままにソファに座る。エリラは受付嬢と一緒に俺の後ろで立っている。本当なら座ればとでもいいたいんだが、とてもじゃないがこのタイミングで言えないな。


「さて……まずはそうだなお前はどこから来たんだ?」


「どこでしょうか? 私は村という村に住んでいませんでしたので」


「ん? それは一体どういうことだ?」


「誰も来ないようなところで住んでいたのです。ですのでどこかと聞かれてもわかりません」


「なるほどな」


 嘘は言ってないぞ。ただ掟を破ったということを話していないだけだよ。


「知識は両親からか?」


「はい、特に戦いは重点的に教えられました」


「ふむ、おぬし何歳だ?」


「この前5歳になったばかりですね」


 エリラが後ろでギョッとした感じがした。受付嬢はカードを見ているので知っていたみたいだが、ああ補足しておくとギルドカードには色々な個人情報があるが、どれをだすかは本人の自由なのだ。俺は年齢を基本的に見ないので出さないだけだ。


「5歳だと!? おぬし本当に人間か?」


「人間ですよ」


 半分がつくが。


「おぬしほどの歳でその実力か凄まじいな」


「はぁ……ところで本題から逸れている気がするのですが?」


「おお、そうだったな、ワシとしたことがついな。事情を聞くとおぬしには特に問題がないと判断した。よって罰は無い、昇格も出来るぞ。」


 その言葉を聞いて俺はホッとした。よしっ、これで俺の生活は守られた。まだお金も全然ないしな。


「さて、問題はお前だエリラ」


 エリラがビクッとする。ガラムがじっと睨みつけている。怖いけど目を離せない、離すなと言わんばかりの威圧が流れている。


「試験官願いをしたときにあれほど口酸っぱく言ったのをお前は守れなかったな」


「……はい」


「しかも相手はお前より10歳も年下の子供。戦いの中での不意打ちなら問題はなかったんだがな」


 問題なかったんだな。なんか殺されそうな雰囲気でしたが、まあ実戦ではそんなことは言えないか。


「……戦闘終了判定後の不意打ちおよび、重症性の怪我をさせようとした罪で冒険者ギルドから除名をする」


「!!」


 エリラは何か言いたそうだったが、すぐに押し黙った。これはいくらなんでもなぁ……まぁ予想していたんだけどな。

 でもこのまま露頭にでも迷うことになったら後味わるいよな……


「あのガラムさん、その件なのですが何とか不問にできませんか?」


「……なに?」


「いえ、今回は別に死人が出たわけじゃないですし、私としては一回軽く脅しておいたのでもう許してもいいのではと思ったので。それに彼女にも生活があるのでは? まだ若いですし」


「……おぬし本当に5歳児か?」


「本当ですよ。なんなら看破スキルでも使って見ればいいのでは?」


「いや、別に気にするほどでもない。だがな規則は規則だ。前例を作れば後へ後へと影響を残していく。おぬしが言いたいことはわかるが、こればかりは覆せれない」


「……そうですか」


「……だが別に方法が無いわけじゃないがな」


「は?」


「簡単だおぬしの奴隷にすればいいだけだ」














「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 奴隷ってチート系小説では定番ですよね? やりたかったネタの一つです。もっともこれからのお話にもかかわってくるので大事な事ですが。


 ちなみに異種族間の対立はあっても完全に隔離されているわけではありません。

 人は獣族を奴隷として扱い、時に体を合わせることもあります。しかし龍族ほどでは無いにせよ、ハーフを持つということは標的になるので魔法道具で妊娠を防ぎます。この魔法道具は非常に安価です。大量に使われるので。


 ……これってあとがきで書くことかな? まあいずれ本編でも解説していきますので、よろしくお願いします。


 ※アドバイス、感想などありましたら気軽にどうぞ。

 ※誤字脱字などがありましたら報告ありがとうございます。


 私も出来る限り誤字脱字は修正しているのですが、あんまり出来ていないのが現状です。ですので報告してくださると大変うれしいです。


 いつも、感想、報告をしてくださる皆様には改めて感謝です。これからもよろしくお願いします。

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