第113話:屋根に昇ればどうにでもなる
昔、逃○中っていう番組を見た事あるけど今なら余裕で逃げ切れそうな気がします。もちろん空を飛ぶというのは無しですよ。
ですが
「いっくぞぉぉぉぉぉ!!!」
自分に気合いを入れ、地面を思いっきり蹴り込む。ゴウッっととてもじゃないが、地面を蹴ったとは思えない音と共に一気に加速する。
と、その前にテリュールとレーグをしっかりと抱えてと。
「ちょっとぉ!? どうるすつもり!?」
「わっ、わっ、わっ」
「しっかり捕まってろ! 逃げるんだよ!」
「逃げるって言ってもそっちはか―――」
前方には行き止まりですよと言わんばかりの高ーい壁がそびえている。ほら、漫画とかなら「逃げ道が!?」と言うような場面だ。
「突っ込むぞ!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ダンッと地面を蹴り《跳躍》スキル全開で飛び上がる。約一人分重いが、たかが数メートルの壁なら行けると判断した。
そう、俺がやっているのは、屋根の上に逃げようとしているのだ。数メートルの壁なんて城壁を超えた俺からしてみれば、犬が使うレベルのハードルぐらいにしか感じられない。
えっ、そこはピンチになるところじゃないかって? いえ、俺そういうタイプじゃないので。
気付けば既に俺は周りの民家の高さを越えていた。下を見てみると口をあんぐりと開け、茫然としていた。そりゃあ普通の人間(?)が大人一人、子供一人を抱え、ジャンプ一回で壁を登り切ったら、誰だって驚くよな。
そうこうしているうちに、屋根に着地をし二人を降してあげた。だが、二人とも腰が抜けたのかそのまんま屋根にへたり込んでしまった。
「はは……死ぬかと思った……」
「お兄ちゃん人間?」
「一応、人間ではあるよ」
人間の定理ってなんでしょうね。誰か分かる人がいたら教えてください。
「逃がすな! 回り込め!」
そんな声が聞こえたので、屋根から下を覗いてみると下で兵士っぽい人やら住民やらがこちらを指さしながら何かを叫んでいる様子が見えた。
これはぐずぐずしているとすぐに囲まれそうだな。
取りあえず「兵士」で検索してみると居るわ居るわ、町中を赤いマーカーで覆い尽くすような量が出てきた。数にして3000人弱と言ったところか。
おい、マテや何で3000もいるんだよ? この街はそれなりの大きさではあるが、エルシオンなどと比べてみると発展に劣っている。さらに言うなればここはどの国境とも近く無い場所だ。今はエルシオンを取られたのでいくらか戦線に近い場所とはなっているが、それでも後方地帯であることは間違いない。
そんな所に3000も兵士を配置してるとか……エルシオンに回しても罰は当たらねーぞ。
(それにしてもちょっと多すぎないか……?)
ここまで兵の配置が偏っていると疑問を覚えざる得ない。それくらいいるなら前線にも回してもおかしくなくね? つーか、回せ。
そもそも、前線をすぐに放棄した時から妙なんだよなぁ……。ゲームじゃあるまいし簡単に街を放棄するわ、奇襲対策は皆無だったりするわ……。
街に魔族が現れたり、ガラムのおっさんはどこかに行ったり……。
なんなんだこの感じは……、なんというか漠然としているんだけど裏で意識的に動かされている? そんな感じが気がしてならない。
そもそも、森の調査部隊の全滅理由が龍族と断定されているのにも納得がいかない。あんな街の近くまで龍族が集団でゾロゾロ来ていたら誰か気付かないか?
考えれば、考えるほど理不尽な点が多すぎる。
「く、クロウ!! どうするの!?」
テリュールの声で現実に引き戻された俺の眼に入って来たのは、あちこちの民家の屋根に梯子を使って昇って来る兵士たちの姿だった。
って、今はそんなことは後々! まずはここから逃げ出さないと。
「突破するぞ!」
俺は再び二人を両脇に挟むと、そのまま屋根伝いに移動を開始した。《門》使った方が確実やし楽なんだけど、あんな反則級なスキルを人前でポイポイ使っていいものではないと俺は思うんだ。まあ、だからと言って自重はしないけどな。
人前で多用しているといつか対策されそうなので、アレは最終手段だ。
一生懸命梯子を昇って来る兵士を余所目に、あっさりと包囲を突破して街の外へと急ぐ。正直言うと本気で逃げ出した俺に追いつけるはずも無く俺らは無事、街の外へと逃走することに成功したのだった。
お知らせ。
3月も中旬を越えましたね。
さて、そんな最中ですが、私黒羽は就職活動と言う活動を本格的に始めなければなりません(泣)
ですので、今までより少しだけ更新速度が落ちるかも知れません。出来る限り頑張っては見ますが、履歴書とかエントリーシートには勝てる気がしません(泣)
こんな感じですが、これからもよろしければ応援よろしくお願いします。m(_ _)m