第103話:始めから……
※ 4/9 誤字を修正しました。
あの襲撃から2日後、国軍の先発隊がエルシオンに到着をした。先発隊の兵力はおよそ5000人ほどで、大部分が騎兵だった。
この二日間、俺は瓦礫の本格的な撤去を任されていた。今度は残った冒険者も手伝うことに。と言っても手伝っているのは十数名程度だ。
残りの冒険者たちは、この街から逃げ出したり、「そんなこと何故しないと行けないんだ!」と言って断った人たちだったりする。
街の住民たちはというと死んでいった者たちの葬儀を執り行ったり、俺達が綺麗にしたところに仮の住居を建設したりしており、ここには居ない。
………まぁ、正しくは必要無いのですが
「取り合えず取りやすいように出していくから運んでくれませんか?」
と、言いながら一個数百キロにもなるような木材を片手で持ち出したり。
「あとはこれくらいか。じゃあ俺が運びますわ」
といって下手をしたら1トンにはなりそうな重さの鉄材を一人で運んだりなど、完全に重機かした俺の手によってほとんどが片付けられたからだ。ときどき「俺らって必要なくね?」とか「俺たちの存在って………」などの声が聞こえたが聞かなかったことにしておこう。………なんか俺って最近、聞いていなかったということにしているのが多いような………。
とまあ、そんな二日間でした。
先発隊の到着により街のなかには安堵の声が聞こえてきた、だが、そんな声もすぐに変わっていき、代わりに聞こえてきたのは、龍族を滅ぼせという、住民たちからの怒りの声だった。
「龍族を殺せ!」
「奴等を決して許すな!」
中には義勇兵として加わりたいと言う者まで現れた。こうなってくると兵士たちの士気も否が応でも上がって行った。
住民たちは本隊が来てくれることを心から望んでいた。俺としてはこれ以上面倒な事にはなって欲しくないので正直なところ来ないで欲しいのが本音だったが、それは口にしないように気を付けた。
だが、国の本隊が到着することは無かった。
エルシオンの襲撃事件より3日後。
アルダスマン国軍本隊。龍族の奇襲を受け敗走。多くの物資、人材を失う。
さらに翌日、別の部隊も奇襲を受け敗走。ここでも物資や人材を数多く失う。
立て続けに起こった奇襲によるアルダスマン国軍の敗北。それは多少の時間を要したのちエルシオンにも伝わった。
いや、奇襲の警戒網がガバガバすぎるでしょ? とツッコミを入れたい所だったが、よくよく考えてみれば、夜間の目が効かないところで空から強襲されたら厳しいか。敵はエルシオンで得た物資を上手く使っているな……。いや、それでもあまりに無防備すぎると思うのだが。
今みたいに照明という強い明りなんて無いしな。むしろ今までなんでこんなに勢力を広げていられたのか逆に問いただしたい。
敗走の情報を聞いた住民の不安は高まっていた。だが、そこにさらに住民の不安を増大させる報告が伝えられる。
先発隊の再編による撤退。事実上の都市放棄と言えるかもしれない。各地で国軍が敗れたことにより補給線が伸び、戦線を維持することが不可能になりつつあったのかもしれない。
そもそも、この戦争自体が既に無意味な事に成り下がりつつあった。
事の発端は調査部隊の全滅、それに対する報復戦になるはずだったが、既に予想以上の損害を出してしまっている。
ここからさらにクローキ火山にいると思われる主力の敵を倒さなければならないのだ、終わる頃にはどれほどの被害が出ているか分かったものではない。
そして、あの戦いから僅か一週間後。エルシオンを守る守備隊がすべて撤退し、街を守る国の兵士は誰一人として残っていないのであった。
実際、偵察部隊とかあるでしょうが、今みたいに哨戒機などがない昔だったらと思って書いていました。実際どうなのでしょうかね。松明程度の魔法道具しか作れない国家の偵察部隊って。
と、試行錯誤の場所もありますが、暖かい眼差しで見て頂けると嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。




