第106話:第1次エルシオン防衛戦3
あ……あっぶねぇ……
二つ目の衝撃波を避けていた俺は敵の技の威力に多少引き気味だった。
てか、地面を殴っただけでなんでそんな衝撃波が生まれるの? 確かに《龍の力》の中には《身体強化》とか《硬化》とかのスキルがあるから可能かもしれないけどさ。
俺は壊された城壁をチラッと見た。壁には直径にすると5,6メートルはありそうな大穴が開けられていた。城壁のすぐ近くの地面は抉れ、傍に合った半壊だった家を木端微塵に吹き飛ばされていた。
……力って扱いを気を付けないといけないな。再認識させられました。
ゴゥっという音と共に竜王が俺目掛けて突撃して来る。いや、なんで移動でゴゥとか鳴っているのですか? 移動音じゃないですよね?
竜王がグッと拳に力を入れ懐で構えた。俺はまた避けようと一瞬考えたが、迎え撃つことにした。もし避けてしまうと俺の背後にそびえ立つ城壁に3個目の大穴を開けかねないからだ。流石にこれ以上穴を開けたら一部が崩壊しかねない。
「二十連魔法《多重防壁》」
両手を地面に当て、そこから何重にも囲まれている魔方陣が浮き出て光の障壁が生まれる。
俺の魔法と竜王の拳が衝突し辺りに衝撃波が走る。城壁に当たった部分には傷痕が出来、小さな木は根本から吹き飛ばされた。
まさか止められるとは思っていなかったのだろう、竜王は驚いた様子で俺を見ていた。その顔を見て俺は思わずニヤリとしてしまう。
「ぐっ!」
「そういえばあんたら魔法耐性が殆ど無かったよな?」
そういうと、俺は片手を地面から離し、雷の魔法を撃つ準備だけしてみせる。
「!」
危険を察知したのだろう。竜王は攻撃をやめるとすぐに後ろに引いた。
「お主何故……!?」
「同時に複数の魔法が使えるのが珍しいか? 詳しい理由は俺にも分からないからな? 聞くんじゃねーぞ」
だってセラからもらったスキルでこうなってしまいましたから、俺が理由を知る由もない。まぁ、聞けばいいだけの話ですけど。
「小癪な……!」
竜王が再び攻勢に出た。今度は背中に付けていた鞘から剣を抜刀し斬り付けにかかった。
「そうかい……そっちがその気なら―――」
―――スキル《硬化》発動
竜王が振り抜こうとしている剣の刃に向かって手の甲を思いっきりぶつけに行く。普通ならこんなアホな真似はしないが、そこは自分のスキルを信じていくことにする。
ガンッと硬い者同士がぶつかった音が聞こえ、その次にピシッとひびの入る音が聞こえた。
「なっ……!?」
竜王の手に握られていたのは、先程まで刃こぼれ一つない剣に代わり、拳とぶつかりあって亀裂が入った剣だった。
「なぜだ。これはミスリル製の剣なんだぞ! 一撃で……!!」
そして、竜王にとってもっと驚く光景があった。それは先程剣とぶつかりあったクロウの腕だ。先程までは綺麗な肌色をしていた腕が今は深い青色をしている。
竜王にはその皮膚の正体に対してある一つの推測が脳内にあった。だが、それを認めることは到底できなかった。もし認めればそれは、龍族の頂点に立つものとしては侮辱に近い事であったからだ。
「そ、それは―――」
竜王がクロウに何かを言おうとした。
「質問に答える気はないぜ、じゃあな」
だが、それよりも早くクロウが剣を受け止めた方とは逆の腕にグッと力を入れる。そして《硬化》で青くなった腕で竜王の顔面を殴りつけた。
グシャッ! と聞こえてはいけない音と共に竜王の体はかっ飛び、そしてそのまま森を突き抜け地平線へと消えて行った。
「……あっ、やり過ぎた」
俺は少しだけ反省をしました。
(後悔はしていない)
こうして、第1次エルシオン防衛戦はエルシオンの住民たちが知らないところで始まり、そしてようやく何かが起きたと気づいた頃に幕を降ろしたのであった。
・第1次エルシオン防衛戦・戦果(勝者:人族)
・戦闘参加者:649名
・龍族:648名
・人族:1名
・死者:647名(他非戦闘参加者0名)
・龍族:647名
・人族:0名
・怪我人:0名(他非戦闘参加者18名)
・龍族:0名
・人族:0名(他18名)
・行方不明者:1名(他非戦闘参加者2名)
・龍族:1名
・人族:0名(他2名)
最後にちょっとした戦果をまとめてみました。いかがでしょうか? こういうのを小説で書くのはかなり珍しい事かなと思いつつ、書いていました。
今回も読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。また次回で会いましょう。
以上、黒羽でした。
===2016年===
03/06
・戦果に項目を追加しました。
・誤字を修正しました。
・戦果項目を修正しました。
===2017年===
04/08:誤字を修正しました。




