表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/270

第108話:トル・アランシュ

 ※ 3/10 誤字を修正しました。

「ふぁ!? く、クロウさん何を言っているのか分かっているのですか!?」


「え? ふざけていると思いましたか?」


「ふざけるも何も、クロウさんは商売をやったことがあるのですか?」


「そうですね……冒険者歴=年齢と言った感じでしょうか?」


「それってほぼゼロですよね?」


「と、言うかゼロです(笑顔」


「……」


「あっ、すいませんそんな顔しないでください」


 ミュルトさんが死んだ魚の眼になってしまったので、全力で謝りに行く。ごめんなさいなんでもしまs(ry


「……どうして出来ないものをやろうとしたのですか……いいですか。商人になるという事は物流の流れや各地の需要、相場価格、そしてお客様から信頼が無いとやっていけれません。それが全くっというほどない今、どうやってやっていけるのですか?」


 あら、意外と詳しいのですね。まあ、ギルドでも結構重要な人みたいだから当然なのかな? 確かにミュルトさんが言っている事は正論だろう。普通の人ならまずやろうとは思わないし、そもそも簡単に出来ることでもない。

 だけど、それはあくまで『普通』の人の場合だ。ミュルトさん、今あなたの目の前にいるのは常識など別次元にかっ飛んでしまった『異常』な人間でっせ。

 ……自分で異常って言ってしまったら終わりでしょ……。


 ま、まあ。それは置いといて別に俺は無策で言い出したことではない。


 商人の基本になるというスキル、《商人の心得》を習得しているので後は必要な知識をもらうだけだ。

 (スキルについては第6話参照。皆さん覚えていますか?)


「ミュルトさん。ミュルトさんから見て良い商人を紹介してもらえませんか?」


「えっ……いいですけど、どうするのですか?」


「一日だけ時間を下さい、それで覚えて見せましょう。これでも理解度は(スキルのお陰で)早い方なので、やれるだけやりましょう」


「で、でも……」


「でもじゃないでしょ! では、ミュルトさんは何か策があると言うのですか!?」


 言い切った後で強く言い過ぎやと思ってしまった。ミュルトさんは俺がそんなことを言うと思っていなかったのか、口を開けてポカンとしていた。


「あっ……すいません。ちょっと言い過ぎました……」


 慌てて俺は謝った。


「い、いえ……確かにクロウさんの言う通りですね……分かりました」


 ミュルトさんはベットから起き、机に置いてあった帳簿を取り中を見始めた。


「…………あっ、この人なら大丈夫だと思います」


 そういうと、俺に開いたページを見せてくれた。ページには店の場所を示した地図や主な商品など店の情報が記されていた。


「トル・アランシュさん。この街で店を構えてそれなりに長い間店を続けている人です。ただ……優秀なのは間違いないと思うのですが……」


「ミュルトさんが言うならそうなのでしょう、早速行ってみます」


 多少不安な言い方だったけどな。


「あ、あの……」


 《記憶》スキルでしっかりと場所を覚え、俺は早速行こうと回れ右をしたとき、ミュルトさんに呼び止められた。


「? なんですか?」


「先程はありがとうございました」


 先程? ああ、俺が倒れそうになったミュルトさんを支えた時かな?


「いえ、それほどでも……。ミュルトさんはしばらく休んでいてください。さっきも言いましたがミュルトさんが倒れてしまったら元も子もありませんよ」


「はい、気を付けます」


「じゃあ、行ってきます」


 俺はトル・アランシュと呼ばれた商人の元へと急いだ。










 エルシオン東部地区の隅にその店はあった。石煉瓦製の家が立ち並ぶ中、一つだけ木で作られた民家がぽつんと建っていた。

 民家には看板が掲げられており、そこには


「トルじゃ、ボケ」


 と書かれていた。……いや、なんで看板で喧嘩売っているんだよ。これじゃあ喧嘩っ早い奴が乱入してこないか? いや、そもそも入ろうとは思わないだろ……。

 そもそも店なのか? そうも思えないのだが……。


 何やら物凄く嫌な予感を感じさせながら、俺は店の戸を静かに開けた。なぜ静かにかと言うとなんか音とか立てたら刃物が飛んできそうだったのd―――


「誰じゃボケェェェェ!!!!」


 ドアを開けるや否や。俺に向かって啖呵切ってナイフをぶん投げるじじいが目に入った。


 前言撤回。静かでも飛んでくるようです。

 

「うぉぉっ!?」


 思わず反射的に《硬化》をして飛んできたナイフを弾き飛ばす俺。キィンと言う音と共にナイフが宙を舞い、そして壁に突き刺さる。


「おい、じじい! 殺す気か!?」


 つい素で怒る俺。怒っていいですよね? なんでドア開けた瞬間にナイフが飛んでくるの!? 異次元に飛ばされた時の経験が無かったら建物ごと吹き飛ばす魔法を使いかねなかったっぞ!?(第58話参照)

 思わぬところで異世界での経験が役に立った瞬間であった。


「誰じゃお主は! お主など知らんわ!」


「客だよ! つーか、お客さんに向かって行き成りナイフを投げつける奴がどこにいるんだよ!」


「ここにいるじゃねぇかボケェ!」


「あっ、本当ですね……って違うわ! 俺じゃなかったら死んでいたかもしれないんだぞ! 一般市民が入っていたらどうするつもりだったんだよ!」


「知らんわ! 反応できなかった奴が悪いんじゃボケェ!」


「はぁ!? 理不尽過ぎるだろ! あんたにやってやろうか今すぐに!?」


「上等じゃ! 職人歴40年のワシの手にかかればそんな事、朝飯前じゃボケェ!」


「よーし、いい度胸だ。そのハゲ頭に穴開けてやる!」


「誰がハゲじゃボケェ! ワシには心の髪がしっかりと生えておるわいボケェ!」


「誰が心の髪だよ!? 痛い中二病かあんたは!? そういうのは一人でやってくれ!」


「一人でやっとるわいボケェ! こちらとら毎日鏡に向かって一人呟いておるわボケッ!」


「はぁ!? あんた頭大丈夫!? 病院紹介してやろうか? ボケかけているんじゃねぇか!?」


「何を言っておる! ワシはまだピチピチの50代じゃボケッ! 誰がボケとるかってボケッ!」


「はぁ……はぁ……」


「ぜぇ……ぜぇ……」


「はぁ……一ついいか?」


「ぜぇ……ぜぇ……な、なんじゃボケ……」


「段々……話の趣旨が……変わってないか……?」



 俺の冷静なツッコミにより、この謎のやり取りは終わりを迎えたのであった。

 久しぶりにツッコミ合戦を書いた気がします。


 本日も読んで下さった皆様。本当にありがとうございます。また次回もよろしくお願いします。


===2018年===

08/15:誤字を修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ