第121話:戦火に包まれた王国
リアルが忙しくて少しずつしか進めることが出来ていませんが、気合で乗り切って見せます。
「報告です。人族の部隊を二つ撃破。現在、追撃中とのこと」
薄暗い部屋に男の声が一つだけ響く。その直後、雷が落ちたのか雷鳴が轟いていた。だが、王の間にいた三つの影はピクリとも動じなかった。
「ヒッヒッヒッ……取り合えずは上々の立ち上がりかの」
何処かで聴いたことがあるような声の笑い声はイボガエルの鳴き声みたいに低かった。
「ガラムはどうしている?」
「はい、例の少年を押さえる為に奔走している模様で」
「たかが一人の小僧ごときに……まあ、お主と脳筋の報告通りなら手を打つにこした事は無いか。その鎖も未だに取れないのだろ?」
「ヒヒッ……完全にしてやられたのぉ……」
じゃらじゃらと音を鳴らす土の鎖を見て男は思わず苦笑いをしてしまう。
「あの脳筋でも壊せぬ鎖を作れるとはの……龍族迎撃の件も含め面倒な奴が現れたな」
「お蔭で生活しにくいでございますよ」
「フハハハッ、その小僧とは是非とも一戦してみたいわ」
「ご冗談を。いくら我が主でもただでは済まされぬと我は見ますが」
「そういえば、あれ以来龍族の王は行方不明だったな」
「ヒッヒッヒッ……恐らくですが例の小僧に倒されたと見るべきでしょうな」
「まあ、死体が見つかっておらぬ以上確定は出来ないがな、龍族の王を単騎で葬る人間……ますます戦ってみたいわ」
単騎かどうかは分からないはずだが、男の頭の中では少年が単騎で倒したと思っているようだ。
「ヒッヒッヒッ……アスモ様、まだ断定は出来ませぬぞ」
「ふもむ、それが無かったにせよ数百人を葬る魔法を使えるのだからな、我が下僕にでも出来たら最高だろうな」
アスモと言われた男は強者の顔を思い浮かべ笑う。それを見た二人は呆れるしか他無かった。
こうなってしまうと当の本人以外ではどうにもならない。
「ヒヒッ……その件も含めどうなるかはガラム次第でしょうな」
「そうだな。それまで我は高みの見物だな……」
アスモと言われた男は少しだけ残念そうに言いながらも、その顔は何故か笑っていた。
==========
アルダスマン国首都メレーザは、混乱に包まれていた。
再編された軍隊が出陣から僅か一週間足らずで逃げ帰ってくるという異例の事態に国民の間には不安が募る。さらに、戦った相手は龍族では無く、魔物……つまりは魔族だと言うのだからもはやどうにもならなかった。
東部制圧部隊がメレーザに帰還したのは、出陣から僅か一週間と4日。
第2遊撃部隊がその3日後。
その後も、各地で敗れ去った部隊が続々と帰還をしてくる。
そして、二週間が経過した頃、軍隊だけでも数千と言われる死者が生み出されていた。こうなって来るともはや、軍としての体裁は整わず実質の総崩れと言わざる得なかった。
軍隊が機能しないので、当然地方の都市の守りにも混乱が生じた。国から直接派遣されていた駐留部隊は大半が司令官の自己判断により首都への帰還を始めた。実際、これが人間同士の戦いであったならば、または普通の戦いであったならば、ある意味では正しい判断だったのかもしれない。
だが、これは結果として最悪の事態を招いてしまうこととなる。
各地方都市の守備が疎かになったのを察知した山賊などが街を襲い始めたのだ。
さらに周辺隣国の国々も領土拡大のチャンスとアルダスマン国に宣戦布告を行い侵略を始めた。当然彼らも魔族と戦うのは出来る限り避けたいので、被害が出ているところから大分通り地方などを切り取ろうと考えた。
そこに、それを奪い合う形で周辺国同士で衝突が発生。気付けば、アルダスマン国全土が戦火に包まれるという最悪の結果を招いてしまっていた。
もちろん、国家も何もしなかった訳では無い。
だが、軍隊の大部分を損失したアルダスマン国に出来ることは限られていた。同盟国家があったのかといえば無く、ギルドに介入をお願いしたかったが周辺国の参入によりそれも断念。
結論を言えば、アルダスマン国は首都メレーザを中心とした領土を守る事しか出来なくなってしまっていたのだった。
だが、その領土を守る兵士ですらも徐々に不足し始める事になってしまう。主な理由は兵士の脱走だ。
日々落ち続ける戦力。この事態にアルダスマン国は新たな兵力の増強に乗りしたのだった。
そして、真っ先に徴兵されたのは、あろうことか戦いも全く出来ない生徒も多数存在する魔法学園だったのだった。
==========
・第1次エルシオン防衛戦~現在に至るまでの被害状況
・戦闘参加者:23000人
・魔族:約3000人(魔物含む)
・人族:約20000人(隣接地域兵力含む)
・死者:5000人以上(他非戦闘参加者:2000人以上)
・主な戦死者
・アルダスマン国
・ロス・ガーディオン(戦死)
・怪我人:1万人以上(他非戦闘参加者:5000人以上)
・行方不明者:多数(他非戦闘参加者:398名)
私は戦争などにそこまで詳しくは無いので、かなり曖昧な個所もたくさんありますので、多少のミスには目を瞑っていただけると有難いです。
ですが、「これは明らかにおかしい」というのがあれば、優しく感想欄に書いて下さると有難いです。